24 / 40
恋の罪悪感
しおりを挟む
僕を散々絶頂に追い立て喘がせて、東郷は立ち去った。
東郷も気持ちよくなれたのかわからないくらい僕には余裕がなかった。
健斗が駆けつけた時、僕はベッドにへたり込んで泣いていた。裸のままシーツを身体に巻きつけただけの僕を見て健斗は血相を変えた。
「おい! 静音泣いてるのか? なあ、大丈夫か? まさか酷いことされたんじゃないだろうな!?」
「ううん……違う……」
僕は銀木犀の生けられた花瓶を見つめて言った。
「すごく優しくしてくれた……」
僕がぼうっとしたまま座っていると、健斗は意味を理解して苦しげな顔をした。
全部話してるから、わかってるんだ。僕が東郷のことを本気で好きになってしまったことを。
「静音……」
「僕はだめだって言ったのに――挿れてって言わされて……」
「わかってるから何も言うなよ」
「気持ちよくて頭がふわふわして……」
「大丈夫、静音は悪くないから」
これで僕が悪くなかったら誰が悪いんだよ。
東郷が上野のときみたく変になっちゃったらどうするの?
そうならないことを祈るしか無い。でも、逆に彼が僕に少しでも執着してくれたらいいのにと思ってしまう自分もいた。
――またあの腕で抱きしめてもらえたら?
いや、だめだ。父さんの顔が浮かんで一気に現実に引き戻される。東郷は長男で経営のトップ。絶対だめだ。
もう会わないし、連絡もしない。
一回だけ寝てみたいって思ってたのが叶ってよかったって思おう。
そうやってなんとか東郷のことを忘れようと、僕はまた毎週水曜日に色々な男と寝る日々を送り始めた。
東郷と寝てから数週間は、とても調子が良かった。体調が良すぎてちょっと怖いくらいだった。
東郷もそうだったのかな?
と少し考えたりした。でも基本的にはあまり彼のことを考えないようにしていた。
そんなある日、診察中に思わぬ出来事が起きた。初めて来院する患者さんで、事前に書いてもらった問診票の名前は知らない名だった。
番号で診察室に呼び、入ってきた人物に僕はぎょっとした。
「東郷……?」
僕は問診票と彼の顔を見比べた。
――え、なんで? 間違えた? この問診票の名前は山田さんだ。
しかも今日の予約表に東郷の名前なんて無かった。僕が焦っているのを見て東郷は言った。
「お前が連絡くれないし水曜の予約も受けてもらえないから、偽名で今日予約取ってきたんだ」
え? そこまでする……?
やっぱり東郷おかしくなっちゃったのかな。
東郷も気持ちよくなれたのかわからないくらい僕には余裕がなかった。
健斗が駆けつけた時、僕はベッドにへたり込んで泣いていた。裸のままシーツを身体に巻きつけただけの僕を見て健斗は血相を変えた。
「おい! 静音泣いてるのか? なあ、大丈夫か? まさか酷いことされたんじゃないだろうな!?」
「ううん……違う……」
僕は銀木犀の生けられた花瓶を見つめて言った。
「すごく優しくしてくれた……」
僕がぼうっとしたまま座っていると、健斗は意味を理解して苦しげな顔をした。
全部話してるから、わかってるんだ。僕が東郷のことを本気で好きになってしまったことを。
「静音……」
「僕はだめだって言ったのに――挿れてって言わされて……」
「わかってるから何も言うなよ」
「気持ちよくて頭がふわふわして……」
「大丈夫、静音は悪くないから」
これで僕が悪くなかったら誰が悪いんだよ。
東郷が上野のときみたく変になっちゃったらどうするの?
そうならないことを祈るしか無い。でも、逆に彼が僕に少しでも執着してくれたらいいのにと思ってしまう自分もいた。
――またあの腕で抱きしめてもらえたら?
いや、だめだ。父さんの顔が浮かんで一気に現実に引き戻される。東郷は長男で経営のトップ。絶対だめだ。
もう会わないし、連絡もしない。
一回だけ寝てみたいって思ってたのが叶ってよかったって思おう。
そうやってなんとか東郷のことを忘れようと、僕はまた毎週水曜日に色々な男と寝る日々を送り始めた。
東郷と寝てから数週間は、とても調子が良かった。体調が良すぎてちょっと怖いくらいだった。
東郷もそうだったのかな?
と少し考えたりした。でも基本的にはあまり彼のことを考えないようにしていた。
そんなある日、診察中に思わぬ出来事が起きた。初めて来院する患者さんで、事前に書いてもらった問診票の名前は知らない名だった。
番号で診察室に呼び、入ってきた人物に僕はぎょっとした。
「東郷……?」
僕は問診票と彼の顔を見比べた。
――え、なんで? 間違えた? この問診票の名前は山田さんだ。
しかも今日の予約表に東郷の名前なんて無かった。僕が焦っているのを見て東郷は言った。
「お前が連絡くれないし水曜の予約も受けてもらえないから、偽名で今日予約取ってきたんだ」
え? そこまでする……?
やっぱり東郷おかしくなっちゃったのかな。
1
お気に入りに追加
719
あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。

孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる