14 / 25
14.◆やりすぎた?
しおりを挟む
真面目で、少し子どもっぽいくらい純粋な感性を持つ柊一。その彼が「キスの続きを教えて」と言ってきた時の艶っぽい表情はたまらなかった。
女性に対して気を遣うタイプの彼が一緒に居てリラックスできる相手でありたい、と京介は思っていた。それは成功していたように思う。
しかし、それだけではやはり物足りない。彼の肉体的な欲望も引き出してみたい。この手で彼のベールを一枚ずつ剥ぎ取ってみたいという気持ちは日に日に強くなっていった。そして、今夜彼の紅潮した肌を見てもう黙っていられなくなった。もちろん無理矢理するつもりはなく、あくまでも彼の意志で体を許す気になれば――の話だ。
柊一は京介の施す愛撫に面白いくらい反応してくれた。彼は童貞ではないが男相手のセックス経験が無い。恥じらう姿は初々しく、それは京介に嫌でもかつて失恋した相手を思い出させた。
一人の相手に執着するのは危険だとわかっている。それなのに、柊一といると知らぬ間にのめり込んで理性を失いそうになるのだ。
快感で我を忘れながらこちらの腕にしがみついてくる彼が愛しくて、キスをした。柊一は京介とのキスが気に入ったようで、すぐに手のひらに彼の温かいものが放たれた。
京介は彼の秘められた一面を暴いたという達成感を味わいつつ、羞恥から両手で顔を隠してしまった柊一の顔を覗き込んだ。
「ぅう……っ、ひっく……」
「柊一? 大丈夫か?」
まさか泣いてしまうとは思わず焦った。柔らかいダークブラウンの髪の毛を撫でて落ち着かせようとするが、彼の動揺は収まらない。
「も……無理……無理です、ごめんなさい――」
彼は泣きながら言った。京介はようやく彼が本気でやめてほしいのだと理解した。
「すまない、もうしない。大丈夫だよ柊一。もうしない」
「ごめんなさい、本当にごめんなさい……」
彼は何度も謝った。何かから身を守るように体を丸め、こちらを見ない。
「謝る必要はないよ。無理しなくていい。この先は君の気持ちの準備ができてからにしよう」
柊一はしゃくりあげながら頷いた。可哀想に、どうやら彼の精神的なキャパを超えてしまったようだ。
(――というより男同士ということに拒否感が強いか……)
好奇心はあるのかもしれない。肉体的には男相手に感じる素質もある。しかし、それを受け入れられるほど彼の精神は成熟していない。
自分は別の部屋で寝るから柊一にベッドで寝ていいと伝える。しかし彼は首を振り、京介の貸した服を着て帰っていった。
やりすぎた――いや、彼がしてほしいと言ったのだ。だが、まだ早すぎた。もしくは、やはり彼は男相手ではだめなのかもしれない。
柊一が帰った後、どうしても寝付けなくてブランデーを飲みながら呆然としていた。思ったよりショックを受けている。彼が自分に気を許しているのを感じ、ベッドでも良い関係になれるんじゃないかとどこかで自惚れていた。しかしやはり柊一のような繊細な人物に中途半端な気持ちで手を出すなんて間違いだった。
(完全に嫌われたかな。こんなことになるくらいなら、最初から手を出そうとしなければよかった……)
あの後柊一からの連絡はぱったり来なくなった。これまでなら帰宅したら必ずメッセージをくれていたのに、だ。こちらから様子をうかがうメッセージを送ると、最低限の返事はしてくれた。しかし、これまでの態度とは違ってこちらに一線引いているのは明らかだった。
柊一が置いていったシャツはクリーニングから戻ってきていた。しかし、彼との繋がりがこのシャツ一枚とは、あまりにも心もとなかった。
女性に対して気を遣うタイプの彼が一緒に居てリラックスできる相手でありたい、と京介は思っていた。それは成功していたように思う。
しかし、それだけではやはり物足りない。彼の肉体的な欲望も引き出してみたい。この手で彼のベールを一枚ずつ剥ぎ取ってみたいという気持ちは日に日に強くなっていった。そして、今夜彼の紅潮した肌を見てもう黙っていられなくなった。もちろん無理矢理するつもりはなく、あくまでも彼の意志で体を許す気になれば――の話だ。
柊一は京介の施す愛撫に面白いくらい反応してくれた。彼は童貞ではないが男相手のセックス経験が無い。恥じらう姿は初々しく、それは京介に嫌でもかつて失恋した相手を思い出させた。
一人の相手に執着するのは危険だとわかっている。それなのに、柊一といると知らぬ間にのめり込んで理性を失いそうになるのだ。
快感で我を忘れながらこちらの腕にしがみついてくる彼が愛しくて、キスをした。柊一は京介とのキスが気に入ったようで、すぐに手のひらに彼の温かいものが放たれた。
京介は彼の秘められた一面を暴いたという達成感を味わいつつ、羞恥から両手で顔を隠してしまった柊一の顔を覗き込んだ。
「ぅう……っ、ひっく……」
「柊一? 大丈夫か?」
まさか泣いてしまうとは思わず焦った。柔らかいダークブラウンの髪の毛を撫でて落ち着かせようとするが、彼の動揺は収まらない。
「も……無理……無理です、ごめんなさい――」
彼は泣きながら言った。京介はようやく彼が本気でやめてほしいのだと理解した。
「すまない、もうしない。大丈夫だよ柊一。もうしない」
「ごめんなさい、本当にごめんなさい……」
彼は何度も謝った。何かから身を守るように体を丸め、こちらを見ない。
「謝る必要はないよ。無理しなくていい。この先は君の気持ちの準備ができてからにしよう」
柊一はしゃくりあげながら頷いた。可哀想に、どうやら彼の精神的なキャパを超えてしまったようだ。
(――というより男同士ということに拒否感が強いか……)
好奇心はあるのかもしれない。肉体的には男相手に感じる素質もある。しかし、それを受け入れられるほど彼の精神は成熟していない。
自分は別の部屋で寝るから柊一にベッドで寝ていいと伝える。しかし彼は首を振り、京介の貸した服を着て帰っていった。
やりすぎた――いや、彼がしてほしいと言ったのだ。だが、まだ早すぎた。もしくは、やはり彼は男相手ではだめなのかもしれない。
柊一が帰った後、どうしても寝付けなくてブランデーを飲みながら呆然としていた。思ったよりショックを受けている。彼が自分に気を許しているのを感じ、ベッドでも良い関係になれるんじゃないかとどこかで自惚れていた。しかしやはり柊一のような繊細な人物に中途半端な気持ちで手を出すなんて間違いだった。
(完全に嫌われたかな。こんなことになるくらいなら、最初から手を出そうとしなければよかった……)
あの後柊一からの連絡はぱったり来なくなった。これまでなら帰宅したら必ずメッセージをくれていたのに、だ。こちらから様子をうかがうメッセージを送ると、最低限の返事はしてくれた。しかし、これまでの態度とは違ってこちらに一線引いているのは明らかだった。
柊一が置いていったシャツはクリーニングから戻ってきていた。しかし、彼との繋がりがこのシャツ一枚とは、あまりにも心もとなかった。
10
お気に入りに追加
786
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
鬼の愛人
のらねことすていぬ
BL
ヤクザの組長の息子である俺は、ずっと護衛かつ教育係だった逆原に恋をしていた。だが男である俺に彼は見向きもしようとしない。しかも彼は近々出世して教育係から外れてしまうらしい。叶わない恋心に苦しくなった俺は、ある日計画を企てて……。ヤクザ若頭×跡取り
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
理香は俺のカノジョじゃねえ
中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
花婿候補は冴えないαでした
いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
木陰
のらねことすていぬ
BL
貴族の子息のセーレは、庭師のベレトを誘惑して物置に引きずり込んでいた。本当だったらこんなことはいけないことだと分かっている。でも、もうじき家を離れないといけないセーレは最後の思い出が欲しくて……。
庭師(?)×貴族の息子
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
すれ違い片想い
高嗣水清太
BL
「なぁ、獅郎。吹雪って好きなヤツいるか聞いてねェか?」
ずっと好きだった幼馴染は、無邪気に残酷な言葉を吐いた――。
※六~七年前に二次創作で書いた小説をリメイク、改稿したお話です。
他の短編はノベプラに移行しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる