6 / 40
発症
しおりを挟む
それ以来また勉強だけする日々に戻っていた。
もう誰とも喋る気にもなれなかったから、髪の毛を切って整え、眼鏡もやめた。隠れているから見たいのであって、隠されていなければそれほど気にならないものだ。
僕が普段から顔を晒すようになったら、生徒たちも噂するのをやめたし腕を掴まれて物陰に連れて行かれることもなくなった。
頭の出来は悪くなかったから勉強すれば成績が上がる。どうせ社会に出て役に立てなくても、少なくとも勉強で他の男達に勝てるならそれはそれで満足だった。
そして大体の同級生が大学選びで経済学部などを検討する中、僕は誰も選ばなそうな医学部を志望することにした。精神科医にでもなれば、自分のこの不安定な感情を落ち着ける術がわかるかもしれない。そんな単純な動機だった。
父親は「医者なんて」と嫌な顔をしたが、それが逆に父の気を惹けたようで嬉しくて無理を通して受験した。
無事に合格し、入学後は夢中で勉強した。精神科医を目指していたとしても、とりあえずは全般に学び、各科の研修を受けなければいけない。
体力的にもキツかったが、没頭することがあればそれなりに精神は安定を保つことができた。
そう思っていたのに、とうとう僕の忌まわしい病気は発症した。
学部二年次のときだった。僕は勉強に研修にと忙しく、充実した日々を送っていた。
理系の人間、しかも医学部には勉強好きで、他のことに興味がないという人間も多かった。これは高校時代の同級生や上級生のように優秀ではあるが品のない集団とは違う傾向だ。嬉しいことに、このような容姿の僕であっても気にせず友人付き合いをしてもらえるようになったのだ。
それはとても居心地がよく、僕はすっかり病気のことなど忘れかけていた。そもそも、痣があるだけで病気持ちじゃなかったのかもしれないとすら思い始めていた。
そして友人たちも僕も誕生日を迎えて20歳になった。数名で初めてお酒を飲みに行った。あまり強い酒は飲めなかったけど、アルコールでハイになって気分が良かった。
楽しくて、自分の限界がわかっていなかったのでちょっと飲みすぎた。僕がフラフラしていたので、店から家が近くて特に仲の良い友人上野のマンションに泊めてもらうことになった。
肩を貸してもらってなんとか部屋に到着する。ソファに寝かせられて、服を脱ぐように言われたけど、怠くて身体が動かせない。
「脱がせて……」
別になんの意図も無くそう言っただけだ。しかし、ソファにしどけなく寝そべる僕を見下ろす上野の目がそれを聞いて欲望の色に染まった。
あ……まずい……。
そう思った時には遅かった。その目を見て、僕自身も体の芯が熱くなり火照ってきてしまったのだ。頭ではダメだと思うのに、その熱をどうにかしたくてたまらなくなる。
「上野」
僕は上野の袖を引いた。それが合図となり、上野は僕にのしかかってきた。
「誘ってるのか?」
「うん……好きにしていいから……」
上野は僕の服を剥いで床に投げ捨てた。
もう誰とも喋る気にもなれなかったから、髪の毛を切って整え、眼鏡もやめた。隠れているから見たいのであって、隠されていなければそれほど気にならないものだ。
僕が普段から顔を晒すようになったら、生徒たちも噂するのをやめたし腕を掴まれて物陰に連れて行かれることもなくなった。
頭の出来は悪くなかったから勉強すれば成績が上がる。どうせ社会に出て役に立てなくても、少なくとも勉強で他の男達に勝てるならそれはそれで満足だった。
そして大体の同級生が大学選びで経済学部などを検討する中、僕は誰も選ばなそうな医学部を志望することにした。精神科医にでもなれば、自分のこの不安定な感情を落ち着ける術がわかるかもしれない。そんな単純な動機だった。
父親は「医者なんて」と嫌な顔をしたが、それが逆に父の気を惹けたようで嬉しくて無理を通して受験した。
無事に合格し、入学後は夢中で勉強した。精神科医を目指していたとしても、とりあえずは全般に学び、各科の研修を受けなければいけない。
体力的にもキツかったが、没頭することがあればそれなりに精神は安定を保つことができた。
そう思っていたのに、とうとう僕の忌まわしい病気は発症した。
学部二年次のときだった。僕は勉強に研修にと忙しく、充実した日々を送っていた。
理系の人間、しかも医学部には勉強好きで、他のことに興味がないという人間も多かった。これは高校時代の同級生や上級生のように優秀ではあるが品のない集団とは違う傾向だ。嬉しいことに、このような容姿の僕であっても気にせず友人付き合いをしてもらえるようになったのだ。
それはとても居心地がよく、僕はすっかり病気のことなど忘れかけていた。そもそも、痣があるだけで病気持ちじゃなかったのかもしれないとすら思い始めていた。
そして友人たちも僕も誕生日を迎えて20歳になった。数名で初めてお酒を飲みに行った。あまり強い酒は飲めなかったけど、アルコールでハイになって気分が良かった。
楽しくて、自分の限界がわかっていなかったのでちょっと飲みすぎた。僕がフラフラしていたので、店から家が近くて特に仲の良い友人上野のマンションに泊めてもらうことになった。
肩を貸してもらってなんとか部屋に到着する。ソファに寝かせられて、服を脱ぐように言われたけど、怠くて身体が動かせない。
「脱がせて……」
別になんの意図も無くそう言っただけだ。しかし、ソファにしどけなく寝そべる僕を見下ろす上野の目がそれを聞いて欲望の色に染まった。
あ……まずい……。
そう思った時には遅かった。その目を見て、僕自身も体の芯が熱くなり火照ってきてしまったのだ。頭ではダメだと思うのに、その熱をどうにかしたくてたまらなくなる。
「上野」
僕は上野の袖を引いた。それが合図となり、上野は僕にのしかかってきた。
「誘ってるのか?」
「うん……好きにしていいから……」
上野は僕の服を剥いで床に投げ捨てた。
1
お気に入りに追加
721
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】
NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生
SNSを開設すれば即10万人フォロワー。
町を歩けばスカウトの嵐。
超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。
そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。
愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
イケメン幼馴染に執着されるSub
ひな
BL
normalだと思ってた俺がまさかの…
支配されたくない 俺がSubなんかじゃない
逃げたい 愛されたくない
こんなの俺じゃない。
(作品名が長いのでイケしゅーって略していただいてOKです。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる