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2章.追放と新たな苦難

12.新たな悪夢の種

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「隣は誰が入ってくるかわからないからね。こっちの部屋はちょっと寒いが我慢してくれ。いや、発情して熱くなるからそんな心配はいらないか」
 たしかに体は温かい。
「あの……これがヒートなら僕、隔離してもらわないと」
 オメガの発情フェロモンは無差別にアルファを惑わせ性的に興奮させる。なので、つがいのいないオメガは発情期が来たらなるべくアルファと接触しないように閉じこもるのが普通だ。それなりの格がある家庭であればオメガを隔離するための部屋を特別に用意していることも多い。
「馬鹿を言うなよ。はじめてのヒートだろう? 楽しまないでどうする。俺は男でもいけるから心配するな。ほら、こっちへ来い可愛い義弟よ」
(楽しむ? 何言ってるんだこの人……? 正気なのか?)
 僕は彼のいい加減な物言いに目眩がしてきた。
(女好きとは聞いていたけどまさかオメガとはいえ義弟の僕にまで手を出そうとするなんて)
 いや、僕は聞いていたではないか。ここに越してきて間もない頃、使用人の少女に気をつけろと言われたことがあった。あのときはまさかと気にもとめなかったけど、今それが現実になりつつあるのだ。
 動揺している間に、彼は長椅子に僕を無理やり押し倒した。
「やめてください。ダメですこんな――」
「いやいや、何を言うんだ。オメガのフェロモンはアルファを誘惑するためにこそあるんだよ」
「そ、そういうことじゃ……」
 フェリックスは僕の首に鼻先を押し付けて匂いを嗅ぐ。
「うーん、これがはじめての香りか! 瑞々しくて、まるでもぎたての水蜜桃のような爽やかさすら感じさせる。年増女の発情フェロモンとはわけが違うな。これは良いぞ」
「変なこと言わないでください!」
 僕は恥ずかしさで消えてしまいたくなった。
「ああ……たまらないよ。ずっと嗅いでいたくなる。清楚なのに良く男を誘う。うーん、君の姿そのものだな。清らかで守ってあげたくなるのに、反対にめちゃくちゃにしてやりたくもなる。こんなに興奮したのは久々だ」
 フェリックスは獲物を見つけた狼のように目を燦めかせて唇を舐めた。
「待って、やめて! こんなことをして姉に悪いとは思わないのですか?」
 フェリックスは僕の発言に驚いたような顔をする。
「そんなことを気にしているのか? 君のお姉さんはよくわかっているよ。自分の立場というものをね」
「立場……?」
「彼女には性的な魅力なんて一切感じられない。だから俺は他の女を抱くんだ。彼女もここで辺境伯夫人に収まっているためにそれを容認している」
「そんな……」
「だから安心して身を任せるんだ。男に抱かれるのは初めて?」
「なっ……!」
 僕はあまりに直接的な聞き方に赤面した。答えられずに口をぱくぱくさせていると義兄が言う。
「ああ、なんだ残念。そっちは初めてじゃないのか。でもまあいい。ヒートで乱れる君を見るのは俺が初めてなんだからね」
 そして義兄は僕の口をキスで塞いだ。
「んっ!」
(やめて……)
 僕は思い切り義兄の胸を手で突いたつもりが、もう全身が発情期の症状に包まれ始めていてうまく力が入らない。しかも口の中を舌でくすぐられるのがたまらなく気持ちよかった。
(なんでこんな……? でも気持ちいい……頭がふわふわして何も考えたくない。なにこれ、すごく変な気分)
「いい香りだ……だんだん甘くなるね。感じてくれてるんだ? 可愛いよルネ……」
「いや……フェリックスやめて……」
 義兄は嬉しそうに僕の耳や首筋を舐める。どこを舐められても気持ちが良かった。義兄はアランとはまた違ういい匂いがした。
(アラン兄様の香りはもっと柔らかくて優雅だったけど、フェリックスのはちょっとスパイシーな感じだ)
 ヒートのせいでもう自分が気持ちよくなることしか考えられなかった。倫理観とか、姉のことは綺麗さっぱり忘れて僕は目の前のアルファの言いなりになった。フェリックスのペニスを舐め、自分の中に受け入れることに悦びを感じる。
 中を擦られる感覚は久しぶりだった。フェリックスは一見粗野に見えるが、意外にも抱き方は優しかった。僕は朦朧としながら甘い声で彼にもっととねだってしまう。
「ああっ気持ちいい……もっとしてフェリックス……」
「いいよ、好きなだけしてやる」
 四つ足の動物のような姿勢で、自ら尻を擦り付けるように動くのをやめられない。
「あっ……ん……気持ちいい……! もうだめ、だめっ……いいっ……あっあっ」
「俺も出そうだ、中に出すぞ」
(え? 中……?)
 僕はうっとりしながらフェリックスの腰の動きに合わせて身体を揺らしていたが、中に出すと言われてハッとした。
「いやっ! だめです。フェリックス中はやめて! やぁっああっ」
 なんとか這って逃げようとしたがしかしフェリックスは僕の腰をがっしりと掴んで引き戻し、奥深くに杭を打ち込んだ。そして喚く僕に構わず絶頂に向けて腰を激しく打ち付けてきた。
「最高だよルネ、俺のものだ……ルネ、ルネ……くっ!」
「あっ……ぃやぁ! だめ……あぁ……」
 僕の中でフェリックスのものが弾け、どくどくと脈打ちながら子種が注ぎ込まれる。すると信じられないくらいの快感が襲ってきた。
「……そんな……あぁ……中に出てる……」
(中気持ちいい……なにこれ……? もっと欲しい、もっと……)
 わけがわからないうちに、僕も痙攣しながら精液を吐き出していた。そしてその後も僕は中に出される快感に抗えず、何度も何度もフェリックスと本能のまま抱き合ったのだった。
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