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17.傷つけたくない
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「なぜ尻尾を?」
「えっと、もふもふに触ったら安心できるかなって……」
性行為中にこんなことを言われたのは初めてで困惑したが、サーシャがそう言うなら断る理由もなかった。
「好きにしろ」
そう言ってサーシャの右手に斑点模様の尻尾を乗せた。
「ふわぁああ! すご、気持ちいいっ!」
すると彼は目を輝かせて喜んだ。右手でそっと感触を確かめている。若干くすぐったい――。
(こんなことで喜ぶのか……? まあいい、そっちに気がそれているうちに挿れてやろう)
「ならばよいな、挿れるぞ」
ぐい、と腰を落とす。するとサーシャが一瞬苦しそうに呻いた。同時に尻尾をぎゅっと握られて少し痛みを感じたが、これから彼が耐えねばならない痛みに比べれば大したことはない。
「うぅ……んっ」
(くそ、あれだけ慣らしてもこんなにキツいのか――)
イデオンの額を汗が伝う。予想以上に種族違いの性行為は難関のようだ。しかし、オメガのフェロモンを浴び続けたアルファのイデオンはここでやめようとは思えなかった。本能的に目の前のオメガと繋がりたくて仕方がないのだ。
(入れ、入れ……! サーシャ、なんとか耐えてくれ――)
小さな窄まりは無理矢理広げられるようにして少しずつイデオンのペニスの先端を受け入れていく。しかし一番膨らんだ部分がどうしてもつっかえて通らない。中に入りたい一心でイデオンが少し強く腰を押し付けたところ、サーシャが声を上げた。
「い、いたっ――! 痛い、イデオン様、待って……」
それを聞いたイデオンはハッとした。過去の記憶が脳裏をよぎる。
――痛い! やめてよワンちゃん。やめて痛いよ。お父さま助けて、ぼく食べられちゃう!
(サーシャ……違う。俺はお前を食べたりしない。傷つける気はない!)
イデオンは過去にデーア大公国で少年を噛んでしまったことを思い出していた。
(本当はあのときも自分の口から謝りたいと思っていた。しかし翌年デーア大公国を訪れた時、あの少年はいなかった――)
大公の子息らも獣人の子イデオンを恐れるようになってしまい姿を見せなくなった。それ以来イデオンはデーア大公国へは一度も行っていない。
イデオンは挿入しかけていた自分のものを引き抜いた。
「え……イデオン様、どうしたの?」
「いや、やはりまだ早かったようだ」
「なんも大丈夫ですよ。ちょっと痛かったけど、僕まだ頑張れます」
「――いや。焦ることはない」
「でも、ちゃんとしないと赤ちゃんが――」
「お前はまだ若い。そんなに急ぐ必要はないだろう。今夜はもう痛いことはしないから安心しろ」
(やっとお前と会えたのに――また泣かせるようなことはできん)
イデオンはサーシャの体をうつ伏せにした。そしてサーシャの尻と太腿に潤滑剤を垂らす。
「うわ、ひゃっこい! な、なにするんです?」
腰を両手で掴み、サーシャの尻を持ち上げる。そしてイデオンは自分の昂ぶったものを彼の腿の間に滑り込ませた。潤滑剤によって濡れた太腿はすんなりとイデオンのものを通した。
「あっ……!」
「これなら痛くないだろう? 腿に力を入れて閉じていろ」
「はぅ……あっ、はい」
獣同士の交尾のようにイデオンは彼の尻に腰を押し付け、サーシャの華奢な体を揺さぶる。その振動に合わせてサーシャは途切れがちに喘いだ。
イデオンのペニスが腿の間から突き出てサーシャのものに擦れる刺激に感じて、花嫁はまるで本当にセックスしているような艶めいた声で鳴く。イデオンはサーシャの背中に覆いかぶさり、手で彼の胸の先端をきゅっとつまんだ。腰の動きに合わせて乳首を弄られ、サーシャは更に激しく喘ぐ。
その声に気を良くしたイデオンは更にリズムを速めて攻め立てる。
「あんっ! あっあっ……気持ちいいっ……いい、気持ちいい、イデオンさま……」
「――俺もだ」
ぬちゅぬちゅと擦れる音、そしてたん、たん、たん、と皮膚のぶつかる音が響く。イデオンは花嫁の体を揺さぶるのに夢中になりながら、興奮でまた牙を露出させていた。
はぁはぁと熱い息を吐くイデオンの口から唾液が垂れ、サーシャの白いうなじを濡らした。そこはいかにも美味そうな匂いを発してアルファを誘っている。
(噛みたい――ここを噛んでサーシャを一生俺のモノに――……)
「あっあっ! もう僕出ちゃう、出ちゃ――はぁ、ぅう、んあっ……」
(くっ――。ダメだ。サーシャはまた食われると思い怯えるだろう。噛むわけにはいかん)
イデオンはなんとか牙が皮膚に触れる寸前で思いとどまった。そして彼のうなじを傷つけぬよう、自分の下唇をぎりりと噛んだ。
「あっ、イくっ……イデオン様、もう……」
「全て出していい、サーシャ」
「はぁあっ、あっ……ん!」
イデオンが手で彼のペニスを擦ってやると、サーシャの汗ばんだ背中がびくびくと痙攣し、腿がギュッと締まった。そのまま何度か激しく腰を打ち付け、イデオンもほぼ同時に果てた。どくんどくんと熱いものが放出されていく。
サーシャの中に入ることはできなかったが、それでも彼の全身に自分の欲望を受け止めてもらえた気がして満足感で放心状態になった。
「はぁ、はぁ……サーシャ?」
うつ伏せでぴくぴくと痙攣していたサーシャがやけに静かになったので仰向けにする。
「サーシャ。おい、大丈夫か?」
軽く揺すってみるが、彼は目を閉じて寝息を立てていた。緊張の糸が途切れたようだ。
「ずっと俺が怖かったようだからな……すまなかった、サーシャ」
発情促進薬入りの蜂蜜酒も飲んでいたし、グエルブ王国に来てからの疲労も蓄積していたのだろう。
イデオンはサーシャの額に汗で張り付いた髪の毛を避けてやり、そっと口付けした。
「えっと、もふもふに触ったら安心できるかなって……」
性行為中にこんなことを言われたのは初めてで困惑したが、サーシャがそう言うなら断る理由もなかった。
「好きにしろ」
そう言ってサーシャの右手に斑点模様の尻尾を乗せた。
「ふわぁああ! すご、気持ちいいっ!」
すると彼は目を輝かせて喜んだ。右手でそっと感触を確かめている。若干くすぐったい――。
(こんなことで喜ぶのか……? まあいい、そっちに気がそれているうちに挿れてやろう)
「ならばよいな、挿れるぞ」
ぐい、と腰を落とす。するとサーシャが一瞬苦しそうに呻いた。同時に尻尾をぎゅっと握られて少し痛みを感じたが、これから彼が耐えねばならない痛みに比べれば大したことはない。
「うぅ……んっ」
(くそ、あれだけ慣らしてもこんなにキツいのか――)
イデオンの額を汗が伝う。予想以上に種族違いの性行為は難関のようだ。しかし、オメガのフェロモンを浴び続けたアルファのイデオンはここでやめようとは思えなかった。本能的に目の前のオメガと繋がりたくて仕方がないのだ。
(入れ、入れ……! サーシャ、なんとか耐えてくれ――)
小さな窄まりは無理矢理広げられるようにして少しずつイデオンのペニスの先端を受け入れていく。しかし一番膨らんだ部分がどうしてもつっかえて通らない。中に入りたい一心でイデオンが少し強く腰を押し付けたところ、サーシャが声を上げた。
「い、いたっ――! 痛い、イデオン様、待って……」
それを聞いたイデオンはハッとした。過去の記憶が脳裏をよぎる。
――痛い! やめてよワンちゃん。やめて痛いよ。お父さま助けて、ぼく食べられちゃう!
(サーシャ……違う。俺はお前を食べたりしない。傷つける気はない!)
イデオンは過去にデーア大公国で少年を噛んでしまったことを思い出していた。
(本当はあのときも自分の口から謝りたいと思っていた。しかし翌年デーア大公国を訪れた時、あの少年はいなかった――)
大公の子息らも獣人の子イデオンを恐れるようになってしまい姿を見せなくなった。それ以来イデオンはデーア大公国へは一度も行っていない。
イデオンは挿入しかけていた自分のものを引き抜いた。
「え……イデオン様、どうしたの?」
「いや、やはりまだ早かったようだ」
「なんも大丈夫ですよ。ちょっと痛かったけど、僕まだ頑張れます」
「――いや。焦ることはない」
「でも、ちゃんとしないと赤ちゃんが――」
「お前はまだ若い。そんなに急ぐ必要はないだろう。今夜はもう痛いことはしないから安心しろ」
(やっとお前と会えたのに――また泣かせるようなことはできん)
イデオンはサーシャの体をうつ伏せにした。そしてサーシャの尻と太腿に潤滑剤を垂らす。
「うわ、ひゃっこい! な、なにするんです?」
腰を両手で掴み、サーシャの尻を持ち上げる。そしてイデオンは自分の昂ぶったものを彼の腿の間に滑り込ませた。潤滑剤によって濡れた太腿はすんなりとイデオンのものを通した。
「あっ……!」
「これなら痛くないだろう? 腿に力を入れて閉じていろ」
「はぅ……あっ、はい」
獣同士の交尾のようにイデオンは彼の尻に腰を押し付け、サーシャの華奢な体を揺さぶる。その振動に合わせてサーシャは途切れがちに喘いだ。
イデオンのペニスが腿の間から突き出てサーシャのものに擦れる刺激に感じて、花嫁はまるで本当にセックスしているような艶めいた声で鳴く。イデオンはサーシャの背中に覆いかぶさり、手で彼の胸の先端をきゅっとつまんだ。腰の動きに合わせて乳首を弄られ、サーシャは更に激しく喘ぐ。
その声に気を良くしたイデオンは更にリズムを速めて攻め立てる。
「あんっ! あっあっ……気持ちいいっ……いい、気持ちいい、イデオンさま……」
「――俺もだ」
ぬちゅぬちゅと擦れる音、そしてたん、たん、たん、と皮膚のぶつかる音が響く。イデオンは花嫁の体を揺さぶるのに夢中になりながら、興奮でまた牙を露出させていた。
はぁはぁと熱い息を吐くイデオンの口から唾液が垂れ、サーシャの白いうなじを濡らした。そこはいかにも美味そうな匂いを発してアルファを誘っている。
(噛みたい――ここを噛んでサーシャを一生俺のモノに――……)
「あっあっ! もう僕出ちゃう、出ちゃ――はぁ、ぅう、んあっ……」
(くっ――。ダメだ。サーシャはまた食われると思い怯えるだろう。噛むわけにはいかん)
イデオンはなんとか牙が皮膚に触れる寸前で思いとどまった。そして彼のうなじを傷つけぬよう、自分の下唇をぎりりと噛んだ。
「あっ、イくっ……イデオン様、もう……」
「全て出していい、サーシャ」
「はぁあっ、あっ……ん!」
イデオンが手で彼のペニスを擦ってやると、サーシャの汗ばんだ背中がびくびくと痙攣し、腿がギュッと締まった。そのまま何度か激しく腰を打ち付け、イデオンもほぼ同時に果てた。どくんどくんと熱いものが放出されていく。
サーシャの中に入ることはできなかったが、それでも彼の全身に自分の欲望を受け止めてもらえた気がして満足感で放心状態になった。
「はぁ、はぁ……サーシャ?」
うつ伏せでぴくぴくと痙攣していたサーシャがやけに静かになったので仰向けにする。
「サーシャ。おい、大丈夫か?」
軽く揺すってみるが、彼は目を閉じて寝息を立てていた。緊張の糸が途切れたようだ。
「ずっと俺が怖かったようだからな……すまなかった、サーシャ」
発情促進薬入りの蜂蜜酒も飲んでいたし、グエルブ王国に来てからの疲労も蓄積していたのだろう。
イデオンはサーシャの額に汗で張り付いた髪の毛を避けてやり、そっと口付けした。
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