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しおりを挟む一歩、また一歩とベッドに近づいていく。
僕の足は震えていた。
やがてベットに手をついて、ぽむんと柔らかい布の感触を確かめる。
ベッドに座るリュウの目線が、ちょうど僕と同じ高さにあった。
見つめ合う、リュウと僕。
その瞬間、グイッと手を引っ張られ、僕はベッドに押し倒された。
「わっ」
「ほら、もう俺のものだ、アヤ」
「おいっ、話と違う」
「早く人間界に帰りたいんだろ? アヤ」
「いや、別に急いでいるわけじゃない。家族が僕を心配していないか気になるだけだ、離せっ!」
「ふぅん、それにしても、急に口調が荒くなったな?」
「僕はもともとこうやって話すんだよ」
「ほう、気が強い。それに女のくせに自分のことを僕というのだな。最近の女はそうなのか?」
知らないっ、といって首を振った僕は、身をよじった。
なんとかリュウの手を振り払おうとするが、力ではとても敵わない。
くそっ、このまま僕は犯されてしまうのか……。
そう思うと、なんだか腹が立つより情けない。
「どうした? 震えているじゃないか?」
「うぅぅ、こんなことされたら怖いじゃないか……添い寝、やめるぞ」
「あ、すまない。つい、癖が出てしまった」
そのとき、リュウの力が抜けたので、僕は握られていた手を振り払った。
「まったく、すぐ手を出すんだねリュウさんって……幻滅しました」
「いやいや、今までの女たちはこういう強引なほうが好きだったが……アヤは違うのか?」
「ぜんぜん違います。むしろ強引なのは嫌いですっ! もう添い寝やめます。イナリさんにいって帰りますから。さようなら」
「あ、ちょっと待て」
リュウは秒で土下座した。
「すまない。アヤ、怒らないでくれ」
「……もう手は出さないですか?」
「ああ、約束だ、何もしないから添い寝だけしてくれ」
「……仕方ないですね」
僕は寝そべって、布団をぱんぱんと叩いた。
「じゃあ、寝ていいよ。リュウさん」
「……うむ」
急に素直になったリュウは僕のいった通り横になり、目を閉じた。
意外と長いまつ毛をしている。
鼻が高く端正な顔立ちで、女からモテるだろうな、と思った。
だが僕は男、あいにくリュウに惚れることはない。
リュウは唇を震わせ、
「添い寝してくれたら帰還していい、頼む。百年ぶりの女なんだ、ずっと待っていたんだ……」
と嘆く。
よほど、何かが溜まっているのだろう。
欲望という何かが……。
まあ、それが添い寝するだけで解消され、癒やされるというのなら、少しぐらい僕が彼を抱きしめてあげても、いいかな……。
そう僕は思いながら、そっとリュウの横に寝そべり、手を伸ばし、彼の頭をなでる。
「これでいい?」
「ああ、つづけてくれ、アヤ」
美しい銀色の髪を手ぐしで整え、生えている角に触れた。
その瞬間、びくっとリュウは身をよじらせる。
おや? と思い、なでるのを止めると、すぐに屈強な肉体が力なく崩れ落ちた。小刻みに震え、微笑を浮かべている。
「大丈夫? リュウさん?」
「ああ、ちょっとくすぐったい」
「角をなでるのは、やめておく?」
「いや、気持ちいから、もっとやってほしい」
「……こう?」
「ああ、なでなでしてくれ、頼む」
「こうですか?」
「ああ、気持ちいい……先っぽのほうも頼む」
「ここですか?」
「そう、そこだ……うまいじゃないか、アヤ」
恍惚とした表情のリュウは、ふいに僕の腰に手を回してきた。
え? 添い寝だけでは?
「ちょっと、手を出さないでくださいっ、リュウさんっ!」
「頼む、抱かせてくれ……」
「わっ、ダメだって」
「ぎゅっと抱きしめ合いながら、なでなでしてくれ」
「……リュウさんって甘えん坊だったんですね」
「ストレスを解消させるためだ……何千年とこうしてきたんだ、頼むアヤ、抱きしめてくれ……」
「んもう、ぎゅっして、なでなでだけだよ……」
ありがとう、といったリュウは僕を抱きしめてくる。
その力は優しみがあふれ、僕は人肌の温もりを感じた。
たしかに、くっついて寝るのっていいもんだな。
僕はリュウの頭、髪、角、背中を、ゆっくりとなでていく。
リュウの呼吸は深くなり、肉厚のたくましい胸板が風船のように膨らんだりしぼんだりして……。
やがて、僕を抱く腕の力が、ゆるゆるとなくなった。
「寝た……か?」
僕は、そろりとベッドから抜け出した。
リュウの寝顔を見つめながらささやく。
「さようなら、リュウさん」
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