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しおりを挟む「えっ……」
動揺した声が漏れた。何が起きているのか理解できなかった。
僕の周りの空気が急に重く感じられ、周囲の視線が刺すように痛くなってきた。近くの生徒たちがひそひそと話し始め、僕の方をちらちらと見ているのが感じられる。
「月井晴彦くんって、誰?」
「ほら、あの人だよ」
「友達なのかな」
「晴彦くん、玲央くんに呼ばれてるよ!」
気づけば、全校生徒の視線が一斉に僕に向けられていた。体育館の静寂が、かえってその重圧を増幅させている。玲央が僕の名前を呼んだだけで、こんなにも注目を集めるなんて。
僕はその場で動けなくなっていた。目の前で静かに微笑む玲央。僕の名前を呼んだその声が、まだ耳に残っている。
なぜ僕なんだ。何が起こっているんだ。心臓が激しく鼓動し、体が震えるのを感じながら、僕は呆然とその場に立ち尽くしていた。
体育館は静まり返っていた。玲央が僕の名前を呼んだ瞬間から、そこにいる全員が息を潜め、何も言わずに見守っている。
誰もが玲央と僕の間に入り込むことを恐れているかのように、沈黙が張り詰めていた。
僕の心臓は早鐘のように打っていた。何が起こっているのか理解できないまま、玲央の視線をただ受け止めていた。なぜ僕を――そんな疑問が頭をぐるぐると回り、周囲の静寂が余計にその混乱を強めていく。
玲央はそのまましばし、僕を見つめていて。彼の瞳が揺らぎもせず、僕だけに向けられている。体育館中が固唾を飲んで、次に何が起こるのかを待ち続けていた。
そして、玲央はゆっくりと口を開いた。
「……晴彦」
その声は、静かな体育館に響き渡るように、まっすぐに届いてきた。
彼の口から自分の名前が再び紡がれるのを聞いて、僕の体は一瞬強張った。
言葉が続く気配を感じ、僕の鼓動はさらに速くなっていく。
玲央の瞳が、何かを決意したように輝き、そしてその口元がゆっくりと動いた。
そして
「――好きだ」
玲央はハッキリと、僕を見たまま告げた。
世界が、止まった気がした。
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