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第5章
反省と宥恕 8
しおりを挟む「……はい、これ飲んでください」
ふらつく体を支えてもらいながら、すぐ近くのパーキングに停めてあった白石さんの車の助手席に座らされ、天然水のペットボトルを差し出される。
「う、あの…白石さん」
「話は後でゆっくり聞くので、とりあえず水飲んでおとなしくしててください。これエチケット袋です。吐く時は言ってください、車はいくら汚しても構わないんで気にしないで」
ぽいぽいと手口拭きとエチケット袋と渡され、ブランケットをかけられる。手際がめちゃくちゃ良い。
「走らせてる間寝てても良いですよ、明日仕事は?」
「や…休みです」
「分かりました。とりあえず僕の家に向かおうと思いますが、ご自宅の方が良いですか?」
「あ、さすがに白石さんの家は悪…」
「今更悪いとかないんで、僕の家で大丈夫ですね。もう喋らなくて良いですよ」
それは…しばらく黙っとれ、ということ…?ていうか、ハナから決定権は俺になかったのでは。
エンジンがかかると、エンジン音に隠れて聞こえるか聞こえないかぐらいの長いため息がうっすらと聞こえた。
でも横顔は…怒ってない。
髪、少し濡れてる。もしかして風呂上がってから急いで来てくれた?
場所もざっくりとしか伝えてなかったのに、電話を切ってからあんなに早く迎えに来てくれた。
俺より年下なのに、初対面の…俺の仕事関係の相手に、臆すことなくあんなにしっかりとした(火花が散ってるような)受け答えもしていた。
今のは呆れたため息というよりかは、気を張っていた状態からやっと緊張が解けたような…力が抜けた、安堵の息が漏れたんじゃないだろうか。
…俺、本当に情けなさすぎるな。
白石さんに無理させてしまったよな。
渡されたペットボトルの蓋を開けて水を飲む。全身に沁み渡る…。
気持ち悪くはない、けど明日絶対二日酔いになる感じがする、この頭のぐらぐら加減…もうこの時点で分かる。
車を走らせる白石さんの横顔…また見ることができた。肩、背中、腰、白石さんの触れたところを反芻する。もう会えないかと思ってた。
「…あの、白石さん」
「緊急の要件ですか?そうでなければ控えてください、そのペットボトルは飲み切ってくださいね」
「………」
喋ってないでさっさと水飲めってことですね…
白石さんに対する申し訳なさとか、緊張感とか、後ろめたさとか、いろんな感情が渦巻いているが、また会えて嬉しいという自分勝手な気持ちが一番強いことに、俺はなんとなく気付いてしまっていた。
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