4 / 21
4
しおりを挟む誰もが二度見するような美しい少女がいた。
彼女は、周囲の景色に溶け込むことなく、まるで異次元から現れたかのようにその場に立っている。長い髪が風になびき、繊細な顔立ちが、目の前の通りを照らす陽光を反射して輝いている。
その瞬間、僕は息を呑んだ。彼女がただ立っているだけで、周りの世界が一瞬、静止したかのような錯覚に陥った。どこか幻想的で、どこか非現実的な存在感。
でも何故か、女性というより……「男性」のような……?
いや、そんなことないか。
その美少女は、僕の目の前にいた数人の男子に向かって、きっぱりと声を上げていた。彼女の手首は、誰かの手に掴まれているらしく、彼女はその手を振り払おうとしているようだ。
しかし複数人の男たちでは相手が悪そうだった。一人の男の手が、ガッチリと彼女の手を掴んでいる。
「いいじゃん、ちょっとだけ話そうよ」
「別に何もしないよ」
「何度も言わせないでください。手を離してください」
その声は冷静さを保ちながらも、必死さが滲み出ていた。男子たちはその言葉を笑い飛ばしながらも、いっこうに手を放さない。
僕はただその場に立ちすくんで、どうすれば良いのか分からずに見守るしかなかった。誰も助けようとしないのか、通り過ぎる人は皆、目を合わせようとしない。僕もその気持は痛いほどわかる。怖いからだ。
その時――
その美少女は、僕の方に一瞬目を向けた。
困惑と焦りが入り混じった瞳が僕に交わる。その瞬間、僕の心臓が一瞬で跳ね上がった。
21
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説



【本編完結】小石の恋
キザキ ケイ
BL
やや無口な平凡な男子高校生の律紀は、ひょんなことから学校一の有名人、天道 至先輩と知り合う。
助けてもらったお礼を言って、それで終わりのはずだったのに。
なぜか先輩は律紀にしつこく絡んできて、連れ回されて、平凡な日常がどんどん侵食されていく。
果たして律紀は逃げ切ることができるのか。
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!

俺の親友のことが好きだったんじゃなかったのかよ
雨宮里玖
BL
《あらすじ》放課後、三倉は浅宮に呼び出された。浅宮は三倉の親友・有栖のことを訊ねてくる。三倉はまたこのパターンかとすぐに合点がいく。きっと浅宮も有栖のことが好きで、三倉から有栖の情報を聞き出そうとしているんだなと思い、浅宮の恋を応援すべく協力を申し出る。
浅宮は三倉に「協力して欲しい。だからデートの練習に付き合ってくれ」と言い——。
攻め:浅宮(16)
高校二年生。ビジュアル最強男。
どんな口実でもいいから三倉と一緒にいたいと思っている。
受け:三倉(16)
高校二年生。平凡。
自分じゃなくて俺の親友のことが好きなんだと勘違いしている。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる