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クズ皇太子に復讐を

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「アゴル帝国の皇太子ときたら、想像をはるかに超えるクズだ」と俺――エメ・アルミラは思った。

狐族首長の次男でオメガの俺は、側室としてアゴル帝国の皇太子ルーカス・オーベリソンに迎えられた。
もちろん本意ではなく、幼い妹や弟、そして種族のため仕方なく応じたまでだ。

狐族はアゴル帝国の人間たちに「けがらわしい獣」とさげすまれている。俺の見た目も白金の髪の毛に緑色の瞳というのは人間とほぼ変わらないが、耳と尻尾は狐族特有のものだった。  
そんなわけで、疎まれるのがわかっていて皇太子の元へ行くだけでも憂鬱だった。しかし帝国からの侵略を防ぐため、もう何世代も前から婚姻により和平を保つしか術がないのだった。

ルーカス皇太子は獣人の特徴である耳と尻尾を特に嫌っており、俺は常にそれらが見えぬよう隠さねばならなかった。少しでも毛の生えた部分が見えようものなら容赦なく頬をぶたれた。

側室とは名ばかりで、この国に来て受けたのは虐待並みの冷遇。ルーカス皇太子とは目も合わせたことがない。誇り高き狐族の末裔である俺は、どうにかして一矢報いたいとここに来てからずっと考えていた。

そして、機は訪れた。

俺の従僕として、狼族と人間のハーフの男――ヴィダルがあてがわれたのだ。彼は奴隷で、人間たちの間を流れに流れここへやってきた。

「狐族の側室ごときに人間を付けるのは勿体無い」と皇太子が俺に向かって聞こえよがしに言ってきた。
――今に見ていろよ。





皇太子との夜伽よとぎは酷いものだった。
俺が発情期を迎えると、一晩だけ皇太子の寝所へ行くことを許される。
狐族としてはなんとか帝国との血縁者を俺に産ませたい考えだ。そうすることで二国間の関係をより強い結びつきにしたいのだ。

しかし、年に数回の発情期であってもルーカス皇太子は冷徹だった。

寝所へ初めて訪れた時はその待遇に吐き気がした。
なぜなら、彼の寝床には既に人間の青年――正室のオメガが裸で寝そべっていたから。

――どういうことだ、これは?

青年の裸体に乗っかり、皇太子は逞しい体を激しく打ち付けていた。筋肉に覆われた彼の広い背中は汗ばみ、艶かしく光っている。

「殿下、私は帰った方がよろしいのでは……?」
「今、良いところだから、話しかけるな!」

皇太子は息を荒くして言う。
俺は帰ることも出来ずに寝台の横で立ちつくしていた。

「ふん、そろそろ出そうだ。おい狐、妻の横に来て四つん這いになるがいい。尻尾は見えないように着物で隠したまま穴だけ開けよ」

皇太子は腰を振りながらこともなげに言う。
――なんだって……?

「早くしろ、俺の子種が要らないのか?」

俺の聞き取れない言語で何やら悪態をつき、それを聞いたオメガ青年が笑った。渋々言われた通り寝台に上る。
こんな屈辱があるか――?
尻尾が見えないように衣服の裾をまくり、尻だけを皇太子の方へ向けた。
大きな手で尻を鷲掴みされたかと思うと、なんの前触れもなく一気に貫かれた。

「ぅぐっ!」
「ああ、キツいな、くそ!」

あらかじめ女官たちによって後ろはほぐされていたし香油も塗りこめてあった。しかし、こんな大きなものを入れるのは初めてだった。

「あ……あ、無理……痛い、抜いてくださ――」
「馬鹿め、抜いてどうやって孕む気だ」

そう吐き捨てた雄のもので好き勝手容赦なく突かれる。痛みと圧迫感で手に力が入らなくなり、俺は寝台に突っ伏した。皇太子はそれでも俺を揺さぶるのをやめない。

「あぅっ、う、ううっ……! やめ、やめてっ……あっ」
「悪くない、顔さえ見なければ人間のオメガと匂いも変わらんな」   

バチン、バチンと皮膚が当たる。グチュグチュと内部で濡れた音がしているのは、もしかすると香油ではなく切れて血が出ているのかもしれない。

「出すぞ、このけがらわしい獣め。存分に味わえ!」
「うぅ……っ」

びゅくびゅくと体内に皇太子の体液が注ぎ込まれる。彼は体をぶるりと震わせ、腰をぐりぐりと擦り付けるようにしてきた。
――中に出てる……おぞましい……!

そして皇太子が俺の中から雄の印を引き抜いたかと思うと、脇腹に衝撃が走り世界が反転した。

「あうっ!」
「情けない声を出すな。さっさと立ち去れ狐め」
「……え?」
「可愛いヤンネ、我が運命の伴侶。これで邪魔者は消えた」

彼はオメガ青年の方を見て言った。
驚きすぎて理解するのが遅れたが、俺は皇太子に寝台から蹴り出されたらしい。
激しく貫かれた尻がズキズキし、腰が抜けたようになっていて動けない。ヒート中なのもあり、あまりのショックで目眩に襲われた。
口をパクパクさせている俺に構わず、皇太子はヤンネと呼ばれた青年によって汚れた性器を拭き清められていた。

「なんだ貴様まだいたのか。おい! 誰か、この間抜けをつまみ出せ」

衣服が乱れ、股の間から血液混じりの白い液体を垂らしている俺――。その体を衛兵が乱暴に抱えた。
部屋を出る直前、皇太子がまた青年に覆いかぶさるのが見えた。

これが俺の初夜だった。
さすがの俺も、自分の寝所で何が起きたのかを思い返すうちに涙が滲み出てきた。
――いくらなんでもこんな仕打ちがあるか。
俺の目の前で正室のオメガを抱く皇太子。そして、射精の瞬間だけ挿入されて子種を植え付けられた俺……。
――俺は、一体なんだ……?

自分が何なのか、何のためにここにいるのかこの時点で既によくわからなくなっていた。
俺はあんな奴の子どもだけは絶対孕みたくなくて、痛む体を叱咤して起き上がると浴室へ向かった。そして一人で歯を食いしばりながら男に注ぎ込まれた物を掻き出した。

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