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6.謎の店

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「あなたここに用があるの?」
「あ、いえ……そういうわけでは……」
「そうじゃないなら仕事の邪魔だから、消えてくれる?」

金色に近いブラウンのロングヘアに派手なメイクの美人はそう言って中に戻ろうとした。僕は焦って引き止める。

「あの! ここは一体……さっきの人がフォークだとか言ってましたけど……なんのお店なんですか」
「あなたが知る必要は無いわ。ここは会員制だから、紹介の無い人間は入れないわよ。あきらめて、じゃあ」

女性は今度こそきっぱりと僕を拒絶するようにドアを閉めた。

(フォークのお客様……ケーキの新人……一体この中で何が行われているっていうんだ?)

いかがわしい店の並ぶ歓楽街。
その中に、フォークやケーキという単語を使うお店がある。そして、その中に薫が入っていった。

(――まさか、フォークがケーキを買う店?)

そういう店があるというのは噂で聞いたことがある。昔、人身売買に近い形でケーキの人間を 斡旋あっせんする組織があったと――。
しかしそのような倫理に反することは都市伝説的に語られるだけで、現実にあればとっくに規制されて現在は行われていないはずだ。

(そんなはずない。しかも、薫がそんな場に通っているだなんて――)

ザリ、と路地に踏み入って来た足音に僕はびくっと体をすくませた。カップルらしき二人が僕とすれ違い、路地を抜けていく。僕はほっと息を吐いた。

(帰ろう……)

誰とも目を合わせず、足早に大きな通りまで向かう。
タクシーを捕まえて自宅に戻った。アプリを確認してみると、薫はまださっきの場所にいた。

「何してるんだよ、薫」

何事もなかったかのように、僕はベッドに入った。
目を瞑ってもなかなか眠りは訪れてくれなかった。それでも、彼が帰ってくるまでには寝ていたようで、朝起きたら知らぬ間に薫が隣で眠っていた。

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