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23.お前にモテてもな
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北山は平然とした顔で鳥軟骨に箸を伸ばしながら言う。
「俺、見ちゃったんすよ。課長のマンションと俺の住んでる所割と近くて」
え?何を見たの!?俺は何も言えず口をパクパクしながら彼の発言を待つことしかできなかった。
「スーパーで仲良さそうに買物してましたよね。恋人オーラだだ漏れでしたよ」
「ええっ!?見てたの?!」
つーかそんなオーラ出てないだろ??
「はい。俺、課長がゲイなのは前から知ってて~」
ああああそうなんだ?それ知ってんのか……
「新木さんはノンケだと思ってたんですけど、なんか雰囲気変わりましたよね。課長と付き合ってから」
だからなんで課長と付き合ってると思った?スーパーで買物くらいするだろ、上司と部下なんだから。
いやしねぇか?!
「べ、別に付き合ってるとかじゃないし……たまたま買い物一緒にしてただけで」
「そこ隠すんですか?ふーん。でも会社でキスしてたでしょ?」
俺は目を見開いて北山を凝視した。俺は混乱で息苦しくなってきて鼻の穴を広げて必死で呼吸する。
誰かに見えるようなところでキスなんてしてねーはずだぞ。嘘だな?ハッタリだろ?!
「前にトイレ行ったら個室から音が……ね?随分激しいキスだったみたいですけど」
げっ、あのときか!!
冷や汗が出て来て、また胃が痛くなって来た。
「そんで俺、とっさに隠れたんですけどその後課長が出てきて~、その後相手誰かなって待ってたらしばらくして新木さん出てきたんでびっくりしましたよ。前は女の子と付き合ってましたよね?新木さん。男もイケるんだ~って」
あああああ……シにたい……男はイケないから……勘違いしないで……
「俺もバイなんですよ。同じですね!」
北山は整った顔に満面の笑みを浮かべてこちらを見てくる。
やめろ、その同志を見るような目でこっちを見るな!女の子なら頬染めるとこかもしれんが、男のお前になどモテても微塵も嬉しくない。
「それで、一時期新木さんすごい満ち足りたような顔してて上手くいってるんだなあって微笑ましく思ってたんですけどね」
ーーーなにそれ恥ずかしくて死ねる……!
俺は口元を覆って目を瞑った。もう何も聞きたくないし言いたくないぞ。
「その後いきなり元気なくなったんで、ああ別れたなって。当たってるでしょ?」
俺は何も言えなかった。北山がグラスを口に運んだのを見て自分も口が乾いていることに気づき、咄嗟に氷が溶けて薄くなったウーロンハイを飲んだ。
ここでどう対処すべきなのかわからない。頭が回らない。
「否定しないなら肯定と取りますよ。それで、もしよかったら俺と付き合いません?」
「はぁ!?」
何言ってんだこいつ。
「課長と別れて今フリーなんですよね。金曜の夜誘ってすぐ付いて来るくらいだから」
「なっ、そ、それは……」
「俺密かに新木さんいいなって思ってたんですよね。でもノンケだろうから諦めてたんです」
いや……だからそんな笑顔向けられてもな。お前にモテても嬉しくねえんだわ。
「それがバイだなんてラッキーだなって♡俺、あんまり束縛とかしない方ですし気楽に付き合っちゃいましょうよ。年下も良いもんですよ」
俺はグラスをダンッとテーブルに置いた。
「あのなぁ、俺は女が好きなの。勘違いするな」
精一杯睨んだが、北山はヘラヘラと笑っている。
「え~、俺だって好きですよ女の子」
「俺は胸がデカくてやわらか~い女が好きなんだよ!お前みたいな筋張った男と付き合ってもなんも楽しくない」
「え?俺の顔好みじゃないです?じゃあ課長みたいならいいの??」
北山は首を傾げて顎を撫でている。どんだけ自分の容姿に自身あるんだよ。
ムカつく奴だな。
「なわけねぇだろ……」
「あ!もしかして男と付き合うのは課長が初めてだったとか?」
図星をさされて顔が熱くなる。
「もう、この話はおしまい!俺はお前と付き合う気はない。以上!」
「えー、なんでですかぁ!」
俺はベルを鳴らして店員を呼び、勝手に会計を済ませた。一応先輩だから俺が奢る。なんで口説かれた俺が払わにゃならんのだという苛立ちはあったが、奢られてしまえばそれはそれでマズイという気がした。
「新木さん、俺また誘いますから。次は俺が払うんで!」
もう一軒行きたそうにしていた北山を置いて俺はさっさと電車に乗り込んだ。
はーーー、面倒なことになった。
考えてみたらあいつに口止めするのを忘れた。こちらから連絡したくはないが仕方なく”今日の件は他言無用”とだけメッセージを入れた。
あいつからは俺の言葉を完全に無視して"楽しかったです。また飲みましょうね”という返事が来た。
どうして人の話を聞かない思い込みの激しい男ばかり俺に言い寄って来るんだ?
「俺、見ちゃったんすよ。課長のマンションと俺の住んでる所割と近くて」
え?何を見たの!?俺は何も言えず口をパクパクしながら彼の発言を待つことしかできなかった。
「スーパーで仲良さそうに買物してましたよね。恋人オーラだだ漏れでしたよ」
「ええっ!?見てたの?!」
つーかそんなオーラ出てないだろ??
「はい。俺、課長がゲイなのは前から知ってて~」
ああああそうなんだ?それ知ってんのか……
「新木さんはノンケだと思ってたんですけど、なんか雰囲気変わりましたよね。課長と付き合ってから」
だからなんで課長と付き合ってると思った?スーパーで買物くらいするだろ、上司と部下なんだから。
いやしねぇか?!
「べ、別に付き合ってるとかじゃないし……たまたま買い物一緒にしてただけで」
「そこ隠すんですか?ふーん。でも会社でキスしてたでしょ?」
俺は目を見開いて北山を凝視した。俺は混乱で息苦しくなってきて鼻の穴を広げて必死で呼吸する。
誰かに見えるようなところでキスなんてしてねーはずだぞ。嘘だな?ハッタリだろ?!
「前にトイレ行ったら個室から音が……ね?随分激しいキスだったみたいですけど」
げっ、あのときか!!
冷や汗が出て来て、また胃が痛くなって来た。
「そんで俺、とっさに隠れたんですけどその後課長が出てきて~、その後相手誰かなって待ってたらしばらくして新木さん出てきたんでびっくりしましたよ。前は女の子と付き合ってましたよね?新木さん。男もイケるんだ~って」
あああああ……シにたい……男はイケないから……勘違いしないで……
「俺もバイなんですよ。同じですね!」
北山は整った顔に満面の笑みを浮かべてこちらを見てくる。
やめろ、その同志を見るような目でこっちを見るな!女の子なら頬染めるとこかもしれんが、男のお前になどモテても微塵も嬉しくない。
「それで、一時期新木さんすごい満ち足りたような顔してて上手くいってるんだなあって微笑ましく思ってたんですけどね」
ーーーなにそれ恥ずかしくて死ねる……!
俺は口元を覆って目を瞑った。もう何も聞きたくないし言いたくないぞ。
「その後いきなり元気なくなったんで、ああ別れたなって。当たってるでしょ?」
俺は何も言えなかった。北山がグラスを口に運んだのを見て自分も口が乾いていることに気づき、咄嗟に氷が溶けて薄くなったウーロンハイを飲んだ。
ここでどう対処すべきなのかわからない。頭が回らない。
「否定しないなら肯定と取りますよ。それで、もしよかったら俺と付き合いません?」
「はぁ!?」
何言ってんだこいつ。
「課長と別れて今フリーなんですよね。金曜の夜誘ってすぐ付いて来るくらいだから」
「なっ、そ、それは……」
「俺密かに新木さんいいなって思ってたんですよね。でもノンケだろうから諦めてたんです」
いや……だからそんな笑顔向けられてもな。お前にモテても嬉しくねえんだわ。
「それがバイだなんてラッキーだなって♡俺、あんまり束縛とかしない方ですし気楽に付き合っちゃいましょうよ。年下も良いもんですよ」
俺はグラスをダンッとテーブルに置いた。
「あのなぁ、俺は女が好きなの。勘違いするな」
精一杯睨んだが、北山はヘラヘラと笑っている。
「え~、俺だって好きですよ女の子」
「俺は胸がデカくてやわらか~い女が好きなんだよ!お前みたいな筋張った男と付き合ってもなんも楽しくない」
「え?俺の顔好みじゃないです?じゃあ課長みたいならいいの??」
北山は首を傾げて顎を撫でている。どんだけ自分の容姿に自身あるんだよ。
ムカつく奴だな。
「なわけねぇだろ……」
「あ!もしかして男と付き合うのは課長が初めてだったとか?」
図星をさされて顔が熱くなる。
「もう、この話はおしまい!俺はお前と付き合う気はない。以上!」
「えー、なんでですかぁ!」
俺はベルを鳴らして店員を呼び、勝手に会計を済ませた。一応先輩だから俺が奢る。なんで口説かれた俺が払わにゃならんのだという苛立ちはあったが、奢られてしまえばそれはそれでマズイという気がした。
「新木さん、俺また誘いますから。次は俺が払うんで!」
もう一軒行きたそうにしていた北山を置いて俺はさっさと電車に乗り込んだ。
はーーー、面倒なことになった。
考えてみたらあいつに口止めするのを忘れた。こちらから連絡したくはないが仕方なく”今日の件は他言無用”とだけメッセージを入れた。
あいつからは俺の言葉を完全に無視して"楽しかったです。また飲みましょうね”という返事が来た。
どうして人の話を聞かない思い込みの激しい男ばかり俺に言い寄って来るんだ?
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