上 下
65 / 69

戦地管区と戦略管区

しおりを挟む
命令書
我々同盟諸国は6つの戦略管区と9つの戦地管区を設定し、効率的な統治と競争の元の大いなる発展を目指し、相互の協同をもってその強固な連帯を促進する。

各戦略管区と戦略管区は以下の通り設定する。

1、スカンディナヴィア戦略管区
2、中央ドイツ戦略管区
3、バルカン戦略管区
4、イタリア及び北アフリカ戦略管区
5、イベリア戦略管区
6、小アジア戦略管区

1、フィンランド戦地管区
2、ポーランド戦地管区
3、ルーマニア戦地管区
4、対ポルトガル戦地管区
5、北西アフリカ戦地管区
6、北アフリカ戦地管区
7、コーカサス戦地管区
8、中東戦地管区
9、大西洋及びイギリス海峡戦地管区

また、大規模な目標として、環地中海線の整備を直近の目標として行動を開始する。

ロンメル及びペーターについては小アジア戦略管区をトルコと共に運営し、早急なエネルギー資源の確保を目標に行動せよ。

期限は1年である。


あとは特に重要な記載は無さそうだ。命令書を丁寧に整え、ロンメルに返す。

「詳細はないんですね。方法や過程は任せる。ただし結果を示すこと。そういうことでしょうか」

「その認識で間違いないだろう」

「私がトルコに振られたのは、そういうことでしょうかね。初めからわかっていたのでしょうか」

「そこまでじゃない…はずだ。まぁ、上手いこと適任がいたと言うにはできすぎているようにも思ってしまうことも分かる」

過去にトルコで発生したエルジンジャン自信を契機にトルコソビエト戦争は停戦された。その停戦期間があと半年で切れる。とはいえ今のトルコとの戦争は、ソビエトにとって非常に面倒な戦争になる。

フィンランド~ポーランド、ルーマニアまでの長大な敵同盟国との国境は、す全てを十全に守ることはあまり現実的では無い。

今のところ、こちらから攻める計画がない以上、これ以上の抑止力は無いだろう。
攻めてこないとは言えないことに、変わりは無いが……。

発電所からは大量の煙が上がっている。産業革命初期のイギリスを示した絵を彷彿とさせる。

トルコがドイツとの同盟をするにあたって失ったものは、良質な石炭と石油だ。ドイツで捕まったユダヤ人や捕虜がトルコの鉱山に送り込まれている。

残ったトルコのエネルギー資源は低質な褐炭くらいしかない。煙を多くだし、残る灰も多い。手間と公害が大きいものの、得られるエネルギー量は少ない。

国土の安全を守るために、資源を売ったのだ。それが正しい判断であったのか、そうじゃないかは将来の歴史家か思想家が好き勝手に判断するだろう。危害想定を過小想定し、実害を過大に評価して。

彼らは時に虚を含めるが、その多くは事実を話す。ただ少なくとも、現実では無い。

物思いに耽っていると、ちょっとだけ洒落たカフェがある。無意識にロンメルの半歩後ろをついて行き、そのまま入る。

オーナーらしき人物しかいない店で、奥の角に腰を下ろす。

「参謀本部が持っているショップの一つだ。軍の設備を使えば問題ないが、多少ラフな話し合いがしたいなら利用することをおすすめする。お金もかからないからな」

頼んでもいない珈琲が2つ机に置かれる。

「マスター、軽食を2つ作ってくれ。出来れば同じものじゃない方がいい」
「わかった」

メモも取らずに、オーナーは離れてゆく。確かにこれはいいかもしれない。ドイツ語で話せるのは良い。

しばらくすると、オーナーが軽食を運んでくる。串焼きと薄い生地に野菜と肉がくるまれたものだ。

確かに同じでは無いが、あまりにも系統が似すぎていると思うのは、私の感性ゆえだろうか…。

ロンメルが串焼きの皿をとる。ペーターはドネルをとった。

そして、食べ終わるまでにロンメルは机に一枚の地図を広げた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蒼雷の艦隊

和蘭芹わこ
歴史・時代
第五回歴史時代小説大賞に応募しています。 よろしければ、お気に入り登録と投票是非宜しくお願いします。 一九四二年、三月二日。 スラバヤ沖海戦中に、英国の軍兵四二二人が、駆逐艦『雷』によって救助され、その命を助けられた。 雷艦長、その名は「工藤俊作」。 身長一八八センチの大柄な身体……ではなく、その姿は一三○センチにも満たない身体であった。 これ程までに小さな身体で、一体どういう風に指示を送ったのか。 これは、史実とは少し違う、そんな小さな艦長の物語。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

異世界災派 ~1514億4000万円を失った自衛隊、海外に災害派遣す~

ス々月帶爲
ファンタジー
元号が令和となり一年。自衛隊に数々の災難が、襲い掛かっていた。 対戦闘機訓練の為、東北沖を飛行していた航空自衛隊のF-35A戦闘機が何の前触れもなく消失。そのF-35Aを捜索していた海上自衛隊護衛艦のありあけも、同じく捜索活動を行っていた、いずも型護衛艦2番艦かがの目の前で消えた。約一週間後、厄災は東北沖だけにとどまらなかった事を知らされた。陸上自衛隊の車両を積載しアメリカ合衆国に向かっていたC-2が津軽海峡上空で消失したのだ。 これまでの損失を計ると、1514億4000万円。過去に類をみない、恐ろしい損害を負った防衛省・自衛隊。 防衛省は、対策本部を設置し陸上自衛隊の東部方面隊、陸上総隊より選抜された部隊で混成団を編成。 損失を取り返すため、何より一緒に消えてしまった自衛官を見つけ出す為、混成団を災害派遣する決定を下したのだった。 派遣を任されたのは、陸上自衛隊のプロフェッショナル集団、陸上総隊の隷下に入る中央即応連隊。彼等は、国際平和協力活動等に尽力する為、先遣部隊等として主力部隊到着迄活動基盤を準備する事等を主任務とし、日々訓練に励んでいる。 其の第一中隊長を任されているのは、暗い過去を持つ新渡戸愛桜。彼女は、この派遣に於て、指揮官としての特殊な苦悩を味い、高みを目指す。 海上自衛隊版、出しました →https://ncode.syosetu.com/n3744fn/ ※作中で、F-35A ライトニングⅡが墜落したことを示唆する表現がございます。ですが、実際に墜落した時より前に書かれた表現ということをご理解いただければ幸いです。捜索が打ち切りとなったことにつきまして、本心から残念に思います。搭乗員の方、戦闘機にご冥福をお祈り申し上げます。 「小説家になろう」に於ても投稿させて頂いております。 →https://ncode.syosetu.com/n3570fj/ 「カクヨム」に於ても投稿させて頂いております。 →https://kakuyomu.jp/works/1177354054889229369

信忠 ~“奇妙”と呼ばれた男~

佐倉伸哉
歴史・時代
 その男は、幼名を“奇妙丸”という。人の名前につけるような単語ではないが、名付けた父親が父親だけに仕方がないと思われた。  父親の名前は、織田信長。その男の名は――織田信忠。  稀代の英邁を父に持ち、その父から『天下の儀も御与奪なさるべき旨』と認められた。しかし、彼は父と同じ日に命を落としてしまう。  明智勢が本能寺に殺到し、信忠は京から脱出する事も可能だった。それなのに、どうして彼はそれを選ばなかったのか? その決断の裏には、彼の辿って来た道が関係していた――。  ◇この作品は『小説家になろう(https://ncode.syosetu.com/n9394ie/)』『カクヨム(https://kakuyomu.jp/works/16818093085367901420)』でも同時掲載しています◇

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜

華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日  この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。  札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。  渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。  この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。  一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。  そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。 この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。 この作品はフィクションです。 実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。

異世界大日本帝国

暇人先生
ファンタジー
1959年1939年から始まった第二次世界大戦に勝利し大日本帝国は今ではナチス並ぶ超大国になりアジア、南アメリカ、北アメリカ大陸、ユーラシア大陸のほとんどを占領している、しかも技術も最先端で1948年には帝国主義を改めて国民が生活しやすいように民主化している、ある日、日本海の中心に巨大な霧が発生した、漁船や客船などが行方不明になった、そして霧の中は……

鋼鉄の咆哮は北限の焦土に響く -旭川の戦い1947―

中七七三
歴史・時代
1947年11月ーー 北海道に配備された4式中戦車の高初速75ミリ砲が咆哮した。 500馬力に迫る空冷ジーゼルエンジンが唸りを上げ、30トンを超える鋼の怪物を疾駆させていた。 目指すは、ソビエトに支配された旭川ーー そして、撃破され、戦車豪にはまった敵戦車のT-34の鹵獲。 断末魔の大日本帝国は本土決戦、決号作戦を発動した。 広島に向かったB-29「エノラゲイ」は広島上空で撃墜された。 日本軍が電波諜報解析により、不振な動きをするB-29情報を掴んでいたこと。 そして、原爆開発情報が幸運にも結びつき、全力迎撃を行った結果だった。 アメリカ大統領ハリー・S・トルーマンは、日本本土への原爆投下作戦の実施を断念。 大日本帝国、本土進攻作戦を決断する。 同時に、日ソ中立条約を破ったソビエトは、強大な軍を北の大地に突き立てた。 北海道侵攻作戦ーー ソビエト軍の北海道侵攻は留萌、旭川、帯広を結ぶラインまで進んでいた。 そして、札幌侵攻を目指すソビエト軍に対し、旭川奪還の作戦を発動する大日本帝国陸軍。 北海道の住民は函館への避難し、本土に向かっていたが、その進捗は良くはなかった。 本土と北海道を結ぶ津軽海峡はすでに米軍の機雷封鎖により航行が困難な海域となっていた。 いやーー 今の大日本帝国に航行が困難でない海域など存在しなかった。 多くの艦艇を失った大日本帝国海軍はそれでも、避難民救出のための艦艇を北海道に派遣する。 ソビエトに支配された旭川への反撃による、札幌防衛ーー それは時間かせひにすぎないものであったかもしれない。 しかし、焦土の戦場で兵士たちはその意味を問うこともなく戦う。 「この歴史が幻想であったとしても、この世界で俺たちは戦い、死ぬんだよ―ー」 ありえたかもしれない太平洋戦争「本土決戦」を扱った作品です。 雪風工廠(プラモ練習中)様 「旭川の戦い1947」よりインスピレーションを得まして書いた作品です。 https://twitter.com/Yukikaze_1939_/status/989083719716757504

処理中です...