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21.繋がらない電話
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ある金曜の夜。柊一は京介にもう一度やり直したいと伝える決意をした。
削除したくてもできずにそのまま残っていた彼の電話番号――。しばらくスマホの画面を眺めた後で思い切って通話ボタンを押す。
もしかすると出掛けているかもしれない。そう思いながらコール音を聞いていたら、電話が繋がった。
「あ、け、京介さん……俺です。柊一です」
すると予想に反して京介とは違う若干高めな男性の声が応えた。
『わ~柊一くん? 久しぶり。リョウだよ~』
「え……あれ? これ、京介さんの番号じゃ……」
まさか別人が出るとは思わなくて柊一は焦った。
そして気がついた。京介はあのときの彼と一緒にいるんだ――。
『そうそう、ケイくん今シャワー中なんだ~』
いくら男性同士の恋愛に疎いとはいえ、この意味がわからないほど子どもではなかった。
(やっぱり俺なんかが恋人に立候補しなくても、間に合ってるってことか……)
『もしもし柊一くん? あとで掛け直すように言う?』
「あ、いえ、あの……大した用じゃないので結構です。お邪魔しました!」
以前バーで会ったリョウ――モデル並に整った容姿で、明るくて、きっと男と寝るのにも慣れている――。それに対して「男と寝ることもできない」自分。
柊一が京介にもう一度振り向いてもらおうと思うなら、腹をくくるしかない。自分だって本気を出せば――真面目に勉強することにかけては誰にも負けない。
柊一は先日ネットで購入した物を手に取った。
「これで勝負だ」
最近上司に残業を減らすように言われたため、柊一には時間があった。
「失うものなんて無いし、俺も男だ。見てろよ……」
削除したくてもできずにそのまま残っていた彼の電話番号――。しばらくスマホの画面を眺めた後で思い切って通話ボタンを押す。
もしかすると出掛けているかもしれない。そう思いながらコール音を聞いていたら、電話が繋がった。
「あ、け、京介さん……俺です。柊一です」
すると予想に反して京介とは違う若干高めな男性の声が応えた。
『わ~柊一くん? 久しぶり。リョウだよ~』
「え……あれ? これ、京介さんの番号じゃ……」
まさか別人が出るとは思わなくて柊一は焦った。
そして気がついた。京介はあのときの彼と一緒にいるんだ――。
『そうそう、ケイくん今シャワー中なんだ~』
いくら男性同士の恋愛に疎いとはいえ、この意味がわからないほど子どもではなかった。
(やっぱり俺なんかが恋人に立候補しなくても、間に合ってるってことか……)
『もしもし柊一くん? あとで掛け直すように言う?』
「あ、いえ、あの……大した用じゃないので結構です。お邪魔しました!」
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柊一が京介にもう一度振り向いてもらおうと思うなら、腹をくくるしかない。自分だって本気を出せば――真面目に勉強することにかけては誰にも負けない。
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「これで勝負だ」
最近上司に残業を減らすように言われたため、柊一には時間があった。
「失うものなんて無いし、俺も男だ。見てろよ……」
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