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14.蜜の味

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「んっ……ふぅ」

僕は彼の唇の隙間に舌をねじ込んだ。
薫は最初僕の顔を押しのけようとしていたが、徐々に力を失い彼もこちらのキスに応じ始めた。しまいには僕の唾液を余さず全て飲み干そうとするかのように、彼はじゅるじゅると吸い付いて離れなくなった。
普段物静かで冷静な彼が、みだらな音を立てながら自分の唇を吸っていることに僕は不思議と満たされる気がした。

「はぁっ……お願い、薫。して……」

彼は無言で少し乱暴に僕のパジャマを剥ぎ取った。彼も裸になり、二人を隔てていた布地が失われる。お互いの少し汗ばんだ肌が密着し、僕はうっとりした。これまで、僕がフェラチオされることはあっても薫の肌にこうして触れて抱き合うのは初めてだったのだ。彼の裸体を見ることすら、さっきシャワー中に目にしたのがほとんど初めてと言ってもよかった。

「唯斗……ああ、こんなに甘いなんて」

薫は僕の全身に舌を這わせてその味について囁いた。身体の部位によって風味が違うらしいが、そんなことを言われても恥ずかしいだけだった。

「関節の部分が一番味が濃い。脇とか、足の付根がたまらなく美味しい……」
「い、いやだ。やめて……」

くすぐったくて、僕は身をよじった。彼の舌が徐々に身体の下部に及び、とうとう僕のペニスに触れた。

「あんっ……! はぁ、あ……気持ちいい……」

散々体中を舐め回され、昂ぶっていたモノはすぐにでも弾けてしまいそうだった。

「あ……だめ、離して、もう……」

すると彼は僕の言葉通りそこから唇を離した。

(え? あと少しだったのに――)

そして、これまで一度も触れられたことのない場所に舌が伸びてきた。

「えっ!? ま、待って――!」

陰茎の裏筋を下り、会陰を舌でくすぐられる。未知の感覚に僕は身を震わせた。

「ひぃっだ、だめ……ぁあ」

むずむずし、気持ち良いのか悪いのかよくわからない。そうしている間に今度はその舌先が双丘の間へと潜り込んだ。

「やっ……いや!」

男同士でするにはそこを使うと知識としては知っていた。しかし、そんなところを舐められるとは思ってもみなかった。

「やめて。そんな所舐めちゃダメ……!」
「暴れないで。すごく……甘くて美味しい」
「やだ……や……」
「食べてって言ったのは唯斗だろ。おとなしくして」

そのように言われては、僕は黙るしかなかった。

(そうだ。食べてくれと頼んだのは僕だ……)

しかし、耐え難い羞恥心に僕は涙を抑えきれなかった。普段排泄にしか使わない器官に、好きな人の舌が入り込んでいると思うとめまいがしそうだ。

「ぅう……っ、んっ」
「美味しい……唯斗、全部食べつくしたい」
「あぅっ……あっ、ああっ」

(もう、無理……!)

「薫お願い口でするのはもう許して。いいから、早く薫のを入れて……」

これを言うのもまた別の意味で相当恥ずかしかった。しかしこのままではいつまで舐め続けられるかわからず僕は懇願した。

「お願い……!」
「わかった、じゃあまだちょっと痛むと思うけど入れるよ」

そう言って彼は僕に覆いかぶさってきた。正常位でゆっくりと彼の腰が僕の身体に押し付けられる。

「ん……」
「力を脱いて。そう、上手だよ」
「ふぅ……」
「もう少しだよ、呼吸をして」
「うん……あぅ……」
「苦しい? もうやめようか?」
「あ……だいじょぶだ……から、やめない……で」

本当はかなり痛かった。だけど、彼の欲望が僕を貫いているのだと思えばそれすら快感だった。
フォークだと知った後でも、彼に身を預けるのにためらいはなかった。

(早く教えてくれれば良かったのに――薫の気持ちが僕から離れてるかもって思う方がずっとつらかった)

「唯斗、すごくいいよ」

薫が余裕を無くした顔で僕の唇や首筋を舐め、激しく腰を打ちつけてくる。
僕は痛み混じりの快感に少しずつ慣れ、彼に言う。

「もっとして。食べても良いから」

すると、鎖骨に鋭い痛みを感じた。

「ッ!」

薫が僕に歯を立てていた。

「あっあ……」

耳や肩にも歯を立てられる。すると、最初は痛みしか感じなかった部分からじわじわと別の感覚が広がり始めた。

(え、何これ……?)

「あっ、薫、かおる、何か変……んっああっ」

(ヤバい、気持ちいい、気持ちいい! なんで?)

杭を打ち込まれている部分も、首や耳の噛み跡も、さっきまで痛みを感じていた部分からすさまじい快感が襲ってくる。

「唯斗……可愛い。すごくやらしい顔してるよ」
「あんっ……だめ、イく、イっちゃう……!」

訳のわからない快感の波に揺られて、僕は欲望を吐き出した。白濁液が腹部へ飛び散る。薫はそれを手で掻き集め、ベロリと舐めた。

「ああ、美味しいよ。最高にうまい」

うっとりした顔で言いながらも彼は動きを止めなかった。

「あ、あ、やめ……っ、もうイったからやめてぇ……! だめ、また出ちゃう、出ちゃ、あっ」

僕の中が刺激され、また新たな波が頂点に達する。
じんじんする首元の快感と、じゅくじゅくと熟れたような下腹部の快感に僕は正気を失いつつあった。

「気持ちいいよぉ……もっと食べて……薫もっと……」

すると薫が僕の身体を抱き上げ、対面座位で下から突き上げてきた。それにのけぞった僕の乳首を薫が噛んだ。

「あぅっ! いい、いい……それ気持ちいい!」

(痛いの気持ちいい、じんじんしてたまらない――)

僕は狂ったように彼を求め、薫もまた普段の冷静さを失って激しく僕を抱いた。
彼に口でしてもらう気持ちよさしか知らなかった僕は、全身愛されるよろこびに震えながら何度も吐精した。
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