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運命の人

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 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 当社 メンズコスメのアンバサダーが
 木村さんに決まった

 マネージャーに扮した須賀さんも
 ハリポタメガネのみの変装で
 初めての打ち合わせに参加した



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 その日の夜、ベランダにて


 …カラカラカラ


「お、来た来た!アミさんお疲れ様!」

「お疲れ様です」

「ねぇ…タメ語で話してよ」

「須賀さんが変態になるから嫌です!」

「アハハハ!
 だってアミさん…
 タメ語だと色気出るんだもん」

「あ~やっぱり変態だ~!」

「うおぉ~出たァ~!ヘヘッ♡」

「キモっ!」


 あのビンタの一件から
 気重な数日を送っていて

 最後にてつくんと会ってから
 何度かメッセージは来るものの
 "仕事が忙しい"とだけ返信していた


 この時間が唯一
 気を許す時間となっていて
 お互いに 事故扱いの"あの出来事"には
 一切触れず 弾む会話を楽しむ


じんのマネージャー…
 びっくりしたでしょ?アハハ…
 アンバサダーの依頼が来て
 会社名を聞いた時 もしかして アミさんが
 いるんじゃないかって思ったから
 打ち合わせに着いて行っちゃった…ハハッ」

「え~!わざわざ見に来たんですか~!」

「まぁ 俺と仁は普段から
 自分のスケジュールは自分で管理して
 お互いの予定も共有してるから
 マネージャーと言えば
 マネージャーみたいなもんだよね~」

「びっくりしましたよ!
 あんな簡単な変装で
 ホントに大丈夫なんですか?」

「バレたらバレたで いいのさ!」

「いや、絶対 ダメですよっ!!!!」

「……俺の事…心配してくれるの?」

「そ、そりゃ~
 覆面アーティスト…ですから!!!!」


 ムキになって言う事じゃないのに…

 "私は彼の素顔を知ってる"

 …特別な優越感に 
 勝手に浸っていたのかもしれない

 他の人には知られたくないっていう
 独占欲にも似た想い…


「・・・・・・」

「えっと~…あ!ネクタイ姿も
 なかなかでしたよ!」

「……かっこよかった?」

「えっ?!まぁ…そ、そうですねぇ…」


 ・・・いや・・・ダメだ、雰囲気おかしい!
 話、変えよう!



「そういえば 私に渡したい物があるって…」

「あ、会話が楽しすぎて 忘れてた!」


 急に黙る須賀さん…
 少し沈黙の時間が続いた


「あれ?お~い!須賀さん居ますか?」



 すると…


「……今…俺の部屋に来れる?」

「え?ベランダで 渡せないんですか?」

「うん、そうだね…」

「……物は何でしょうか?」

「いやいや、そんな警戒しないで
 軽い気持ちで…ね?」


 ん~どうしよう…
 まぁ…玄関先で受け取るだけだし…


「…わかりました、今 行きます」



 *・゚・*:.。.*.。.:


「何を くれるんだろう…」


 *・゚・*:.。.*.。.:


「喜んで もらえるかな…」


 *・゚・*:.。.*.。.:



 自室を出て念の為 鍵をかけ


 須賀邸の前…


 「う~~ん…インターホンは
 鳴らした方がいいよね?
 …ウロ(・ω・`*)))(((*´・ω・)ウロ」


 なんて…玄関ドアの前で悩んでいたら


 ガチャ…

「どうぞ(*´꒳`*)」 
 須賀さんがドアを開けてくれて

「し、失礼します…」
 玄関に 一歩足を踏み入れた


 。゜⋆。゜⋆。゜⋆。゜⋆


 そこからチラッと覗いてみる
 須賀さんちのリビング…

 ノリの良い曲が流れていて
 ベランダの窓から風が入って
 中途半端に閉められたレースのカーテンが
 そよそよと なびいていた
 月の光を取り込みつつ
 間接照明も ぼんやりともっていた


 "ほほぉ…こういう雰囲気で
 曲作りしてるのか…"


「…入らないの?」

「え!入らなきゃダメですか?」

「せっかくだから 入ってよ…」

「怪しいですねぇ…(;¬_¬)」

「あれ?何か期待してんの?
 この前のは事故…なんでしょ?( -∀-)フフッ」

「何 その言い方っ!!
 …期待?するわけないじゃん そんなの!」

「わ!タメ語だぁぁ♡(*´罒`*)イヒヒッ」

「だから!いちいち
 そういう反応しないでっ!(´^`*)」

「もう面倒だから
 敬語は いいじゃん(´▽`*)アハハ
 ほら、入って!」

 そう言って手招きをする須賀さん


「…じゃあ、お邪魔します」



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 部屋に入ると


「うわぁ!スゴーイ.。゚+.(・∀・)゚+.゚」

 見たことのない機材ばかり並んでいて
 気持ちが大いに高ぶる


 これらを駆使して
 1曲1曲 制作していくのかと思ったら
 なんだか感激でいっぱいになった


 キッチンから声がした
「…お茶で良い?」

「はい、ありがとうございます!(´▽`)」

「…俺って 凄い?」

「うん!凄いっ!(*´꒳`*)」

「褒められた!めっちゃ嬉しい(*´艸`*)」

 須賀さんが
 子どもみたいに笑った



「アミさん、これ…」

 テーブルに飲み物を置いて
 渡されたCD…


「これって…あのアイドルグループの?」

「そう、アミさんの"ため息"入りの…」

「いやいや、私じゃないでしょ(ノ∀`笑)」

「ここ、見て!」

 そこには曲にたずさわった人たちの
 名前がズラリと並んでいる


 須賀さんが指さした箇所
 ──" special thanks ☆ I am "──


「アイアム…?」

Iアイを小文字にして
 mの後ろに持っていくと?」

「うわぁ!!…アミだっΣ(゚艸゚〃)」

「そのまま名前入れたら
 迷惑かけちゃうかもしれないし
 "I am"なら 誰の事かわからないかなって…
 実はこれ…
 仁にも言ってないんだよねぇ~
 ふふふっ( *¯ ꒳¯*)」


 ちょっとしたドヤ顔にもドキドキする


「最初から入れなくていいのに
 私 何もしてないよ?」


 須賀さんは首を横に振った

「あの時はホントに困ってたんだ!
 アミさんのため息で
 ヒラメキが降りてきて助かったんだよ!
 …どうしても
 アミさんの名前も入れたくて
 勝手に芸名作っちゃったけど(´▽`*)アハハ!!!!
 CDは 出来上がったら
 直接…渡したいって思ってたんだ…」

「すごく 嬉しいよ!」

 CDに視線を落として
 何とも表現出来ない
 ワクワクするような喜びを噛み締めた


「・・・このボタン押してみて?」

 須賀さんが ある機材を指さした


「ここ?」


 キーボードを触ると
 ドラムの音が…

「わぁ!.。゚+.(・∀・)゚+.゚
 これでリズム取れちゃうの?」

「生バンドで音を撮ることもあるけど
 デモみたいに ざっくり仕上げる時は
 これでやっちゃったりするんだよ」


 機材の説明や、曲作りに対する想いを
 目をキラキラさせながら
 楽しそうに語ってくれる須賀さんに
 どんどん惹き込まれていく

 いや…多分、もう既に…


 "音が繋げてくれた縁"と言ったら
 おこがましいだろうか…


 でも これ以上は…


 相手は 有名で凄い人…

 踏み留まらないと!


 宙に浮いてる この気持ちを
 …絶対 認めてはいけない


「この前 聴いてくれた曲にも
 アミさんの独り言を
 反映させて頂きました!
 なので また
 "special thanks ☆ I am "って載せた!
 …っていう事後報告(ノ∀`)タハー」

「(´▽`*)アハハ!事後報告って!
 素人の言うことなんだから
 スルーしてくれていいのに…」

「素人じゃないよね?」

「吹部で打楽器担当だったぐらいで…」

「うおおぉ!充分プロだ!」

「口が上手いねぇ~!」

「次のCDも出来上がったら…
 聴いてくれる?」

「もちろん!」

「…じゃあ また俺の部屋で 聴いて?」


 そういうと須賀さんは
 正面から ふわっと優しく私を抱きしめた


「・・・やっぱり!怪しいと思ったぁ!」

「ふふ…期待してた?」

「…これも芸能人あるあるなんでしょ?
 部屋に誘って
 誰にでも こういうことするんだよね~」

「誰でもいいってわけじゃないよ…」

「また、上手いこと言って~!
 一番信用できないよ!
 芸能人は みんな そうなんだって( ´‎ࠔ`* )」


 抱きしめられたまま
 少しの沈黙…


 そして


「俺ね…アミさんのことが好き…
 … 一緒にいたいんだ」



 …あぁ その ワード


「はいはい!信じません…
 ほら、早く放して…っ」

 そう言ったら
 さっきより強く抱きしめられ

ゲンさんから聞いたよ…
 アミさんとさとしくんのお母さんのこと…」

「…弦さんって!いつの間に
 ジジイと どこまで仲良くなってるの?
 フフッ( ´‎ࠔ`* )
 どこまで話を聞いたか知らないけど
 ドン引きしたでしょ?
 あの人は、"母"よりも"女"なの…
 何度もオトコに捨てられて
 ボロボロになっても
 まだ男を追いかけてる…
 全然学習しないの…困ったもんよ」


 これ以上は 知られたくなかったけど
 オンナをあざむくものだと 信じてきた
 オトコから発せられる
 "好き"や"愛してる"の言葉たち

 その言葉を 素直に受け入れることを
 ずっと拒み続けてきた私には
 障害が有りすぎるから


 距離をとるなら、今のうち…
 突き放すなら、今…


 ── これ以上 入ってこないで… ──


「可哀想だなって同情した?
 私はね…好きとか 愛してるとか
 めんどくさくて…嫌なんだよね~
 そういう言葉を信じて
 騙されるのも、御免だし…」


 さきっちょにしか
 話してなかったこと
 雪崩のように 吐き出した


「私は、あのひとの娘だから…
 きっと同じを辿る…
 それだけは 絶対にイヤ!
 だから この前の修羅場もビンタも
 全然平気なの!
 オトコとの距離はね~
 セフレがちょうど良い…
 "愛"とか"恋"とか…
 私には 何の意味もないし
 聞くと虫唾が走る…
 "惚れた腫れた"も どうでもいい!」

「強がるなよっ!!!!」

「強がってないっ!!!無理なのっ!!!!」


「だったら俺と、
 そのを書き換えない?」

「え?」

「"芸能人あるある"とか言いながら
 本当は俺がアミさんを求めていることは
 わかってるんでしょ?」


 苦しいくらい抱きしめながら
 そういうことを言う?
 "事故"だと言った あのキスも
 …本当は 私


 ・・・・・・ 拒絶しなきゃ


 少しずつ 須賀さんの腕に温められると
 違う自分が現れてきそうで 怖い…
 苦しい…ツラくなる……


「どう考えても ありえないよっ!!!
 私は どこにでもいる一般人なの!!!!!
 須賀さんのような すごい人なら
 他に たくさんいるじゃないっ!!!!…
 女優さんとか、アイドルの子とか…!!!!」


「俺は…アミさんがいい……」

「無理だって言ってるでしょ!!!!
 もう 離してっ!!!!」


 暴れてみた…
 でも須賀さんは 離してくれない…


「無理かどうかは、俺が決める…」


 そういうと
 抱きしめていた腕を緩めて
 私を見下ろす

「俺たちがどうなるかなんて
 誰も口出しできないよ…」


 流されそうになる…

 須賀さんに惹かれてるって
 自覚させられる…


「簡単に言わないでよっ!!!!!…やめてっ!!!」


 にっこり笑いながら
 さらに 須賀さんの顔が近づく


「俺がアミさんを
 運命の人だと決めたら
 誰が止められると思う?」




 どうして踏み込んでくるの?


 お願いだから……


 もう……止まってよ……
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