【完結】セックス依存症の精神科医がスパダリCEOと結ばれるまで

grotta

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縁談

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結局あの日は健斗が迎えに来て、僕は家に帰った。東郷に抱きしめられキスされたから、肉体的な発作は治まったものの、精神的にショックが大きくて消耗していた。
健斗は僕の様子を気に病んで、帰り道はずっと無言だった。

家に帰り着いてからポツリと言った。

「ごめん、あんなこと電話で言わなければ……」

しかしいずれあの記事は目についたはずだから健斗のせいではなかった。

――婚約のことを僕に黙っていた東郷が悪い?
それも、記者がスクープを狙った結果だから責めきれない。
――僕があそこに行かなければよかった?
これはそうかも。
――東郷が結婚後もこの関係をやめる気がなかったことは?
これは相当僕にとってキツかった。
信じられない。僕は東郷のことを好きだしいいヤツだと信じていたけどまさかあんなこと考えてたなんて……。
だけどおそらくそれは、僕の身体のことを気にしているからだろう。友人を見捨てられない奴なのだ。それはわかってはいた。

でも奥さんを娶りながら僕のことにまで気を回さなくて良いのだ。皆、僕のことは捨てて自分の欲しいものを選ぶというだけのことだから。

数日後、父から珍しく呼び出しがあった。精神的にきつい時期ではあったが、せめてピシッと見えるようにしたくてわざわざスーツを着ていった。

「え……縁談ですか? 僕に……?」
「そうだ。ただし女性ではない。お前より年上の男性からの縁談だ」
「はい……?」
「お前を養子縁組で貰いたいと言っている人がいるんだ」

僕は驚いて言葉もなかった。そんな可能性は考えたこともなかった。
でも、それならぼくのこの病気もわかって受け止めてくれる人と一緒になればいいということ?

「それで、その方は僕の病気のことはご存知なんですか?」
「ああ、勿論だ。そのうえでお前を娶りたいと言っている」
「そう……ですか……」

僕はその場で答えられる筈もなく、一旦持ち帰って検討させてもらうことにした。
釣書のようなものを渡されたので帰ってから見てみよう。
辞去しようとしたら、去り際に父に呼び止められた。

「ああ、静音。そのスーツだが」
「はい」
「似合っていないな。無理に男らしくする必要はない。先方の好みもおそらく……そういうことではない」
「……はい……」

泣きっ面に蜂とはこのことか。僕は何をやってもだめだ……。
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