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13.ケーキの告白

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「え? そんなこと思ってたの?」
「……悪い? 僕だって、悩むこともあるんだから」

こんなことを言わなくちゃいけないのが惨めで、僕は顔を背けた。

「唯斗……」
「実家にいたときは、僕が成人するまで待ってくれてるんだと思ってた。でも、二人で暮らしてからも薫は僕を気持ちよくしてくれるばかりで――薫の身体には触らせてくれなかったじゃないか。だから、薫は本当は僕としたくないんじゃないかって思ったんだ」

薫はふっと息を吐いて首を振る。

「俺が唯斗としたくない? そんなわけないだろ、したいに決まってる。これでも我慢しているんだよ」
「我慢? そんなのしなくていいじゃん。僕も大人だし、二人きりなんだよ」

(一体何が問題なんだよ?)

「唯斗と――ちゃんとセックスできる自信がないんだ」

それを聞いて胸がずきりと痛んだ。

(僕ではそういう対象にならないってこと――?)

泣きそうな顔になった僕に薫が真顔で言う。

「君を抱いたら、興奮のあまり食べたくなるんじゃないかって……自分を抑えられる自信が無いんだ」
「え?」
「俺は、唯斗の匂いを嗅ぎながらキスして、唾液を味わうことで自分の欲望を満たしてる。でもそれでは我慢できなくて……たまにでもいいから唯斗の精液を飲みたくなるんだ」
「か、薫……!」

そのときのことを思い出して顔が火照った。

「唯斗のこれを口に含んで……」と彼は僕の脚の付け根から生える茎をパジャマの上からひと撫でした。僕はその手の思いがけない熱さに吐息を漏らした。薫はその息さえも飲み込むように口づけで覆った。しばらく口中を舌で撫で回される。その間彼の手のひらで股をまさぐられ、そこは徐々に硬度を増していった。難しい話をされた後に身体を甘く撫でられ、疲れ切っていた僕は頭がぼんやりしてくる。

「ここから溢れてくる汁を舐めると、痺れるような甘さで脳天を雷に打たれたみたいに恍惚とするんだ。普段なんの味も感じない舌が、びりびりと刺激を受けて……。唯斗の身体が熱くなると、たまらなく良い匂いがする。それを嗅いでいたら、食欲と一緒に性欲が湧き上がって来るんだ。蜜のように甘い唯斗の精液を飲み込むと、俺も達してしまいそうになる」

そんな風に思われているなんて知らなかった。ただ自分が快感を追うのに夢中になっていたから――。

「正直に言うと、君をめちゃくちゃにしたいと思ったことは何度もある。だけど君を傷つけたくなくて、どうしてもそれ以上は踏み出せなかった」
「薫……僕……」
「唯斗を失ったらと思うと――」

薫が端正な顔を悲しそうに歪めてこちらを見下ろしていた。その目を見ながら僕はつぶやく。

「僕は……抱いて欲しい。薫としたいよ」
「唯斗、それはできない。俺は君なしでは生きていけないんだ」
「どうして? 僕、継母の寄越すフォークに食べられるくらいなら薫に食べられたい」

彼は困ったように眉を下げ、僕に口づけした。

「頼むから俺を困らせないで」
「嫌だ。薫がしてくれないなら、僕は一人でここを出ていく」

僕の言葉に彼が血相を変えて言う。

「だめだ。いつ奥様の息がかかった奴が来るかわからないんだぞ」
「そんなの、きりがないよ。薫はその度に人を殺して、住処を変えて逃げ回り続けるの?」
「そうするしかないんだよ、唯斗」
「変だよ。そんなのどうかしてる。僕はこれ以上薫にあんなことしてほしくない!」
「唯斗……」
「お願い、こんなこともうやめよう。薫が終わりにして。もう、他の人を殺さなくてもいいように」
「だめだ――何を考えてるんだ?」
「だって、僕がいるから薫はフォークを殺さないといけないんでしょう? それなら、僕が消えればいいじゃないか」

彼が首を横にゆっくりと振る。

「僕を食べてよ、薫」

薫が苦悶に満ちた表情で僕の頬に手を添えた。

「やめてくれ。そんなこと言わないで」
「僕は本気だよ。あの店に行って、別のフォークの人に頼んでもいいの?」
「だめだ……そんなのは絶対に許さない」

僕は彼の首に腕を回し、唇を彼の唇へ押し付けた。
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