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第1章
出会いと始まり 1
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「はじめまして、白石浩太と申します」
「あ、どうもはじめまして、黒原三芳です」
初っ端から男同士の挨拶だが、これはこれから男女合わせて8人の合コンに向かうべく、男4人で集合場所のコーヒーショップ前で落ち合った際のやりとりだ。
4人のうち1人が急病で来れなくなり、穴埋めとして急遽呼ばれたのが幹事・紺野の昔からの友人だと言う、白石さんだった。
「すみませんね、なんか…急に呼び出されたみたいで」
「黒原さんが謝ることじゃないですよ、それに僕も何の予定もなく暇だったもので、良い休日が過ごせそうで逆に良かったです」
「やっぱり独り身となると休みの予定って言えば飲みに出るとか、家で過ごすしかないですもんね…って、白石さんも独り身…で良いんですよね?勝手に言っちゃったけど」
「はは、もちろんです、そうでなければこのような集まりに顔出しなんてできませんから」
紺野と赤井がまだ着かないもんだから、この初対面の男となんとか場を持たせないといけない。
参ったな…合コンに参加しておいてアレだけど、あまり関わったことのない人間と上手く会話を続けるのは苦手だ。
昔から人見知りだと言われてきた甲斐はある。上手いこと世間話のような話のネタが振れない。
「…黒原さんは、お仕事何をされてるんです?」
何を振ろうか迷っていると、白石さんの方から会話のボールを投げられる。助かった。
「あ、ええと、まあ普通の会社員です、どこにでもいるような…」
「営業さんですか?」
「あ、いや、総務の方です、名前はそれなりに聞こえるけどただの雑用ですね」
「雑用だなんて…総務の方がいらっしゃるから、会社が上手に回っていくんじゃないですか」
白石さんがニコッと笑う。
奥二重なのか一重なのか、切れ長の目が笑って細くなると、まるでイラストのキツネのような目元になる。
名前の通り肌の白い男だ。黒髪がしっとりとして見えるほどの。いや、実際にワックスか何かでしっとりしているのかもしれないが。地黒で地毛が茶髪混じりの自分とは見た目が正反対だなと思った。
見た目だけじゃない。丁寧な物腰、柔らかな仕草。上品…その一言がピッタリ似合う男。
よく見てみると、服装もカジュアルながらシャツにシワなんて一つもないし、黒いパンツにホコリ1つすら付いていない、清潔感の塊。
「いやぁ、ハハ…そう言ってもらえると励みになりますね」
ジロジロ見過ぎだか、と思い慌てて話を続ける。声が裏返ったか?ああ、この人見知り癖…本当に嫌になる。合コンでも、この男が一番人気だろうな。紺野も赤井も悪くないが、白石さんが一番女ウケしそうだ。
「あ、えと、白石さんは何のお仕事を…」
「お待たせー!待った?久しぶりだな!!」
話を振ったすぐぐらいに紺野と赤井が登場した。
「すまんね、幹事が2人より遅くて!ちょっと大きいのが長引いてよ!」
「紺野久しぶりだね、昔と全然変わってなくて安心したよ」
「浩太も変わってねえな!あ、黒原と赤井、コイツ白石浩太っつて、ずっと俺の近所に住んでたんだ、幼馴染みたいなもんでさ」
「あ、さっき少し話しして」
「幼馴染っつっても大学入ったら全然会わなくってさ~、まあ男同士だしこんなもんかっつって」
紺野は人の話を聞かない。高校からの付き合いだが、ずっと自分のペースで話し続けるもんだから好き嫌いが分かれるタイプだ。俺は話を振らなくても間が持つから、紺野といるのはラクだったし楽しかった。だから今でも交流が続いてるんだと思う。
赤井と白石さんもさらりと挨拶をして、4人で固まって予約してある居酒屋へと足を進める。
彼女いない歴10年…。長かった。今日こそ俺は新しい扉をくぐるんだ…!!
「あ、どうもはじめまして、黒原三芳です」
初っ端から男同士の挨拶だが、これはこれから男女合わせて8人の合コンに向かうべく、男4人で集合場所のコーヒーショップ前で落ち合った際のやりとりだ。
4人のうち1人が急病で来れなくなり、穴埋めとして急遽呼ばれたのが幹事・紺野の昔からの友人だと言う、白石さんだった。
「すみませんね、なんか…急に呼び出されたみたいで」
「黒原さんが謝ることじゃないですよ、それに僕も何の予定もなく暇だったもので、良い休日が過ごせそうで逆に良かったです」
「やっぱり独り身となると休みの予定って言えば飲みに出るとか、家で過ごすしかないですもんね…って、白石さんも独り身…で良いんですよね?勝手に言っちゃったけど」
「はは、もちろんです、そうでなければこのような集まりに顔出しなんてできませんから」
紺野と赤井がまだ着かないもんだから、この初対面の男となんとか場を持たせないといけない。
参ったな…合コンに参加しておいてアレだけど、あまり関わったことのない人間と上手く会話を続けるのは苦手だ。
昔から人見知りだと言われてきた甲斐はある。上手いこと世間話のような話のネタが振れない。
「…黒原さんは、お仕事何をされてるんです?」
何を振ろうか迷っていると、白石さんの方から会話のボールを投げられる。助かった。
「あ、ええと、まあ普通の会社員です、どこにでもいるような…」
「営業さんですか?」
「あ、いや、総務の方です、名前はそれなりに聞こえるけどただの雑用ですね」
「雑用だなんて…総務の方がいらっしゃるから、会社が上手に回っていくんじゃないですか」
白石さんがニコッと笑う。
奥二重なのか一重なのか、切れ長の目が笑って細くなると、まるでイラストのキツネのような目元になる。
名前の通り肌の白い男だ。黒髪がしっとりとして見えるほどの。いや、実際にワックスか何かでしっとりしているのかもしれないが。地黒で地毛が茶髪混じりの自分とは見た目が正反対だなと思った。
見た目だけじゃない。丁寧な物腰、柔らかな仕草。上品…その一言がピッタリ似合う男。
よく見てみると、服装もカジュアルながらシャツにシワなんて一つもないし、黒いパンツにホコリ1つすら付いていない、清潔感の塊。
「いやぁ、ハハ…そう言ってもらえると励みになりますね」
ジロジロ見過ぎだか、と思い慌てて話を続ける。声が裏返ったか?ああ、この人見知り癖…本当に嫌になる。合コンでも、この男が一番人気だろうな。紺野も赤井も悪くないが、白石さんが一番女ウケしそうだ。
「あ、えと、白石さんは何のお仕事を…」
「お待たせー!待った?久しぶりだな!!」
話を振ったすぐぐらいに紺野と赤井が登場した。
「すまんね、幹事が2人より遅くて!ちょっと大きいのが長引いてよ!」
「紺野久しぶりだね、昔と全然変わってなくて安心したよ」
「浩太も変わってねえな!あ、黒原と赤井、コイツ白石浩太っつて、ずっと俺の近所に住んでたんだ、幼馴染みたいなもんでさ」
「あ、さっき少し話しして」
「幼馴染っつっても大学入ったら全然会わなくってさ~、まあ男同士だしこんなもんかっつって」
紺野は人の話を聞かない。高校からの付き合いだが、ずっと自分のペースで話し続けるもんだから好き嫌いが分かれるタイプだ。俺は話を振らなくても間が持つから、紺野といるのはラクだったし楽しかった。だから今でも交流が続いてるんだと思う。
赤井と白石さんもさらりと挨拶をして、4人で固まって予約してある居酒屋へと足を進める。
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