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百合ゲー主人公はガチな人でした
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お気づきかもしれませんが、本作の登場人物は花の名前がついています。
主人公のシランは「紫蘭」ですね。花言葉は、ご興味ある方だけお調べください。
ーーーーーーーーーーー
「なんですの? 急にわたくしの顔をまじまじと見つめて」
「あ、いや……なんでもない、よ?」
教室に着いてから始業までの十数分。ぼんやりと考え事をしていたら、キャメリアが気まずそうに訊いてくる。
彼女のことについて考えていたせいで、どうやら長らく視線を送ってしまっていたようだ。ボクのデフォであるジト目で見つめられていたら、そりゃ気になっちゃうよね。申し訳ない。
慌てて誤魔化そうとすると、隣にいるアイリスが口を挟んできた。
「まあ、キャメリアは美人だからなぁ。シランが見つめちゃう気持ちもわかるぜ」
「なっ……貴女たちこそ、お静かにしていれば可愛らしいですわよ!?」
「たしかにな、シランは本当にお人形みたいだぜ。中身はアレだけど」
やめてーー、照れちゃう。いやん。
さて、キャメリアを見つめて何を考えていたのかと言えば、この悪役令嬢の本質について、である。
彼女としばらく行動を共にしてきたことで、ボクはひとつ理解したことがある。キャメリアさん、ただの面倒見がいいお人好しお嬢様だ。間違いない。
そもそも客観的に考えれば、シランとアイリスという問題児を取り巻きにしている時点で、十分に察することができる。中性的な美しさと少年のような無邪気さが魅力的なアイリスだけであれば、まだギリギリ理解できる。でも、ボクみたいな不愛想でちんちくりんなやつを側に置いておくとか、ボクがキャメリアなら考えらない。
よく思い返せば、『フラワーエデン』の中でキャメリアが仕掛ける嫌がらせも、けっして悪意を感じさせるものではなかった気がする。
あれ? もしかして、キャメリアが主人公に絡んでいたのは、最初からただのお節介だったのでは?? 真面目なくせに不器用で、しかもツンデレという属性盛り盛りなこの悪役令嬢なら、あり得ない話ではないな。
「ひどいじゃない! わたしを起こしてくれないまま、先に登校しちゃうなんて。その可愛い声でシランちゃんが愛を囁いてくれなきゃ、わたしは気持ちよく起きられないのよ?」
突然息を荒くしながら声をかけてきたのは、ルームメイトのリリー。そう、彼女は『フラワーエデン』の主人公リリー = ミシュレである。であるはずなのだけど……
「リリーは、先週までボクより先に起きて……ボクの寝顔を観察してた、よね?」
「な、ななな何のことか全く分からないわ!?」
「それに、昨日珍しく寝坊してたから、起こそうとしてあげたのに……逆に布団に引きずり込んで、ボクのこと抱き枕にしたし」
「それは不可抗力というやつね。シランちゃんに眠そうなジト目で起こされたら、誰でもそうしちゃうって!」
昨日のトラウマを思い出し、ボクの目はより一層、死んだジト目になる。だってこの人、抱き枕にしながら舐め回してくるんだよ!?
ボクの表情を見て、お人好しお嬢様のキャメリアが前に出る。
「リリーさん? いくら寮で同室だからって、あまりシランさんを虐めないでくださるかしら」
「わたしはシランちゃんを愛でているだけです。大体、キャメリアさんこそ、わたしのシランちゃんを取り巻き扱いなんて、やめてほしいです」
目の前で二人の視線がぶつかり、火花が散る。というか、ボクはいつからリリーのものになったのだろうか……いや、なってないよ!?
これじゃ、どっちが悪役令嬢か分かったもんじゃない。主人公ってこんなんだけ?もっと皆に聖女の如く愛を振りまいていたような気がするんだけど。
「あまりいたずらが過ぎると、お父様に相談してシランさんの寮室を変えていただきますわよ……」
あ、キャメリアの今のセリフは悪役令嬢っぽい! 権力をちらつかせている辺りとか。
もっとも、根が真面目な彼女のことだから、よっぽどでないと実行には移さないんだろうけど。
でも、ボクの被害はもう十分によっぽどの範囲だと思うんだ。くすん。
◇
あの日、中等部の入学式を終えたボクは女子寮へ戻り、これから生活することになる寮室の扉を開けた。
他の女生徒たちは、多くが教室に残って女子トークを繰り広げていたので、一足先に寮室の様子を確認するつもりだったのだが……そこには、見覚えのある美少女が先客として佇んでいた。
全寮制のマンジュリカ女学院では、二人一組で寮室が用意され、ルームメイトとして3年間を共に生活することになる。だから、ボクの部屋にもルームメイトがいて当たり前。それは分かる。それは分かるけど、どうして『フラワーエデン』の主人公がここにいるんだ!?
混乱するボクの存在に気付いたリリーが、柔らかい笑顔で話しかけてくる。
「はじめまして。貴女がルームメイトの方なんですね、ふふ」
さすが数々のヒロインを攻略していく主人公、とんでもなく美少女。笑顔が眩しすぎる。
どうして彼女のルームメイトが攻略対象のヒロインではなく、ただの取り巻きキャラであるボクなのか。そんな疑問はもはやどうでもいいじゃないか。美少女と同じ部屋で生活できる幸せの前には、多少の違和感なんて気にするに値しない。
そんなことを思っていた時期もありました。はい。あの時にもう少し慎重になるべきでした。馬鹿野郎、ボク……
ーーーーーーーーーーー
シランと初対面時の百合ゲー主人公「はじめまして。貴女がルームメイトの方なんですね、ふふ(これって運命の出会いなんじゃない!? 超絶可愛いイチャイチャしたいぺろぺろしたいぃい)」
リリーさんがヤバすぎて、1話で好き勝手していたはずの主人公がまともに見えてきました……
騙されてはいけません、シランも十分ヤバいやつです。たぶん。
お気に入り登録やコメントなんかをいただけると大変喜びます。(図々しい)
並行して『TS美少女は双子の妹と幼馴染の勇者を溺愛したい ~甘やかすのは姉の特権なのです~』という作品も連載しておりますので、宜しければ併せてぜひ。
主人公のシランは「紫蘭」ですね。花言葉は、ご興味ある方だけお調べください。
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「なんですの? 急にわたくしの顔をまじまじと見つめて」
「あ、いや……なんでもない、よ?」
教室に着いてから始業までの十数分。ぼんやりと考え事をしていたら、キャメリアが気まずそうに訊いてくる。
彼女のことについて考えていたせいで、どうやら長らく視線を送ってしまっていたようだ。ボクのデフォであるジト目で見つめられていたら、そりゃ気になっちゃうよね。申し訳ない。
慌てて誤魔化そうとすると、隣にいるアイリスが口を挟んできた。
「まあ、キャメリアは美人だからなぁ。シランが見つめちゃう気持ちもわかるぜ」
「なっ……貴女たちこそ、お静かにしていれば可愛らしいですわよ!?」
「たしかにな、シランは本当にお人形みたいだぜ。中身はアレだけど」
やめてーー、照れちゃう。いやん。
さて、キャメリアを見つめて何を考えていたのかと言えば、この悪役令嬢の本質について、である。
彼女としばらく行動を共にしてきたことで、ボクはひとつ理解したことがある。キャメリアさん、ただの面倒見がいいお人好しお嬢様だ。間違いない。
そもそも客観的に考えれば、シランとアイリスという問題児を取り巻きにしている時点で、十分に察することができる。中性的な美しさと少年のような無邪気さが魅力的なアイリスだけであれば、まだギリギリ理解できる。でも、ボクみたいな不愛想でちんちくりんなやつを側に置いておくとか、ボクがキャメリアなら考えらない。
よく思い返せば、『フラワーエデン』の中でキャメリアが仕掛ける嫌がらせも、けっして悪意を感じさせるものではなかった気がする。
あれ? もしかして、キャメリアが主人公に絡んでいたのは、最初からただのお節介だったのでは?? 真面目なくせに不器用で、しかもツンデレという属性盛り盛りなこの悪役令嬢なら、あり得ない話ではないな。
「ひどいじゃない! わたしを起こしてくれないまま、先に登校しちゃうなんて。その可愛い声でシランちゃんが愛を囁いてくれなきゃ、わたしは気持ちよく起きられないのよ?」
突然息を荒くしながら声をかけてきたのは、ルームメイトのリリー。そう、彼女は『フラワーエデン』の主人公リリー = ミシュレである。であるはずなのだけど……
「リリーは、先週までボクより先に起きて……ボクの寝顔を観察してた、よね?」
「な、ななな何のことか全く分からないわ!?」
「それに、昨日珍しく寝坊してたから、起こそうとしてあげたのに……逆に布団に引きずり込んで、ボクのこと抱き枕にしたし」
「それは不可抗力というやつね。シランちゃんに眠そうなジト目で起こされたら、誰でもそうしちゃうって!」
昨日のトラウマを思い出し、ボクの目はより一層、死んだジト目になる。だってこの人、抱き枕にしながら舐め回してくるんだよ!?
ボクの表情を見て、お人好しお嬢様のキャメリアが前に出る。
「リリーさん? いくら寮で同室だからって、あまりシランさんを虐めないでくださるかしら」
「わたしはシランちゃんを愛でているだけです。大体、キャメリアさんこそ、わたしのシランちゃんを取り巻き扱いなんて、やめてほしいです」
目の前で二人の視線がぶつかり、火花が散る。というか、ボクはいつからリリーのものになったのだろうか……いや、なってないよ!?
これじゃ、どっちが悪役令嬢か分かったもんじゃない。主人公ってこんなんだけ?もっと皆に聖女の如く愛を振りまいていたような気がするんだけど。
「あまりいたずらが過ぎると、お父様に相談してシランさんの寮室を変えていただきますわよ……」
あ、キャメリアの今のセリフは悪役令嬢っぽい! 権力をちらつかせている辺りとか。
もっとも、根が真面目な彼女のことだから、よっぽどでないと実行には移さないんだろうけど。
でも、ボクの被害はもう十分によっぽどの範囲だと思うんだ。くすん。
◇
あの日、中等部の入学式を終えたボクは女子寮へ戻り、これから生活することになる寮室の扉を開けた。
他の女生徒たちは、多くが教室に残って女子トークを繰り広げていたので、一足先に寮室の様子を確認するつもりだったのだが……そこには、見覚えのある美少女が先客として佇んでいた。
全寮制のマンジュリカ女学院では、二人一組で寮室が用意され、ルームメイトとして3年間を共に生活することになる。だから、ボクの部屋にもルームメイトがいて当たり前。それは分かる。それは分かるけど、どうして『フラワーエデン』の主人公がここにいるんだ!?
混乱するボクの存在に気付いたリリーが、柔らかい笑顔で話しかけてくる。
「はじめまして。貴女がルームメイトの方なんですね、ふふ」
さすが数々のヒロインを攻略していく主人公、とんでもなく美少女。笑顔が眩しすぎる。
どうして彼女のルームメイトが攻略対象のヒロインではなく、ただの取り巻きキャラであるボクなのか。そんな疑問はもはやどうでもいいじゃないか。美少女と同じ部屋で生活できる幸せの前には、多少の違和感なんて気にするに値しない。
そんなことを思っていた時期もありました。はい。あの時にもう少し慎重になるべきでした。馬鹿野郎、ボク……
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シランと初対面時の百合ゲー主人公「はじめまして。貴女がルームメイトの方なんですね、ふふ(これって運命の出会いなんじゃない!? 超絶可愛いイチャイチャしたいぺろぺろしたいぃい)」
リリーさんがヤバすぎて、1話で好き勝手していたはずの主人公がまともに見えてきました……
騙されてはいけません、シランも十分ヤバいやつです。たぶん。
お気に入り登録やコメントなんかをいただけると大変喜びます。(図々しい)
並行して『TS美少女は双子の妹と幼馴染の勇者を溺愛したい ~甘やかすのは姉の特権なのです~』という作品も連載しておりますので、宜しければ併せてぜひ。
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