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30.友人にズケズケ言われる花嫁
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サーシャはこの日もイデオンに言われたとおりフード付きのもこもこマントを羽織っていた。
発情期は終わったものの、念の為部屋の外へ出る時は着るようにと言いつけられていたのだ。
「あ、ああこれ? その……イデオン様が外へ出るときはこれを着ろって言うもんだから――」
「ええ~!? 何それ、ありえないんですけど。そんなこと言うなんて酷い旦那様だね。やっぱり獣人って人間のこと餌だと思ってるんじゃない? こわーい」
マリアーノは大げさに肩をすくめて震えて見せた。
「え、餌?」
「うん。だって獣人って人間を食べる野蛮な種族でしょう? 僕、サーシャが無事なのか心配で心配で……」
「食べるだなんて。そんなことしないよ、怒ったらおっかないけど、イデオン様はそんな悪い獣人じゃないし他の使用人とも仲よくやってるし……」
「まぁ、王様は思ったよりイケメンだったけど。でも夫にそんな雑な扱い受けてるなんてものすごくみじめじゃない? よく我慢できるねサーシャ」
「なんも、僕は別に――」
「やだなぁもう。僕サーシャみたいになりたくて髪型も真似して来たんだけどぉ。サーシャがこんなみじめな新婚生活送ってるだなんてがっかり。――あ、ねえ! そこに置いてある箱、伯父様からのプレゼントなんだ! 綺麗なお洋服いっぱい選んで来たから、ほら着替えようよ~」
マリアーノが大きな箱を侍従のカルロに開けさせる。すると宝石のあしらわれたきらびやかな洋服や毛皮のコートなどが大量に現れた。
「う、うわ……すごいキラキラ……」
「でっしょ~! そんなもこもこした臭そうなマント脱ぎなって!」
「え、臭くなんてないけど……」
イデオンがくれたマントにはイデオンの香りが残っている気がして、サーシャはむしろそれが気に入っていた。ウールなので羊の匂いがするのも牧場のことを思い出させてくれて好きだった。
(それにしてもすんごいなぁ。僕の実家にお金を貸してくれるくらいだからヴァレンティ家がお金持ちなのは知ってたけど、こんなすごいものプレゼントに持ってくるなんてどれだけ財力あるんだべ?)
マリアーノはサーシャのマントを勝手に脱がせ、持参したプレゼントの洋服を次々胸元に当てていく。
「んー、これもいいな。あ、サーシャは肌白いしこっちも似合う~」
ぶつぶつ言いながら、マリアーノはフリルたっぷりのブラウスに、異常なほど細かい刺繍の施された花柄のベスト、体にピッタリと沿ってウエストがキュッと引き締まった薄紫のロングコートを選んだ。コートにも花の刺繍があしらわれている。
「ブローチは……エメラルドにしよっか。カフスボタンもお揃いね。これ、最近伯父様と取引してる国の商人が持ってきてくれた貴重な石なんだって。サーシャは派手顔だから大きな宝石に負けなくて羨ましい」
マリアーノが両手でサーシャの頬を包む。彼のバーガンディレッドの三白眼がサーシャの大きな瞳をじっと見つめた。マリアーノの手はひんやりと湿っていて、さっき頬にキスされたときみたいに背筋がぞわっとする。
「はぁ、近くで見るとため息がでちゃうくらい綺麗だねサーシャは。本当に本当に羨ましい……僕もサーシャみたいになりたい――」
「マリアーノ?」
「体型はほとんど一緒だし、髪型も真似したのに」
そう言いながらマリアーノはサーシャのクラヴァットを解き、乱暴に引き抜いた。
「さ、ブラウスも脱ごうね」
「いやブラウスはこのままで――」
「だめだめ、見てよこの袖の刺繍? 素敵でしょ。ほら、こっちに着替えて」
「あっ――」
マリアーノが無理矢理サーシャの着ていたブラウスを脱がせて、新品のブラウスを後ろから羽織らせてくれる。
「え!? ちょっと、サーシャ。どうしたのそのうなじ!」
「へ……?」
「サーシャ、まさか陛下のつがいにしてもらえてないの――?」
(あ、やばい。見られた……!)
発情期は終わったものの、念の為部屋の外へ出る時は着るようにと言いつけられていたのだ。
「あ、ああこれ? その……イデオン様が外へ出るときはこれを着ろって言うもんだから――」
「ええ~!? 何それ、ありえないんですけど。そんなこと言うなんて酷い旦那様だね。やっぱり獣人って人間のこと餌だと思ってるんじゃない? こわーい」
マリアーノは大げさに肩をすくめて震えて見せた。
「え、餌?」
「うん。だって獣人って人間を食べる野蛮な種族でしょう? 僕、サーシャが無事なのか心配で心配で……」
「食べるだなんて。そんなことしないよ、怒ったらおっかないけど、イデオン様はそんな悪い獣人じゃないし他の使用人とも仲よくやってるし……」
「まぁ、王様は思ったよりイケメンだったけど。でも夫にそんな雑な扱い受けてるなんてものすごくみじめじゃない? よく我慢できるねサーシャ」
「なんも、僕は別に――」
「やだなぁもう。僕サーシャみたいになりたくて髪型も真似して来たんだけどぉ。サーシャがこんなみじめな新婚生活送ってるだなんてがっかり。――あ、ねえ! そこに置いてある箱、伯父様からのプレゼントなんだ! 綺麗なお洋服いっぱい選んで来たから、ほら着替えようよ~」
マリアーノが大きな箱を侍従のカルロに開けさせる。すると宝石のあしらわれたきらびやかな洋服や毛皮のコートなどが大量に現れた。
「う、うわ……すごいキラキラ……」
「でっしょ~! そんなもこもこした臭そうなマント脱ぎなって!」
「え、臭くなんてないけど……」
イデオンがくれたマントにはイデオンの香りが残っている気がして、サーシャはむしろそれが気に入っていた。ウールなので羊の匂いがするのも牧場のことを思い出させてくれて好きだった。
(それにしてもすんごいなぁ。僕の実家にお金を貸してくれるくらいだからヴァレンティ家がお金持ちなのは知ってたけど、こんなすごいものプレゼントに持ってくるなんてどれだけ財力あるんだべ?)
マリアーノはサーシャのマントを勝手に脱がせ、持参したプレゼントの洋服を次々胸元に当てていく。
「んー、これもいいな。あ、サーシャは肌白いしこっちも似合う~」
ぶつぶつ言いながら、マリアーノはフリルたっぷりのブラウスに、異常なほど細かい刺繍の施された花柄のベスト、体にピッタリと沿ってウエストがキュッと引き締まった薄紫のロングコートを選んだ。コートにも花の刺繍があしらわれている。
「ブローチは……エメラルドにしよっか。カフスボタンもお揃いね。これ、最近伯父様と取引してる国の商人が持ってきてくれた貴重な石なんだって。サーシャは派手顔だから大きな宝石に負けなくて羨ましい」
マリアーノが両手でサーシャの頬を包む。彼のバーガンディレッドの三白眼がサーシャの大きな瞳をじっと見つめた。マリアーノの手はひんやりと湿っていて、さっき頬にキスされたときみたいに背筋がぞわっとする。
「はぁ、近くで見るとため息がでちゃうくらい綺麗だねサーシャは。本当に本当に羨ましい……僕もサーシャみたいになりたい――」
「マリアーノ?」
「体型はほとんど一緒だし、髪型も真似したのに」
そう言いながらマリアーノはサーシャのクラヴァットを解き、乱暴に引き抜いた。
「さ、ブラウスも脱ごうね」
「いやブラウスはこのままで――」
「だめだめ、見てよこの袖の刺繍? 素敵でしょ。ほら、こっちに着替えて」
「あっ――」
マリアーノが無理矢理サーシャの着ていたブラウスを脱がせて、新品のブラウスを後ろから羽織らせてくれる。
「え!? ちょっと、サーシャ。どうしたのそのうなじ!」
「へ……?」
「サーシャ、まさか陛下のつがいにしてもらえてないの――?」
(あ、やばい。見られた……!)
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