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encounter
second encounter
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「いらっしゃいま…せ……」
開いたドアに笑顔を向けるリクだが、そこに立っていた見覚えのある人物に段々と笑顔と言葉を失っていく。
その人物も予想していなかったようで、困ったように視線を巡らせると、おもむろに頭を下げて立ち去ってしまう。
「あっ!ちょっと!」
慌てて追いかけて店の外に飛び出すと、まだそう遠くないところにその後ろ姿はあった。
「まっ「私、ストーカーじゃないです!」」
その手を掴んだリクの声を遮るように叫ばれた言葉にリクは面食らったようにきょとんとする。
「あはは!そんなこと思ってないって!」
思わず大笑いしながら否定すると、その小さな手を引いて踵を返す。
「えーっと…普通に喫茶店きただけでしょ?せっかくだからコーヒー飲んでってよ」
こんなことを言いたかった訳では無いのに…と自分の口下手さを呪うリクであったが、大人しくついてきた人物にほっとしていたのは事実である。
「愛梨ちゃん…だっけ?ようこそ」
もちろん名前を忘れた訳では無い。
一度しか会ったことのない自分に名前を覚えられていたら怖がるかもしれないという配慮(もといひよった結果)である。
店の扉を開けて中へと促す。
「マスター、新規1名カウンターでいいですか?」
マスターと呼ばれた女性は大人の色香を漂わせており、高級クラブのママだと言われても疑わないような綺麗な人物であった。
「どうぞー。ねぇ、もしかしてあの子…」
「あ、はい…お願いだから変なこと言わないで下さいよ?」
数日前のリクの失態は既に周知のものとなっていた。
香織が面白おかしくバラしたのである。
「注文は決まりました?」
一通りクギを刺した後に高揚する気持ちを落ち着かせるように息をついてからカウンター席に座る愛梨に話しかける。
「えっと…あまりコーヒー詳しくなくて…甘いのが好きなんですがオススメありますか?」
甘いのが好きとか…可愛い…///
見た目通りの好みを伝える愛梨に思わずニヤけてしまう口元を隠しながら咳払いをすると不自然にならないようにリクは愛梨の隣に立った。
「物理的に甘いのが良ければこれ。これはチョコレートみたいな香りがして甘く感じる。うちはケーキも美味しいから、好みとはちょっと逸れるけどブレンドとケーキのセットもオススメ」
一緒にメニューを覗き込み、説明しながらメニューを指さしていくリクの鼓動は、隣にいる愛梨に聞こえてしまわないか心配になるほど高鳴る。
「じゃあ…せっかくなのでブレンドとケーキのセットにします」
そう言って笑った愛梨の笑顔にリクは完全に堕とされてしまったのだった。
「マスター…俺もうダメかも…心臓もたない……」
すました顔でカウンターに戻るも厨房にいたマスターの前で崩れるようにしゃがみこむリクに、マスターはカラカラと笑った。
「そんなにリクの好みなの?まぁリクは見かけによらずヘタレだからね。はい、持ってって」
リクをからかいながらも手は止めないマスターがブレンドとケーキを準備するまでに数分もかからなかった。
追い出されるように厨房から出たリクは再び普段のクールな表情に戻っていた。
「お待たせいたしました。本日のブレンドとケーキでございます。」
緊張からかいつも以上に固い口調になるリクに厨房から出てきたマスターは思わず笑ってしまっている。
羞恥心に耐えながらカウンターに戻ったリクの耳は僅かに赤く染まるが、表情はクールなまま。
それがまたマスターの笑いの琴線に触れて息も絶え絶えに厨房に戻っていく姿を横目で見ながら溜息を吐くリクが、連絡先を聞き忘れたことに気づいたのは夜になってからだった。
開いたドアに笑顔を向けるリクだが、そこに立っていた見覚えのある人物に段々と笑顔と言葉を失っていく。
その人物も予想していなかったようで、困ったように視線を巡らせると、おもむろに頭を下げて立ち去ってしまう。
「あっ!ちょっと!」
慌てて追いかけて店の外に飛び出すと、まだそう遠くないところにその後ろ姿はあった。
「まっ「私、ストーカーじゃないです!」」
その手を掴んだリクの声を遮るように叫ばれた言葉にリクは面食らったようにきょとんとする。
「あはは!そんなこと思ってないって!」
思わず大笑いしながら否定すると、その小さな手を引いて踵を返す。
「えーっと…普通に喫茶店きただけでしょ?せっかくだからコーヒー飲んでってよ」
こんなことを言いたかった訳では無いのに…と自分の口下手さを呪うリクであったが、大人しくついてきた人物にほっとしていたのは事実である。
「愛梨ちゃん…だっけ?ようこそ」
もちろん名前を忘れた訳では無い。
一度しか会ったことのない自分に名前を覚えられていたら怖がるかもしれないという配慮(もといひよった結果)である。
店の扉を開けて中へと促す。
「マスター、新規1名カウンターでいいですか?」
マスターと呼ばれた女性は大人の色香を漂わせており、高級クラブのママだと言われても疑わないような綺麗な人物であった。
「どうぞー。ねぇ、もしかしてあの子…」
「あ、はい…お願いだから変なこと言わないで下さいよ?」
数日前のリクの失態は既に周知のものとなっていた。
香織が面白おかしくバラしたのである。
「注文は決まりました?」
一通りクギを刺した後に高揚する気持ちを落ち着かせるように息をついてからカウンター席に座る愛梨に話しかける。
「えっと…あまりコーヒー詳しくなくて…甘いのが好きなんですがオススメありますか?」
甘いのが好きとか…可愛い…///
見た目通りの好みを伝える愛梨に思わずニヤけてしまう口元を隠しながら咳払いをすると不自然にならないようにリクは愛梨の隣に立った。
「物理的に甘いのが良ければこれ。これはチョコレートみたいな香りがして甘く感じる。うちはケーキも美味しいから、好みとはちょっと逸れるけどブレンドとケーキのセットもオススメ」
一緒にメニューを覗き込み、説明しながらメニューを指さしていくリクの鼓動は、隣にいる愛梨に聞こえてしまわないか心配になるほど高鳴る。
「じゃあ…せっかくなのでブレンドとケーキのセットにします」
そう言って笑った愛梨の笑顔にリクは完全に堕とされてしまったのだった。
「マスター…俺もうダメかも…心臓もたない……」
すました顔でカウンターに戻るも厨房にいたマスターの前で崩れるようにしゃがみこむリクに、マスターはカラカラと笑った。
「そんなにリクの好みなの?まぁリクは見かけによらずヘタレだからね。はい、持ってって」
リクをからかいながらも手は止めないマスターがブレンドとケーキを準備するまでに数分もかからなかった。
追い出されるように厨房から出たリクは再び普段のクールな表情に戻っていた。
「お待たせいたしました。本日のブレンドとケーキでございます。」
緊張からかいつも以上に固い口調になるリクに厨房から出てきたマスターは思わず笑ってしまっている。
羞恥心に耐えながらカウンターに戻ったリクの耳は僅かに赤く染まるが、表情はクールなまま。
それがまたマスターの笑いの琴線に触れて息も絶え絶えに厨房に戻っていく姿を横目で見ながら溜息を吐くリクが、連絡先を聞き忘れたことに気づいたのは夜になってからだった。
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