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しおりを挟む朝の通学路。秋の風がほんの少し肌寒くて、僕は薄手のジャケットのポケットに手を突っ込んだまま、ぼんやりと歩いていた。
いつもと同じ道、代わり映えのしない風景。特に変わったこともない毎日だ。そして、いつもと同じ「一人」での通学。
頭の中では、今日もできるだけ目立たず、何事もなく過ごせることだけを祈っている。そんな時だった。
「すみません、ちょっと道をお聞きしてもいいですか?」
不意に背後から声がかかり、思わず立ち止まる。振り向くと、見たことのない年配の女性が僕の後ろに立っていた。
背が短く、困ったような顔をしていて。声の調子も優しく、怖がるような感じではなかった。本当にただ、道を聞きたいだけなのだろう。それなのに――
「……え?」
僕は緊張で声が詰まる。なぜか急に心臓が早く鼓動を打ち始め、頭の中が真っ白になった。道を聞かれているんだ、と理解しているのに、口がうまく動かない。
「えっと……その……ごめんなさい……」
絞り出すように言葉を紡いだけど、どもってしまってまともに答えられない。目の前の女性は、僕の様子に少し困ったような表情を浮かべた。
「ごめんなさいね、急に声をかけて。気にしないで。ありがとう」
そう言うと、彼女は軽く頭を下げて、別の人に道を訪ねた。聞かれた人は丁寧に道を教え、年配の女性は嬉しそうにお礼を言い去っていった。僕はそれをただ見送るしかできなかった。
結局、何も言えなかった。こんな風にうまく話せないのは、いつものことだ。
昔なら、もっと自然に人と話せたのに――。僕は自分の胸を締めつけるような息苦しさを感じながら、再び足を動かし始めた。
でも、胸の中には重たい石がずっと残っているようで、心が晴れることはなかった。
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