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痴話喧嘩編

喧嘩して怒った俺は篠田弟の家に行く(2)

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夜中か明け方かわからないが、誰かに腹を触られる感触で目を覚ました。

「佑成…?」

頭はぼんやりしたまま、キスしようとしたけど避けられて、こめかみにキスされた。
…ような気がする。

俺はまた眠りに就いた。


* * * * * *


朝起きてここが自分の家じゃないのに気付いた。
ああ、家出したんだった。

ベッドの下に布団を敷いて剣志が寝ていた。
俺がベッド占領しちゃったのか…押しかけてきた上に悪いことしたな。

「ふぁあ、なんだかんだよく寝たな」

さて、朝飯でも作るか。

よそのうちのキッチンだけど勝手に借りて目玉焼きとトーストを焼き、冷蔵庫から勝手に見つけたベーコンとレタスも拝借。
篠田のうちと同じコーヒーメーカーだったから使い方もわかったのでコーヒーも入れた。

「剣志~!ご飯できたよ」

「ん…ああ…ありがと…」

篠田いないのに剣志と朝ごはん食べてるの変な感じだな~と思いながら食べた。
しっかしやっぱイケメン兄弟だよなあ。
寝起きで髪ぼっさぼさなのにこれ?うらやまし。

「剣志、今日買い物とか付き合ってもらえる?」

「え、すぐ帰んないのかよ!?」

剣志は驚いた顔をしていた。
なんでそんな驚く?

「うん。別にもう怒ってないけどそのまま帰るの癪だから。暇だろ?デートしよ~♡」

「デートってバカかよ…別に暇だけど」

「暇なの?てかさ、お前恋人とかいねーの?その見た目、宝の持ち腐れじゃん」

イケメンエッセンスを俺にも分けてくれ。
せめて身長だけでも。

「うるさいなぁ。そっちこそ、兄貴と喧嘩した時俺のところしか頼るとこないわけ?友達いねーのかよ」

不満げな顔で言い返してきた。
相変わらず憎まれ口ばかり叩く奴だ。

「だってさー。俺の年代だと友達大体もう既婚者なんだよ。だからいきなり泊めてとか言えないわけ」

「ふーん。そりゃそうか」

「なー?だからお前のとこに来るしかないわけ」

「やれやれ…で、どこ行くの」

結局その日は買い物をして、映画を観に行った。あんまり観たいのがなかったけど適当に選んだのが意外と面白くて当たりだった。

「結構面白かったな!」

「ですね。期待してなかったのが良かったかも」

その後カフェでコーヒーを飲み、映画の感想とか解釈とか色々話して俺は満足した。
なんだかんだこうやって付き合ってくれる剣志って優しいよな。

「さーてそろそろ帰るか!」

「じゃあ、お疲れ様でした~」

剣志が頭を下げる。

「は?」

「え?」

「いや、お疲れ様じゃないから。お前んち帰るんだよ」

「はい?今日兄貴んとこ帰るって言ったじゃないですか!」

剣志はびっくりして大きな声を出した。

「俺は言ってねえよ。食洗機買って良いって迎えに来るまで俺は帰らねえ」

「いや知らんし!もう俺は帰ります。家電量販店でも見てけば良いじゃないすか。ね?じゃー、バイバイ」   

踵を返して帰ろうとするから俺は服の裾を引っ張った。

「いやいや、置いてくなよ。傷心の義理の兄を見捨てるのか?」

「誰が義理の兄だよ」

苦虫を噛み潰したような顔をしてる。
俺も、別に帰っても良いんだけどここまできたら意地だ。

「晩飯作るから!ね?」


そしてまた剣志の部屋に帰宅し、俺は料理を始めた。
なんとなく無心になりたくて、ひたすら野菜をみじん切りしてミートソースを作った。
玉ねぎやしめじやにんじんなどをガンガンみじん切りしていたらなんとなく心が落ち着いた。
だけど、篠田のことを考えていてボーッとしてしまいうっかり指を切った。

「いってぇ!」

やば、結構血が出てきた…
でもなんとなくそれを見つめていた。

「大丈夫か~?っておい、血が!」

「ああ、切っちゃった」

剣志が急いでティッシュで巻いてギュッと握ってくれる。
心臓より高い位置でしばらく手を持っていてくれた。

あーーもう、何やってんだろう。
弟にまで迷惑かけたらダメだよな。
もうわかってもらえなくてもいいや!帰ろう。

絆創膏を貼ってもらい、そろそろ帰ろうとした時インターホンが鳴った。

「兄貴だな。ほら、迎えが来たよ」


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