1 / 5
クズ皇太子に復讐を
しおりを挟む
「アゴル帝国の皇太子ときたら、想像をはるかに超えるクズだ」と俺――エメ・アルミラは思った。
狐族首長の次男でオメガの俺は、側室としてアゴル帝国の皇太子ルーカス・オーベリソンに迎えられた。
もちろん本意ではなく、幼い妹や弟、そして種族のため仕方なく応じたまでだ。
狐族はアゴル帝国の人間たちに「けがらわしい獣」と蔑まれている。俺の見た目も白金の髪の毛に緑色の瞳というのは人間とほぼ変わらないが、耳と尻尾は狐族特有のものだった。
そんなわけで、疎まれるのがわかっていて皇太子の元へ行くだけでも憂鬱だった。しかし帝国からの侵略を防ぐため、もう何世代も前から婚姻により和平を保つしか術がないのだった。
ルーカス皇太子は獣人の特徴である耳と尻尾を特に嫌っており、俺は常にそれらが見えぬよう隠さねばならなかった。少しでも毛の生えた部分が見えようものなら容赦なく頬をぶたれた。
側室とは名ばかりで、この国に来て受けたのは虐待並みの冷遇。ルーカス皇太子とは目も合わせたことがない。誇り高き狐族の末裔である俺は、どうにかして一矢報いたいとここに来てからずっと考えていた。
そして、機は訪れた。
俺の従僕として、狼族と人間のハーフの男――ヴィダルがあてがわれたのだ。彼は奴隷で、人間たちの間を流れに流れここへやってきた。
「狐族の側室ごときに人間を付けるのは勿体無い」と皇太子が俺に向かって聞こえよがしに言ってきた。
――今に見ていろよ。
◇
皇太子との夜伽は酷いものだった。
俺が発情期を迎えると、一晩だけ皇太子の寝所へ行くことを許される。
狐族としてはなんとか帝国との血縁者を俺に産ませたい考えだ。そうすることで二国間の関係をより強い結びつきにしたいのだ。
しかし、年に数回の発情期であってもルーカス皇太子は冷徹だった。
寝所へ初めて訪れた時はその待遇に吐き気がした。
なぜなら、彼の寝床には既に人間の青年――正室のオメガが裸で寝そべっていたから。
――どういうことだ、これは?
青年の裸体に乗っかり、皇太子は逞しい体を激しく打ち付けていた。筋肉に覆われた彼の広い背中は汗ばみ、艶かしく光っている。
「殿下、私は帰った方がよろしいのでは……?」
「今、良いところだから、話しかけるな!」
皇太子は息を荒くして言う。
俺は帰ることも出来ずに寝台の横で立ちつくしていた。
「ふん、そろそろ出そうだ。おい狐、妻の横に来て四つん這いになるがいい。尻尾は見えないように着物で隠したまま穴だけ開けよ」
皇太子は腰を振りながらこともなげに言う。
――なんだって……?
「早くしろ、俺の子種が要らないのか?」
俺の聞き取れない言語で何やら悪態をつき、それを聞いたオメガ青年が笑った。渋々言われた通り寝台に上る。
こんな屈辱があるか――?
尻尾が見えないように衣服の裾をまくり、尻だけを皇太子の方へ向けた。
大きな手で尻を鷲掴みされたかと思うと、なんの前触れもなく一気に貫かれた。
「ぅぐっ!」
「ああ、キツいな、くそ!」
あらかじめ女官たちによって後ろはほぐされていたし香油も塗りこめてあった。しかし、こんな大きなものを入れるのは初めてだった。
「あ……あ、無理……痛い、抜いてくださ――」
「馬鹿め、抜いてどうやって孕む気だ」
そう吐き捨てた雄のもので好き勝手容赦なく突かれる。痛みと圧迫感で手に力が入らなくなり、俺は寝台に突っ伏した。皇太子はそれでも俺を揺さぶるのをやめない。
「あぅっ、う、ううっ……! やめ、やめてっ……あっ」
「悪くない、顔さえ見なければ人間のオメガと匂いも変わらんな」
バチン、バチンと皮膚が当たる。グチュグチュと内部で濡れた音がしているのは、もしかすると香油ではなく切れて血が出ているのかもしれない。
「出すぞ、このけがらわしい獣め。存分に味わえ!」
「うぅ……っ」
びゅくびゅくと体内に皇太子の体液が注ぎ込まれる。彼は体をぶるりと震わせ、腰をぐりぐりと擦り付けるようにしてきた。
――中に出てる……おぞましい……!
そして皇太子が俺の中から雄の印を引き抜いたかと思うと、脇腹に衝撃が走り世界が反転した。
「あうっ!」
「情けない声を出すな。さっさと立ち去れ狐め」
「……え?」
「可愛いヤンネ、我が運命の伴侶。これで邪魔者は消えた」
彼はオメガ青年の方を見て言った。
驚きすぎて理解するのが遅れたが、俺は皇太子に寝台から蹴り出されたらしい。
激しく貫かれた尻がズキズキし、腰が抜けたようになっていて動けない。ヒート中なのもあり、あまりのショックで目眩に襲われた。
口をパクパクさせている俺に構わず、皇太子はヤンネと呼ばれた青年によって汚れた性器を拭き清められていた。
「なんだ貴様まだいたのか。おい! 誰か、この間抜けをつまみ出せ」
衣服が乱れ、股の間から血液混じりの白い液体を垂らしている俺――。その体を衛兵が乱暴に抱えた。
部屋を出る直前、皇太子がまた青年に覆いかぶさるのが見えた。
これが俺の初夜だった。
さすがの俺も、自分の寝所で何が起きたのかを思い返すうちに涙が滲み出てきた。
――いくらなんでもこんな仕打ちがあるか。
俺の目の前で正室のオメガを抱く皇太子。そして、射精の瞬間だけ挿入されて子種を植え付けられた俺……。
――俺は、一体なんだ……?
自分が何なのか、何のためにここにいるのかこの時点で既によくわからなくなっていた。
俺はあんな奴の子どもだけは絶対孕みたくなくて、痛む体を叱咤して起き上がると浴室へ向かった。そして一人で歯を食いしばりながら男に注ぎ込まれた物を掻き出した。
狐族首長の次男でオメガの俺は、側室としてアゴル帝国の皇太子ルーカス・オーベリソンに迎えられた。
もちろん本意ではなく、幼い妹や弟、そして種族のため仕方なく応じたまでだ。
狐族はアゴル帝国の人間たちに「けがらわしい獣」と蔑まれている。俺の見た目も白金の髪の毛に緑色の瞳というのは人間とほぼ変わらないが、耳と尻尾は狐族特有のものだった。
そんなわけで、疎まれるのがわかっていて皇太子の元へ行くだけでも憂鬱だった。しかし帝国からの侵略を防ぐため、もう何世代も前から婚姻により和平を保つしか術がないのだった。
ルーカス皇太子は獣人の特徴である耳と尻尾を特に嫌っており、俺は常にそれらが見えぬよう隠さねばならなかった。少しでも毛の生えた部分が見えようものなら容赦なく頬をぶたれた。
側室とは名ばかりで、この国に来て受けたのは虐待並みの冷遇。ルーカス皇太子とは目も合わせたことがない。誇り高き狐族の末裔である俺は、どうにかして一矢報いたいとここに来てからずっと考えていた。
そして、機は訪れた。
俺の従僕として、狼族と人間のハーフの男――ヴィダルがあてがわれたのだ。彼は奴隷で、人間たちの間を流れに流れここへやってきた。
「狐族の側室ごときに人間を付けるのは勿体無い」と皇太子が俺に向かって聞こえよがしに言ってきた。
――今に見ていろよ。
◇
皇太子との夜伽は酷いものだった。
俺が発情期を迎えると、一晩だけ皇太子の寝所へ行くことを許される。
狐族としてはなんとか帝国との血縁者を俺に産ませたい考えだ。そうすることで二国間の関係をより強い結びつきにしたいのだ。
しかし、年に数回の発情期であってもルーカス皇太子は冷徹だった。
寝所へ初めて訪れた時はその待遇に吐き気がした。
なぜなら、彼の寝床には既に人間の青年――正室のオメガが裸で寝そべっていたから。
――どういうことだ、これは?
青年の裸体に乗っかり、皇太子は逞しい体を激しく打ち付けていた。筋肉に覆われた彼の広い背中は汗ばみ、艶かしく光っている。
「殿下、私は帰った方がよろしいのでは……?」
「今、良いところだから、話しかけるな!」
皇太子は息を荒くして言う。
俺は帰ることも出来ずに寝台の横で立ちつくしていた。
「ふん、そろそろ出そうだ。おい狐、妻の横に来て四つん這いになるがいい。尻尾は見えないように着物で隠したまま穴だけ開けよ」
皇太子は腰を振りながらこともなげに言う。
――なんだって……?
「早くしろ、俺の子種が要らないのか?」
俺の聞き取れない言語で何やら悪態をつき、それを聞いたオメガ青年が笑った。渋々言われた通り寝台に上る。
こんな屈辱があるか――?
尻尾が見えないように衣服の裾をまくり、尻だけを皇太子の方へ向けた。
大きな手で尻を鷲掴みされたかと思うと、なんの前触れもなく一気に貫かれた。
「ぅぐっ!」
「ああ、キツいな、くそ!」
あらかじめ女官たちによって後ろはほぐされていたし香油も塗りこめてあった。しかし、こんな大きなものを入れるのは初めてだった。
「あ……あ、無理……痛い、抜いてくださ――」
「馬鹿め、抜いてどうやって孕む気だ」
そう吐き捨てた雄のもので好き勝手容赦なく突かれる。痛みと圧迫感で手に力が入らなくなり、俺は寝台に突っ伏した。皇太子はそれでも俺を揺さぶるのをやめない。
「あぅっ、う、ううっ……! やめ、やめてっ……あっ」
「悪くない、顔さえ見なければ人間のオメガと匂いも変わらんな」
バチン、バチンと皮膚が当たる。グチュグチュと内部で濡れた音がしているのは、もしかすると香油ではなく切れて血が出ているのかもしれない。
「出すぞ、このけがらわしい獣め。存分に味わえ!」
「うぅ……っ」
びゅくびゅくと体内に皇太子の体液が注ぎ込まれる。彼は体をぶるりと震わせ、腰をぐりぐりと擦り付けるようにしてきた。
――中に出てる……おぞましい……!
そして皇太子が俺の中から雄の印を引き抜いたかと思うと、脇腹に衝撃が走り世界が反転した。
「あうっ!」
「情けない声を出すな。さっさと立ち去れ狐め」
「……え?」
「可愛いヤンネ、我が運命の伴侶。これで邪魔者は消えた」
彼はオメガ青年の方を見て言った。
驚きすぎて理解するのが遅れたが、俺は皇太子に寝台から蹴り出されたらしい。
激しく貫かれた尻がズキズキし、腰が抜けたようになっていて動けない。ヒート中なのもあり、あまりのショックで目眩に襲われた。
口をパクパクさせている俺に構わず、皇太子はヤンネと呼ばれた青年によって汚れた性器を拭き清められていた。
「なんだ貴様まだいたのか。おい! 誰か、この間抜けをつまみ出せ」
衣服が乱れ、股の間から血液混じりの白い液体を垂らしている俺――。その体を衛兵が乱暴に抱えた。
部屋を出る直前、皇太子がまた青年に覆いかぶさるのが見えた。
これが俺の初夜だった。
さすがの俺も、自分の寝所で何が起きたのかを思い返すうちに涙が滲み出てきた。
――いくらなんでもこんな仕打ちがあるか。
俺の目の前で正室のオメガを抱く皇太子。そして、射精の瞬間だけ挿入されて子種を植え付けられた俺……。
――俺は、一体なんだ……?
自分が何なのか、何のためにここにいるのかこの時点で既によくわからなくなっていた。
俺はあんな奴の子どもだけは絶対孕みたくなくて、痛む体を叱咤して起き上がると浴室へ向かった。そして一人で歯を食いしばりながら男に注ぎ込まれた物を掻き出した。
40
お気に入りに追加
400
あなたにおすすめの小説
獅子王と後宮の白虎
三国華子
BL
#2020男子後宮BL 参加作品
間違えて獅子王のハーレムに入ってしまった白虎のお話です。
オメガバースです。
受けがゴリマッチョから細マッチョに変化します。
ムーンライトノベルズ様にて先行公開しております。
男娼ウサギは寡黙なトラに愛される
てんつぶ
BL
「も……っ、やだ……!この、絶倫……!」
・・・・
獣人の世界では、過去にバース性が存在した。
獣としての発情期も無くなったこの時代に、ウラギ獣人のラヴィはそれを隠して男娼として生きていた。
あどけなくも美しく、具合の良いラヴィは人気があった。
でも、人気があるだけ。本気でラヴィを欲しがる者はいない事を、彼は痛い程知っていた。
だけどそう――たった一度だけ自分を抱いた、あのトラ獣人だけは自分に執着を示していたのだ。
干支BL。
オメガバ事前知識有前提のゆるい設定です。
三が日の間に完結したいところ。
子を成せ
斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
ミーシェは兄から告げられた言葉に思わず耳を疑った。
「リストにある全員と子を成すか、二年以内にリーファスの子を産むか選べ」
リストに並ぶ番号は全部で十八もあり、その下には追加される可能性がある名前が続いている。これは孕み腹として生きろという命令を下されたに等しかった。もう一つの話だって、譲歩しているわけではない。
【オメガの疑似体験ができる媚薬】を飲んだら、好きだったアルファに抱き潰された
亜沙美多郎
BL
ベータの友人が「オメガの疑似体験が出来る媚薬」をくれた。彼女に使えと言って渡されたが、郁人が想いを寄せているのはアルファの同僚・隼瀬だった。
隼瀬はオメガが大好き。モテモテの彼は絶えずオメガの恋人がいた。
『ベータはベータと』そんな暗黙のルールがある世間で、誰にも言えるはずもなく気持ちをひた隠しにしてきた。
ならばせめて隼瀬に抱かれるのを想像しながら、恋人気分を味わいたい。
社宅で一人になれる夜を狙い、郁人は自分で媚薬を飲む。
本物のオメガになれた気がするほど、気持ちいい。媚薬の効果もあり自慰行為に夢中になっていると、あろう事か隼瀬が部屋に入ってきた。
郁人の霰も無い姿を見た隼瀬は、擬似オメガのフェロモンに当てられ、郁人を抱く……。
前編、中編、後編に分けて投稿します。
全編Rー18です。
アルファポリスBLランキング4位。
ムーンライトノベルズ BL日間、総合、短編1位。
BL週間総合3位、短編1位。月間短編4位。
pixiv ブクマ数2600突破しました。
各サイトでの応援、ありがとうございます。
発情期がはじまったらαの兄に子作りセッされた話
よしゆき
BL
αの兄と二人で生活を送っているΩの弟。密かに兄に恋心を抱く弟が兄の留守中に発情期を迎え、一人で乗り切ろうとしていたら兄が帰ってきてめちゃくちゃにされる話。
番に囲われ逃げられない
ネコフク
BL
高校の入学と同時に入寮した部屋へ一歩踏み出したら目の前に笑顔の綺麗な同室人がいてあれよあれよという間にベッドへ押し倒され即挿入!俺Ωなのに同室人で学校の理事長の息子である颯人と一緒にα寮で生活する事に。「ヒートが来たら噛むから」と宣言され有言実行され番に。そんなヤベェ奴に捕まったΩとヤベェαのちょっとしたお話。
結局現状を受け入れている受けとどこまでも囲い込もうとする攻めです。オメガバース。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる