16 / 40
教訓
しおりを挟む
「静音、本当に悪かった。俺があんな奴だと見抜けなかったばっかりに……」
「もう大丈夫だからそんなに謝らないで。ね? 忘れようよ」
「二度とこんなこと繰り返さないようにこれからは素性を調べるのを徹底するよ」
どうやらあの男は普段とは違う形でリストに紛れ込んだ相手だったらしい。
本来、僕の相手は良家の次男以下の中から選ばれていたが、彼は一般家庭の教師だった。僕と一度寝た御曹司の中に、僕を気に入って友人にも抱かせようとした男がいたのだ。
それ以来、初対面でいきなり寝るのはやめた。一度顔を合わせてから、僕が気に入った人間だけもう一度約束を取り付けベッドへ行くという方式を採るようになった。手間はかかるが、またあんなことがあってはたまらない。
これ以来僕は(というか健斗が)相手探しには慎重になった。最初に抱かれた上野にしろ、その次に会った名取にしろ、たまたま良い人間だっただけだ。
「男を信用しない」ということを早い段階で叩き込まれたのはかえって良かったのかも知れない。
僕はその後は問題なく卒業試験に合格して医師国家試験にも合格した。
大学を卒業した後は実家から通える大学病院に研修医として勤め、その後は精神科を中心とした病院で専門医になるため専攻医研修を3年間受けた。
そしてその後クリニックを開業したとき僕は31歳になっていた。
クリニックを開業するにあたって、父が所有していた古い洋館をリノベーションして使わせてもらった。部屋数は充分にあって、そこに住むことも出来た。だけど僕はそこでずっと過ごすのが嫌だったからマンションを別に借りて暮らすことにした。
父は僕が実家を出ていくためなら、いくらでも金を出してくれる。
なんだかんだで僕を見捨てずに育ててくれたことに感謝していた。病気持ちの身で、無事にクリニックを持てるようにまでなったのだ。
高校の時に自暴自棄になって勉強をやめていたらどうなっていただろうか?
ただ男に抱かれることを求め、死ぬまで性欲に隷属する人間になっていたかもしれないと思うとゾッとした。
健ちゃんが最初に教えてくれたように、僕に恋人が出来て相手も僕を好きになってくれたとしたら――その人がずっと一緒にいてくれたら……。そうすれば今よりもっと楽に生きられるのかな。
母は苦しんで死んだって思っていたけど、それもどうかわからないと最近思うようになった。
父さんは母さんを愛していたし、それなら母さんは父さんといられて幸せだったってことかな――?
答えの出ないことをとりとめもなく考えていた。
「もう大丈夫だからそんなに謝らないで。ね? 忘れようよ」
「二度とこんなこと繰り返さないようにこれからは素性を調べるのを徹底するよ」
どうやらあの男は普段とは違う形でリストに紛れ込んだ相手だったらしい。
本来、僕の相手は良家の次男以下の中から選ばれていたが、彼は一般家庭の教師だった。僕と一度寝た御曹司の中に、僕を気に入って友人にも抱かせようとした男がいたのだ。
それ以来、初対面でいきなり寝るのはやめた。一度顔を合わせてから、僕が気に入った人間だけもう一度約束を取り付けベッドへ行くという方式を採るようになった。手間はかかるが、またあんなことがあってはたまらない。
これ以来僕は(というか健斗が)相手探しには慎重になった。最初に抱かれた上野にしろ、その次に会った名取にしろ、たまたま良い人間だっただけだ。
「男を信用しない」ということを早い段階で叩き込まれたのはかえって良かったのかも知れない。
僕はその後は問題なく卒業試験に合格して医師国家試験にも合格した。
大学を卒業した後は実家から通える大学病院に研修医として勤め、その後は精神科を中心とした病院で専門医になるため専攻医研修を3年間受けた。
そしてその後クリニックを開業したとき僕は31歳になっていた。
クリニックを開業するにあたって、父が所有していた古い洋館をリノベーションして使わせてもらった。部屋数は充分にあって、そこに住むことも出来た。だけど僕はそこでずっと過ごすのが嫌だったからマンションを別に借りて暮らすことにした。
父は僕が実家を出ていくためなら、いくらでも金を出してくれる。
なんだかんだで僕を見捨てずに育ててくれたことに感謝していた。病気持ちの身で、無事にクリニックを持てるようにまでなったのだ。
高校の時に自暴自棄になって勉強をやめていたらどうなっていただろうか?
ただ男に抱かれることを求め、死ぬまで性欲に隷属する人間になっていたかもしれないと思うとゾッとした。
健ちゃんが最初に教えてくれたように、僕に恋人が出来て相手も僕を好きになってくれたとしたら――その人がずっと一緒にいてくれたら……。そうすれば今よりもっと楽に生きられるのかな。
母は苦しんで死んだって思っていたけど、それもどうかわからないと最近思うようになった。
父さんは母さんを愛していたし、それなら母さんは父さんといられて幸せだったってことかな――?
答えの出ないことをとりとめもなく考えていた。
1
お気に入りに追加
720
あなたにおすすめの小説
ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
【Dom/Subユニバース】Switch×Switchの日常
Laxia
BL
この世界には人を支配したいDom、人に支配されたいSub、どちらの欲求もないNormal、そしてどちらの欲求もあるSwitchという第三の性がある。その中でも、DomとSubの役割をどちらも果たすことができるSwitchはとても少なく、Switch同士でパートナーをやれる者などほとんどいない。
しかしそんな中で、時にはDom、時にはSubと交代しながら暮らしているSwitchの、そして男同士のパートナーがいた。
これはそんな男同士の日常である。
※独自の解釈、設定が含まれます。1話完結です。
他にもR-18の長編BLや短編BLを執筆していますので、見て頂けると大変嬉しいです!!!
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
俺はすでに振られているから
いちみやりょう
BL
▲花吐き病の設定をお借りしている上に変えている部分もあります▲
「ごほっ、ごほっ、はぁ、はぁ」
「要、告白してみたら? 断られても玉砕したら諦められるかもしれないよ?」
会社の同期の杉田が心配そうに言ってきた。
俺の片思いと片思いの相手と病気を杉田だけが知っている。
以前会社で吐き気に耐えきれなくなって給湯室まで駆け込んで吐いた時に、心配で様子見にきてくれた杉田に花を吐くのを見られてしまったことがきっかけだった。ちなみに今も給湯室にいる。
「無理だ。断られても諦められなかった」
「え? 告白したの?」
「こほっ、ごほ、したよ。大学生の時にね」
「ダメだったんだ」
「悪いって言われたよ。でも俺は断られたのにもかかわらず諦めきれずに、こんな病気を発病してしまった」
俺にはラブラブな超絶イケメンのスパダリ彼氏がいるので、王道学園とやらに無理やり巻き込まないでくださいっ!!
しおりんごん
BL
俺の名前は 笹島 小太郎
高校2年生のちょっと激しめの甘党
顔は可もなく不可もなく、、、と思いたい
身長は170、、、行ってる、、、し
ウルセェ!本人が言ってるんだからほんとなんだよ!
そんな比較的どこにでもいそうな人柄の俺だが少し周りと違うことがあって、、、
それは、、、
俺には超絶ラブラブなイケメン彼氏がいるのだ!!!
容姿端麗、文武両道
金髪碧眼(ロシアの血が多く入ってるかららしい)
一つ下の学年で、通ってる高校は違うけど、一週間に一度は放課後デートを欠かさないそんなスパダリ完璧彼氏!
名前を堂坂レオンくん!
俺はレオンが大好きだし、レオンも俺が大好きで
(自己肯定感が高すぎるって?
実は付き合いたての時に、なんで俺なんか、、、って1人で考えて喧嘩して
結局レオンからわからせという名のおしお、(re
、、、ま、まぁレオンからわかりやすすぎる愛情を一思いに受けてたらそりゃ自身も出るわなっていうこと!)
ちょうどこの春レオンが高校に上がって、それでも変わりないラブラブな生活を送っていたんだけど
なんとある日空から人が降って来て!
※ファンタジーでもなんでもなく、物理的に降って来たんだ
信じられるか?いや、信じろ
腐ってる姉さんたちが言うには、そいつはみんな大好き王道転校生!
、、、ってなんだ?
兎にも角にも、そいつが現れてから俺の高校がおかしくなってる?
いやなんだよ平凡巻き込まれ役って!
あーもう!そんな睨むな!牽制するな!
俺には超絶ラブラブな彼氏がいるからそっちのいざこざに巻き込まないでくださいっ!!!
※主人公は固定カプ、、、というか、初っ端から2人でイチャイチャしてるし、ずっと変わりません
※同姓同士の婚姻が認められている世界線での話です
※王道学園とはなんぞや?という人のために一応説明を載せていますが、私には文才が圧倒的に足りないのでわからないままでしたら、他の方の作品を参照していただきたいです🙇♀️
※シリアスは皆無です
終始ドタバタイチャイチャラブコメディでおとどけします
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる