上 下
10 / 40

従兄弟

しおりを挟む
上野は結局、自主退学することとなった。
お互いの親にも連絡が行き、弁護士も入れて話し合った結果示談となったのだ。向こう側から謝罪と今後一切僕に近づかないという旨の誓約書を取り付けた。学校としても事件は揉み消したいので上野の自主退学ということで落ち着いた。
友人を退学に追い込んだことにショックを受けてはいたが、僕はこのことが父に知られたのが一番辛かった。

「だから私はお前を外に出したくなかったんだ」

父は嫌悪感をあらわにそうに吐き捨てた。僕は震える声で平謝りする。

「申し訳ありませんでした」
「そんな身で医者になどなれるのか? 誰彼構わず誘惑して問題を起こすんでは、西園寺の恥晒しだ!」

大きな声を出されて僕は萎縮する。

「ごめんなさい……ごめんなさい……! 父さん、お願いだから大学にこのまま通わせて――」
「ふん、そんなに勉強が好きか?」
「はい……。だからおねが――」
「学部長から聞いた。成績優秀だそうだな」
「え……?」
「家でくすぶられていても迷惑だからな。せいぜい勉学に励め。ただ、お前のその病気が発症したからには対処する必要がある。蒼井の家の健斗を呼んだから説明を聞け」
「健ちゃんを――?」
「話はこれで終わりだ」
「……はい。迷惑をかけてすみませんでした」

そう言って頭を下げ、僕は父の書斎を後にした。

蒼井健斗は僕の二つ年上の従兄弟だ。何故この話に従兄弟が出てくるんだろう?
でも、成績優秀なんだなって父さんに言われた……。
そんなこと今まで言われたことが無かった。褒められたんだよね?
嬉しい……!
今までどんなにテストでいい点を取ろうが、書道や華道で賞を取ろうが一度も褒められたことなんて無かった。何をやっても、褒められるのは弟の咲真だけ。それで当然だと思ってたから、ちょっと認められるだけでこんなに嬉しいなんて思わなかった。
ああ、僕頑張って勉強して医師国家試験に必ず合格しないと……。
自分よりも成績優秀な友人を退学追い込んでしまったというのに、僕は父に褒められたことを喜ばずにいられなかった。

浮かれた気分でリビングに行くと、父の話していた通り従兄弟の健斗が来ていた。小学生くらいまではたまに遊んでもらった記憶があるが、中学からは別の学校になったので親戚の集まり以外では会わなくなっていた。

「静音! 久しぶりだな。おい、背が伸びたんじゃないか?」
「健ちゃんやめてよ、もう身長なんてとっくに止まってるんだから」

背の高い健斗は昔から僕のことをそうやってからかっていたのだ。久々に頭を撫でられながらそんなことを言われて懐かしくなる。

「会えて嬉しいよ。元気は……あんまり無さそうかな?」
「ううん、大丈夫。父さんに言われて来たの?」
「ああ、そうだ。嫌かもしれないけど……これから俺が静音のお目付役ってわけさ」
「お目付役?」

一体どういうこと?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。 「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」 高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。 そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに… その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。 ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。 かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで… ハッピーエンドです。 R18の場面には※をつけます。

【Dom/Subユニバース】Switch×Switchの日常

Laxia
BL
この世界には人を支配したいDom、人に支配されたいSub、どちらの欲求もないNormal、そしてどちらの欲求もあるSwitchという第三の性がある。その中でも、DomとSubの役割をどちらも果たすことができるSwitchはとても少なく、Switch同士でパートナーをやれる者などほとんどいない。 しかしそんな中で、時にはDom、時にはSubと交代しながら暮らしているSwitchの、そして男同士のパートナーがいた。 これはそんな男同士の日常である。 ※独自の解釈、設定が含まれます。1話完結です。 他にもR-18の長編BLや短編BLを執筆していますので、見て頂けると大変嬉しいです!!!

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

俺はすでに振られているから

いちみやりょう
BL
▲花吐き病の設定をお借りしている上に変えている部分もあります▲ 「ごほっ、ごほっ、はぁ、はぁ」 「要、告白してみたら? 断られても玉砕したら諦められるかもしれないよ?」 会社の同期の杉田が心配そうに言ってきた。 俺の片思いと片思いの相手と病気を杉田だけが知っている。 以前会社で吐き気に耐えきれなくなって給湯室まで駆け込んで吐いた時に、心配で様子見にきてくれた杉田に花を吐くのを見られてしまったことがきっかけだった。ちなみに今も給湯室にいる。 「無理だ。断られても諦められなかった」 「え? 告白したの?」 「こほっ、ごほ、したよ。大学生の時にね」 「ダメだったんだ」 「悪いって言われたよ。でも俺は断られたのにもかかわらず諦めきれずに、こんな病気を発病してしまった」

俺にはラブラブな超絶イケメンのスパダリ彼氏がいるので、王道学園とやらに無理やり巻き込まないでくださいっ!!

しおりんごん
BL
俺の名前は 笹島 小太郎 高校2年生のちょっと激しめの甘党 顔は可もなく不可もなく、、、と思いたい 身長は170、、、行ってる、、、し ウルセェ!本人が言ってるんだからほんとなんだよ! そんな比較的どこにでもいそうな人柄の俺だが少し周りと違うことがあって、、、 それは、、、 俺には超絶ラブラブなイケメン彼氏がいるのだ!!! 容姿端麗、文武両道 金髪碧眼(ロシアの血が多く入ってるかららしい) 一つ下の学年で、通ってる高校は違うけど、一週間に一度は放課後デートを欠かさないそんなスパダリ完璧彼氏! 名前を堂坂レオンくん! 俺はレオンが大好きだし、レオンも俺が大好きで (自己肯定感が高すぎるって? 実は付き合いたての時に、なんで俺なんか、、、って1人で考えて喧嘩して 結局レオンからわからせという名のおしお、(re 、、、ま、まぁレオンからわかりやすすぎる愛情を一思いに受けてたらそりゃ自身も出るわなっていうこと!) ちょうどこの春レオンが高校に上がって、それでも変わりないラブラブな生活を送っていたんだけど なんとある日空から人が降って来て! ※ファンタジーでもなんでもなく、物理的に降って来たんだ 信じられるか?いや、信じろ 腐ってる姉さんたちが言うには、そいつはみんな大好き王道転校生! 、、、ってなんだ? 兎にも角にも、そいつが現れてから俺の高校がおかしくなってる? いやなんだよ平凡巻き込まれ役って! あーもう!そんな睨むな!牽制するな! 俺には超絶ラブラブな彼氏がいるからそっちのいざこざに巻き込まないでくださいっ!!! ※主人公は固定カプ、、、というか、初っ端から2人でイチャイチャしてるし、ずっと変わりません ※同姓同士の婚姻が認められている世界線での話です ※王道学園とはなんぞや?という人のために一応説明を載せていますが、私には文才が圧倒的に足りないのでわからないままでしたら、他の方の作品を参照していただきたいです🙇‍♀️ ※シリアスは皆無です 終始ドタバタイチャイチャラブコメディでおとどけします

処理中です...