【完結】転生花嫁と雪豹α王の人質婚〜北海道民の記憶持ちΩは寒さに強くてもふもふ好き〜

grotta

文字の大きさ
上 下
30 / 69

29.親友(?)マリアーノ到来

しおりを挟む
その後約1週間のヒート期間中、サーシャはめげずに毎晩イデオンを誘った。そのうち半分は部屋に来てくれてことに及んだが、結局サーシャの方が返り討ちにあってしまった。つまり、未だに挿入してもらえていない。

「はぁ……なして? もう入りそうじゃん」

自分で言うのもなんだが、かなりよくほぐれて慣れてきている――と思う。

(指2本なんて余裕だし。3本だっていける。イデオン様が思い切りやってくれれば絶対入るっしょ!?)

――しかし、してくれないのだ。

「うなじも全然噛んでくれないし。……僕の魅力が足りない? こんなとき、元々のサーシャならどうしたべなぁ……」





そんなサーシャの悩みをよそに、予告どおりヴァレンティ男爵の甥っ子マリアーノがグエルブ城にやって来た。
侍従を一人連れて、サーシャの乗ってきたのよりもっともっと豪華な馬車でまるで嫁入り並の荷物を持参して――。

「サーシャ~! 久しぶり~~!」

そう言って手を振りながらこちらに駆けてきた青年の姿を見てサーシャは目を丸くした。

(あれ? なんか……僕に似てるんですけど?)

サーシャと同じく顎のラインに沿うミルクティーベージュカラーのショートボブヘア。長さも髪型もそっくりだ。ただ、顔はヴァレンティ男爵の血筋を思わせる爬虫類系。
服装は真っ赤なウェストまでのコートで、耳にはルビーのイヤリングが輝いていた。

(んー、こんな見た目だったかなぁ? 僕の記憶があやふやだからアレだけども、確か黒髪のワンレンボブだったような……誰か別の人と記憶が混じってるんだべか)

ヴァレンティ男爵は黒髪のくせっ毛だ。たしかマリアーノも同じ色だった気がするのにな、とサーシャは首を捻る。

「元気にしてた? サーシャに会えて嬉しい!」
「あ、ああ。うん、元気だよ。マリアーノも元気そうだね」

そう言うと彼はサーシャのことをぎゅっと抱きしめた。

「サーシャ……ごめんね! あの時のことは僕が悪かったよ。許してほしくてこんな北の果てまでやって来たんだ」

(え……?)

「あの時のこと――?」

なんのことだかわからなくてサーシャはヒヤヒヤする。前世の記憶のことはなんとなくバレてはいけない気がするのだ。

「あ、ああ! あのことね。なんもなんも、気にしてないから。マリアーノももう気にしないで……」

(気にするも何も、なーんも覚えてないんだもんこう言うしかないよね)

「サーシャ……ありがとう! なんて優しいの。やっぱり僕たちって魂の親友だね」

マリアーノがサーシャの頬にキスして「またこうして会えるなんて夢みたい」と言った。彼の唇は情熱的な言葉に反してひんやりしていて、ゾワゾワっと鳥肌が立った。

(うーん。なんだか自分にキスされてるみたいで変な感じ……?)

すると背後からカツカツと靴音がして、ぐいっと腕を引かれた。

「サーシャ。それが例の友人か?」
「あ……イデオン様」

腰に腕を回され、イデオンがぴたっと体を密着させてくる。

(え、なになに? いつも僕の部屋以外ではあんまりひっついてくんないのに)

「遠いところを妻のためによく来てくれた。夫のイデオン・ヘレニウスだ」
「ああ、あなたが……。はじめまして! サーシャの親友のマリアーノ・ヴァレンティです。お目にかかれて光栄です陛下」

マリアーノはイデオンに親しげな笑顔を向けた。イデオンの口元は微笑んでいるように見えるが、目がギラリと光っている。鼻をひくつかせて匂いを嗅いでいるのもここ最近彼と触れ合っているサーシャにはよくわかった。

(ふふ、初対面の人間だから警戒してるんだ。僕も最初チェックされたもんね)

「長旅で疲れているだろうから部屋で休んでくれ」
「お気遣いありがとうございます。ですが、僕サーシャとお話しがしたいんです。ねえねえ、サーシャの部屋に案内してくれる?」
「あ、ああうん」

勢いに押されて承諾するとマリアーノは侍従に声を掛けた。

「カルロ! 荷物は僕の部屋へ運んでおいて。あ、そっちの荷物はサーシャへのプレゼントだからサーシャの部屋に運ばせてね」

マリアーノはやって来るなりテキパキと使用人に指図して荷物を運ばせた。



そしてマリアーノはサーシャの部屋に来て椅子に座るなりこう言った。

「ねえ、サーシャ。一体どうしちゃったの? そのダッサい服」
「え……?」
しおりを挟む
感想 101

あなたにおすすめの小説

捨てられオメガの幸せは

ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。 幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

王子のこと大好きでした。僕が居なくてもこの国の平和、守ってくださいますよね?

人生1919回血迷った人
BL
Ωにしか見えない一途な‪α‬が婚約破棄され失恋する話。聖女となり、国を豊かにする為に一人苦しみと戦ってきた彼は性格の悪さを理由に婚約破棄を言い渡される。しかしそれは歴代最年少で聖女になった弊害で仕方のないことだった。 ・五話完結予定です。 ※オメガバースで‪α‬が受けっぽいです。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。

ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。 即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。 そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。 国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。 ⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎ ※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。 ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。 それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。 愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

処理中です...