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4.犠牲者
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朝からあんなことをしていたのでいつものニュースは終わっていた。しかし、その後のワイドショーではまたフォーク殺人の新たな犠牲者が出たと話題になっていた。
「え、嘘。また?」
「……そうみたいだね」
「しかも、今度もこの近く……?」
「ああ、引越しを決めて正解だった。そうだ唯斗、新しいベッドに変えようか? 今のベッドの寝心地が良くないって前に言っていたよね」
薫は殺人事件など気にもしていない様子で家具のことを話してくる。関係のない人間の死についてそこまで思い悩む必要は無いと思うものの、なんとなく釈然としなかった。
「ベッドはどうでもいいよ。僕、食欲が無いから朝食はもういい」
かじりかけのトーストを残して席を立つ僕に彼が心配そうに声をかけてくる。
「え? 体調が悪いの?」
「ううん、そういうわけじゃない。でも、お腹が空かないんだ。今日は一日部屋にいる」
「そうか――わかった。俺はちょっと出掛ける用事があるんだけど、一人にしても大丈夫?」
「うん。大丈夫だから行ってきて」
薫は食事を終えて片付けをした後、着替えて出掛けて行った。
どこへ行くのか聞きはしなかった。これまでも聞いたことがないし、不審に思われるだろうから。
殺人事件といい、何を考えているのかわからない薫といい、なにもかもが憂鬱だった。
◇◇◇
その夜、また薫は夜中に出掛けて行った。もしかすると寝ていて気付かなかっただけで、今までも頻繁に夜中に出掛けていたのかもしれない。
(僕じゃなくて、本当に好きな相手に会いに――?)
そう思うと居てもたってもいられなかった。
僕はそれから夜中までなるべく寝ないように気を付けて、薫が出掛けたら尾行しようと考えた。
これまではパジャマで寝ていたけど、すぐに追いかけられるようにスウェットで寝るようにした。薫が少し怪訝そうな顔をしていたけど、「最近地震が多いでしょ? すぐに逃げられるように服を枕元に置けってテレビでやってたんだ。でも、面倒だからこれで寝たらそのまま逃げられるでしょ」と言うと「唯斗は面倒くさがりだね」と笑っていた。
これで薫がいつ出掛けても、すぐに追いかけられる。
「え、嘘。また?」
「……そうみたいだね」
「しかも、今度もこの近く……?」
「ああ、引越しを決めて正解だった。そうだ唯斗、新しいベッドに変えようか? 今のベッドの寝心地が良くないって前に言っていたよね」
薫は殺人事件など気にもしていない様子で家具のことを話してくる。関係のない人間の死についてそこまで思い悩む必要は無いと思うものの、なんとなく釈然としなかった。
「ベッドはどうでもいいよ。僕、食欲が無いから朝食はもういい」
かじりかけのトーストを残して席を立つ僕に彼が心配そうに声をかけてくる。
「え? 体調が悪いの?」
「ううん、そういうわけじゃない。でも、お腹が空かないんだ。今日は一日部屋にいる」
「そうか――わかった。俺はちょっと出掛ける用事があるんだけど、一人にしても大丈夫?」
「うん。大丈夫だから行ってきて」
薫は食事を終えて片付けをした後、着替えて出掛けて行った。
どこへ行くのか聞きはしなかった。これまでも聞いたことがないし、不審に思われるだろうから。
殺人事件といい、何を考えているのかわからない薫といい、なにもかもが憂鬱だった。
◇◇◇
その夜、また薫は夜中に出掛けて行った。もしかすると寝ていて気付かなかっただけで、今までも頻繁に夜中に出掛けていたのかもしれない。
(僕じゃなくて、本当に好きな相手に会いに――?)
そう思うと居てもたってもいられなかった。
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これで薫がいつ出掛けても、すぐに追いかけられる。
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