白と黒

上野蜜子

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第1章

出会いと始まり 8

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「すみません、すみません、本当に、いや…すみません」

「何を謝ることがあるんですって。湯船じゃなくて申し訳ないですが、体が冷えないうちに早くシャワーを浴びてしまってください」

「いや、すみません本当に…すみません…」

あの後、慌てて脱いだにも関わらず、スラックスにぺったりと自分の体液がこびりついてしまい…

今現在、ゴウンゴウンと音を立てる高そうなドラム式洗濯機の中でその汚れを落とされている(ついでにパンツとシャツと靴下まで)

「黒原さんは何も気にすることありませんし、それに、謝るのは僕の方じゃないですか」

「ええ?」

「酔いが残り、無力化された黒原さんを無理矢理…」

「無理矢理!?んなことされてないですが!?」

「ふふ、おあいこということにしておきましょう」

カーテン越しに白石さんの頭が揺れる。

きっと今もあのキツネのような顔をして笑っているのだろうか。

風呂場に入ると、自分の家のふた回りぐらい大きい、綺麗に磨かれたバスタブ、きちっと並んだ同じブランドのシャンプー、トリートメント、ヘアパック、ボディソープ…トリートメント!?ヘアパック!?!?

通りであんなにさらっさらなわけだ…

シャワーのノズルをひねり、温まるのを待つ。

ちらっと下を見ると…陰毛に絡みつく…体液…もとい、精液…

穴があったら入りたい、そんな気分。

10年間、いや、30年間…人前で勃ったことのないコイツが、まさか人の手で、いや、白石さんの手…いや、男の手で勃ち上がるとは。

どんな顔で風呂から出たら良いのか。一言目に何を言えばいいのか。すみません?ありがとうございます?違うな、いいお湯加減でした?トリートメント使われてるからそんなにサラサラなんですね、って違うな!

生まれて初めて人前で勃起したこと、射精したことの恥ずかしさ、更にはその相手が知り合って一週間の友人だったこと、更にはその友人が男だったことの過ち感。

頭の中で抱いたことのない感情がぐるぐる回り、思考がまとまらない。

湯気が出てるのに気付いて、頭からシャワーを浴びる。

今日が休日出勤だったこと、上司から叱責を受けたこと、とにかく文句が言いたかったことがどうでもよくなっていたことに、後から気が付いた。
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