14 / 59
2章.追放と新たな苦難
12.新たな悪夢の種
しおりを挟む
「隣は誰が入ってくるかわからないからね。こっちの部屋はちょっと寒いが我慢してくれ。いや、発情して熱くなるからそんな心配はいらないか」
たしかに体は温かい。
「あの……これがヒートなら僕、隔離してもらわないと」
オメガの発情フェロモンは無差別にアルファを惑わせ性的に興奮させる。なので、つがいのいないオメガは発情期が来たらなるべくアルファと接触しないように閉じこもるのが普通だ。それなりの格がある家庭であればオメガを隔離するための部屋を特別に用意していることも多い。
「馬鹿を言うなよ。はじめてのヒートだろう? 楽しまないでどうする。俺は男でもいけるから心配するな。ほら、こっちへ来い可愛い義弟よ」
(楽しむ? 何言ってるんだこの人……? 正気なのか?)
僕は彼のいい加減な物言いに目眩がしてきた。
(女好きとは聞いていたけどまさかオメガとはいえ義弟の僕にまで手を出そうとするなんて)
いや、僕は聞いていたではないか。ここに越してきて間もない頃、使用人の少女に気をつけろと言われたことがあった。あのときはまさかと気にもとめなかったけど、今それが現実になりつつあるのだ。
動揺している間に、彼は長椅子に僕を無理やり押し倒した。
「やめてください。ダメですこんな――」
「いやいや、何を言うんだ。オメガのフェロモンはアルファを誘惑するためにこそあるんだよ」
「そ、そういうことじゃ……」
フェリックスは僕の首に鼻先を押し付けて匂いを嗅ぐ。
「うーん、これがはじめての香りか! 瑞々しくて、まるでもぎたての水蜜桃のような爽やかさすら感じさせる。年増女の発情フェロモンとはわけが違うな。これは良いぞ」
「変なこと言わないでください!」
僕は恥ずかしさで消えてしまいたくなった。
「ああ……たまらないよ。ずっと嗅いでいたくなる。清楚なのに良く男を誘う。うーん、君の姿そのものだな。清らかで守ってあげたくなるのに、反対にめちゃくちゃにしてやりたくもなる。こんなに興奮したのは久々だ」
フェリックスは獲物を見つけた狼のように目を燦めかせて唇を舐めた。
「待って、やめて! こんなことをして姉に悪いとは思わないのですか?」
フェリックスは僕の発言に驚いたような顔をする。
「そんなことを気にしているのか? 君のお姉さんはよくわかっているよ。自分の立場というものをね」
「立場……?」
「彼女には性的な魅力なんて一切感じられない。だから俺は他の女を抱くんだ。彼女もここで辺境伯夫人に収まっているためにそれを容認している」
「そんな……」
「だから安心して身を任せるんだ。男に抱かれるのは初めて?」
「なっ……!」
僕はあまりに直接的な聞き方に赤面した。答えられずに口をぱくぱくさせていると義兄が言う。
「ああ、なんだ残念。そっちは初めてじゃないのか。でもまあいい。ヒートで乱れる君を見るのは俺が初めてなんだからね」
そして義兄は僕の口をキスで塞いだ。
「んっ!」
(やめて……)
僕は思い切り義兄の胸を手で突いたつもりが、もう全身が発情期の症状に包まれ始めていてうまく力が入らない。しかも口の中を舌でくすぐられるのがたまらなく気持ちよかった。
(なんでこんな……? でも気持ちいい……頭がふわふわして何も考えたくない。なにこれ、すごく変な気分)
「いい香りだ……だんだん甘くなるね。感じてくれてるんだ? 可愛いよルネ……」
「いや……フェリックスやめて……」
義兄は嬉しそうに僕の耳や首筋を舐める。どこを舐められても気持ちが良かった。義兄はアランとはまた違ういい匂いがした。
(アラン兄様の香りはもっと柔らかくて優雅だったけど、フェリックスのはちょっとスパイシーな感じだ)
ヒートのせいでもう自分が気持ちよくなることしか考えられなかった。倫理観とか、姉のことは綺麗さっぱり忘れて僕は目の前のアルファの言いなりになった。フェリックスのペニスを舐め、自分の中に受け入れることに悦びを感じる。
中を擦られる感覚は久しぶりだった。フェリックスは一見粗野に見えるが、意外にも抱き方は優しかった。僕は朦朧としながら甘い声で彼にもっととねだってしまう。
「ああっ気持ちいい……もっとしてフェリックス……」
「いいよ、好きなだけしてやる」
四つ足の動物のような姿勢で、自ら尻を擦り付けるように動くのをやめられない。
「あっ……ん……気持ちいい……! もうだめ、だめっ……いいっ……あっあっ」
「俺も出そうだ、中に出すぞ」
(え? 中……?)
僕はうっとりしながらフェリックスの腰の動きに合わせて身体を揺らしていたが、中に出すと言われてハッとした。
「いやっ! だめです。フェリックス中はやめて! やぁっああっ」
なんとか這って逃げようとしたがしかしフェリックスは僕の腰をがっしりと掴んで引き戻し、奥深くに杭を打ち込んだ。そして喚く僕に構わず絶頂に向けて腰を激しく打ち付けてきた。
「最高だよルネ、俺のものだ……ルネ、ルネ……くっ!」
「あっ……ぃやぁ! だめ……あぁ……」
僕の中でフェリックスのものが弾け、どくどくと脈打ちながら子種が注ぎ込まれる。すると信じられないくらいの快感が襲ってきた。
「……そんな……あぁ……中に出てる……」
(中気持ちいい……なにこれ……? もっと欲しい、もっと……)
わけがわからないうちに、僕も痙攣しながら精液を吐き出していた。そしてその後も僕は中に出される快感に抗えず、何度も何度もフェリックスと本能のまま抱き合ったのだった。
たしかに体は温かい。
「あの……これがヒートなら僕、隔離してもらわないと」
オメガの発情フェロモンは無差別にアルファを惑わせ性的に興奮させる。なので、つがいのいないオメガは発情期が来たらなるべくアルファと接触しないように閉じこもるのが普通だ。それなりの格がある家庭であればオメガを隔離するための部屋を特別に用意していることも多い。
「馬鹿を言うなよ。はじめてのヒートだろう? 楽しまないでどうする。俺は男でもいけるから心配するな。ほら、こっちへ来い可愛い義弟よ」
(楽しむ? 何言ってるんだこの人……? 正気なのか?)
僕は彼のいい加減な物言いに目眩がしてきた。
(女好きとは聞いていたけどまさかオメガとはいえ義弟の僕にまで手を出そうとするなんて)
いや、僕は聞いていたではないか。ここに越してきて間もない頃、使用人の少女に気をつけろと言われたことがあった。あのときはまさかと気にもとめなかったけど、今それが現実になりつつあるのだ。
動揺している間に、彼は長椅子に僕を無理やり押し倒した。
「やめてください。ダメですこんな――」
「いやいや、何を言うんだ。オメガのフェロモンはアルファを誘惑するためにこそあるんだよ」
「そ、そういうことじゃ……」
フェリックスは僕の首に鼻先を押し付けて匂いを嗅ぐ。
「うーん、これがはじめての香りか! 瑞々しくて、まるでもぎたての水蜜桃のような爽やかさすら感じさせる。年増女の発情フェロモンとはわけが違うな。これは良いぞ」
「変なこと言わないでください!」
僕は恥ずかしさで消えてしまいたくなった。
「ああ……たまらないよ。ずっと嗅いでいたくなる。清楚なのに良く男を誘う。うーん、君の姿そのものだな。清らかで守ってあげたくなるのに、反対にめちゃくちゃにしてやりたくもなる。こんなに興奮したのは久々だ」
フェリックスは獲物を見つけた狼のように目を燦めかせて唇を舐めた。
「待って、やめて! こんなことをして姉に悪いとは思わないのですか?」
フェリックスは僕の発言に驚いたような顔をする。
「そんなことを気にしているのか? 君のお姉さんはよくわかっているよ。自分の立場というものをね」
「立場……?」
「彼女には性的な魅力なんて一切感じられない。だから俺は他の女を抱くんだ。彼女もここで辺境伯夫人に収まっているためにそれを容認している」
「そんな……」
「だから安心して身を任せるんだ。男に抱かれるのは初めて?」
「なっ……!」
僕はあまりに直接的な聞き方に赤面した。答えられずに口をぱくぱくさせていると義兄が言う。
「ああ、なんだ残念。そっちは初めてじゃないのか。でもまあいい。ヒートで乱れる君を見るのは俺が初めてなんだからね」
そして義兄は僕の口をキスで塞いだ。
「んっ!」
(やめて……)
僕は思い切り義兄の胸を手で突いたつもりが、もう全身が発情期の症状に包まれ始めていてうまく力が入らない。しかも口の中を舌でくすぐられるのがたまらなく気持ちよかった。
(なんでこんな……? でも気持ちいい……頭がふわふわして何も考えたくない。なにこれ、すごく変な気分)
「いい香りだ……だんだん甘くなるね。感じてくれてるんだ? 可愛いよルネ……」
「いや……フェリックスやめて……」
義兄は嬉しそうに僕の耳や首筋を舐める。どこを舐められても気持ちが良かった。義兄はアランとはまた違ういい匂いがした。
(アラン兄様の香りはもっと柔らかくて優雅だったけど、フェリックスのはちょっとスパイシーな感じだ)
ヒートのせいでもう自分が気持ちよくなることしか考えられなかった。倫理観とか、姉のことは綺麗さっぱり忘れて僕は目の前のアルファの言いなりになった。フェリックスのペニスを舐め、自分の中に受け入れることに悦びを感じる。
中を擦られる感覚は久しぶりだった。フェリックスは一見粗野に見えるが、意外にも抱き方は優しかった。僕は朦朧としながら甘い声で彼にもっととねだってしまう。
「ああっ気持ちいい……もっとしてフェリックス……」
「いいよ、好きなだけしてやる」
四つ足の動物のような姿勢で、自ら尻を擦り付けるように動くのをやめられない。
「あっ……ん……気持ちいい……! もうだめ、だめっ……いいっ……あっあっ」
「俺も出そうだ、中に出すぞ」
(え? 中……?)
僕はうっとりしながらフェリックスの腰の動きに合わせて身体を揺らしていたが、中に出すと言われてハッとした。
「いやっ! だめです。フェリックス中はやめて! やぁっああっ」
なんとか這って逃げようとしたがしかしフェリックスは僕の腰をがっしりと掴んで引き戻し、奥深くに杭を打ち込んだ。そして喚く僕に構わず絶頂に向けて腰を激しく打ち付けてきた。
「最高だよルネ、俺のものだ……ルネ、ルネ……くっ!」
「あっ……ぃやぁ! だめ……あぁ……」
僕の中でフェリックスのものが弾け、どくどくと脈打ちながら子種が注ぎ込まれる。すると信じられないくらいの快感が襲ってきた。
「……そんな……あぁ……中に出てる……」
(中気持ちいい……なにこれ……? もっと欲しい、もっと……)
わけがわからないうちに、僕も痙攣しながら精液を吐き出していた。そしてその後も僕は中に出される快感に抗えず、何度も何度もフェリックスと本能のまま抱き合ったのだった。
28
お気に入りに追加
2,055
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】僕の匂いだけがわかるイケメン美食家αにおいしく頂かれてしまいそうです
grotta
BL
【嗅覚を失った美食家α×親に勝手に婚約者を決められたΩのすれ違いグルメオメガバース】
会社員の夕希はブログを書きながら美食コラムニストを目指すスイーツ男子。αが嫌いで、Ωなのを隠しβのフリをして生きてきた。
最近グルメ仲間に恋人ができてしまい一人寂しくホテルでケーキを食べていると、憧れの美食評論家鷲尾隼一と出会う。彼は超美形な上にα嫌いの夕希でもつい心が揺れてしまうほどいい香りのフェロモンを漂わせていた。
夕希は彼が現在嗅覚を失っていること、それなのになぜか夕希の匂いだけがわかることを聞かされる。そして隼一は自分の代わりに夕希に食レポのゴーストライターをしてほしいと依頼してきた。
協力すれば美味しいものを食べさせてくれると言う隼一。しかも出版関係者に紹介しても良いと言われて舞い上がった夕希は彼の依頼を受ける。
そんな中、母からアルファ男性の見合い写真が送られてきて気分は急降下。
見合い=28歳の誕生日までというタイムリミットがある状況で夕希は隼一のゴーストライターを務める。
一緒に過ごしているうちにαにしては優しく誠実な隼一に心を開いていく夕希。そして隼一の家でヒートを起こしてしまい、体の関係を結んでしまう。見合いを控えているため隼一と決別しようと思う夕希に対し、逆に猛烈に甘くなる隼一。
しかしあるきっかけから隼一には最初からΩと寝る目的があったと知ってしまい――?
【受】早瀬夕希(27歳)…βと偽るΩ、コラムニストを目指すスイーツ男子。α嫌いなのに母親にαとの見合いを決められている。
【攻】鷲尾準一(32歳)…黒髪美形α、クールで辛口な美食評論家兼コラムニスト。現在嗅覚異常に悩まされている。
※東京のデートスポットでスパダリに美味しいもの食べさせてもらっていちゃつく話です♡
※第10回BL小説大賞に参加しています
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる