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三章 プリンセスロード編
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しおりを挟む「それ本当?」
ラルクから聞いた話が、マジでウケる。
パパからのお願いでAランク冒険者のパーティに参加してるんだけど、そこのリーダーと体の関係……つまりえっちしたんだけど、こいつ婚約者がいた。
「あれ? ジャスから聞いてなかったのか? おれはてっきり知ってると思ったぜ」
「……あはは」
笑うしかない。あたしは浮気相手なのか。ジャスのクズ野郎!
ラルクは、しまったって顔をしてる。本当に口が軽いんだから。
「でも、婚約者とはうまくいってないみたいだぜ、だってあの顔を見ろよ」
「え?」
「今からトルシェに行くのに、むずかしそうな顔してるだろ?」
「そうかな……」
関心がないようにしとく。
だけど、あたしは先を歩くジャスのところに走った。
「ねぇ、ジャス」
「ん? なんだケイト?」
「あのさ、婚約者がいるって本当?」
「ラルクから聞いたのか?」
うん、とあたしが答えると、ジャスはいきなりあたしの肩を抱いた。
きゃっ! なにすんの?
そして振り返ると、「ラルクー!」と叫ぶ。
ちょっと、そんなに大きな声を出すと、プリンセスロードを行き交う人たちから見られるじゃない。
でも、ジャスって人間は周りのことを気にしない大らかな性格。いつも自信満々で、頼りがいがあって……まぁ、そこが好きなんだけど。
「俺はケイトのことが好きになった。だからルイーズとは婚約破棄するぜ!」
「は? ジャス、おまえ何を考えてるんだ? Aランク冒険者になったら結婚するって言ってたじゃないか?」
「気が変わった……ケイトはルイーズと違って俺の言うことを何でも聞いてくれるから……な?」
じっと見つめてくるジャス。
あたしは、「うん」と答えた。
やだ、顔があつい。だって、あなたのことが好きだから何でも言うことを聞くよ。
あんなことや、こんなことだって、きゃぁ……。
やれやれ、とラルクは頭をかいた。
「あーあ、イチャイチャしやがってよぉ、まったく……ヴェルハイムさんに何て説明するんだよ? ジャス」
「コアを破壊して王都に帰還したら、ケイトを婚約者にしたいと言うつもりだ」
「じゃあ、ルイーズさんは?」
「トルシェについたら、すぐに婚約破棄を告げるつもりだ」
「へっ、モテる男は忙しいな~」
がっ、と石ころを蹴り飛ばすラルク。
ふつうにかっこいいんだから、ちゃんと彼女を作ればいいのに。
なぜかラルクは遊んでばかりいるのよね。いつも違う女性とデートしてる。
それにしても、ジャスの婚約者ってどんな人なんだろ?
綺麗系かな? それとも可愛い系?
まぁ、いずれにしてもジャスはあたしのもの。
婚約破棄されるなんて、ざまぁ、よね。
あたしは、ありったけ可愛い顔をしてジャスを見つめた。すると彼は、
ぎゅっ!
と、あたしの手を握ってきた。
そしてそのまま歩く。もうラルクに気を使う必要はないもんね。
ラブラブ、恋人手つなぎで向かっているのはトルシェの街、いよいよ背の高い鐘楼が近づいてきた。とても立派で素晴らしい建物ね、登ってみたい。
そんなことを思っていると、ジャスはあたしから離れ、リーダーっぽく指示を出す。
「じゃあ俺は今からルイーズが働く道具屋にいく。ラルクとケイトは俺の家で休んでいてくれ、丘にある建物だ」
「わかったわ」
「うーん、おれは街の女をナンパでもしよっかな」
ラルクったら、本当にえっちね。
あたしはしらけた目で仲間を見つめながら、トルシェの門を抜けた。
すると、丘の上にそびえ立つ豪邸が見える。
あれがジャスの家らしい。めちゃ金持ち。さすがAランク冒険者ね。いずれジャスは、あたしのパパにも負けないくらい権力を得そう。
淡い恋心とともに、あたしはジャスとの将来を期待していたのだった。
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