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65.二度と離さない(3)
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「――本当……?」
イデオンにしがみつくようにしていたサーシャはヴァレンティ男爵の言葉を聞いて彼の方を振り向いた。
(ダメだ! 行かせないぞ、サーシャ)
イデオンはサーシャの着ているマントを噛んで彼が向こうへ行けないように必死で引っ張る。
しかしサーシャはヴァレンティの言葉に耳を傾けてしまった。
「僕がそちらへ行けば、イデオン様を助けてくれるんですね……。わかりました」
(やめろ――やめろサーシャ!)
「イデオン様、離して。この出血じゃ危ないから、お願い」
視界がだんだん薄暗くなってきたがイデオンはそれでももちろん離さずにマントを噛み続けた。フウフウと息が漏れる。自由に動かない体でヴァレンティ男爵からなるべく距離を取ろうと後ろへ引いた。
するとヴァレンティの元へ向かおうと踏ん張っていたサーシャが力を抜いた。ようやく言うことを聞いてくれると一瞬ホッとしたイデオンにサーシャが言う。
「イデオン様――ありがとう。ここまで来てくれて僕、なまらうれしかった」
(……なに――?)
サーシャはしゃがみ込んでイデオンの毛むくじゃらの顔に頬ずりした。少し目元が赤い――泣いているのだ。サーシャは鼻をすすって、両手で雪豹の顔を包んだ。涙をためた目でイデオンの顔を覗き込んでくる。
「イデオン様聞いて。あなたがマリアーノのうなじを噛んだって知ったときは……悔しくてどうにかなりそうだった。僕はあなたのことが好きだから――。だけど今日来てくれたからもう、それで僕は何も思い残すことは無いです」
(おい、やめろ。何を言ってるんだ――?)
声を出したいのに、獣化しているから何も言うことができない。
イデオンはもどかしくて、彼の言葉をやめさせたくて喉をぐるぐる鳴らしたが、サーシャには伝わらなかった。
「イデオン様、短い間だったけどあなたのお嫁さんになれてすごく幸せだった――あのね、”病めるときも健やかなるときも”って結婚式で誓ったべさ? あれ、大聖堂で聞いたときはそんな大げさな~って思ったんだ。だってあの頃はまだイデオン様と全然仲良くなかったべさ?」
サーシャが涙をこらえながら笑顔を見せる。イデオンは霞む視界の中でサーシャの美しい笑顔を見て胸が張り裂けそうになった。
(サーシャ……お前にこんなことを言わせるつもりでここへ来たんじゃない――)
「だけど、今はあの誓いの言葉、本気で僕はそうだと思ってる。どんなときも、元気でもつらくても何があろうとこの魂はイデオン様とずっと一緒です」
(やめろ……やめろ! ここで別れるみたいなことを言うな。俺は二度とお前のことを離さない。俺の命なんて構うな。俺は死んでもお前のことだけは守ると決めているんだ。頼むからその口を閉じてくれ)
自分の無力さに打ちのめされながらイデオンは四肢を踏ん張った。しかし目の前が暗くなりかけていて、もうサーシャの顔もよく見えない。彼の透き通った声と温かい手の感触だけがイデオンの意識をかろうじてつなぎとめていた。
「生きてたら必ずいいことがあるってばあちゃんが言ってたんだ。したからイデオン様はここで死んだらだめ。これは内緒にするつもりだったんだけども……僕の人生って実はおまけの延長戦みたいなものなんだ。したからむしろ幸せ過ぎたくらい。イデオン様に出会えてよかったよ。僕、ヴァレンティ男爵のところさ行ってもずっとずっと心はイデオン様のものだよ」
サーシャが雪豹の頬に口づけし、その手がイデオンの顔から離れた。支えを失ったイデオンはその場に崩折れた。
「ヴァレンティ男爵。あんたがどんなに卑怯な手を使っても、僕の心だけはあんたのものにはできない。それでもいいなら僕は一緒に地獄へでもどこへでも行ってあげる。その代わり、僕の夫にこれ以上手を出すな!」
イデオンの耳にはサーシャの凛とした声が響いた。
(行かせぬ――お前をひとりで行かせるものか)
自分の呼吸の音がうるさい。
サーシャがヴァレンティ男爵の方へ歩いていく気配がする。
(あの者たちはまだか――いや、自分が動くしかない。立ち上がれ。雪豹王の誇りを思い出せ。イデオン・ヘレニウスは妻を守る――この身が朽ち果てようと二度と手を離さぬ!)
イデオンは最後の力を振り絞り、歯を食いしばって体を起こした。よたよたと妻に近づく。
(サーシャ……!)
そのとき、隣の部屋からドン、ドン、と鈍い音がした。
それと同時に油絵の飾られた壁が振動し、パラパラと壁から小石のようなものが落ちた。
ヴァレンティ男爵が壁を見てつぶやく。
「――なんだ……?」
(きた……!)
イデオンは全身全霊の力を込めて駆け出し、サーシャに体当りして一緒に床に伏せた。それを見たヴァレンティ男爵が叫んだ。
「何をする、この薄汚い獣め。気でも狂ったのか!?」
サーシャもびっくりして「なに?」と短く叫んだ。イデオンはそれには構わず、サーシャに体重をかけてそのまま押さえ込んだ。
「どけて、イデオン様! そんなに動いたらもっと出血しちゃう。お願いだからそこをどけて……!」
(絶対に離すものか――)
イデオンは妻を守るように覆いかぶさったまま動かない。
「貴様、そこをどけろ! 叩き切られたいのか!?」
ヴァレンティ男爵が罵り声をあげて剣を振り上げたが、下手に斬りつけるとサーシャまで危ないため振り下ろせずにいる。苛立った彼はイデオンの傷口を足で蹴りつけた。
グゥウ……とうめき声が漏れる。するとサーシャが泣いてイデオンの胸を叩いた。
「もうやめて! お願いどけてイデオン様!」
その間も、隣の部屋からドン、ドン、ゴン、と地響きのような音が止まない。振動も酷くなり、こちらの部屋では油絵がぐらぐら揺れて今にも床に落ちそうになっている。
「くそ、何だ!? おい、お前様子を見てこい!」
「はい」
ヴァレンティ男爵に怒鳴りつけられた弓矢を持つ護衛が慌てて部屋を出ようとした瞬間、地割れのようなものすごい音が鳴り響き、石造りの壁が雪崩を打って護衛の男に襲いかかった。
「わあぁあぁっ!?」
男は咄嗟に避けようとしたが、その場に倒れて足が大きな石の下敷きになってしまった。
それを見てヴァレンティ男爵が呆然とつぶやく。
「な……なんだ……?」
同時に崩れた壁の砂煙の向こうから雄叫びが聞こえ、ドドド……という足音と共に屈強な獣人が群れをなして姿を現した。
ヒグマ獣人が「ウォオオオ! やっと穴が空いたぜ~!」とハンマーを振りかざしながら駆け込んだかと思えば「やったぜ! 見ろよ、ぶっ壊れてる!」とジャコウウシ獣人がスコップを掲げて踊り出る。「イデオン様~! 俺たちが来たからもう大丈夫ですよ」と狼獣人が遠吠えし、ヘラジカ獣人二人組が「おい、サーシャ様だ!」「サーシャ様! あれ? 陛下が怪我なすってるぜ!」とわめいた。
それを聞いて「おい、そこの剣を持ってるトカゲ面がやったのか?」「なんだと!? 許せねえ! やっちまえ!!」とヒグマ獣人が吠える。
(間に合った……来てくれた……)
イデオンはかろうじて目を開いて、泥と砂まみれで騒ぎまくる獣人作業員たちを見た。
ヴァレンティ男爵が声を震わせる。
「な、な、なんだお前たちは……!?」
彼からはさっきまでの余裕はもう感じられなかった。
「おうおう、俺たちはサーシャ様とイデオン陛下に忠誠を誓った建設作業員だ! 王妃様をお助けするため、こっそり壁に穴をあけにやって来たってわけだ!」
ヴァレンティ男爵は顎が外れんばかりに口をぽかんと開けている。
「そんなバカな……」
すると狼獣人が部屋を見渡して言う。
「――って、おいおい。なんだよ。ドア開いてるじゃねえか! 誰だよ? サーシャ様が幽閉されてるなんて言ったのは」
「俺じゃねえよ。クレムス王国の使者だろう。閉じ込められてるから壁に穴開けて助けるのが俺たちの役目だって言うから頑張ったのに」
「でもほら、陛下も怪我してるし壁から出て来て正解だったんじゃねえのか?」
「それもそうだな。よし、あいつを捕まえようぜ」
ヒグマ獣人とジャコウウシ獣人が両側からヴァレンティ男爵の腕を掴んでイデオンの前に連れてきた。
「陛下、この男どうしてやりましょう?」
「サーシャ様を閉じ込めるとは、許せねえ奴ですぜ」
「どうぞ、やっちまってくだせえ」
イデオンは意識が朦朧としていたが、怒りで己を奮い立たせる。そして獣人たちが後ろを向かせたヴァレンティ男爵の尻に思いっきり牙を立てて噛み付いた。
「ンギャーーーーーーーーっ!!!!!」
爬虫類族ヴァレンティ男爵の絶叫が屋敷にこだました。
そしてそれを合図にグスタフ大公率いるデーア大公国軍が屋敷に侵入し、すべての部屋を制圧した。
イデオンにしがみつくようにしていたサーシャはヴァレンティ男爵の言葉を聞いて彼の方を振り向いた。
(ダメだ! 行かせないぞ、サーシャ)
イデオンはサーシャの着ているマントを噛んで彼が向こうへ行けないように必死で引っ張る。
しかしサーシャはヴァレンティの言葉に耳を傾けてしまった。
「僕がそちらへ行けば、イデオン様を助けてくれるんですね……。わかりました」
(やめろ――やめろサーシャ!)
「イデオン様、離して。この出血じゃ危ないから、お願い」
視界がだんだん薄暗くなってきたがイデオンはそれでももちろん離さずにマントを噛み続けた。フウフウと息が漏れる。自由に動かない体でヴァレンティ男爵からなるべく距離を取ろうと後ろへ引いた。
するとヴァレンティの元へ向かおうと踏ん張っていたサーシャが力を抜いた。ようやく言うことを聞いてくれると一瞬ホッとしたイデオンにサーシャが言う。
「イデオン様――ありがとう。ここまで来てくれて僕、なまらうれしかった」
(……なに――?)
サーシャはしゃがみ込んでイデオンの毛むくじゃらの顔に頬ずりした。少し目元が赤い――泣いているのだ。サーシャは鼻をすすって、両手で雪豹の顔を包んだ。涙をためた目でイデオンの顔を覗き込んでくる。
「イデオン様聞いて。あなたがマリアーノのうなじを噛んだって知ったときは……悔しくてどうにかなりそうだった。僕はあなたのことが好きだから――。だけど今日来てくれたからもう、それで僕は何も思い残すことは無いです」
(おい、やめろ。何を言ってるんだ――?)
声を出したいのに、獣化しているから何も言うことができない。
イデオンはもどかしくて、彼の言葉をやめさせたくて喉をぐるぐる鳴らしたが、サーシャには伝わらなかった。
「イデオン様、短い間だったけどあなたのお嫁さんになれてすごく幸せだった――あのね、”病めるときも健やかなるときも”って結婚式で誓ったべさ? あれ、大聖堂で聞いたときはそんな大げさな~って思ったんだ。だってあの頃はまだイデオン様と全然仲良くなかったべさ?」
サーシャが涙をこらえながら笑顔を見せる。イデオンは霞む視界の中でサーシャの美しい笑顔を見て胸が張り裂けそうになった。
(サーシャ……お前にこんなことを言わせるつもりでここへ来たんじゃない――)
「だけど、今はあの誓いの言葉、本気で僕はそうだと思ってる。どんなときも、元気でもつらくても何があろうとこの魂はイデオン様とずっと一緒です」
(やめろ……やめろ! ここで別れるみたいなことを言うな。俺は二度とお前のことを離さない。俺の命なんて構うな。俺は死んでもお前のことだけは守ると決めているんだ。頼むからその口を閉じてくれ)
自分の無力さに打ちのめされながらイデオンは四肢を踏ん張った。しかし目の前が暗くなりかけていて、もうサーシャの顔もよく見えない。彼の透き通った声と温かい手の感触だけがイデオンの意識をかろうじてつなぎとめていた。
「生きてたら必ずいいことがあるってばあちゃんが言ってたんだ。したからイデオン様はここで死んだらだめ。これは内緒にするつもりだったんだけども……僕の人生って実はおまけの延長戦みたいなものなんだ。したからむしろ幸せ過ぎたくらい。イデオン様に出会えてよかったよ。僕、ヴァレンティ男爵のところさ行ってもずっとずっと心はイデオン様のものだよ」
サーシャが雪豹の頬に口づけし、その手がイデオンの顔から離れた。支えを失ったイデオンはその場に崩折れた。
「ヴァレンティ男爵。あんたがどんなに卑怯な手を使っても、僕の心だけはあんたのものにはできない。それでもいいなら僕は一緒に地獄へでもどこへでも行ってあげる。その代わり、僕の夫にこれ以上手を出すな!」
イデオンの耳にはサーシャの凛とした声が響いた。
(行かせぬ――お前をひとりで行かせるものか)
自分の呼吸の音がうるさい。
サーシャがヴァレンティ男爵の方へ歩いていく気配がする。
(あの者たちはまだか――いや、自分が動くしかない。立ち上がれ。雪豹王の誇りを思い出せ。イデオン・ヘレニウスは妻を守る――この身が朽ち果てようと二度と手を離さぬ!)
イデオンは最後の力を振り絞り、歯を食いしばって体を起こした。よたよたと妻に近づく。
(サーシャ……!)
そのとき、隣の部屋からドン、ドン、と鈍い音がした。
それと同時に油絵の飾られた壁が振動し、パラパラと壁から小石のようなものが落ちた。
ヴァレンティ男爵が壁を見てつぶやく。
「――なんだ……?」
(きた……!)
イデオンは全身全霊の力を込めて駆け出し、サーシャに体当りして一緒に床に伏せた。それを見たヴァレンティ男爵が叫んだ。
「何をする、この薄汚い獣め。気でも狂ったのか!?」
サーシャもびっくりして「なに?」と短く叫んだ。イデオンはそれには構わず、サーシャに体重をかけてそのまま押さえ込んだ。
「どけて、イデオン様! そんなに動いたらもっと出血しちゃう。お願いだからそこをどけて……!」
(絶対に離すものか――)
イデオンは妻を守るように覆いかぶさったまま動かない。
「貴様、そこをどけろ! 叩き切られたいのか!?」
ヴァレンティ男爵が罵り声をあげて剣を振り上げたが、下手に斬りつけるとサーシャまで危ないため振り下ろせずにいる。苛立った彼はイデオンの傷口を足で蹴りつけた。
グゥウ……とうめき声が漏れる。するとサーシャが泣いてイデオンの胸を叩いた。
「もうやめて! お願いどけてイデオン様!」
その間も、隣の部屋からドン、ドン、ゴン、と地響きのような音が止まない。振動も酷くなり、こちらの部屋では油絵がぐらぐら揺れて今にも床に落ちそうになっている。
「くそ、何だ!? おい、お前様子を見てこい!」
「はい」
ヴァレンティ男爵に怒鳴りつけられた弓矢を持つ護衛が慌てて部屋を出ようとした瞬間、地割れのようなものすごい音が鳴り響き、石造りの壁が雪崩を打って護衛の男に襲いかかった。
「わあぁあぁっ!?」
男は咄嗟に避けようとしたが、その場に倒れて足が大きな石の下敷きになってしまった。
それを見てヴァレンティ男爵が呆然とつぶやく。
「な……なんだ……?」
同時に崩れた壁の砂煙の向こうから雄叫びが聞こえ、ドドド……という足音と共に屈強な獣人が群れをなして姿を現した。
ヒグマ獣人が「ウォオオオ! やっと穴が空いたぜ~!」とハンマーを振りかざしながら駆け込んだかと思えば「やったぜ! 見ろよ、ぶっ壊れてる!」とジャコウウシ獣人がスコップを掲げて踊り出る。「イデオン様~! 俺たちが来たからもう大丈夫ですよ」と狼獣人が遠吠えし、ヘラジカ獣人二人組が「おい、サーシャ様だ!」「サーシャ様! あれ? 陛下が怪我なすってるぜ!」とわめいた。
それを聞いて「おい、そこの剣を持ってるトカゲ面がやったのか?」「なんだと!? 許せねえ! やっちまえ!!」とヒグマ獣人が吠える。
(間に合った……来てくれた……)
イデオンはかろうじて目を開いて、泥と砂まみれで騒ぎまくる獣人作業員たちを見た。
ヴァレンティ男爵が声を震わせる。
「な、な、なんだお前たちは……!?」
彼からはさっきまでの余裕はもう感じられなかった。
「おうおう、俺たちはサーシャ様とイデオン陛下に忠誠を誓った建設作業員だ! 王妃様をお助けするため、こっそり壁に穴をあけにやって来たってわけだ!」
ヴァレンティ男爵は顎が外れんばかりに口をぽかんと開けている。
「そんなバカな……」
すると狼獣人が部屋を見渡して言う。
「――って、おいおい。なんだよ。ドア開いてるじゃねえか! 誰だよ? サーシャ様が幽閉されてるなんて言ったのは」
「俺じゃねえよ。クレムス王国の使者だろう。閉じ込められてるから壁に穴開けて助けるのが俺たちの役目だって言うから頑張ったのに」
「でもほら、陛下も怪我してるし壁から出て来て正解だったんじゃねえのか?」
「それもそうだな。よし、あいつを捕まえようぜ」
ヒグマ獣人とジャコウウシ獣人が両側からヴァレンティ男爵の腕を掴んでイデオンの前に連れてきた。
「陛下、この男どうしてやりましょう?」
「サーシャ様を閉じ込めるとは、許せねえ奴ですぜ」
「どうぞ、やっちまってくだせえ」
イデオンは意識が朦朧としていたが、怒りで己を奮い立たせる。そして獣人たちが後ろを向かせたヴァレンティ男爵の尻に思いっきり牙を立てて噛み付いた。
「ンギャーーーーーーーーっ!!!!!」
爬虫類族ヴァレンティ男爵の絶叫が屋敷にこだました。
そしてそれを合図にグスタフ大公率いるデーア大公国軍が屋敷に侵入し、すべての部屋を制圧した。
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