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新世界
真実の洞窟
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突然、王国の騎士達が来たと思ったら、騎士達は王国を出ようとしていたデレックさんを取り囲んだ。
「勇者デレック・ゾディアック! 王の暗殺を企てたことで貴様を捕縛する!」
騎士団のリーダーぽい人が言うと、デレックさんは慌ても取り乱しもせず、ただ冷静な顔で、
「僕がアウラ王の暗殺? なんの間違いか知らないけど、僕はそんな事やってないよ」
「とぼけるな! 貴様を見たという王の証言とフラーム様の証言があるのだ!」
「僕を見ただと? フッ、本当に僕がやったかどうかは拷問でも尋問でもして確かめるんだね。僕にはこの右目《デウス》があるから拷問だろうが効かないけどね?」
デレックさんはどこかカッコつけた様子で言うと、彼は大人しく騎士達に王国へ連行されて行った。
「とうとう捕まりましたね~」
「捕まっちゃたね」
「これで私達の冒険も終わりですか~、長い様で短かったですね」
「だね~、超短かったね~」
レイクさんとヘレナさんは何故か、何かを悟ったような顔で言う。そして、レイクさんは誰かに向けてこう言った。
「この物語は勇者デレック殿が捕まってしまったのでここで終わります。私達はゆっくり余生を楽しんでいきますので。皆さんさようならー」
「バイバイー!」
~完~。
「2人共、一体全体何を言ってるのですか?」
私がレイクさん達にそうツッコミを入れると、レイクさんは溜息をつきながら、
「デレック殿を追いますか」
「そうだね~」
と何故か冷静な面持ちで言った。
「あの、どうしてそうも冷静なのですか?」
「ああいうのは冒険者時代の時にも日常茶飯事でありましたからね~。一年前とかは、王様の態度にムカついたデレック殿が王様に唾を吐いて処刑されかけましたし、半年前なんて、酒に酔った勢いでお国のお偉いさんにお酒をかけて処刑されかけました。まぁとにかくデレック殿が処刑されかけるなんて日常茶飯事でしたよ」
「よくそれで勇者になれましたね……」
※
「出してよ~! みんな助けて~! 僕はそんな事してないんだよ~! ウエェェン、拷問やだよ~! 尋問もやだよ~! 痛いのやだよ~!」
と、デレックさんは子供のような態度で泣きながら、王国の地下にある牢屋の鉄格子を両手で掴み言う。
本当にこんな人がよく勇者になれましたね……。
「デレック殿、騎士から事情を聞いたところ、昨日の夜にデレック殿と思われる者がアウラ王を襲撃したようで、それでアウラ王がデレック殿を明日処刑すると計画しているようです」
「やだよ~、死にたくないよ~‼︎」
「デレック殿安心してください、私達は昨日デレック殿と寝る時まで一緒にいました。ですので必ずその事実を持ってアウラ王を説得します。なので安心してください」
「う、うん、安心する(シュン)」
「それじゃあ、デレックのアリバイを持ってくる準備を超早くするよ!」
「「ですね」」
※
私達がデレックさんとの会話を終え、王国の地下から出てくると、見覚えのある人物が2人現れた。
「フラーム殿とルーイッチ殿、なんの御用ですか?」
「……今回の件について話をしに来ました」
フラームさんはいつもとは違った真剣な顔で言うと、私達を近場にある喫茶店へ案内し、そこで話し合うことになった。
喫茶店に入ると、私とレイクさんはフラームさんと直接喋る為に窓際に座り、一方のヘレナさんは「お菓子を食べたい」という理由で、ルーイッチさんと一緒に別の席でお菓子を食べていた。
「フラーム殿はどう思っていますか? 今回の騒動について……本当にデレック殿がやったと思いますか?」
レイクさんがそう聞くと、フラームさんは何かを察したような顔で、皿の上に置かれたお茶をすすりながら、
「いや今回の騒動はデレック《彼》が起こしたとは思ってない。恐らくだが、この騒動は魔族が起こした騒動だとみている」
「やはり魔族ですか……ではどうしてフラーム殿は『デレックがやった』と言ったのですか? 魔族がやったと思うなら尚更」
レイクさんが困惑した様子でその理由を問うと、フラームさんは口角を上げこう言った。
「作戦だよ。恐らくだが魔族の狙いはこの国を混乱させ国を終わらせること、今魔族にとっては順調に進んでいると思っている。だからその相手の計画にわざと乗ってやるのさ、そして、順調に思わせさせた魔族を消す」
「なるほど、そういう事ですか。ですが、その方法ではデレック殿が処刑されてしまいます、そこはどう考えているのですか?」
「それは魔族を消す時に解放させるさ、アウラ王とは親しい仲でね、証言さえ持ってくれば疑いが晴れるさ」
フラームさんはそう言って、またお茶を飲む。
「フラーム殿、その証言はあるのですか?」
「今は無いが?」
「「……は?」」
フラームさんのその言葉に、思わず口を揃えてしまう私達。そして、レイクさんが何かを言おうとした時、フラームさんが口を開けた。
「確かに“今は”無い。だからこれから見つけに行くのさ」
フラームさんはお茶を飲みきり、立ち上がった。それを感じとったルーイッチさんも立ち上がった。
「『見つけに行く』? どこに行くのですか?」
「真実の洞窟に行くのさ」
洞窟……。
「真実の洞窟の中にある水晶は、この世にあるあらゆる証拠を映し出す水晶と言われている。その水晶を取ってアウラ王に見せれば信じてもらえるだろう」
それを聞いていたレイクさんは、何故か顎に手を当て難しい顔をしていた。それを見た私は、
「真実の洞窟とはなんですか?」
と聞いた。すると、レイクさんは難しい顔のまま説明してくれた。
「真実の洞窟の最奥には、確かにフラーム殿が言っていた真実を映し出す水晶があると言われています。ですが、その洞窟に行った冒険者達は誰一人として帰ってこないと言われています。実際にその洞窟に行った冒険者達は本当に帰ってきていない……恐らくですがあの洞窟の中には強大な何かが居ると思われます」
「安心したまえ、レイク君。私が居る、スキル無しで七大勇者達が戦えば、剣術だけならある者を除けば私が1番強い」
フラームさんはそう言って、ルーイッチさんを連れて、最後に私たちにこう言い残した。
「今日の夜にこの国の近くにある真実の洞窟に私とルーイッチは向かう。デレックを助けたいと思うなら君達も来るといい。集合場所は王国の外門だ」
と言い残し、彼は去っていった。
「……どうしますか? リガド殿」
「行くに決まってます。デレック《彼》は大切な仲間ですから」
「ですよね」
「わふぁしも超いふぅー!」
私とレイクさんが話していると、お菓子を口に含んだ状態でヘレナさんもそう言った。
「その前に私はトイレに行ってきます。先に帰っててください。お金は私が払っておきます」
レイクさんは言って、席を立ちトイレへ向かっていった。そして、レイクさんの後を追うように誰かがトイレに向かっていった。
「……」
※
そして、あれから数時間が経ち、空は夜になった。
宿の一室で行く準備をし終えた私は、そのまま宿を出て、王国の外門へ向かう。——その時だった、後ろからヘレナさんとレイクさんの声が聞こえ、私達は集合した。
「さ、行きますよリガド」
——ッ……。
「……そうですね。レイクさん、ヘレナさんも行きましょうか」
そうして集合した私たちはフラームさんの居るであろう、外門へ向かっていった。
※
「やはり来ましたか」
「早く夜が明ける前に真実の洞窟に行きましょう」
私はフラームさんにそう言うと、フラームさんはフッと笑い、
「そうですね、覚悟は出来ているようでなによりだ」
フラームさんが真実の洞窟がある場所に案内していると、その洞窟はすぐに見つかった。それは昨日の昼に飛龍達の巣があった場所のすぐ傍にあった。
洞窟を見つけた私達は躊躇なくそのまま洞窟へ入っていった。
※
洞窟に入った瞬間だった、洞窟の中に居た気味の悪いコウモリのような魔物達が襲ってくる。
——が、その魔物達を私達が視認した時には、フラームさんが凄まじい剣さばきと光のような速さでその魔物達を真っ二つに斬り殺していた。
「つ、強い……」
「フッ、カッコよくて強い……私は無敵だ‼︎」
「はいはいフラームが超強いのは分かったから、早く最奥に行くよー」
「ハッハッハ、そうですねヘレナ」
ヘレナさんの言葉に笑いながら言うレイクさん。
「……」
やっぱりおかしい……。
そんな怪しいという感情を持ちながら、私達は洞窟にいた魔物達を倒しながら、洞窟の最奥の直前まで来ていた。
そして、洞窟の最奥直前に来ると、やけに広い空間がある場所に出た。
「ここは一体……レイクさん、少しここを魔法で明るくしてもらえませんかね?」
「は、はい」
私がそう彼にお願いすると、レイクさんは当然のように火魔法で辺りを明るくした。
「やっぱり……貴方はレイクさんじゃありませんね」
「「「「ッ?」」」」
「……はい? 何を言ってるのですか? 私はレイクですよ?」
「確かに魔力も体も顔も貴方はレイクさんだ。でも貴方はさっきから人の名前を呼ぶ時、呼び捨てで読んでいる。あのレイクさんにとってありえないことです。そして、何よりの証拠が土魔法と錬金術しか使えないレイクさんがさも当然のように火魔法を使っている……貴方は一体誰ですか?」
私がそう言うと、レイクさんは不気味に笑い出した。そして、レイクさんと思われる奴は正体を表す。
「よく俺の擬態を見破ったな、小娘」
「「「「——ッ!」」」」
そう言って、私たちの前に現れたのは、頭に異形な二つの角を生やした男だった。
「貴様か……デレック・ゾディアックに化けていたのは」
フラームさんが言うと、男は不気味に右口角を上げ、
「そうさ、俺があのデレック・ゾディアックに化け、アウラ王を襲ったのさ」
「え!? ならレイクはどこにいんの!?」
ヘレナさんはこの状況に戸惑っていると、私はレイクさんがどこにいるのかを言った。
「レイクさんに化けたのは、私たちがあの喫茶店を出る時にレイクさんがトイレに行った時ですよね?」
「そうさ、確かに俺はレイクとやらがトイレに行った時、奴に睡眠魔法をかけ、奴に化けた。……そうだ、ついでに貴様らに私達の目的を言ってやろう。俺は魔王直属配下のヴット、あともう一人の魔王様の直属配下がアウラ王国を破滅させるために動いている。このまま行けば勇者デレック・ゾディアックは処刑され、貴様らをこの洞窟に閉じ込めればアウラ王国は破滅し、我々の目的は完全に遂行される」
「そんなことさせるわけないでしょ——ッ!?」
そう言った私がいざヴットに魔法を打とうとした時、突如として私たちの背後に巨大な何かが現れた。
咄嗟に後ろに振り向くと、そこに居たのは、赤く光る眼光、暗黒のように異質な黒い鱗を纏い、巨大な欠けた翼を持ち異形の角を生やした黒竜が現れた。
「やはりいたかこの洞窟の家主、記録にも残されていない竜が!」
フラームさんは鞘から剣を抜きそう言った。私たちがすぐに臨戦態勢に入った時、ヴットは不敵に笑い、火魔法の爆発で私達が通ってきた道を塞いでしまった。
「じゃあな、貴様らが出る頃には王国は終わっているだろう。あとは頑張れ頑張れ」
ヴットはそう言い残し、転移魔法でその場を去った。
「あの野郎逃げやがった! この状況超超超マズくない?!」
「まずはこの竜を討伐することを心がけましょう!」
そう言って戦闘態勢に入ると、黒竜は鼓膜が大きく揺れる程の大きな咆哮をし、だだっ広い洞窟の空間で暴れ始める。
——最初に行動を起こしたのは、フラームさんだった。彼は目にも留まらぬ速さで黒竜の間合いに入り込む。
そして、竜の鱗に向けて剣を振り下ろす!
フラームさんが繰り出した剣撃により、背中から大量に出血する黒竜。
——だが、黒竜の傷は一瞬で修復された。
それを見た私は黒竜に向けて、完全無詠唱でインフェルノ・フレアを撃ちまくる。
一方のヘレナさんは最高位精霊を3体呼び出し、精霊達に命令し、黒竜を攻撃させる。
一方的な攻撃だと思えた——が、まるで私とヘレナさんの攻撃が効いている様に見えなかった。
まさか、魔法耐性があるのか——ッ!?
「皆さん! 今すぐ私の元へ集合してください! 黒竜が何かしようとしています!」
「「「——ッ!」」」
攻撃を受け続ける黒竜の背中が青く輝き出す。何かを察知した私は、皆の前に出て高密度の魔力を使ったバリアを張る。
——次の瞬間、黒竜は口から青い巨大な熱線を私たちに向けて吐き出す!
その威力は凄まじいモノで、洞窟の壁を溶かし、私が張っていたバリアを貫通する勢いのある威力だった。
どんどんとひび割れていくバリア。
——その時、フラームさんが私の前に出た。
「感謝する、勇敢な魔法使いよ。あとは私に任せろ」
フラームさんはそう言うと、剣に轟々と黒く燃える黒炎を纏わせ、剣を両手で上へ掲げ、何かを溜め始める。
「5秒だけ耐えられるか?」
「——ッ! はい!」
黒竜のブレスの威力がどんどんと上がる。バリアに限界が来る瞬間だった。
「よし! 行くぞォ!」
フラームさんは言って、剣を横に大振りに凪る。
「黒炤撃《こくしょうげき》‼︎」
フラームさんの放った巨大な斬撃は、私のバリアを横真っ二つに斬る。
そして、黒竜のブレスを黒炎で相殺しながら斬り、竜の本体全体にフラームさんの斬撃が通る!
そして、黒竜はフラームさんの手によって、縦真っ二つに斬り捨てられた。
「ちょ、超強ッ‼︎」
「勇者デレック・ゾディアック! 王の暗殺を企てたことで貴様を捕縛する!」
騎士団のリーダーぽい人が言うと、デレックさんは慌ても取り乱しもせず、ただ冷静な顔で、
「僕がアウラ王の暗殺? なんの間違いか知らないけど、僕はそんな事やってないよ」
「とぼけるな! 貴様を見たという王の証言とフラーム様の証言があるのだ!」
「僕を見ただと? フッ、本当に僕がやったかどうかは拷問でも尋問でもして確かめるんだね。僕にはこの右目《デウス》があるから拷問だろうが効かないけどね?」
デレックさんはどこかカッコつけた様子で言うと、彼は大人しく騎士達に王国へ連行されて行った。
「とうとう捕まりましたね~」
「捕まっちゃたね」
「これで私達の冒険も終わりですか~、長い様で短かったですね」
「だね~、超短かったね~」
レイクさんとヘレナさんは何故か、何かを悟ったような顔で言う。そして、レイクさんは誰かに向けてこう言った。
「この物語は勇者デレック殿が捕まってしまったのでここで終わります。私達はゆっくり余生を楽しんでいきますので。皆さんさようならー」
「バイバイー!」
~完~。
「2人共、一体全体何を言ってるのですか?」
私がレイクさん達にそうツッコミを入れると、レイクさんは溜息をつきながら、
「デレック殿を追いますか」
「そうだね~」
と何故か冷静な面持ちで言った。
「あの、どうしてそうも冷静なのですか?」
「ああいうのは冒険者時代の時にも日常茶飯事でありましたからね~。一年前とかは、王様の態度にムカついたデレック殿が王様に唾を吐いて処刑されかけましたし、半年前なんて、酒に酔った勢いでお国のお偉いさんにお酒をかけて処刑されかけました。まぁとにかくデレック殿が処刑されかけるなんて日常茶飯事でしたよ」
「よくそれで勇者になれましたね……」
※
「出してよ~! みんな助けて~! 僕はそんな事してないんだよ~! ウエェェン、拷問やだよ~! 尋問もやだよ~! 痛いのやだよ~!」
と、デレックさんは子供のような態度で泣きながら、王国の地下にある牢屋の鉄格子を両手で掴み言う。
本当にこんな人がよく勇者になれましたね……。
「デレック殿、騎士から事情を聞いたところ、昨日の夜にデレック殿と思われる者がアウラ王を襲撃したようで、それでアウラ王がデレック殿を明日処刑すると計画しているようです」
「やだよ~、死にたくないよ~‼︎」
「デレック殿安心してください、私達は昨日デレック殿と寝る時まで一緒にいました。ですので必ずその事実を持ってアウラ王を説得します。なので安心してください」
「う、うん、安心する(シュン)」
「それじゃあ、デレックのアリバイを持ってくる準備を超早くするよ!」
「「ですね」」
※
私達がデレックさんとの会話を終え、王国の地下から出てくると、見覚えのある人物が2人現れた。
「フラーム殿とルーイッチ殿、なんの御用ですか?」
「……今回の件について話をしに来ました」
フラームさんはいつもとは違った真剣な顔で言うと、私達を近場にある喫茶店へ案内し、そこで話し合うことになった。
喫茶店に入ると、私とレイクさんはフラームさんと直接喋る為に窓際に座り、一方のヘレナさんは「お菓子を食べたい」という理由で、ルーイッチさんと一緒に別の席でお菓子を食べていた。
「フラーム殿はどう思っていますか? 今回の騒動について……本当にデレック殿がやったと思いますか?」
レイクさんがそう聞くと、フラームさんは何かを察したような顔で、皿の上に置かれたお茶をすすりながら、
「いや今回の騒動はデレック《彼》が起こしたとは思ってない。恐らくだが、この騒動は魔族が起こした騒動だとみている」
「やはり魔族ですか……ではどうしてフラーム殿は『デレックがやった』と言ったのですか? 魔族がやったと思うなら尚更」
レイクさんが困惑した様子でその理由を問うと、フラームさんは口角を上げこう言った。
「作戦だよ。恐らくだが魔族の狙いはこの国を混乱させ国を終わらせること、今魔族にとっては順調に進んでいると思っている。だからその相手の計画にわざと乗ってやるのさ、そして、順調に思わせさせた魔族を消す」
「なるほど、そういう事ですか。ですが、その方法ではデレック殿が処刑されてしまいます、そこはどう考えているのですか?」
「それは魔族を消す時に解放させるさ、アウラ王とは親しい仲でね、証言さえ持ってくれば疑いが晴れるさ」
フラームさんはそう言って、またお茶を飲む。
「フラーム殿、その証言はあるのですか?」
「今は無いが?」
「「……は?」」
フラームさんのその言葉に、思わず口を揃えてしまう私達。そして、レイクさんが何かを言おうとした時、フラームさんが口を開けた。
「確かに“今は”無い。だからこれから見つけに行くのさ」
フラームさんはお茶を飲みきり、立ち上がった。それを感じとったルーイッチさんも立ち上がった。
「『見つけに行く』? どこに行くのですか?」
「真実の洞窟に行くのさ」
洞窟……。
「真実の洞窟の中にある水晶は、この世にあるあらゆる証拠を映し出す水晶と言われている。その水晶を取ってアウラ王に見せれば信じてもらえるだろう」
それを聞いていたレイクさんは、何故か顎に手を当て難しい顔をしていた。それを見た私は、
「真実の洞窟とはなんですか?」
と聞いた。すると、レイクさんは難しい顔のまま説明してくれた。
「真実の洞窟の最奥には、確かにフラーム殿が言っていた真実を映し出す水晶があると言われています。ですが、その洞窟に行った冒険者達は誰一人として帰ってこないと言われています。実際にその洞窟に行った冒険者達は本当に帰ってきていない……恐らくですがあの洞窟の中には強大な何かが居ると思われます」
「安心したまえ、レイク君。私が居る、スキル無しで七大勇者達が戦えば、剣術だけならある者を除けば私が1番強い」
フラームさんはそう言って、ルーイッチさんを連れて、最後に私たちにこう言い残した。
「今日の夜にこの国の近くにある真実の洞窟に私とルーイッチは向かう。デレックを助けたいと思うなら君達も来るといい。集合場所は王国の外門だ」
と言い残し、彼は去っていった。
「……どうしますか? リガド殿」
「行くに決まってます。デレック《彼》は大切な仲間ですから」
「ですよね」
「わふぁしも超いふぅー!」
私とレイクさんが話していると、お菓子を口に含んだ状態でヘレナさんもそう言った。
「その前に私はトイレに行ってきます。先に帰っててください。お金は私が払っておきます」
レイクさんは言って、席を立ちトイレへ向かっていった。そして、レイクさんの後を追うように誰かがトイレに向かっていった。
「……」
※
そして、あれから数時間が経ち、空は夜になった。
宿の一室で行く準備をし終えた私は、そのまま宿を出て、王国の外門へ向かう。——その時だった、後ろからヘレナさんとレイクさんの声が聞こえ、私達は集合した。
「さ、行きますよリガド」
——ッ……。
「……そうですね。レイクさん、ヘレナさんも行きましょうか」
そうして集合した私たちはフラームさんの居るであろう、外門へ向かっていった。
※
「やはり来ましたか」
「早く夜が明ける前に真実の洞窟に行きましょう」
私はフラームさんにそう言うと、フラームさんはフッと笑い、
「そうですね、覚悟は出来ているようでなによりだ」
フラームさんが真実の洞窟がある場所に案内していると、その洞窟はすぐに見つかった。それは昨日の昼に飛龍達の巣があった場所のすぐ傍にあった。
洞窟を見つけた私達は躊躇なくそのまま洞窟へ入っていった。
※
洞窟に入った瞬間だった、洞窟の中に居た気味の悪いコウモリのような魔物達が襲ってくる。
——が、その魔物達を私達が視認した時には、フラームさんが凄まじい剣さばきと光のような速さでその魔物達を真っ二つに斬り殺していた。
「つ、強い……」
「フッ、カッコよくて強い……私は無敵だ‼︎」
「はいはいフラームが超強いのは分かったから、早く最奥に行くよー」
「ハッハッハ、そうですねヘレナ」
ヘレナさんの言葉に笑いながら言うレイクさん。
「……」
やっぱりおかしい……。
そんな怪しいという感情を持ちながら、私達は洞窟にいた魔物達を倒しながら、洞窟の最奥の直前まで来ていた。
そして、洞窟の最奥直前に来ると、やけに広い空間がある場所に出た。
「ここは一体……レイクさん、少しここを魔法で明るくしてもらえませんかね?」
「は、はい」
私がそう彼にお願いすると、レイクさんは当然のように火魔法で辺りを明るくした。
「やっぱり……貴方はレイクさんじゃありませんね」
「「「「ッ?」」」」
「……はい? 何を言ってるのですか? 私はレイクですよ?」
「確かに魔力も体も顔も貴方はレイクさんだ。でも貴方はさっきから人の名前を呼ぶ時、呼び捨てで読んでいる。あのレイクさんにとってありえないことです。そして、何よりの証拠が土魔法と錬金術しか使えないレイクさんがさも当然のように火魔法を使っている……貴方は一体誰ですか?」
私がそう言うと、レイクさんは不気味に笑い出した。そして、レイクさんと思われる奴は正体を表す。
「よく俺の擬態を見破ったな、小娘」
「「「「——ッ!」」」」
そう言って、私たちの前に現れたのは、頭に異形な二つの角を生やした男だった。
「貴様か……デレック・ゾディアックに化けていたのは」
フラームさんが言うと、男は不気味に右口角を上げ、
「そうさ、俺があのデレック・ゾディアックに化け、アウラ王を襲ったのさ」
「え!? ならレイクはどこにいんの!?」
ヘレナさんはこの状況に戸惑っていると、私はレイクさんがどこにいるのかを言った。
「レイクさんに化けたのは、私たちがあの喫茶店を出る時にレイクさんがトイレに行った時ですよね?」
「そうさ、確かに俺はレイクとやらがトイレに行った時、奴に睡眠魔法をかけ、奴に化けた。……そうだ、ついでに貴様らに私達の目的を言ってやろう。俺は魔王直属配下のヴット、あともう一人の魔王様の直属配下がアウラ王国を破滅させるために動いている。このまま行けば勇者デレック・ゾディアックは処刑され、貴様らをこの洞窟に閉じ込めればアウラ王国は破滅し、我々の目的は完全に遂行される」
「そんなことさせるわけないでしょ——ッ!?」
そう言った私がいざヴットに魔法を打とうとした時、突如として私たちの背後に巨大な何かが現れた。
咄嗟に後ろに振り向くと、そこに居たのは、赤く光る眼光、暗黒のように異質な黒い鱗を纏い、巨大な欠けた翼を持ち異形の角を生やした黒竜が現れた。
「やはりいたかこの洞窟の家主、記録にも残されていない竜が!」
フラームさんは鞘から剣を抜きそう言った。私たちがすぐに臨戦態勢に入った時、ヴットは不敵に笑い、火魔法の爆発で私達が通ってきた道を塞いでしまった。
「じゃあな、貴様らが出る頃には王国は終わっているだろう。あとは頑張れ頑張れ」
ヴットはそう言い残し、転移魔法でその場を去った。
「あの野郎逃げやがった! この状況超超超マズくない?!」
「まずはこの竜を討伐することを心がけましょう!」
そう言って戦闘態勢に入ると、黒竜は鼓膜が大きく揺れる程の大きな咆哮をし、だだっ広い洞窟の空間で暴れ始める。
——最初に行動を起こしたのは、フラームさんだった。彼は目にも留まらぬ速さで黒竜の間合いに入り込む。
そして、竜の鱗に向けて剣を振り下ろす!
フラームさんが繰り出した剣撃により、背中から大量に出血する黒竜。
——だが、黒竜の傷は一瞬で修復された。
それを見た私は黒竜に向けて、完全無詠唱でインフェルノ・フレアを撃ちまくる。
一方のヘレナさんは最高位精霊を3体呼び出し、精霊達に命令し、黒竜を攻撃させる。
一方的な攻撃だと思えた——が、まるで私とヘレナさんの攻撃が効いている様に見えなかった。
まさか、魔法耐性があるのか——ッ!?
「皆さん! 今すぐ私の元へ集合してください! 黒竜が何かしようとしています!」
「「「——ッ!」」」
攻撃を受け続ける黒竜の背中が青く輝き出す。何かを察知した私は、皆の前に出て高密度の魔力を使ったバリアを張る。
——次の瞬間、黒竜は口から青い巨大な熱線を私たちに向けて吐き出す!
その威力は凄まじいモノで、洞窟の壁を溶かし、私が張っていたバリアを貫通する勢いのある威力だった。
どんどんとひび割れていくバリア。
——その時、フラームさんが私の前に出た。
「感謝する、勇敢な魔法使いよ。あとは私に任せろ」
フラームさんはそう言うと、剣に轟々と黒く燃える黒炎を纏わせ、剣を両手で上へ掲げ、何かを溜め始める。
「5秒だけ耐えられるか?」
「——ッ! はい!」
黒竜のブレスの威力がどんどんと上がる。バリアに限界が来る瞬間だった。
「よし! 行くぞォ!」
フラームさんは言って、剣を横に大振りに凪る。
「黒炤撃《こくしょうげき》‼︎」
フラームさんの放った巨大な斬撃は、私のバリアを横真っ二つに斬る。
そして、黒竜のブレスを黒炎で相殺しながら斬り、竜の本体全体にフラームさんの斬撃が通る!
そして、黒竜はフラームさんの手によって、縦真っ二つに斬り捨てられた。
「ちょ、超強ッ‼︎」
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人々の希望の象徴として、表舞台を歩む勇者の旅路。その陰に、一組の剣士と神官の姿が見え隠れしていたことは、あまり知られていない。
これは二人の少女が、勇者の旅を裏側で支えながら、自身の居場所を見つける物語。
・1章には勇者は出てきません。
・本編の視点は基本的にアレニエかリュイス。その他のキャラ視点の場合は幕間になります。
・短い場面転換は―――― 長い場面転換は*** 視点切替は◆◇◆◇◆ で区切っています。
・小説家になろう、カクヨム、ハーメルンにも掲載しています。
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※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
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