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【第百十一話】KAEDE少年団ライブ③

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会場が暗くなり、洋楽ロックの名曲の前奏が流れる。
他の客につられてムーちゃんたちも前の方に移動する。

袖からタミヤ店長が走ってきて、そのままの勢いでセンターマイクを蹴り倒す。
「こんな人数に歌うのにマイクなんかいるかよ!俺は俺の喉を鳴らして自分の声で、こっから鳴る自分の声だけでお前らにロックを聞かせてやっからな!」
タミヤ店長は両手で自分の首を絞めながら叫んでいる。

「別人やんか」
三人は唖然とする。
タミヤ店長は続ける。
「いいか、よく聞け。この世には2種類の人間しかいない」
黄色い歓声を上げる女性2人組。
「それはな!歌うときに裸になる人間とならない人間だ!」
一曲目の前奏が始まる。
タミヤ店長は服を脱ぎ、素っ裸になって歌い始めた。

KAEDE少年団の過激なパフォーマンスを三人はあっけにとられながら見ていた。
タミヤ店長は素っ裸で、何の五十音を発しているのか判別できない声でおそらく三曲歌ったあと、そのままの勢いで袖に下がっていった。
まばらなアンコールがあったが、タミヤ店長が再びステージに現れることはなかった。
「なんかすごいわ」とヨコイさんが言った。
「全然ちゃうわ、うん。全然ちゃう」
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