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【side東郷】蒼井健斗と会う
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麗華から聞いた話に驚いて俺はすぐに西園寺に連絡した。しかし電話は着信拒否だし、メッセージの類も読まれていないようだった。
クリニックに偽名で潜り込むのは以前やって叱られたし、スタッフに顔を覚えられてるからもうできない。
どうしようかと悩んでいたとき、西園寺の従兄弟である蒼井健斗の存在を思い出した。
「なんですぐ思いつかなかったんだ!」
あいつは西園寺の病気の件などを全て管理していて、今回のことだって詳しいに違いなかった。西園寺に何かあったときのため、連絡先も交換してあったのに失念していたとは。
すぐに連絡して、無理やり会う約束を取り付けた。
「俺もあなた程じゃないが一応忙しい身なんですがね……」
ホテルのラウンジの席に着くなり蒼井は不平を漏らした。西園寺の体調のことで何かと俺が迷惑をかけているせいか、こちらにいい印象を持っていないようだ。
「申し訳ないと思っていますよ。だが急ぎの件なんだ、わかってますよね」
「聞きましたか。まあ、俺も静音の縁談についてそちらにご連絡しようと思っていましたが……」
「私に? なぜです?」
「はぁ、いやね……静音の相手の六条って男がどうもキナ臭いんですよ」
「なに? なぜそんな相手に静音が――」
「それが俺にもよくわからないんですよ。静音の親父さんは一体何を考えてるんだか……」
「おい、詳しく教えてくれ」
蒼井に聞いた話をまとめると、六条という男は静音の前にも既に二人養子縁組していて、中学生と高校生の男子が家にいるそうだ。そこへ母親代わりに静音を迎え入れたいという。
まずこの時点で何か不自然な気がする。
30代の男をわざわざ中高生の母親代わりにする、だ?
ここまでは表に出している情報だそうだ。しかし蒼井が興信所を使って調べたところによると、今から10年以上前にも養子縁組をしたことがあったそうだ。
「そのときの養子縁組なんだが、当時六条が30歳そこそこで、相手は20代前半の男性。まぁここまでならおかしくはないんだが……この相手の男性が養子縁組から数年後に精神病棟に入院して籍も抜いているんだ」
「なに……?」
「この男性はそのまま入院先で亡くなっている。死因は不明だ」
ここまで聞いて俺は腸が煮えくり返っていた。
「………おい、なんであんたは西園寺をこんな奴に会わせたんだ?」
「いや、違うんだ。俺もすぐおかしいと思って静音に返事を待つように言ったんだよ。なのにあいつ俺の言うことを無視してすぐに顔合わせまでやって、もう一緒に住んでるって……あっ! しまった」
「なんだと? おい、今一緒に住んでるって言ったのか?」
「くそ、これは黙ってろと言われたんだった……いや、違うんだ。まだ籍は入れてないんだが、向こうが子どもたちに慣れて欲しいとかなんとか理由を付けて早めに同棲をと……週の半分くらい六条の自宅に寝泊まりしていると言っていた」
西園寺が今その怪しい男の家に寝泊まりしているだと?
「あんたそれを黙って許したのか? おい、こんな怪しげな男の家に?」
「あー、だから俺だって勿論止めたよ。でも聞かないんだ。わかるだろ? あいつ結構頑固で……」
「そんなこと言ってる場合か! 六条の家を教えろ。今すぐ行ってくる」
「おいおい、あんたもちょっと頭を冷やせよ。いきなり行ってどうするんだ?ここは怪しいからお友達は連れて帰りますってか? 大体、あんたが婚約のことを静音に黙ってていきなりニュースになんてなったもんだからあいつが怒って……」
「婚約は破棄した」
「ええっ!?」
「こんなことになるくらいなら初めから婚約なんてしなければよかった」
俺は片手で顔を覆った。すると蒼井が苦々しげな顔をして言う。
「はっ。そんな今更……簡単に言ってくれるよな。お前たちのような身勝手な男があいつをどれだけ苦しめてきたか。あいつはな、初恋の思い出だけずっと大事にしてそれ持ったままあの男に飼われるつもりなんだよ! わかるか? 親父さんに義理立てして40過ぎの男のところに嫁ごうっていう男の気持ちが。あいつの心は愛情が足りない子どもの頃のままなんだよ」
「それは……」
「せっかく最近精神的に安定していたのに、お前のせいなんだぞ東郷。後悔したって遅いんだ。あんただけは初めから静音を選んでやらなきゃならなかったんだ。それなのに婚約だなんて……他の女を選んだんだ。あんたになら任せられそうだと思った俺が間違ってたよ」
「どうしたらいいんだ? 迎えに行ってもダメなのか? 俺では……」
「はぁ……。悔しいが、お前以外じゃ連れ戻せないだろうな」
「それなら……教えてくれ。六条の自宅を」
クリニックに偽名で潜り込むのは以前やって叱られたし、スタッフに顔を覚えられてるからもうできない。
どうしようかと悩んでいたとき、西園寺の従兄弟である蒼井健斗の存在を思い出した。
「なんですぐ思いつかなかったんだ!」
あいつは西園寺の病気の件などを全て管理していて、今回のことだって詳しいに違いなかった。西園寺に何かあったときのため、連絡先も交換してあったのに失念していたとは。
すぐに連絡して、無理やり会う約束を取り付けた。
「俺もあなた程じゃないが一応忙しい身なんですがね……」
ホテルのラウンジの席に着くなり蒼井は不平を漏らした。西園寺の体調のことで何かと俺が迷惑をかけているせいか、こちらにいい印象を持っていないようだ。
「申し訳ないと思っていますよ。だが急ぎの件なんだ、わかってますよね」
「聞きましたか。まあ、俺も静音の縁談についてそちらにご連絡しようと思っていましたが……」
「私に? なぜです?」
「はぁ、いやね……静音の相手の六条って男がどうもキナ臭いんですよ」
「なに? なぜそんな相手に静音が――」
「それが俺にもよくわからないんですよ。静音の親父さんは一体何を考えてるんだか……」
「おい、詳しく教えてくれ」
蒼井に聞いた話をまとめると、六条という男は静音の前にも既に二人養子縁組していて、中学生と高校生の男子が家にいるそうだ。そこへ母親代わりに静音を迎え入れたいという。
まずこの時点で何か不自然な気がする。
30代の男をわざわざ中高生の母親代わりにする、だ?
ここまでは表に出している情報だそうだ。しかし蒼井が興信所を使って調べたところによると、今から10年以上前にも養子縁組をしたことがあったそうだ。
「そのときの養子縁組なんだが、当時六条が30歳そこそこで、相手は20代前半の男性。まぁここまでならおかしくはないんだが……この相手の男性が養子縁組から数年後に精神病棟に入院して籍も抜いているんだ」
「なに……?」
「この男性はそのまま入院先で亡くなっている。死因は不明だ」
ここまで聞いて俺は腸が煮えくり返っていた。
「………おい、なんであんたは西園寺をこんな奴に会わせたんだ?」
「いや、違うんだ。俺もすぐおかしいと思って静音に返事を待つように言ったんだよ。なのにあいつ俺の言うことを無視してすぐに顔合わせまでやって、もう一緒に住んでるって……あっ! しまった」
「なんだと? おい、今一緒に住んでるって言ったのか?」
「くそ、これは黙ってろと言われたんだった……いや、違うんだ。まだ籍は入れてないんだが、向こうが子どもたちに慣れて欲しいとかなんとか理由を付けて早めに同棲をと……週の半分くらい六条の自宅に寝泊まりしていると言っていた」
西園寺が今その怪しい男の家に寝泊まりしているだと?
「あんたそれを黙って許したのか? おい、こんな怪しげな男の家に?」
「あー、だから俺だって勿論止めたよ。でも聞かないんだ。わかるだろ? あいつ結構頑固で……」
「そんなこと言ってる場合か! 六条の家を教えろ。今すぐ行ってくる」
「おいおい、あんたもちょっと頭を冷やせよ。いきなり行ってどうするんだ?ここは怪しいからお友達は連れて帰りますってか? 大体、あんたが婚約のことを静音に黙ってていきなりニュースになんてなったもんだからあいつが怒って……」
「婚約は破棄した」
「ええっ!?」
「こんなことになるくらいなら初めから婚約なんてしなければよかった」
俺は片手で顔を覆った。すると蒼井が苦々しげな顔をして言う。
「はっ。そんな今更……簡単に言ってくれるよな。お前たちのような身勝手な男があいつをどれだけ苦しめてきたか。あいつはな、初恋の思い出だけずっと大事にしてそれ持ったままあの男に飼われるつもりなんだよ! わかるか? 親父さんに義理立てして40過ぎの男のところに嫁ごうっていう男の気持ちが。あいつの心は愛情が足りない子どもの頃のままなんだよ」
「それは……」
「せっかく最近精神的に安定していたのに、お前のせいなんだぞ東郷。後悔したって遅いんだ。あんただけは初めから静音を選んでやらなきゃならなかったんだ。それなのに婚約だなんて……他の女を選んだんだ。あんたになら任せられそうだと思った俺が間違ってたよ」
「どうしたらいいんだ? 迎えに行ってもダメなのか? 俺では……」
「はぁ……。悔しいが、お前以外じゃ連れ戻せないだろうな」
「それなら……教えてくれ。六条の自宅を」
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