89 / 89
五章
88-衝撃の事実
しおりを挟む「―――あ……れ、私……」
乙葉は裸体に掛けられたジャージをずり下ろしながら、ムクリと起き上がった。
俺に激しく責められたことで乙葉は意識を失い、暫くの間眠らせていた。
「おはよう……乙葉。
つってもまだ夜だけど」
俺はパンツを履いた姿で、乙葉に声を掛ける。
俺達が小屋に閉じ込められてから、2時間程が経過していた。
恐らくキャンプファイヤーはとっくに終え、皆風呂や部屋で自由時間を満喫している頃だろう。
「游助……ハッ!
お、オチンチン! どうしてオチンチン抜いちゃったの!?
もっと……もっとエッチなことしてよぉ……游助ぇ!
―――あ……れ?」
乙葉は俺に迫ろうとするも、先程の責めで腰砕けとなり、立ち上がることが出来ないでいる。
そんな乙葉にゆっくりと近付き、俺は細い方にそっと手を添えた。
「乙葉……覚えてるか?
教室で俺と将来の夢について語り合ったこと」
俺は教室での出来事を思い出しながら、乙葉に向かって優しく問いかけた。
「あっ……あの時は、その……
わ、私も乙葉だったことを思い出してなかったから……
今は私の将来なんてどうでも良いの。
ううん、私の将来は游助に捧げるって決めっ―――」
「―――乙葉」
俺は真剣な目で乙葉を見つめ、言葉を遮った。
「あの時……たとえ俺が男だったとしても、乙音は変わらず俺の友達で居てくれるって言ってくれて―――俺は凄く嬉しかったんだ。
それに……乙音が総理大臣になって、奴隷扱いされている俺達が自由に生きられる社会にするって言ってくれて……
その時俺は、乙音の夢を本気で応援したいって思ったんだ。
だから俺の友達の―――乙音の夢を、願いを、想いを捨てるなんて……そんな悲しいこと言わないでくれよ」
俺は友達として語り合った乙音の顔を思い出しながら、乙葉へ切に訴えかけた。すると―――
「総理……大臣……」
不意に乙葉は、ハッと顔色を変えた。
まるで大事な何かを思い出したように。
「総理……大臣……笛水……美沙代。
笛水―――ハッ! そうだ!
美沙ちゃん!
未来では、笛水AIとして……美沙ちゃんの意思が……まだ……
―――大変っ!」
乙葉は突然思い立ったように、その場に勢いよく立ち上がった。そして―――
「美沙ちゃんを……止めなきゃ!!」
何やら意味不明な言葉を、大きな声で叫んだ。
「美沙……ちゃん?」
俺はなにがなんだか分からず、聞き覚えのない名前に疑問を浮かべる。
「もうっ游助ったら!
社会の授業ちゃんと聞いてなかったの!?
笛水美沙代!」
「笛水……美沙代―――あっ」
そういえば授業で朧気ながら聞いたような覚えがある。
正直授業の殆どは茜とセックスばかりしていたため、内容は殆ど覚えていないが。
だが俺達奴隷が付けている首輪は笛水AIと呼ばれる人工知能が、俺達の情報を管理しているということは昔から知っていた。
そして、その笛水AIが笛水美沙代という、昔の総理大臣の脳を元に作られたものであることも。だが―――
「笛水美沙代って……俺が前世で死んだ後、今の世の中では100年以上前に総理大臣になった人だろ?
その人が一体どうしたって言うんだ?」
幾らこの時代を管理するAIがその女性を元に作られたものだとしても、本人は生きているはずもない。
一体過去の人間の何を止めるというのか。
「も~……ほんっとに游助は勉強不足ね!
今の総理大臣は一体誰?」
「今の……総理大臣?」
現総理大臣の名前なんて、どの時代だろうが知っていて当たり前の一般常識だ。だが―――
「あれ……誰だっけ」
日本が民主主義から別の政治体制の国家に変わったなどという話は聞いたことがないし、乙音が総理大臣になる夢を語っていた時点で誰かが総理大臣を務めていなければおかしい。
だが俺の頭に今の総理大臣の名前は誰一人浮かんで来なかった。
というより女性党が政権を取り、笛水美沙代が総理大臣となってからの知識が全くない。いや寧ろこれは知識がないというより―――
「まさか……他に誰も……なっていない?
いやでも、そんな……100年以上なんて、あ、あり得る訳が……」
そんなもの、最早民主主義とは呼べない。
それ以前に、生身の人間がそれ程に長い年月を生きている訳がない。
もしそれが可能だとすれば、それはもう生身の人間ではない。
(生身の、人間―――ハッ!)
俺が未来のとんでもない実態に気付くと、乙葉はコクリと頷いた。
「そのまさか。
総理大臣は今もずっと美沙ちゃん―――笛水美沙代のままよ」
「で、でも本人が生きている訳がない……
ということはつまり、笛水AIが……総理大臣!?」
そんなことが果たして許されるのか。
人間でない、AIが長年総理大臣に選任され続けるなんてことが。
そして―――先程からその笛水美沙代を、まるで友人のように『美沙ちゃん』と呼ぶ乙葉は一体どういう関係なのか。
すると乙葉は俺の疑問に答えるように、静かに語り始めた―――
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
3日で最新話まで読ませていただきました。
読み始めたら止まらないくらい世界観や登場人物が魅力的でとても面白かったです!
続き待ってます。
最新話まで読んだ感想
茜ちゃんめっちゃいい子じゃねーか
こんばんは。教育実習生の先生は、大臣の部下でしたか。独特な考え方と価値観をもっている珍しい教師候補生だと思っておりましたのに。緑川さんの様に、己の矜持が高い人は中々いないモノなのですね?ちょっと残念です。三章46話に誤字がありましたので、報告しておきますね。時間のある時に訂正をお願いします。
・辞めたくても辞められない→止めたくても止められない
ご感想ありがとうございます。
ネタバレを含まない程度に櫻川圓という人物についてご説明致します。
圓の行動は、指令に従ってのものですが、その発言、思考、理念、性欲、願望は全て本人のものとお考えいただき差し支えありません。
何物にも属さず、独立した一人の女の立場としてその思考を築き上げた礼子とは異なり、読者様の期待とは違うものだったかもしれません。
ですが、圓という人物が持つ妖艶な雰囲気や、男を惑わし、男を誑かすだけの美貌と振る舞い、そして游助を快楽の道に引きずり込もうとする淫乱さは圓本人の才能であり、それを見込んで今回の任務に任命されました。
ですので、今後も圓の言動や行動に関しては、圓自身の欲望に従ってのものであるとお考えの上、お読み頂ければ幸いです。