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初対面
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その人との約束は健斗が間に入って取り付けられ、僕たち当人同士は直接連絡先を知ることは無かった。何かあった際に、連絡が取れない方が都合が良いからだ。
健斗からの指示通り、僕は待ち合わせ場所に立っていた。
すると目の前にホワイトのマイバッハが停車して助手席のサイドウィンドウが開く。待っている間、男を抱くために秘密で連絡を取り合ってわざわざ迎えに来るなんてどんな人間だろうと思っていた。しかし想像よりも品の良さそうな三十代くらいの男性が声を掛けてくる。
「君が静音君?」
「はい」
「名取だ。お待たせ、どうぞ乗って」
なんでもないことだと思っていたのに、知らない相手の車に乗ると思うとちょっとだけ手が震えた。だけど僕は感情を押し殺して助手席に乗り込んだ。
「君みたいな綺麗な子だとは思ってなくて驚いたよ」
名取と名乗った男は運転しながら話しかけてくる。僕はどう応えたら良いかわからず、適当に返事をした。
「ありがとうございます」
「ご飯食べてないよね?」
「はい」
「レストラン予約してるから。フレンチでいい?」
「……はい」
正直お腹は空いていなかった。それより早くこの体の熱をどうにかしたかった。
名取はホテル内のフレンチレストランに僕を連れて行き、勝手にコース料理を注文してワインを飲み始めた。僕はお酒を飲むのはあれ以来控えていたので断った。
向こうは上機嫌で色々話しかけてきたが、経済の話はよくわからないし興味もない。僕が20歳と知ると驚いた顔をして、その後好奇の目で上から下まで眺められた。彼は35歳だと言った。
――整った顔立ちで、いい車に乗っていてモテそうなのになんで僕みたいな男を抱こうだなんて思うんだろう。結婚はしていないのかな?
見たところ指輪はしていなかった。
料理は美味しかったけどやっぱり食欲が無くて食べきれなかった。名取は僕が緊張してるせいだと思っているようだった。
「今日はついてるな。こんな美人……しかも20歳とはね」
ホテルのエレベーターの中で僕のうなじに触れながら彼がそう言った。
部屋に入るなり、僕は体のうずきを持て余して名取の胸にしがみつく。
「もう、我慢できない……」
「驚いた。随分積極的なんだな。さっきから話しかけても生返事だったからやる気ないのかと思っていたよ」
「だって早くしたかったから……」
僕が彼の胸に額を擦りつけながらそう言うと、名取は笑みを引っ込めて生唾を飲み込んだ。
「いいね、清楚っぽい見た目なのに中身は淫乱なんだ……たまんないな」
「いいから……早く、キスして」
もうそこから名取は無駄口を叩くのをやめた。粗っぽい様子で口づけしてくる。
「んっん……うっん」
遊び慣れた見た目に違わず、名取はキスが上手かった。僕はそれだけですっかり気分が良くなってくる。
「あ……たくさん触って……気持ちよくなりたい……」
「いいよ、可愛いな。なんでもしてあげるよ」
実際名取はなんでもしてくれた。全身舐め回され、何度も絶頂に追いたてられる。久々のセックスなのもあって僕は乱れた。
その姿を見て名取は喜んだ。
僕はちょっと乱暴にされるくらいが好きみたいで、「酷くして」と無意識で名取にせがむ。
彼は加減を心得ていて、傷跡が残らない程度に僕に噛み付いたり、思い切り激しく後ろから突いたりしてくれた。めちゃくちゃにされて、その間僕は頭が空っぽになって快感だけを追うことができた。
「あ……気持ちいいっ。あんっ、あ、名取さん……」
「可愛いよ、静音……」
彼の低く響く声が僕を一層興奮させた。
名前を呼ばれながらしたい。自分が誰かに求められてるのを感じたかった。
「……名前もっと呼んで……」
「静音……いっていいよ静音。全部出して」
名取は僕の感じるところを集中的に突いてくる。終わりが近い――。
「そこっ、だめ。あっ…イクっ、ああ……っ」
僕が全身硬直させて欲望を吐露した後、しばらくして名取も達した。
健斗からの指示通り、僕は待ち合わせ場所に立っていた。
すると目の前にホワイトのマイバッハが停車して助手席のサイドウィンドウが開く。待っている間、男を抱くために秘密で連絡を取り合ってわざわざ迎えに来るなんてどんな人間だろうと思っていた。しかし想像よりも品の良さそうな三十代くらいの男性が声を掛けてくる。
「君が静音君?」
「はい」
「名取だ。お待たせ、どうぞ乗って」
なんでもないことだと思っていたのに、知らない相手の車に乗ると思うとちょっとだけ手が震えた。だけど僕は感情を押し殺して助手席に乗り込んだ。
「君みたいな綺麗な子だとは思ってなくて驚いたよ」
名取と名乗った男は運転しながら話しかけてくる。僕はどう応えたら良いかわからず、適当に返事をした。
「ありがとうございます」
「ご飯食べてないよね?」
「はい」
「レストラン予約してるから。フレンチでいい?」
「……はい」
正直お腹は空いていなかった。それより早くこの体の熱をどうにかしたかった。
名取はホテル内のフレンチレストランに僕を連れて行き、勝手にコース料理を注文してワインを飲み始めた。僕はお酒を飲むのはあれ以来控えていたので断った。
向こうは上機嫌で色々話しかけてきたが、経済の話はよくわからないし興味もない。僕が20歳と知ると驚いた顔をして、その後好奇の目で上から下まで眺められた。彼は35歳だと言った。
――整った顔立ちで、いい車に乗っていてモテそうなのになんで僕みたいな男を抱こうだなんて思うんだろう。結婚はしていないのかな?
見たところ指輪はしていなかった。
料理は美味しかったけどやっぱり食欲が無くて食べきれなかった。名取は僕が緊張してるせいだと思っているようだった。
「今日はついてるな。こんな美人……しかも20歳とはね」
ホテルのエレベーターの中で僕のうなじに触れながら彼がそう言った。
部屋に入るなり、僕は体のうずきを持て余して名取の胸にしがみつく。
「もう、我慢できない……」
「驚いた。随分積極的なんだな。さっきから話しかけても生返事だったからやる気ないのかと思っていたよ」
「だって早くしたかったから……」
僕が彼の胸に額を擦りつけながらそう言うと、名取は笑みを引っ込めて生唾を飲み込んだ。
「いいね、清楚っぽい見た目なのに中身は淫乱なんだ……たまんないな」
「いいから……早く、キスして」
もうそこから名取は無駄口を叩くのをやめた。粗っぽい様子で口づけしてくる。
「んっん……うっん」
遊び慣れた見た目に違わず、名取はキスが上手かった。僕はそれだけですっかり気分が良くなってくる。
「あ……たくさん触って……気持ちよくなりたい……」
「いいよ、可愛いな。なんでもしてあげるよ」
実際名取はなんでもしてくれた。全身舐め回され、何度も絶頂に追いたてられる。久々のセックスなのもあって僕は乱れた。
その姿を見て名取は喜んだ。
僕はちょっと乱暴にされるくらいが好きみたいで、「酷くして」と無意識で名取にせがむ。
彼は加減を心得ていて、傷跡が残らない程度に僕に噛み付いたり、思い切り激しく後ろから突いたりしてくれた。めちゃくちゃにされて、その間僕は頭が空っぽになって快感だけを追うことができた。
「あ……気持ちいいっ。あんっ、あ、名取さん……」
「可愛いよ、静音……」
彼の低く響く声が僕を一層興奮させた。
名前を呼ばれながらしたい。自分が誰かに求められてるのを感じたかった。
「……名前もっと呼んで……」
「静音……いっていいよ静音。全部出して」
名取は僕の感じるところを集中的に突いてくる。終わりが近い――。
「そこっ、だめ。あっ…イクっ、ああ……っ」
僕が全身硬直させて欲望を吐露した後、しばらくして名取も達した。
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