上 下
4 / 20
序章

3話

しおりを挟む
 ドワーフ戦士団と王国軍が先頭に入って早々に、戦場は地獄と化していた。ゴブリン戦士団はほとんど統率力がなく、すぐ逃げ出したが、ドワーフたちは彼らの先進的な技術で作られたかたい鎧を身に着け大小のハンマーと盾を持ち、王国軍兵士の剣や頭を砕きながら戦線を押し上げていった。一方王国兵士はその勢いに押され、若干押し戻されながらもどうにか粘り続けた、ある者たちを待つために。この時先頭に立って戦っていたのは少年兵混成の大隊だ、しかしドワーフたちは背が低くともこちらよりもパワーがある。170センチある長身の青年を120センチにも満たないドワーフが大槌で体を叩き、吹き飛ばすくらいに力差があった。
 混成大隊はほかの師団の盾になりながら徐々にその数を削られていった。特に損耗が多いのは少年兵であることは言うまでもない、ドワーフとの圧倒的な力量さに次々に押しつぶされ、残っていた部隊員の半分を失った。
「どうするんだ! このままじゃ全滅だぞ!!」
 誰かがそう叫ぶ、しかしその叫びはすぐに断末魔に代わる。少年兵達はこの作戦の理由を知らされていないので徐々に統制が崩れてゆく。だが混成師団の正規兵達は、
「持ちこたえろ! 何としても耐えきるんだ!!」
 口々に‘’耐えろ‘’と言ってドワーフを切り倒すというよりは攻撃をいなしながら消耗させるように立ちまわっていた。ユナとレイは少年兵達の統制が崩れている中でも果敢にドワーフ戦士団に立ち向かった。レイの盾もドワーフに散々殴られいくつもへこみや傷ができている。しかし、長身の青年のように叩き飛ばされることはなく、攻撃を確実に跳ね返した。ユナは弾かれて体制の崩れたドワーフに攻撃を仕掛けるが、その厚く堅い鎧に阻まれ有効的な攻撃を出せずにいた。
「ユナ、下がって! これ以上は危険すぎるよ!」
 レイは攻撃をはねのけながら後ろのユナに大声で伝え、自身は守りの姿勢を解かないようにしつつジリジリと下がり始める。ユナもそれを理解してはいるが、周りの状況からそれは難しいと考えて言葉を返す、
「そんなこと言ったって引き返せないじゃない! どうしろってのよ!」
 言い争っても仕方はないがお互いの主張はどちらも正しくあるのでどっちつかずの結論になってしまった、そうこうしているうちに攻撃を受けすぎたレイの盾に亀裂がはいる。‘’まずい!!‘’彼がそう思った時、戦場に王国軍の指揮笛が鳴り響く。次に聞こえてきたのは馬のかけてくる音、現れたのは王国軍魔導騎兵隊の大隊だった。混成大隊とドワーフ師団の横に素早く周り込むと、‘’貫通‘’の属性を付与した魔法撃を直接叩き込んだ。ドワーフ戦士団は防御陣形を組んだが、鎧を貫通されて目に見えて戦力が減少した。
「行ける、行けるぞ!」
 王国軍の兵士全体と少年兵の中に戦意が再び沸き上がる。それとは真逆にドワーフたちは突然の出来事に統制が乱れ、混成大隊の後ろに控えていた正規師団が待ちかねたとばかりに突撃を開始し、戦場の血の匂いはさらに濃くなっていった。

 戦場から少し離れたところ、木の陰に一匹のゴブリン弓兵がいた。胸のあたりを切り裂かれ、瀕死の重傷を負っていた。彼は憎悪のこもった目で戦場を見る、おぼつかない足で立ち上がり死んだ仲間の矢筒から残った矢を1本取り出し、ボロボロの弓を限界まで引き絞った。その限界まで絞られた矢を放った弓の弦は音を立ててちぎれ、同時にゴブリンの命も切れるように失われた。しかしその矢は確実な殺意がこめられ、恐ろしい速度で戦場へ落ちていった。その意識外の一撃は誰の視界にとらえられることなく、

  レイの鎧、装甲と装甲の間……間をすり抜け、首へと突き刺さった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

竜焔の騎士

時雨青葉
ファンタジー
―――竜血剣《焔乱舞》。それは、ドラゴンと人間にかつてあった絆の証…… これは、人間とドラゴンの二種族が栄える世界で起こった一つの物語――― 田舎町の孤児院で暮らすキリハはある日、しゃべるぬいぐるみのフールと出会う。 会うなり目を輝かせたフールが取り出したのは―――サイコロ? マイペースな彼についていけないキリハだったが、彼との出会いがキリハの人生を大きく変える。 「フールに、選ばれたのでしょう?」 突然訪ねてきた彼女が告げた言葉の意味とは――!? この世にたった一つの剣を手にした少年が、ドラゴンにも人間にも体当たりで向き合っていく波瀾万丈ストーリー! 天然無自覚の最強剣士が、今ここに爆誕します!!

【R18】異世界魔剣士のハーレム冒険譚~病弱青年は転生し、極上の冒険と性活を目指す~

泰雅
ファンタジー
病弱ひ弱な青年「青峰レオ」は、その悲惨な人生を女神に同情され、異世界に転生することに。 女神曰く、異世界で人生をしっかり楽しめということらしいが、何か裏がある予感も。 そんなことはお構いなしに才覚溢れる冒険者となり、女の子とお近づきになりまくる状況に。 冒険もエロも楽しみたい人向け、大人の異世界転生冒険活劇始まります。 ・【♡(お相手の名前)】はとりあえずエロイことしています。悪しからず。 ・【☆】は挿絵があります。AI生成なので細部などの再現は甘いですが、キャラクターのイメージをお楽しみください。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・思想・名称などとは一切関係ありません。 ※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません ※この物語のえちちなシーンがある登場人物は全員18歳以上の設定です。

異世界転移は定員オーバーらしいです

家具屋ふふみに
ファンタジー
ある日、転校した学校で自己紹介を行い、席に着こうとしたら突如光に飲まれ目を閉じた。 そして目を開けるとそこは白いような灰色のような空間で…土下座した人らしき物がいて…? どうやら神様が定員を間違えたせいで元の世界に戻れず、かと言って転移先にもそのままではいけないらしく……? 帰れないのなら、こっちで自由に生きてやる! 地球では容姿で色々あって虐められてたけど、こっちなら虐められることもない!…はず! え?他の召喚組?……まぁ大丈夫でしょ! そんなこんなで少女?は健気に自由に異世界を生きる! ………でもさぁ。『龍』はないでしょうよ… ほのぼの書いていきますので、ゆっくり目の更新になると思います。長い目で見ていただけると嬉しいです。 小説家になろう様でも投稿しています。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...