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ドイツ第三帝国 バラトン湖南部

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 翌朝ペーターはヘルマンが起こしに来るまで目が覚めることが無かった。「よく眠れたみたいだな。この分だと心配なんて不要そうだな」と、寝起きがてらに、からかわれる。「俺を誰だと思っている」と軽く返し、「確かにな」返事と共にコーヒーを差し出したヘルマンから、受け取り一口含む。苦めなコーヒーのカフェインが目を冴えさせる。
 部屋に運ばれた朝食を摂りながら、部隊全体の状況報告を確認する。先日の戦闘で少なからず死者は発生しているが部隊全体としての被害は軽微で無視できる状態であった。補充も完了している。しかし、問題な部分も少なからずあった。

 それはペーター達の位置している場所は敵地に既に侵入しており、補給を届けるためには車両に頼るほかない点であった。弾薬も燃料も備蓄は暫く持つ量を今は持っているがどこかで確保せざるを得なくなっている。この問題は戦闘開始前にペーターが補給を要請していなかったのが大きな理由であった。

 ペーターは部隊全体の補給を管理している士官のフェーラを呼んだ。まもなく彼女はペーターの前に現れた。

「今後の補給はどのように推移すると考えてる?」

「現在の我々の備蓄では最良でこの戦争が終息するまでは持つでしょう。但しそれは弾薬に限った話です。燃料は首都目前にして全て停止することになるでしょう」

「なるほど、ならばどこかで補給せねばならないわけだ」

「ええ、その通りです」

「君は戦車の整備士としてもうであると聞いた。それを見込んで1つ聞きたいことがある」

「なんでしょう」

「他国の燃料でも我々の戦車や車両は十分に動かすことは可能か?」

「ええ、何ら支障なく動かすことが可能です。私のバッチに掛けて」

「情報感謝する。退室してくれ」

「ペーター師団長、1つよろしいでしょうか?」

「なんだ?」

「私を責めないのですか?」

この発言後に、当たりは静寂に包まれた。ペーターはフェーラの言っていることが全く理解できなかった。彼女が何故自分が彼女を責めると考えていたのか心当たりが全くなかったのだ。彼女がこの沈黙をどのように受け取ったかは全く分からないが、彼女は次のように話を進めた。

「本国からの補給も本来私が担わなくてはならない領域です。今回は私の不祥事で仕事を増やしてしまい申し訳ありませんでした」

 この彼女の発言で全て合点がいったペーター。彼女は自分の仕事を出来ていないために私に呼ばれたと考えているワケだった。そうなってくると、いらないお世話をしたのはもしかすると自分かも知れないと思い始めてしまう。しかし、このまま曖昧にしてしまってはもったいない。しっかりとした規則を設けるべきだとペーター判断した。

「謝らないでくれ。私も師団長を抜擢されてからほとんど日が経っていないから、師団全体をどのように運用することが適切なのかがまだ判然としていないんだ。まだナニも実害が出る前に、今回の件は言い契機になったと私は考えている。今日以降この師団の全ての補給に関する全てを君に任せても構わないだろうか?必要があれば必要なだけ手を貸すことを約束しよう」

「その任を拝命いたします。これより本国に補給に関する打診を行います。後に結果のみを報告します」

「よろしく頼む。あと、これから一時間後に作戦会議を行う。それに出席すること」

「かしこまりました。ではこれで失礼します」

 彼女はそう言って部屋を出て行った。「旨いこと話がまとまって良かったな」と、ペーターの座る後ろのカーテンからヘルマンが現れそう言う。「本当に…」と返す。

「それで?俺の一番の関心事は燃料の確保だよな。本国からの補給が届くまでここで待っておくのでは駄目なのか?」

「これには一種の命令が与えられているんだよ」

「ほう?して、その命令とは?」

「一週間後にバラトン湖を越えた地点でロンメル将軍の指揮する部隊と合流しなくてはならないんだ。だから悠長に補給物資を待っているわけにはいけないんだ」

「動機は理解した。ならどうやって、燃料を手に入れる?」

「それは簡単な理屈だよ。自軍に無いのならば敵軍から奪えば良いだけの話しさ」

 それから、ペーターは自信の構想をヘルマンに聞かせた。それは実に興味深いモノで、作戦会議でも同じ内容が話され各隊からの反応も上々であった。その日の白昼満を持してペーター師団は街を発ち、次の攻略地点を目指して前進を開始した。
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