彼氏の家族がヤバいですわ!

ぬこまる

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「もしもし、ペットホテルを予約したいですわ」
「……」
「もしもーしですわー!」
「お嬢だろ? こっちは仕事してんだ! 非通知でイタ電してくんなし!」
「え? 非通知なのですか?」
「ああ、っていうか、おまえまだ彼氏の家か?」
「そうですわ……」
「業務命令だ。迎えに行くから住所教えろ、お嬢が心配で仕事にならん」

 ドキッとするアリス。
 心が揺れ動く。不安だったから電話したので、つい口が滑る。

「神奈川の伊勢原大山って高速を降りて……すいません、スマホが圏外で詳しい住所がわかりません……大きな桜の木が目印なのですが……っていうか、彼氏と帰るので迎えには来ないでください。それより、ヒロさんも若い女性が好きなのですか?」
「はぁ? なんだ急に?」

 わんこに餌をあげながら通話するヒロ。
 ペットショップでは、可愛らしい店員のお姉さんたちが、犬を抱っこしながら接客をしている。
 そんな中、ヒロは得意げに答えた。

「恋愛にとしは関係ねぇ、俺は何でも話せる女が好きだ」
「あーわかりますわ。ヒロさんってセクハラパワハラ、言いまくりですものね……それと、ヒロさんって催眠術をかけられた経験は?」

 ねぇよっ! とヒロはデカい声を出す。
 ショップのお姉さんたちが、ハッとしてヒロを見た。だが、いつものことか、とすぐに仕事へと戻る。

「お嬢、おまえまさか催眠術かれられたのか?」
「はい、ですわ……」
「くっそ! まじかよ、お嬢ぉぉぉ!?」
「でもでもでも、聞いてくださいませ!」
「なんだよ?」
「掻きむしりが治りましたの……彼氏のお母様が精神科医で」
「はぁ? おっかあ様とか関係ねぇぞ、それ、きっとヤバいやつだぞ?」
「え?」
「眠らされたんだろ?」
「はい、ですわ……」
「眠っている間、おっぱい揉まれてないか? パンツがぐしょぐしょになってないか? まさか、もうすでに姓奴隷にされてないだろうな?」

 え? とヒロのエッチな言葉に、ショップのお姉さんたちが反応する。
 ヒロは、こっち見んな、しっし! と手を振ってアリスの声に耳を傾けた。

「ちょっとヒロさん、笑わせないでくださる? 彼氏はふつうですわ」
「いいや、AVでよくあるやつだ。素人ものでな、マッチングアプリでひっかけた女を性奴隷にして撮影するんだ」
「最っ低ぇーですわ……ヒロさん、そんなものを見てらっしゃるのですか!? さすがに引きますわ」
「よく聞け、お嬢ぉ! でもそれが現実だ」
「ふーむ、でもたしかに……思い返せば家に来たお客様たちは、みんなエロい目で私を見てましたわ」
「だから言ってるだろ! 洗脳されてんだよ! み~んな、おっかあ様の催眠術に洗脳されてヤリまくってんのさ!」

 ガチャ

 ヒロの冗談を聞いてられないアリスは、そっと受話器を置いた。
 電話の向こうでヒロは、通話が切れたことに気づかず話を続けている。

「もう我慢できねぇ! 俺の大切な部下をAVに出させてたまるかよ! おい、彼氏の家はどこだ? ちゃんとスマホで調べて場所を教えろ! すぐに迎えに行く! ってまた切りやがった、バカヤロウ!」

 ふぅ、とアリスは息を吐く。
 
「ありえませんわ……ケイトがそんなことをするなんて……ん?」

 ふと背後に気配を感じる。
 振り返ると、じっと家政婦が見ていた。

「どちらに電話を?」
「職場ですわ……ちょっと気になることがあったので」
「そうですか」

 家政婦は、「うふふ」と微笑んでアリスを見つめてきた。
 透き通った綺麗な瞳をしている。だが、まったく目が笑っていない。
 カチンときた。
 アリスは、幼少期のお嬢様だった記憶が蘇る。
 
 家政婦の分際で何様!?

「何ですかあなた……家政婦のくせに客人のプライベートを聞くのですか?」
「……い、いえ、そんなつもりは」
「それとも何ですか? 私が電話してはいけないのですか?」
「そうではありません」
「では、なぜ私のプライベートを聞くのですか? 誰かに頼まれてるのでしたら、その人物をいいなさい」
「頼まれていません……わたしが気になっただけです」

 家政婦は、急におどおどと身体を震わせる。
 アリスがこのような高圧的な態度を取るとは、思わなかったのだろう。今、家政婦が目にしているのは、いつもの清楚なアリスではない。完全なる悪役令嬢であった。

「平伏しなさい! 頭が高いのよ、家政婦の分際で!」
「うっ……わたしは……わたしは……」
「何よ? あなた、本当に家政婦?」

 上から目線で家政婦に質問するアリス。
 うるうる、と家政婦の目から涙がこぼれ落ちていた。すると突然、家政婦は階段を駆け上がっていく。

「ふっ、逃げたわね……ますます怪しいですわ」
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