白と黒

第１章

出会いと始まり 4

「黒原さん、先日ぶりですね。今日は土曜日出勤お疲れ様でした」

「白石さん…も、お疲れ様です、世間は休みだっていうのに、嫌になりますね、はは」

なるべく疲れ顔を見せないように笑って話す。わざとらしかったかな。

「僕はちょっと特別感があって好きですけどね。今日行く居酒屋で労働後のナマの美味しさを体感できるの、僕と黒原さんだけかもしれませんし」

先日のキツネのような顔でまたニコッと笑う。

白石さんは仕事中でもこのキツネのような笑顔で過ごしているのだろうか。大層モテるのではないだろうか。患者？から好意を寄せられたり？そういえばこのあいだの合コンで白石さんは女の子達と連絡先を交換したのだろうか。良い感じになった女の子はいるのか？くそ、羨ましいな…。聞きたいこと、気になることはあるが、まだ聞ける気がしない。

「じゃ、行きましょうか、オススメの所があるんで予約しておいたんです。お気に召すかは分かりませんが」

「あ、予約してくださったんですか、気を利かしてもらってすみません」

「いえ、僕が気に入ったところを黒原さんと共有したかっただけなので、お気になさらないで下さい。何度か行きましたが、お酒も食事も美味しくて」

「白石さんお墨付きなら安心だ、よろしくお願いします」

白石さんの横をついていく。

細いからか小柄に見えたが、身長は俺と同じくらい…170後半ぐらいか。

上から白衣を羽織るんだろうか、黒いカットソーが余計に細さを際立たせている気がする。

俺は骨太だからな…普段着でも白石さんのような服は着られそうにない。若い頃、こういったシュッとした服を一度は着てみたいとか思っていたが、30にもなるとさすがに諦めもついた。

周りから見たら、スーツのくたびれた男とこのモデルのような男、並んで歩いているのはどういう風に見られているんだろうか。