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52.突然の別れとミカルのお告げ(1)
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目を覚ますとサーシャはベッドの上におり、隣に腰掛けている人物が視界に入った。
その相手がイデオンならよかったのに、とサーシャは思ったがそうではなかった。――マリアーノだ。
「おはようサーシャ。気分はどう?」
(気分って……僕たしかクローゼットの中に閉じ込められたんでなかった……? 昨夜はあの後どうなったんだべ?)
「頭が痛いし……最悪に決まってるしょや……。昨日お酒に何入れたのさ、マリアーノ」
「あはは、ごめーん」
マリアーノは馴れ馴れしくサーシャの頭を撫でた。今朝の彼はあの変な口紅は塗っていない。似合わないのがやっとわかったのだろうか。そもそもどうして朝からマリアーノが自分の部屋にいるのかサーシャは疑問だった。
「サーシャ、寝起きで悪いけどすぐに支度してね」
アンとスーが壁際に控えていた。二人はいつものようにお喋りすることもなく、気まずそうな顔で黙り込んでいる。
「おはようアン、スー」
「おはようございます、サーシャ様。お支度させて頂きます」
(あれ、二人ともなんか元気ないのかな? 昨日のパーティーではしゃぎすぎて疲れた? それともマリアーノが見てるから黙ってるんだべか)
いつもならサーシャは外へ出掛けないので室内着の上にマントを羽織って終わりだ。しかし今朝着せられたのはどう見ても外出着だった。
「僕、どこかへ連れてってもらえるの?」
「……」
サーシャがアンに向かって尋ねると、アンはマリアーノの顔を窺った。
マリアーノが答える。
「そうだよ。サーシャは遠くへお出掛け。だけど、その前にイデオン様から話があるよ」
「話……?」
昨日サーシャはマリアーノにもらったお酒を飲んでうっかり眠らされてしまった。
(約束をすっぽかしたから、イデオン様は怒ってるんだべか?)
「ねえマリアーノ。あの後部屋にイデオン様来なかった? 僕寝てしまったから何が何だか……」
「いいから、そこへ座って」
サーシャが言われたとおりソファに腰掛けると、アンとスーは部屋を出ていった。それとほとんど入れ違いにイデオンが部屋に入ってくる。サーシャは慌てて立ち上がって出迎えた。
「あ、イデオン様……! ごめんなさい。昨日僕お酒を飲んだら眠ってしまってそれで――」
「わかっている。いいからそこへ掛けてくれ」
「……はい」
サーシャは再びソファに腰掛けた。テーブルを挟んだ向かいの椅子にマリアーノが座り、その隣にイデオンが立った。
(なんでイデオン様、マリアーノの方に立ってるんだべ?)
長身の雪豹王はサーシャに向かって口を開いた。
「サーシャ、お前に話さなければならないことがある」
(うう、おっかない顔してる。やっぱり昨日のこと怒ってるんだべね……)
「――何でしょう?」
「お前は今日これからクレムス王国のヴァレンティ男爵の元へ行くことになった」
「はい?」
(え、なんで急に?)
「あの……それはどういう……? イデオン様と一緒に結婚の挨拶にでも行くってことですか?」
「いや、ちがう。行くのはお前一人だサーシャ」
「へ?」
(僕……一人?)
「あの、つまりマリアーノがお屋敷に帰るのと一緒に僕もクレムス王国へ行ってお祝いのお礼をするってことだべか?」
「――違うんだサーシャ。俺もマリアーノもクレムスへは行かない。お前だけが行くんだ。バルトロメオ・ヴァレンティ男爵の正式な花嫁として」
(は、花嫁……? 一体どういう意味……?)
その相手がイデオンならよかったのに、とサーシャは思ったがそうではなかった。――マリアーノだ。
「おはようサーシャ。気分はどう?」
(気分って……僕たしかクローゼットの中に閉じ込められたんでなかった……? 昨夜はあの後どうなったんだべ?)
「頭が痛いし……最悪に決まってるしょや……。昨日お酒に何入れたのさ、マリアーノ」
「あはは、ごめーん」
マリアーノは馴れ馴れしくサーシャの頭を撫でた。今朝の彼はあの変な口紅は塗っていない。似合わないのがやっとわかったのだろうか。そもそもどうして朝からマリアーノが自分の部屋にいるのかサーシャは疑問だった。
「サーシャ、寝起きで悪いけどすぐに支度してね」
アンとスーが壁際に控えていた。二人はいつものようにお喋りすることもなく、気まずそうな顔で黙り込んでいる。
「おはようアン、スー」
「おはようございます、サーシャ様。お支度させて頂きます」
(あれ、二人ともなんか元気ないのかな? 昨日のパーティーではしゃぎすぎて疲れた? それともマリアーノが見てるから黙ってるんだべか)
いつもならサーシャは外へ出掛けないので室内着の上にマントを羽織って終わりだ。しかし今朝着せられたのはどう見ても外出着だった。
「僕、どこかへ連れてってもらえるの?」
「……」
サーシャがアンに向かって尋ねると、アンはマリアーノの顔を窺った。
マリアーノが答える。
「そうだよ。サーシャは遠くへお出掛け。だけど、その前にイデオン様から話があるよ」
「話……?」
昨日サーシャはマリアーノにもらったお酒を飲んでうっかり眠らされてしまった。
(約束をすっぽかしたから、イデオン様は怒ってるんだべか?)
「ねえマリアーノ。あの後部屋にイデオン様来なかった? 僕寝てしまったから何が何だか……」
「いいから、そこへ座って」
サーシャが言われたとおりソファに腰掛けると、アンとスーは部屋を出ていった。それとほとんど入れ違いにイデオンが部屋に入ってくる。サーシャは慌てて立ち上がって出迎えた。
「あ、イデオン様……! ごめんなさい。昨日僕お酒を飲んだら眠ってしまってそれで――」
「わかっている。いいからそこへ掛けてくれ」
「……はい」
サーシャは再びソファに腰掛けた。テーブルを挟んだ向かいの椅子にマリアーノが座り、その隣にイデオンが立った。
(なんでイデオン様、マリアーノの方に立ってるんだべ?)
長身の雪豹王はサーシャに向かって口を開いた。
「サーシャ、お前に話さなければならないことがある」
(うう、おっかない顔してる。やっぱり昨日のこと怒ってるんだべね……)
「――何でしょう?」
「お前は今日これからクレムス王国のヴァレンティ男爵の元へ行くことになった」
「はい?」
(え、なんで急に?)
「あの……それはどういう……? イデオン様と一緒に結婚の挨拶にでも行くってことですか?」
「いや、ちがう。行くのはお前一人だサーシャ」
「へ?」
(僕……一人?)
「あの、つまりマリアーノがお屋敷に帰るのと一緒に僕もクレムス王国へ行ってお祝いのお礼をするってことだべか?」
「――違うんだサーシャ。俺もマリアーノもクレムスへは行かない。お前だけが行くんだ。バルトロメオ・ヴァレンティ男爵の正式な花嫁として」
(は、花嫁……? 一体どういう意味……?)
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