【完結】転生花嫁と雪豹α王の人質婚〜北海道民の記憶持ちΩは寒さに強くてもふもふ好き〜

grotta

文字の大きさ
上 下
41 / 69

40.ミカルのおすすめ(1)

しおりを挟む
マリアーノはサーシャの胸を人差し指でぐっと突いた。

「サーシャはイデオン様といまだにお友達みたいな関係なんでしょう?」
「そ、そんなこと――」
「それはね。やっぱりサーシャに色気が足りないからだと僕は思う」

そう言ってマリアーノは赤い唇を突き出し、流し目でこちらを見てくる。サーシャはちょっと背筋が寒くなるような感じがした。

「それはそうかもしんないけども……」

(――ていうかマリアーノのそれが色気だって言いたいの……?)

「ほら、その言葉遣い! こっちに越して来てからサーシャはなんだか変な喋り方だし、立ち居振る舞いも田舎臭くて洗練されてないし。服は部屋着みたいで質素なうえにその変な匂いのマント!」

(だから……。これはいい匂いなんだってば!)

「悪い? 別にそんなのどうでもいいべさ」
「だーめだめだめ。それじゃあイデオン様は発情できませーん」
「は、発情って……やめてよマリアーノ」
「だからぁ、恥ずかしがってる場合じゃないの。とにかく当日のメイクは僕に任せて。とびきり色っぽく仕上げてあげる。着る物は僕が持ってきた衣装を貸してあげるから心配しないでね!」

マリアーノは言いたいだけ言ってさっさと部屋を出ていった。

(一体なにがなんだか……色気? そんなに色気無いべか……)

サーシャは姿見で全身を眺めてみた。転生後のこの顔のつくりは間違いなく整っていて綺麗だ。しかし髪の毛は洗いざらしでところどころ跳ねているし、唇は乾燥してひび割れかけている。肌も水分が足りずに粉を吹いていた。

「もしかして僕――ヤバいんでない?」

(庭いじりに夢中になってて、身だしなみなんて気にしたこともなかった。もしかしてイデオン様が僕のこといつまでも抱いてくれないのって色気が無かったから……?)

サーシャはマリアーノの言葉が実は馬鹿にできないのではないかと気づいて青ざめた。





「――って言われてちょっと僕もハッとしたんだよね」
「そうでしたか……」

サーシャは翌日コンサバトリーでアンとスーにマリアーノから指摘されたことについて相談してみた。

「サーシャ様はもちろんそのままで十分お美しいのですよ?」
「ええ。それは本当に。ですが、その上で一言申し上げさせて頂くとすれば……たしかに、ちょっと身だしなみに気を遣ってみるのもよろしいかもしれませんわね」
「そ、そっか……」

やはり侍女たちもそのように思っていたのだ。するとこれはイデオンも呆れている可能性が高い。

「ねぇ、僕どうしたらいいべか?」
「それは、私達にお任せくださいませ。スキンケアから――」
「衣装まで、私達がダンスパーティー当日までに完璧に仕上げて差し上げますわ」
「ありがとう! それで、何をどうすればいい?」

僕が尋ねるとアンとスーは二人で話し合いを始めた。あーでもない、こーでもないと意見を交わしているがサーシャはスキンケアの話だということ以外何を言っているかさっぱりわからなかった。
置いてきぼりになって呆然としていると、隣の椅子に座っていたミカルが立ち上がってサーシャの袖を引っ張った。

「え? ミカルくんどうしたの? そっち行きたいの?」
「……」

ミカルは無言で頷いた。一体どこへ行くのか、サーシャの手を引いてコンサバトリーから王宮の廊下へと入って行く。

「どこ行くの? トイレ?」

ミカルは首を横に振って歩いていく。するとサーシャが普段訪れることを禁じられている西棟のある部屋にたどり着いた。ドアを開けると、室内には子ども向けの椅子やテーブル、小さなサイズのベッドが並んでいた。壁紙は淡いグリーンで、可愛らしい木馬の柄だった。

「ここって……もしかしてミカルくんのお部屋?」

ミカルはこくこくと頷いた。

「うわぁ、こんなめんこいお部屋なんだぁ」

サーシャはここに来て初めて見る子ども部屋の様子に心を躍らせた。

「あ、このちゃんこいベッドで寝てるんだね。椅子も子どもサイズだ~」

家具のサイズ感に気を取られていたサーシャの袖をミカルが引っ張って、部屋の奥にあるドアの前に立たされた。

「え、ここを開けろってこと?」

ミカルは大きく頷いた。ドアの中はウォークインクローゼットになっており、ミカルがずんずん進んでいく。

(なんだろう、ミカルくんの服ば見せてくれるのかな?)

そしてミカルはある服の前で立ち止まった。

「え、これ?」
しおりを挟む
感想 101

あなたにおすすめの小説

捨てられオメガの幸せは

ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。 幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

トップアイドルα様は平凡βを運命にする

新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。 ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。 翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。 運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編連載中】

晦リリ
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

処理中です...