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1章 〘 悪役令嬢は投げ出したい 〙

2話 【美しく咲く悪の花】

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「は、ん?マジで言ってるの?」
「はい。マジ寄りのマジです」
すっかり友人みたいな関係になったシルビはたった今衝撃の発言をぶちまけた。
「なんで【悪の花】と名高い私が候補から外れていたはずの王太子の婚約者に?!」
「え、だってお嬢様が詰め寄ったんじゃないですか。王太子殿下に。
「婚約者にしてくださらないと、大量の手紙を送りつけますよ」
って言って」
ええーーー…。
私すげぇ幼稚な脅ししてたな。
それを受けた王太子も王太子だけどな。
「まあ、行くしかないわね」
ここでふと、思い出す。を。
王太子にヒロインを虐げた罪として国外追放。その他のルートでも国外追放だった。
とにかくヒロインと攻略対象を幸せにする系の報復はしませんよ系悪役令嬢に優しい運営なのだ。
「よし、そうしよう」
私は面食い。
そして、処刑を望む。
だって国外追放。国外追放だもん、国外追放。
大事だからあと一回言おう、国外追放だ。
無人島でスローライフを送れる。
なんて素晴らしい半生なのだろう。
「じゃあ、行きましょう」
今はとにかく、王太子に今よりもヒドイ印象を植え付けることだ。
「頑張れ私、今日もワルい」
にっ、と笑みを浮かべる。
「もう少し令嬢としての意識を持ったらどうです」
と後ろから視線が刺さるが気にしない。
今の私は【美しく咲く悪の花】なのだ。
どんな逆境でも返り咲く、どんな毒にも勝る毒の花。

ーーー

「はじめましてっ!わたしぃ、この度王太子殿下の婚約者になりますぅ、イリア・ラビニシュルですぅ~♪」
これ結構疲れる。
「あ、ああ…うん、よろしく」
「ではぁ、今日は帰りますねぇ!
またの機会にぃ!」

ーーー
「面会時間1分は流石にどうかと思います」
「良いじゃないの。
ふふ、私は疲れてるのよ。
それに無駄に自分語りする優しい令嬢とねちっこいけど絶対にプライベートに干渉しない令嬢なら断然後者でしょ」
「…そうですか」
身体が熱い中で頑張った私を労えるのは私しかいないのだ。

ーーー
「けほっ、けぇっほけほ」
「なんだ。安心しました。
冗談の咳を混ぜる余裕あるじゃないですか」
「これは己を誤魔化すためよ」
「そうですか」
「冷たい目しないで、そんな目されたら傷ついちゃうな~?」
まあ風邪引いてはいるかもだけど。
「こんな人が国母なんて…世も末ですね。
こんな人と結婚する殿下が不憫でなりません」
「何とでも言って!
私は国外追放が目的なのよ!
どうせ王太子は私を愛してないんだし、いいでしょ!」
どうせ私はヒロインと恋に落ちるまでの女払いの役目を背負ってるだけだしね!
「いいのよ、女払いの役目をしてくれてる面倒な女で!」
ニッ、と笑う。
「………まあ、お嬢様がそれでいいなら私は構いませんが」
何だかんだでイリアに甘いシルビだった。

そういえば。
この前、どんな毒にも勝る毒の花って自分の事評してたけど、風邪には負けます。けど女という毒相手ならバカ強いです。
「う”~~」
「変な唸り声上げないでください」
「あづいのよ~~~…」
身体が怠いし、熱いし。
「どっから風邪もらってきたんだろ…」
「あ、お嬢様。
ローレンス・ルーヴィル・ドレア王太子殿下がお越しになられました」
「そう…通して…そのまえに、眠るかも…」
瞼が重くなる。
「わかりました。では眠っているとお伝えしますね。
おやすみなさい、お嬢様」
そのシルビの声を最後に、私は眠りに就いた。


ーーーー
「お嬢様は只今お休みになられています」
「わかった。」
ローレンスが部屋に入ると、空気を読んで(?)部屋を退出したシルビ。

齢お互いに9歳。だがローレンスは9歳とは思えないほどの聡明さを持ち合わせていた。
女どもは、この顔か肩書きにしか寄ってこず、自分語りが激しい令嬢ばかりだった。
そんな女が、ローレンスは嫌いだった。
そしてイリアも、ローレンスが嫌いな部類の女の一人。
言ってしまえば、全員そういう人間だった。
なら誰でもいい、と適当に選んだ女がイリアだったのだ。
どうせ婚約者としての初対面も自分語りだけだろ、と思っていると。
「はじめましてっ!わたしぃ、この度王太子殿下の婚約者になりますぅ、イリア・ラビニシュルですぅ~♪」
「ではぁ、帰りますねぇ!
またの機会にぃ!」
たった二言。
この人は、少し違うのかも。
そう思って、こうして見舞いに来てるわけだけど。
「う…」
時々うねるイリア。
「…婚約破棄、したいの」
「!」
寝言をぼやくイリア。
つまらないと思っていたこの時間が、一気に変わった。
次の言葉に耳を傾ける。
「だって、幸せでいてほしいじゃない。
貴族は、…愛のない結婚も多いけど、少なくとも向こうは私を愛してなくて、私も殿下を愛してない。
お互いにに利がない婚約なら、愛してる人と結婚する方がいいでしょ。」
…この少女は、どこまで知っているんだろうか。
「え?いまのメリット?
そりゃあ殿下側は女払いに、私は国外追放されることでしょ」
女払い、確かにそうだった。
彼女の洞察力に驚いたのも束の間。
国外追放…?
その答えは、次の言葉だった。
「たぶん、私は将来殿下の愛するひとを虐めたことで、国外追放されるから~…、
国外追放されたら?そしたら勿論、無人島で独りサバイバルか、世界中を廻る旅するよ」
興味が湧く。イリアへの興味が尽きない。
イリアは「愛するひとを虐めたことで国外追放される」と言ったが、多分興味が尽きなくて放したくはないから、国外追放はできないだろう。
「…これからよろしくね、イリア」
そう独り言て、手の甲に口づけをした。

あとがきーーーーー
いや~~、寝言ですよ、寝言。
ふはは、イリアは自らの首を絞めていきましたねぇ…
イリア、自分の知らないところで自らの第二の生の最終結果がほぼほぼ決まる…
しかも超序盤で。
まあ、暫定ですから。どう転ぶかわかりませんからね。
次回はイリアが将来的なサバイバルのために身体を鍛える話です!
お見逃しなく~!
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