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従兄弟
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上野は結局、自主退学することとなった。
お互いの親にも連絡が行き、弁護士も入れて話し合った結果示談となったのだ。向こう側から謝罪と今後一切僕に近づかないという旨の誓約書を取り付けた。学校としても事件は揉み消したいので上野の自主退学ということで落ち着いた。
友人を退学に追い込んだことにショックを受けてはいたが、僕はこのことが父に知られたのが一番辛かった。
「だから私はお前を外に出したくなかったんだ」
父は嫌悪感をあらわにそうに吐き捨てた。僕は震える声で平謝りする。
「申し訳ありませんでした」
「そんな身で医者になどなれるのか? 誰彼構わず誘惑して問題を起こすんでは、西園寺の恥晒しだ!」
大きな声を出されて僕は萎縮する。
「ごめんなさい……ごめんなさい……! 父さん、お願いだから大学にこのまま通わせて――」
「ふん、そんなに勉強が好きか?」
「はい……。だからおねが――」
「学部長から聞いた。成績優秀だそうだな」
「え……?」
「家で燻られていても迷惑だからな。せいぜい勉学に励め。ただ、お前のその病気が発症したからには対処する必要がある。蒼井の家の健斗を呼んだから説明を聞け」
「健ちゃんを――?」
「話はこれで終わりだ」
「……はい。迷惑をかけてすみませんでした」
そう言って頭を下げ、僕は父の書斎を後にした。
蒼井健斗は僕の二つ年上の従兄弟だ。何故この話に従兄弟が出てくるんだろう?
でも、成績優秀なんだなって父さんに言われた……。
そんなこと今まで言われたことが無かった。褒められたんだよね?
嬉しい……!
今までどんなにテストでいい点を取ろうが、書道や華道で賞を取ろうが一度も褒められたことなんて無かった。何をやっても、褒められるのは弟の咲真だけ。それで当然だと思ってたから、ちょっと認められるだけでこんなに嬉しいなんて思わなかった。
ああ、僕頑張って勉強して医師国家試験に必ず合格しないと……。
自分よりも成績優秀な友人を退学追い込んでしまったというのに、僕は父に褒められたことを喜ばずにいられなかった。
浮かれた気分でリビングに行くと、父の話していた通り従兄弟の健斗が来ていた。小学生くらいまではたまに遊んでもらった記憶があるが、中学からは別の学校になったので親戚の集まり以外では会わなくなっていた。
「静音! 久しぶりだな。おい、背が伸びたんじゃないか?」
「健ちゃんやめてよ、もう身長なんてとっくに止まってるんだから」
背の高い健斗は昔から僕のことをそうやってからかっていたのだ。久々に頭を撫でられながらそんなことを言われて懐かしくなる。
「会えて嬉しいよ。元気は……あんまり無さそうかな?」
「ううん、大丈夫。父さんに言われて来たの?」
「ああ、そうだ。嫌かもしれないけど……これから俺が静音のお目付役ってわけさ」
「お目付役?」
一体どういうこと?
お互いの親にも連絡が行き、弁護士も入れて話し合った結果示談となったのだ。向こう側から謝罪と今後一切僕に近づかないという旨の誓約書を取り付けた。学校としても事件は揉み消したいので上野の自主退学ということで落ち着いた。
友人を退学に追い込んだことにショックを受けてはいたが、僕はこのことが父に知られたのが一番辛かった。
「だから私はお前を外に出したくなかったんだ」
父は嫌悪感をあらわにそうに吐き捨てた。僕は震える声で平謝りする。
「申し訳ありませんでした」
「そんな身で医者になどなれるのか? 誰彼構わず誘惑して問題を起こすんでは、西園寺の恥晒しだ!」
大きな声を出されて僕は萎縮する。
「ごめんなさい……ごめんなさい……! 父さん、お願いだから大学にこのまま通わせて――」
「ふん、そんなに勉強が好きか?」
「はい……。だからおねが――」
「学部長から聞いた。成績優秀だそうだな」
「え……?」
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「健ちゃんを――?」
「話はこれで終わりだ」
「……はい。迷惑をかけてすみませんでした」
そう言って頭を下げ、僕は父の書斎を後にした。
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でも、成績優秀なんだなって父さんに言われた……。
そんなこと今まで言われたことが無かった。褒められたんだよね?
嬉しい……!
今までどんなにテストでいい点を取ろうが、書道や華道で賞を取ろうが一度も褒められたことなんて無かった。何をやっても、褒められるのは弟の咲真だけ。それで当然だと思ってたから、ちょっと認められるだけでこんなに嬉しいなんて思わなかった。
ああ、僕頑張って勉強して医師国家試験に必ず合格しないと……。
自分よりも成績優秀な友人を退学追い込んでしまったというのに、僕は父に褒められたことを喜ばずにいられなかった。
浮かれた気分でリビングに行くと、父の話していた通り従兄弟の健斗が来ていた。小学生くらいまではたまに遊んでもらった記憶があるが、中学からは別の学校になったので親戚の集まり以外では会わなくなっていた。
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「健ちゃんやめてよ、もう身長なんてとっくに止まってるんだから」
背の高い健斗は昔から僕のことをそうやってからかっていたのだ。久々に頭を撫でられながらそんなことを言われて懐かしくなる。
「会えて嬉しいよ。元気は……あんまり無さそうかな?」
「ううん、大丈夫。父さんに言われて来たの?」
「ああ、そうだ。嫌かもしれないけど……これから俺が静音のお目付役ってわけさ」
「お目付役?」
一体どういうこと?
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