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68.【最終話】子だくさんなのもいいんでない?
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「イデオン様……」
サーシャはイデオンの首に腕を巻き付け、膝に乗り上がった。するとイデオンは右手だけで軽々とサーシャを持ち上げ、ベッドへと運ぶ。
矢傷のある左肩はまだ自由に動かせない。しかしイデオンにとってサーシャとベッドへ入るのにそれはさほど重要ではないらしかった。
「サーシャ、今夜はどうされたい?」
「え……と、優しくしてくれるならなんでも……」
「なんでも?」
イデオンは鼻で笑いながら右手だけで器用にサーシャのガウンを脱がせていく。侍女のアンとスーは今夜は「片手で脱がせやすい結び方」をしてくれた。
シュルシュルという衣擦れの音だけでちょっとやらしい気分になりそうでサーシャは目のやり場に困った。
(はぁ……こうやって改めてこういうことになると、緊張……)
結婚式後すぐに、借金返済のため必死になっていたあの頃――。あれは実家のためにどうにかしなければという義務感で頭がいっぱいだったから、ある意味無心で迫ることができた。
だけど今はそういう大義名分があるわけではない。
ただ、夫に求められて妻として抱かれるということ――……。
「そんなゆっくり脱がされたら、恥ずかしいべさ……」
「そうか? だが、急ぐ必要もないだろう」
「それはそうだけど……」
「いい眺めなんだ。いつまで見ていても飽きないな――」
全て脱がされて身を隠すものが無くなり、サーシャはイデオンに見られているだけで段々体が火照ってくる。
「うん、いい香りが立ち昇ってくる。甘くて柔らかい……」
イデオンはサーシャの胸元で息を吸い込む。
触れられていないのに、皮膚から数センチのところでイデオンが深呼吸するので、息がかかってくすぐったい。
「あ……ん。こちょばしい……」
「だんだん肌がピンク色になってきたな。ここは真っ赤に尖って、どうされたいんだったかな?」
イデオンの指が胸の先端の周りをスーッとなぞる。
「――や、優しく……」
「優しく、なんだ?」
「わからな――」
サーシャが答えられずに口ごもると、イデオンが先端を指先でつまんだ。
「あっ!」
「こうか?」
そのままくりくりと捻られる。するとぴりぴりした刺激が背筋に走る。
「んん、あぅ……」
(気持ちいい……でも、もうちょっと……)
「イデオン様ぁ……もっと」
「もっと?」
「もう少し、強く……」
「なに? 優しくなくていいのか?」
イデオンの顔を見上げると、意地悪そうな顔で微笑んでいた。
(もう、面白がって)
サーシャはからかわれているのはわかっていたが、気持ちよくなりたくて頷いた。
「しなくていい――」
「お前のそのいやらしい顔、たまらないな」
イデオンがそう言ってサーシャの唇を奪った。
「んっ……」
サーシャは唇が腫れてしまうんじゃないかと思うほど執拗に口づけされ、意識が朦朧としてくる。
息継ぎをするだけで精一杯だ。
肉厚な舌が口の中に入ってくる。イデオンはサーシャの柔らかい口中を散々舐り、唇を吸った。
(イデオン様のキス――気持ちよすぎて頭が馬鹿になりそう)
そしてキスしているうちに自分の後孔がじくじくと濡れてくるのを感じた。蜂蜜酒が効いて、サーシャの体はアルファを受け入れるための準備を始めていた。
濡れた感触が気になって腿をこすり合わせてもじもじしていると、イデオンに気づかれた。
「なんだ。もうこっちをいじってほしいんだな?」
「ち、ちが――」
「ここをこんなふうにしておきながら、何が違うと言うんだ?」
イデオンの長く太い指がサーシャのすぼまりの中に潜り込んでくる。
一度中指を根元まで入れられて、良いところに触れるか触れないかという微妙な位置を彼の指が擦る。
ぬく、ぬく……と出したり入れたりされ、サーシャはもどかしくて身を捩る。
(そこじゃなく、もうちょっとこっち……)
自ら腰を浮かせたり沈めたりして、良いところに当たるように動かしてしまう。
「あふぅ……んん……あっ、そこ。そこ、気持ちいい……」
「この辺か?」
イデオンが指を動かして、一番好きなところを擦り始めたのでサーシャは夢中になって頷いた。
「あ、そこ! きもち……っ、きもちいいよぉ……」
濡れた体内を丁寧にほぐされ、サーシャは喘いだ。
(久しぶりに触られるけど、全然痛くない。気持ちいい……)
「今夜は最後までするぞ」
「はい……」
「やめろと言っても途中で止めることはできないからな。本当にいいんだな?」
サーシャはこくこくと頷いた。
(いいに決まってる。一体どれだけお預けくらったと思ってるの?)
「イデオン様、僕ずっと挿れてって言ってきたべさ。だからこっちこそ、ちゃんと挿れてって言いたいよ」
「大丈夫だ。少しくらい痛がってても続けてやる。とにかくお前次第だからな――」
イデオンはサーシャの足を大きく開かせ、足の付根に顔を寄せた。そのままサーシャの後孔を舐めようとする。
「ま、待って! イデオン様。僕、ヨエルに聞いたんです。ここを舐めるのは普通のカップルだとあんまりしないって」
するとイデオンがムッとした顔をする。
「そんなことはない。ヨエルは羊獣人だから知らないだけだ」
「え?」
「ネコ科の俺たちは相手の健康状態や様子を尻を舐め合うことでチェックするんだ」
「ええ……?」
(本当かな……)
結局イデオンに押し切られてサーシャは秘部をぐずぐずに舐められてしまった。
「やだ、もう溶けちゃうってば――」
「それでいい。溶けるくらいちゃんとしないと、俺の物が入らないからな」
「んっ……うぅ、じゃあもう挿れて……」
サーシャはイデオンに懇願する。イデオンもようやく十分にほぐれたと判断したのか、サーシャの体をうつ伏せにした。片手で腰を持ち上げられ、いよいよだと思うと力んでしまいそうになりサーシャは努めて力を抜くようにした。
彼はそそり立つ雄の象徴をサーシャの小さな入口にあてがう。
「いくぞ」
サーシャがベッドに両手を付き、イデオンが背後から少しずつ体重を掛けてくる。
「あぅ……うぅ…………」
力を抜いていても圧迫感がすごくて、サーシャは無意識にうめいた。
(す、すごい。本当に入ってくる――)
「はぁ、はぁ……もう、入った?」
「馬鹿な、まだ先っぽも入りきっていないぞ」
それを聞いてサーシャは絶句した。
(うそ。かなり苦しいのに……)
「だからちゃんとしないと無理だと言ったろう」
「あ、ひ……んっ」
イデオンが勢いよくぐっと腰を押し付けてきて、サーシャは尻を高く上げたまま頭をシーツにぽすんと預けた。
(あ……この姿勢の方が楽かも)
後ろから見たらとてもはしたないポーズだと思うけど、サーシャは圧迫感を少しでも逃そうと必死だった。尻を上げ、足を開いてイデオンの物を受け入れる。
「ぅ……んっ、ああっ」
「よーし、いい子だサーシャ。上手だぞ」
イデオンが背中に覆いかぶさり、低く柔らかい声でサーシャを褒めた。するとゾクゾクっと腰にくる。
「あっ」
(うそ、なにこれ気持ちいい……?)
その反応を見てイデオンがまた言う。
「気持ちよくなれてえらいな、サーシャ。よし、もっと深く入れてやろうな」
イデオンが甘く囁く。そしてぐ、ぐ、ぐ、と腰を押し付けられサーシャは潰されそうな気がするのにそれが気持ちよくてぴくぴくと身体を痙攣させた。
「はぁ……あ……ぁ。なんか、変になっちゃいそう……」
「そうか。お前の中はあたたかくて、俺は気持ちが良いぞ」
「ああっ……あっ、ん……」
イデオンがゆっくりと腰を引き、性器が抜けてしまうぎりぎりでまたぬるぬると奥に押し込まれる。ぞりぞりと中を擦られる感触にサーシャは言葉にならない掠れた悲鳴のような声を出した。
(ヤバい、これ無理。気持ちいい――どうしよう?)
何度かそれを繰り返され、全身の力が抜ける。もう尻を上げていることもできず、最後はうつ伏せになった。その上からイデオンがサーシャを押し潰すかのように腰をぐいぐいと当ててくる。
(重たいけど、イデオン様の体温あったかくて気持ちいい……)
彼もいつのまにか息が荒くなっていた。喉の奥から、雪豹の姿になった時のようなゴロゴロという音がする。
「噛んで、イデオン様――」
意識がぼんやりしたサーシャはオメガの本能で無意識のうちに呟いていた。
「噛んで……っ」
グルル、グルル……とうなじでイデオンの喉が鳴っている。その音にすら感じてサーシャは体を震わせた。このまま食べられるのだと思うと達してしまいそうなほど頭がハイになる。
イデオンが腰の動きを止めぬまま、サーシャのうなじに食らいついた。
「ふぁ……ぁあっ……あ!」
焼け付くような痛みと、同じくらい強い快感が襲ってくる。うなじが燃えるように熱い。イデオンの牙からマグマみたいに熱いものが体に流れ込むような感じがする。甘いムスクの香りがサーシャの鼻を刺激した。
「ああ、熱い……溶けちゃう……」
その熱に飲み込まれるような感覚の中でビクビクと痙攣しながらサーシャは達した。シーツに擦れていた下腹部から生ぬるい液体がとぷとぷと溢れ出る。
「あ……んっ……」
イデオンはようやくうなじから口を離すと、サーシャの甘えたような鼻声に触発されてまた腰を尻に押し付け始めた。彼が動くたびに二人の間で濡れた音がする。
イデオンの息遣いがいよいよ荒々しくなったかと思うと、最後に感極まって数秒の間呼吸が止まった。
それと同時にサーシャの中に熱い飛沫がドクドクと流れ込んでくる。
サーシャの内側はまだ痙攣していて、まるでその液体を飲み込もうとしているかのようだった。
「や、あ……たくさん出てる。あ……こんなに中に……赤ちゃん出来ちゃう……」
するとイデオンが笑った。
「何を言う。それがお前の望みだったろう? 入れてもらえなくて、”これじゃ赤ちゃん出来ない”と喚いていたのは誰だ?」
「へ? あ……そっか……」
(赤ちゃん……出来ていいんだった……)
イデオンが中に入ったままで後ろからサーシャの頬にキスした。
「これから、いくらでも注いでやる。何人できてもお前との子どもなら俺は歓迎だ」
甘い囁きにサーシャはほわんと頬が熱くなる。
「そだね……。子だくさんなのも……いいんでないかな」
「ああ」
サーシャが後ろを向くと、イデオンが口付けしてくれる。
そのぬくもりにホッとして気が遠くなりかけた。
(眠い……)
「おい、まだ寝るなよ」
「ふぇ?」
「念のため、あと何回かしておこう」
「ね、念のため?」
「ちゃんとお前に子種を植え付けなければならんからな」
「え、もう無理……」
「何を言う。途中ではやめられないと最初に言ったはずだ」
「え、だって今最後までできたしょや」
「これが最後だとでも?」
イデオンは今度はサーシャを仰向けにし右手で片足を掴み上げた。
「俺はまだ足りない。お前のことを愛してるから、もっと食いたい」
「え、待って。食べないでよ!」
「いいや、今まで我慢したんだから存分に食うぞ」
イデオンは持ち上げたサーシャの膝の裏を舐めた。
「待ってよ。まっ、ちょっと! イデオン様そこは食べちゃだめって言ってるしょ!」
こうして王妃の寝所で夜は賑やかに更けていった。
この部屋で、第一子、第二子……と次々に愛らしい子どもたちが産まれることになるのは言うまでもない――。
【完】
✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••
最後までご覧いただきありがとうございました!
昨日完結目標宣言してましたが結局今日に持ち越してしまいました。
こちらはBL小説大賞向けに書き始めてちょうど1ヶ月で完結となりました~。
皆様の応援をたくさん頂いて、一人で書いた感じがしないほど楽しかったです。
各地の方言のことなど知ることができたのも良かった(*´꒳`*)
方言主人公ということで、クセが強すぎてあまり読まれないだろうなと覚悟していたのにたくさん読んでもらえてとても嬉しかったです!
実は、これの他に参加していた『僕の匂いだけわかるイケメン美食家αに美味しく頂かれてしまいそうです』というのが、都会が舞台の話でした。その反動で、こちらは田舎者主人公にして始めた作品になります。
サーシャが作者の予想より元気に暴れてくれたなと思います♡
BL大賞というお祭り期間に、このお話しで少しでも楽しんでもらえていたら幸いです(*^^*)
ありがとうございました!
宣伝ですが、『隠れSubの俺は幼馴染の腹黒Domにこっそり催眠プレイで甘やかされていることを知らない』という話が今現行最新作になります。
初のDom/Subでよくわからず書いてみてるのでDom/Subわからない方も読めると思います。もし良ければこちらもご覧ください♪
サーシャはイデオンの首に腕を巻き付け、膝に乗り上がった。するとイデオンは右手だけで軽々とサーシャを持ち上げ、ベッドへと運ぶ。
矢傷のある左肩はまだ自由に動かせない。しかしイデオンにとってサーシャとベッドへ入るのにそれはさほど重要ではないらしかった。
「サーシャ、今夜はどうされたい?」
「え……と、優しくしてくれるならなんでも……」
「なんでも?」
イデオンは鼻で笑いながら右手だけで器用にサーシャのガウンを脱がせていく。侍女のアンとスーは今夜は「片手で脱がせやすい結び方」をしてくれた。
シュルシュルという衣擦れの音だけでちょっとやらしい気分になりそうでサーシャは目のやり場に困った。
(はぁ……こうやって改めてこういうことになると、緊張……)
結婚式後すぐに、借金返済のため必死になっていたあの頃――。あれは実家のためにどうにかしなければという義務感で頭がいっぱいだったから、ある意味無心で迫ることができた。
だけど今はそういう大義名分があるわけではない。
ただ、夫に求められて妻として抱かれるということ――……。
「そんなゆっくり脱がされたら、恥ずかしいべさ……」
「そうか? だが、急ぐ必要もないだろう」
「それはそうだけど……」
「いい眺めなんだ。いつまで見ていても飽きないな――」
全て脱がされて身を隠すものが無くなり、サーシャはイデオンに見られているだけで段々体が火照ってくる。
「うん、いい香りが立ち昇ってくる。甘くて柔らかい……」
イデオンはサーシャの胸元で息を吸い込む。
触れられていないのに、皮膚から数センチのところでイデオンが深呼吸するので、息がかかってくすぐったい。
「あ……ん。こちょばしい……」
「だんだん肌がピンク色になってきたな。ここは真っ赤に尖って、どうされたいんだったかな?」
イデオンの指が胸の先端の周りをスーッとなぞる。
「――や、優しく……」
「優しく、なんだ?」
「わからな――」
サーシャが答えられずに口ごもると、イデオンが先端を指先でつまんだ。
「あっ!」
「こうか?」
そのままくりくりと捻られる。するとぴりぴりした刺激が背筋に走る。
「んん、あぅ……」
(気持ちいい……でも、もうちょっと……)
「イデオン様ぁ……もっと」
「もっと?」
「もう少し、強く……」
「なに? 優しくなくていいのか?」
イデオンの顔を見上げると、意地悪そうな顔で微笑んでいた。
(もう、面白がって)
サーシャはからかわれているのはわかっていたが、気持ちよくなりたくて頷いた。
「しなくていい――」
「お前のそのいやらしい顔、たまらないな」
イデオンがそう言ってサーシャの唇を奪った。
「んっ……」
サーシャは唇が腫れてしまうんじゃないかと思うほど執拗に口づけされ、意識が朦朧としてくる。
息継ぎをするだけで精一杯だ。
肉厚な舌が口の中に入ってくる。イデオンはサーシャの柔らかい口中を散々舐り、唇を吸った。
(イデオン様のキス――気持ちよすぎて頭が馬鹿になりそう)
そしてキスしているうちに自分の後孔がじくじくと濡れてくるのを感じた。蜂蜜酒が効いて、サーシャの体はアルファを受け入れるための準備を始めていた。
濡れた感触が気になって腿をこすり合わせてもじもじしていると、イデオンに気づかれた。
「なんだ。もうこっちをいじってほしいんだな?」
「ち、ちが――」
「ここをこんなふうにしておきながら、何が違うと言うんだ?」
イデオンの長く太い指がサーシャのすぼまりの中に潜り込んでくる。
一度中指を根元まで入れられて、良いところに触れるか触れないかという微妙な位置を彼の指が擦る。
ぬく、ぬく……と出したり入れたりされ、サーシャはもどかしくて身を捩る。
(そこじゃなく、もうちょっとこっち……)
自ら腰を浮かせたり沈めたりして、良いところに当たるように動かしてしまう。
「あふぅ……んん……あっ、そこ。そこ、気持ちいい……」
「この辺か?」
イデオンが指を動かして、一番好きなところを擦り始めたのでサーシャは夢中になって頷いた。
「あ、そこ! きもち……っ、きもちいいよぉ……」
濡れた体内を丁寧にほぐされ、サーシャは喘いだ。
(久しぶりに触られるけど、全然痛くない。気持ちいい……)
「今夜は最後までするぞ」
「はい……」
「やめろと言っても途中で止めることはできないからな。本当にいいんだな?」
サーシャはこくこくと頷いた。
(いいに決まってる。一体どれだけお預けくらったと思ってるの?)
「イデオン様、僕ずっと挿れてって言ってきたべさ。だからこっちこそ、ちゃんと挿れてって言いたいよ」
「大丈夫だ。少しくらい痛がってても続けてやる。とにかくお前次第だからな――」
イデオンはサーシャの足を大きく開かせ、足の付根に顔を寄せた。そのままサーシャの後孔を舐めようとする。
「ま、待って! イデオン様。僕、ヨエルに聞いたんです。ここを舐めるのは普通のカップルだとあんまりしないって」
するとイデオンがムッとした顔をする。
「そんなことはない。ヨエルは羊獣人だから知らないだけだ」
「え?」
「ネコ科の俺たちは相手の健康状態や様子を尻を舐め合うことでチェックするんだ」
「ええ……?」
(本当かな……)
結局イデオンに押し切られてサーシャは秘部をぐずぐずに舐められてしまった。
「やだ、もう溶けちゃうってば――」
「それでいい。溶けるくらいちゃんとしないと、俺の物が入らないからな」
「んっ……うぅ、じゃあもう挿れて……」
サーシャはイデオンに懇願する。イデオンもようやく十分にほぐれたと判断したのか、サーシャの体をうつ伏せにした。片手で腰を持ち上げられ、いよいよだと思うと力んでしまいそうになりサーシャは努めて力を抜くようにした。
彼はそそり立つ雄の象徴をサーシャの小さな入口にあてがう。
「いくぞ」
サーシャがベッドに両手を付き、イデオンが背後から少しずつ体重を掛けてくる。
「あぅ……うぅ…………」
力を抜いていても圧迫感がすごくて、サーシャは無意識にうめいた。
(す、すごい。本当に入ってくる――)
「はぁ、はぁ……もう、入った?」
「馬鹿な、まだ先っぽも入りきっていないぞ」
それを聞いてサーシャは絶句した。
(うそ。かなり苦しいのに……)
「だからちゃんとしないと無理だと言ったろう」
「あ、ひ……んっ」
イデオンが勢いよくぐっと腰を押し付けてきて、サーシャは尻を高く上げたまま頭をシーツにぽすんと預けた。
(あ……この姿勢の方が楽かも)
後ろから見たらとてもはしたないポーズだと思うけど、サーシャは圧迫感を少しでも逃そうと必死だった。尻を上げ、足を開いてイデオンの物を受け入れる。
「ぅ……んっ、ああっ」
「よーし、いい子だサーシャ。上手だぞ」
イデオンが背中に覆いかぶさり、低く柔らかい声でサーシャを褒めた。するとゾクゾクっと腰にくる。
「あっ」
(うそ、なにこれ気持ちいい……?)
その反応を見てイデオンがまた言う。
「気持ちよくなれてえらいな、サーシャ。よし、もっと深く入れてやろうな」
イデオンが甘く囁く。そしてぐ、ぐ、ぐ、と腰を押し付けられサーシャは潰されそうな気がするのにそれが気持ちよくてぴくぴくと身体を痙攣させた。
「はぁ……あ……ぁ。なんか、変になっちゃいそう……」
「そうか。お前の中はあたたかくて、俺は気持ちが良いぞ」
「ああっ……あっ、ん……」
イデオンがゆっくりと腰を引き、性器が抜けてしまうぎりぎりでまたぬるぬると奥に押し込まれる。ぞりぞりと中を擦られる感触にサーシャは言葉にならない掠れた悲鳴のような声を出した。
(ヤバい、これ無理。気持ちいい――どうしよう?)
何度かそれを繰り返され、全身の力が抜ける。もう尻を上げていることもできず、最後はうつ伏せになった。その上からイデオンがサーシャを押し潰すかのように腰をぐいぐいと当ててくる。
(重たいけど、イデオン様の体温あったかくて気持ちいい……)
彼もいつのまにか息が荒くなっていた。喉の奥から、雪豹の姿になった時のようなゴロゴロという音がする。
「噛んで、イデオン様――」
意識がぼんやりしたサーシャはオメガの本能で無意識のうちに呟いていた。
「噛んで……っ」
グルル、グルル……とうなじでイデオンの喉が鳴っている。その音にすら感じてサーシャは体を震わせた。このまま食べられるのだと思うと達してしまいそうなほど頭がハイになる。
イデオンが腰の動きを止めぬまま、サーシャのうなじに食らいついた。
「ふぁ……ぁあっ……あ!」
焼け付くような痛みと、同じくらい強い快感が襲ってくる。うなじが燃えるように熱い。イデオンの牙からマグマみたいに熱いものが体に流れ込むような感じがする。甘いムスクの香りがサーシャの鼻を刺激した。
「ああ、熱い……溶けちゃう……」
その熱に飲み込まれるような感覚の中でビクビクと痙攣しながらサーシャは達した。シーツに擦れていた下腹部から生ぬるい液体がとぷとぷと溢れ出る。
「あ……んっ……」
イデオンはようやくうなじから口を離すと、サーシャの甘えたような鼻声に触発されてまた腰を尻に押し付け始めた。彼が動くたびに二人の間で濡れた音がする。
イデオンの息遣いがいよいよ荒々しくなったかと思うと、最後に感極まって数秒の間呼吸が止まった。
それと同時にサーシャの中に熱い飛沫がドクドクと流れ込んでくる。
サーシャの内側はまだ痙攣していて、まるでその液体を飲み込もうとしているかのようだった。
「や、あ……たくさん出てる。あ……こんなに中に……赤ちゃん出来ちゃう……」
するとイデオンが笑った。
「何を言う。それがお前の望みだったろう? 入れてもらえなくて、”これじゃ赤ちゃん出来ない”と喚いていたのは誰だ?」
「へ? あ……そっか……」
(赤ちゃん……出来ていいんだった……)
イデオンが中に入ったままで後ろからサーシャの頬にキスした。
「これから、いくらでも注いでやる。何人できてもお前との子どもなら俺は歓迎だ」
甘い囁きにサーシャはほわんと頬が熱くなる。
「そだね……。子だくさんなのも……いいんでないかな」
「ああ」
サーシャが後ろを向くと、イデオンが口付けしてくれる。
そのぬくもりにホッとして気が遠くなりかけた。
(眠い……)
「おい、まだ寝るなよ」
「ふぇ?」
「念のため、あと何回かしておこう」
「ね、念のため?」
「ちゃんとお前に子種を植え付けなければならんからな」
「え、もう無理……」
「何を言う。途中ではやめられないと最初に言ったはずだ」
「え、だって今最後までできたしょや」
「これが最後だとでも?」
イデオンは今度はサーシャを仰向けにし右手で片足を掴み上げた。
「俺はまだ足りない。お前のことを愛してるから、もっと食いたい」
「え、待って。食べないでよ!」
「いいや、今まで我慢したんだから存分に食うぞ」
イデオンは持ち上げたサーシャの膝の裏を舐めた。
「待ってよ。まっ、ちょっと! イデオン様そこは食べちゃだめって言ってるしょ!」
こうして王妃の寝所で夜は賑やかに更けていった。
この部屋で、第一子、第二子……と次々に愛らしい子どもたちが産まれることになるのは言うまでもない――。
【完】
✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••
最後までご覧いただきありがとうございました!
昨日完結目標宣言してましたが結局今日に持ち越してしまいました。
こちらはBL小説大賞向けに書き始めてちょうど1ヶ月で完結となりました~。
皆様の応援をたくさん頂いて、一人で書いた感じがしないほど楽しかったです。
各地の方言のことなど知ることができたのも良かった(*´꒳`*)
方言主人公ということで、クセが強すぎてあまり読まれないだろうなと覚悟していたのにたくさん読んでもらえてとても嬉しかったです!
実は、これの他に参加していた『僕の匂いだけわかるイケメン美食家αに美味しく頂かれてしまいそうです』というのが、都会が舞台の話でした。その反動で、こちらは田舎者主人公にして始めた作品になります。
サーシャが作者の予想より元気に暴れてくれたなと思います♡
BL大賞というお祭り期間に、このお話しで少しでも楽しんでもらえていたら幸いです(*^^*)
ありがとうございました!
宣伝ですが、『隠れSubの俺は幼馴染の腹黒Domにこっそり催眠プレイで甘やかされていることを知らない』という話が今現行最新作になります。
初のDom/Subでよくわからず書いてみてるのでDom/Subわからない方も読めると思います。もし良ければこちらもご覧ください♪
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サーシャの両親のその後が知りたいです。
例の男爵の本性を知った後。少しは反省していて欲しい。特にサーシャ母
ご感想ありがとうございます!
このお話しはそもそもサーシャの両親、特に母親が原因みたいなものですから両親サイドへの言及が不足していましたね。
本文で細かく書けなかったのでこちらでざっとまとめてみます。
まずヴァレンティ男爵が爬虫類族の力で催眠をかけて周囲の人々を騙していたという背景があります。
そしてサーシャの母親は、いわばマルチ商法に引っかかるお人好しのおばさんみたいな形でコロッと騙されました。
そして世論的に獣人=人を食べるという怖いイメージもあったため、サーシャがイデオン王から引き離されて男爵家に嫁ぐことになったときも「あら、実家の近くで人間と結婚できて借金もチャラでよかったわ」という反応だったと思います。
男爵が捕まり、催眠が解けた後でようやく母親は自分の過ちに気づきます。そこではじめて息子に迷惑をかけていたことを知り、大いに反省することと思います。
信じやすくて騙されやすい性格の、根は悪くない親…ということで今後は真面目に領地の運営をしてくれるはずです!
完結おめでとうございます✨
そしてお疲れ様でした😊
サーシャとイデオンが幸せになって良かったです🥰
でも終って寂しく感じてもいます。
こんなに北海道弁満載のお話ありがとうございます。(私も【内地】の人に指摘されないと北海道弁を話してるってわからないことがありました。いろんな【内地】から移住してきてるからごちゃ混ぜだったり。)
これから2人は子沢山で幸せになるでしょう…っていうか幸せになるので、ぜひとも幸せな家族とミカルくんのお話も番外編で読みたいです。
よろしくお願いいたします😌
最後までご覧いただきありがとうございました!
無事ハッピーエンドにできてホッとしてます〜☺️
寂しく思って頂けるなんて光栄です💕
北海道弁のBLってあまり無いしちょっとどうかな?引かれるかなぁ?と恐る恐る出したんですが喜んでくれる方もいて、コメントに励まされました✨
気づかず訛ってて内地の方に指摘れてビックリしたりしますよね(笑)
ミカルや、誕生した子どもを絡めた番外編は書きたいなと思いますのでまた見て頂けたら嬉しいです✨ありがとうございます♪
完結おめでとうございます!
毎日とても楽しく読んでいました(*´ω`*)終わっちゃうのは、寂しいですがサーシャが幸せになれて嬉しいです♡
建設作業員の方々も良いキャラで好きです!マリアーノも幸せになって、サーシャとも仲良くなる日が来てほしいなと思いました(๑>◡<๑)
サーシャの北海道弁もかわいかったです!私は九州から東北に住みついている者ですが、おささるって方言をよく聞きます笑
本当にお疲れ様でした♡
毎日読んでくださってありがとうございます!嬉しいです♡
サーシャがイデオンと幸せになれたところをお見せできて良かったです!
建設作業員も気に入ってもらえて嬉しいです(*≧∀≦*)
裏表のないメンバーに囲まれてマリアーノも素直になれたらと思います。その時はきっとサーシャともわかり合える気がします♪
最後まで見て頂きありがとうございました!