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【幕間】解放と初恋の物語
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ここで再び幕間を挟ませていただきます。
(10話の幕間と同様に、少し毛色が異なります)
今回は、あの人のエピソードです。
ーーーーーーーーーーー
かつて、多くの人々に祝福されながら婚約を結び、その後も仲睦まじい結婚生活を送っていたカプリスキー夫妻は、婚約から2年ほど経った辺りからだろうか……大きな問題に直面することになる。
それは、俗に言う跡取り問題であった。
カプリスキー伯爵家の跡取りを産み育てることは、夫妻が必ず成さねばならない使命とも言えるものだったが、どれだけ夜の営みを繰り返しても、不幸なことに一向に子宝に恵まれなかったのだ。
側室を持つべきではないか、という意見が夫妻の耳にまで届くようになっていたが、夫であるカプリスキー伯爵はそれを良しとしなかった。
そのような状況が更に3年ほど続いた後、ようやく……満を持して、夫妻のもとにコウノトリが赤ん坊を運んでくる。
その赤ん坊こそが、わたし、コスモス = カプリスキーである。
母が言うには、それはもう、目に入れても痛くないほどに愛らしい赤ん坊だったのだとか。
けれど、世の中はどこまでも不条理だ。
数代に渡り武勲によって成り上がり続けてきたカプリスキー伯爵家では、男の跡継ぎ、つまり息子の誕生が強く望まれていたのである。
そんな伯爵家にやっと生まれた待望の子どもが女児であったことは、父の新たな苦悩の種となる。
しかし、また次の子宝を望むには、あまりにも希望が薄い。ならばと父は、ひとつの結論を出す。息子がいないのなら、娘を立派な一人息子として育てれば良いじゃないか、と。
正確に言えば、わたしが女として振る舞うことを決して許さず、伯爵家が代々理想とする紳士像の通り、強く逞しく生きることを望んだのだ。
それはわたしにとって、自身を縛る一種の呪いとなる。
そのような環境で育てられたからなのか、はたまた生まれ持った性格だったのか、わたしはとてもわんぱくに育った。
性の抑圧を受けている、という感覚も、当時のわたしには全くなかった。
そんなわたしが自身の在り方に一筋の違和感を覚えたのは、8歳の誕生日を迎えた辺りだっただろうか。やがて長い付き合いとなる、ひとりの親友と対面したことがきっかけだった。
普段から男の子たちとばかり関わっていたわたしの前に、いかにもお嬢様な雰囲気を纏った少女は現れた。
マーガレットと名乗る彼女とわたしが出会ったのは、自身との違いを実感させ、一層男らしさを磨かせようという父の意図が絡んでいたのだと思う。
しかし、父の意図に反して、わたしの中には自分でも理解できない感情が芽生えてしまった。
特に印象に焼きついたのは、よく手入れされた少女のサラサラな黒髪だった。伯爵家の人間として、最低限の身だしなみは習得してきたものの、それと女として自身を磨くための行為は、全く別種だ。
その日から、髪の手入れはわたしの密かな習慣となる。そしてそれは、わたしの中に封じ込められた乙女心の僅かばかりな反抗でもあった。
そんな些細な変化こそありつつも、わたしは変わらず父の期待に応え続けた。
しかしながら、かつて覚えた一筋の違和感は、わたしの成長とともにじわじわと広がり続ける。それは、まるで毒のようにわたしの心を蝕み、自我を揺らがせた。
父はそのことに気がついていない様子であったが、もしかすると、この頃から母はわたしの苦悩をなんとなく察していたのかもしれない。
とある屋敷で開かれた上流階級の晩餐会、父に連れられてその催しに参加した日、わたしの運命は大きく変化する。
タキシードを着たわたしは、いつも通りカプリスキー伯爵家の一人息子として振舞う。そんなわたしを目にした誰もが、恰好通りの麗しい少年と疑っていない様子だった。
正確に言えば、べつに性別を詐称しているわけではないのだが……身内を中心に、皆が揃ってわたしを男として扱い続けたことで、全てが歪んでしまっていたのだと思う。集団心理というものは、案外馬鹿にできない恐ろしさがある。
それはもはや日常であったが、思春期を迎え性的に成熟する最中であったわたしには、どうしようもく気持ち悪い違和感に感じられた。その理由までは、ほとんど自覚できていなかったけれど。
だからわたしは、会場の隅で影を潜めてやり過ごす選択肢を選んだ。
そして、何かを憂うように小さな溜息をついた瞬間……彼女はわたしに話しかけてきた。
「お姉さん、とても素敵、だね」
声のする方に顔を向け、瞬間的に思考が止まる。
そこにいたのは、人形のように整った顔をした、けれど幼さを感じさせる少女だった。おそらく、わたしよりいくつか年下だろう。
遅れて彼女の発言内容を理解し、わたしは思わず耳を疑う。
「お姉……さん? それって、もしかしてわたしのことかい?」
「……そう、だよ? お姉さん可愛いから、思わず声、かけちゃった」
そんなわたしの問いに対し、追い打ちをかけるかのようにわたしの心を揺さぶる言葉が返ってくる。その一言は、ずっと抱き続けてきた違和感の亀裂へと、的確に突き刺さった。
「わたしが可愛い……だって?」
「うん。それに、その髪もさらさらで、本当に素敵」
「……っ!」
髪を褒められた、ただそれだけのことで、これまでに経験したことのない喜びが全身を駆け巡った。
ひとりの乙女としてのわたし、生まれたその日から封じ込められていた性が、どうしようもなく解き放たれる。
出会ったばかりの少女が放った何気ない一言によって、わたしはわたしの本心を自覚し始めたのである。
その後、少女といくつかの言葉を交わしたが、わたしをどこまでも乙女として扱う彼女の一言一言に対し赤面し、同時に内心では喜びに打ち震えた。
それは例えるなら、まるで恋に落ちた乙女のようだった、と自分でも思う。
「お嬢様~~。何処にいらっしゃるのですか、お嬢様~~」
少し離れた場所から、少女を探す女性の声がする。その声を聞いた彼女が軽く舌を出した後、わたしに別れを告げようと口を開いた。
それを遮り、思わずわたしは問いかける。
「なぁ……わたしは一体何者なんだろう。これからも、やはり男のように振る舞い続けるべきなんだろうか?」
口に出してから、しまった、と後悔する。
何も事情も知らない彼女にこんな問いかけをしたところで、困らせてしまうだけじゃないか。そのことに気がついたわたしは、慌てて誤魔化そうとする。
だが、それよりも早く、小首を傾げた彼女が問いに対して答えを返した。
「……それって、そんなに大切? お姉さんは、どう生きたって、お姉さん。貴女が何者かは、お姉さん自身がちゃんと知ってる」
それだけのことだよ、と彼女は言う。
「お姉さん」と呼ぶのも、単純にわたしの名前を知らないからだ。呼び方に、それ以上の意味は込められていないのだろう。
そんなことよりも、自分自身が自己を受け入れ、信じるがまま自由であろうとすることこそが、真に大切なのだ。
思わず目元に涙が溜まる。
わたしは慌てて少女に礼を述べようとするが、そのとき既に、彼女の姿は視界から消え去っていた。
これはまたいつか、きちんと礼をしないといけないな。そう思いながら、わたしはついさっきまで少女がいた場所を見つめ、静かに笑った。
わたしはこれからも、これまで父とともに目指してきたわたしのまま、紳士のようにふるまい、凛々しくありたいと思う。
けれど、だからと言って乙女としての自分を封じ込めて生きるのは、もう辞めだ。わたしは、どちらのわたしも切り捨てない。両方がわたしなのだから。
進学したらマンジュリカ女学院に入学したい。あれから数日後、わたしは両親にそう告げた。
母は一瞬ハッとした表情を浮かべた後、一人娘を見つめる優しい表情へと切り替わった。
一方の父は激しく狼狽え、そして激昂したが、わたしは頑として意思を変えなかった。その後、父にわたしの本心を必死で伝え、やがて和解に至るまでは険しい道のりであったが……ここで長々と説明すべき話ではない。よって、ひとまず割愛しても良いだろう。
◇
マンジュリカ女学院に入学してから早1年。
入学後に再会し、それから行動をともにするようになったマーガレットが、生徒会長に立候補するという。過去の出来事をひとつずつ思い返しながら、そんな話をマーガレット本人から聞かされていた。
わたしが何か別のことを考えていて、上の空で聞いていることに気がついたのだろう。マーガレットが半ば呆れながら、話題を変える。
「そういえばコスモス、貴女って昔出会ったときよりもずっと魅力的になったわよね。少し癪だけど、ますますかっこ良さに磨きがかかっているわ」
「ふふん、そうだろう?」
わたしの運命が変わったあの日から、心の中に大切にしまっている恋心。初めてわたしのことを可愛いといってくれた、年下の少女への気持ちを思い出す。
彼女の存在が、わたしを自由にした。それは、恋愛に対しても同じ。自分が恋に落ちた相手が同性の少女であったことは、何の障害にもならない、ほんの些細なことだ。
わたしには、何度も心に誓った願望がある。
いつか運命的な再会を果たしたら、恩返しとして今度はわたしが彼女を幸せにしてあげよう。そして精一杯、今のわたしを見てもらおう。
「はぁ……コスモス、わたくしの話を聞いているのかしら?」
ごめんごめんと謝りながら、わたしは屈託のない笑顔を浮かべた。
ーーーーーーーーーーー
ということで、天然のたらしが天然のたらしによって落とされるお話でした。(身も蓋もない要約)
お気に入り登録やコメント、評価なんかをいただけると大変喜びます。
(10話の幕間と同様に、少し毛色が異なります)
今回は、あの人のエピソードです。
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かつて、多くの人々に祝福されながら婚約を結び、その後も仲睦まじい結婚生活を送っていたカプリスキー夫妻は、婚約から2年ほど経った辺りからだろうか……大きな問題に直面することになる。
それは、俗に言う跡取り問題であった。
カプリスキー伯爵家の跡取りを産み育てることは、夫妻が必ず成さねばならない使命とも言えるものだったが、どれだけ夜の営みを繰り返しても、不幸なことに一向に子宝に恵まれなかったのだ。
側室を持つべきではないか、という意見が夫妻の耳にまで届くようになっていたが、夫であるカプリスキー伯爵はそれを良しとしなかった。
そのような状況が更に3年ほど続いた後、ようやく……満を持して、夫妻のもとにコウノトリが赤ん坊を運んでくる。
その赤ん坊こそが、わたし、コスモス = カプリスキーである。
母が言うには、それはもう、目に入れても痛くないほどに愛らしい赤ん坊だったのだとか。
けれど、世の中はどこまでも不条理だ。
数代に渡り武勲によって成り上がり続けてきたカプリスキー伯爵家では、男の跡継ぎ、つまり息子の誕生が強く望まれていたのである。
そんな伯爵家にやっと生まれた待望の子どもが女児であったことは、父の新たな苦悩の種となる。
しかし、また次の子宝を望むには、あまりにも希望が薄い。ならばと父は、ひとつの結論を出す。息子がいないのなら、娘を立派な一人息子として育てれば良いじゃないか、と。
正確に言えば、わたしが女として振る舞うことを決して許さず、伯爵家が代々理想とする紳士像の通り、強く逞しく生きることを望んだのだ。
それはわたしにとって、自身を縛る一種の呪いとなる。
そのような環境で育てられたからなのか、はたまた生まれ持った性格だったのか、わたしはとてもわんぱくに育った。
性の抑圧を受けている、という感覚も、当時のわたしには全くなかった。
そんなわたしが自身の在り方に一筋の違和感を覚えたのは、8歳の誕生日を迎えた辺りだっただろうか。やがて長い付き合いとなる、ひとりの親友と対面したことがきっかけだった。
普段から男の子たちとばかり関わっていたわたしの前に、いかにもお嬢様な雰囲気を纏った少女は現れた。
マーガレットと名乗る彼女とわたしが出会ったのは、自身との違いを実感させ、一層男らしさを磨かせようという父の意図が絡んでいたのだと思う。
しかし、父の意図に反して、わたしの中には自分でも理解できない感情が芽生えてしまった。
特に印象に焼きついたのは、よく手入れされた少女のサラサラな黒髪だった。伯爵家の人間として、最低限の身だしなみは習得してきたものの、それと女として自身を磨くための行為は、全く別種だ。
その日から、髪の手入れはわたしの密かな習慣となる。そしてそれは、わたしの中に封じ込められた乙女心の僅かばかりな反抗でもあった。
そんな些細な変化こそありつつも、わたしは変わらず父の期待に応え続けた。
しかしながら、かつて覚えた一筋の違和感は、わたしの成長とともにじわじわと広がり続ける。それは、まるで毒のようにわたしの心を蝕み、自我を揺らがせた。
父はそのことに気がついていない様子であったが、もしかすると、この頃から母はわたしの苦悩をなんとなく察していたのかもしれない。
とある屋敷で開かれた上流階級の晩餐会、父に連れられてその催しに参加した日、わたしの運命は大きく変化する。
タキシードを着たわたしは、いつも通りカプリスキー伯爵家の一人息子として振舞う。そんなわたしを目にした誰もが、恰好通りの麗しい少年と疑っていない様子だった。
正確に言えば、べつに性別を詐称しているわけではないのだが……身内を中心に、皆が揃ってわたしを男として扱い続けたことで、全てが歪んでしまっていたのだと思う。集団心理というものは、案外馬鹿にできない恐ろしさがある。
それはもはや日常であったが、思春期を迎え性的に成熟する最中であったわたしには、どうしようもく気持ち悪い違和感に感じられた。その理由までは、ほとんど自覚できていなかったけれど。
だからわたしは、会場の隅で影を潜めてやり過ごす選択肢を選んだ。
そして、何かを憂うように小さな溜息をついた瞬間……彼女はわたしに話しかけてきた。
「お姉さん、とても素敵、だね」
声のする方に顔を向け、瞬間的に思考が止まる。
そこにいたのは、人形のように整った顔をした、けれど幼さを感じさせる少女だった。おそらく、わたしよりいくつか年下だろう。
遅れて彼女の発言内容を理解し、わたしは思わず耳を疑う。
「お姉……さん? それって、もしかしてわたしのことかい?」
「……そう、だよ? お姉さん可愛いから、思わず声、かけちゃった」
そんなわたしの問いに対し、追い打ちをかけるかのようにわたしの心を揺さぶる言葉が返ってくる。その一言は、ずっと抱き続けてきた違和感の亀裂へと、的確に突き刺さった。
「わたしが可愛い……だって?」
「うん。それに、その髪もさらさらで、本当に素敵」
「……っ!」
髪を褒められた、ただそれだけのことで、これまでに経験したことのない喜びが全身を駆け巡った。
ひとりの乙女としてのわたし、生まれたその日から封じ込められていた性が、どうしようもなく解き放たれる。
出会ったばかりの少女が放った何気ない一言によって、わたしはわたしの本心を自覚し始めたのである。
その後、少女といくつかの言葉を交わしたが、わたしをどこまでも乙女として扱う彼女の一言一言に対し赤面し、同時に内心では喜びに打ち震えた。
それは例えるなら、まるで恋に落ちた乙女のようだった、と自分でも思う。
「お嬢様~~。何処にいらっしゃるのですか、お嬢様~~」
少し離れた場所から、少女を探す女性の声がする。その声を聞いた彼女が軽く舌を出した後、わたしに別れを告げようと口を開いた。
それを遮り、思わずわたしは問いかける。
「なぁ……わたしは一体何者なんだろう。これからも、やはり男のように振る舞い続けるべきなんだろうか?」
口に出してから、しまった、と後悔する。
何も事情も知らない彼女にこんな問いかけをしたところで、困らせてしまうだけじゃないか。そのことに気がついたわたしは、慌てて誤魔化そうとする。
だが、それよりも早く、小首を傾げた彼女が問いに対して答えを返した。
「……それって、そんなに大切? お姉さんは、どう生きたって、お姉さん。貴女が何者かは、お姉さん自身がちゃんと知ってる」
それだけのことだよ、と彼女は言う。
「お姉さん」と呼ぶのも、単純にわたしの名前を知らないからだ。呼び方に、それ以上の意味は込められていないのだろう。
そんなことよりも、自分自身が自己を受け入れ、信じるがまま自由であろうとすることこそが、真に大切なのだ。
思わず目元に涙が溜まる。
わたしは慌てて少女に礼を述べようとするが、そのとき既に、彼女の姿は視界から消え去っていた。
これはまたいつか、きちんと礼をしないといけないな。そう思いながら、わたしはついさっきまで少女がいた場所を見つめ、静かに笑った。
わたしはこれからも、これまで父とともに目指してきたわたしのまま、紳士のようにふるまい、凛々しくありたいと思う。
けれど、だからと言って乙女としての自分を封じ込めて生きるのは、もう辞めだ。わたしは、どちらのわたしも切り捨てない。両方がわたしなのだから。
進学したらマンジュリカ女学院に入学したい。あれから数日後、わたしは両親にそう告げた。
母は一瞬ハッとした表情を浮かべた後、一人娘を見つめる優しい表情へと切り替わった。
一方の父は激しく狼狽え、そして激昂したが、わたしは頑として意思を変えなかった。その後、父にわたしの本心を必死で伝え、やがて和解に至るまでは険しい道のりであったが……ここで長々と説明すべき話ではない。よって、ひとまず割愛しても良いだろう。
◇
マンジュリカ女学院に入学してから早1年。
入学後に再会し、それから行動をともにするようになったマーガレットが、生徒会長に立候補するという。過去の出来事をひとつずつ思い返しながら、そんな話をマーガレット本人から聞かされていた。
わたしが何か別のことを考えていて、上の空で聞いていることに気がついたのだろう。マーガレットが半ば呆れながら、話題を変える。
「そういえばコスモス、貴女って昔出会ったときよりもずっと魅力的になったわよね。少し癪だけど、ますますかっこ良さに磨きがかかっているわ」
「ふふん、そうだろう?」
わたしの運命が変わったあの日から、心の中に大切にしまっている恋心。初めてわたしのことを可愛いといってくれた、年下の少女への気持ちを思い出す。
彼女の存在が、わたしを自由にした。それは、恋愛に対しても同じ。自分が恋に落ちた相手が同性の少女であったことは、何の障害にもならない、ほんの些細なことだ。
わたしには、何度も心に誓った願望がある。
いつか運命的な再会を果たしたら、恩返しとして今度はわたしが彼女を幸せにしてあげよう。そして精一杯、今のわたしを見てもらおう。
「はぁ……コスモス、わたくしの話を聞いているのかしら?」
ごめんごめんと謝りながら、わたしは屈託のない笑顔を浮かべた。
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