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一章
11-緑川礼子
しおりを挟む「―――貴方、わたくしの愛玩動物になる気はないかしら?」
突然放たれた礼子の言葉に、会場中が驚愕する。
初めて現れたSランク奴隷の少年を、いきなり我が物にしようと言うのだから当然だ。
「ちょ、ちょっとお待ち下さい……!このF-23732はSランク奴隷となりましたので、彼には様々な選択権が与えられております……!
いくら性の女帝と称される緑川様といえど、流石に法律を無視してお売りする訳には―――」
礼子からの突然の申し出に、夏美が慌てて待ったをかける。
夏美の言うとおり、Sランクという奴隷の地位は法律―――性法第104条3項『奴隷ランクによる処遇』にてその立場が明記されている。そこには本来奴隷にはない、Sランクのみ認められる様々な権利について記されており、それを本人の意向なく破ることは法律違反となり処罰対象となる。
つまり礼子は違法行為を行うと宣言したようなもので、夏美が慌てふためくのも当然だ。だが礼子は夏美の静止にも動じることなく、平然とした態度で言葉を続けた。
「SであろうがAであろうが、奴隷であることに違いはないかしら。それに―――本人が望めばわたくしがどうしようが問題ございませんこと?」
「そっそれは―――」
食い下がる様子のない礼子の言葉に、夏美がおずおずと押し黙る。
全く―――本人を置いてけぼりにして、何を勝手なことばかり言っているのか。
俺が随分と身勝手な女の登場にイライラしていると―――
「貴方が望むのであれば、貴方をわたくしの特別な愛玩動物にして差し上げますことよ。
先程の貴方の素晴らしいセックスで、わたくしを毎日満たしてくださるなら、他の玩具達とは別に、わたくしと同じ食事を与えて、好きな物を買ってあげますわ。それに―――」
奴隷に対しては随分と破格の高待遇を並べた後、礼子が息を潜めて俺の耳元へと近付いた。
「―――貴方が望むなら、貴方専用の女の玩具を付けても良いですわよ」
「女の……オモチャ?」
この女尊男卑の世界には到底似つかわしくない言葉に、俺は思わず聞き返す。
「そう……本当は女性の人身売買は禁じられておりますが、わたくしの地位と財力を持ってすれば、不可能なことなどありませんわ。
貴方が望む女を、貴方の専用奴隷にして差し上げますわ。貴方がされてきたことを全部、して構いませんわ。暴力も、薬漬けも、最悪殺してしまっても……全て揉み消して差し上げますことよ」
「なるほど……」
つまり、この女のペットとなってセックスすれば、俺の女達への復讐心も満たしてくれるということか。
随分懐疑的な話だが、会場の女達の反応を見るに恐らく本当なのだろう。
なぜならこの世に初めて誕生したSランク奴隷が、今まさに一人の女に奪われてしまうかもしれない状況で、この女に異議を唱える者が誰も現れないのだから。
皆指を咥えて悔しそうに様子をうかがうばかりだ。
それはつまり財力や地位、人脈といった様々な面において、礼子に勝てる女はこの中のどこにも存在しないことを意味する。
見ればやや派手ではあるものの、その美貌も他の女達とは抜きん出ている。
年齢は恐らく若くはないだろうが、それでも大人の女特有の魅力は若い女にはない魅惑的な雰囲気を醸し出しており、形の良い爆胸はマショマロのように柔らかく揺れ、腰回りのくびれと桃尻が作るラインは、俺の情欲を否応なく掻き立てる。
そして先程から奴隷にセックスさせ続けているというのに、その股ぐらから漂う匂いは実に心地良い花のような香りを放っている。
童貞であった生前―――いや、そうでなくともこんな女に迫られれば喜んで飛びついているところだ。だが―――
「―――なぁ、あんたが今までに買った奴隷の中で一番高いのって幾らだ?」
俺は礼子に対し質問を被せた。
俺からの唐突な問いに、一瞬礼子の顔が驚きを見せるが、すぐさま妖艶な笑みを浮かべる。
「そうですわね……一番高かったので1000万ってとこかしら」
『ザワッ』
礼子の口から発せられた金額に、会場がザワつく。どうやら奴隷の金額としては相当高額の部類に入るらしい。
確かに1000万というのは大金だが、当の奴隷からしてみれば自分の人生が1000万で売買されているというのは、あまりにも命を安く扱われているように感じる。
だが一つの良い指標にはなった。
「もちろんわたくしの愛玩動物となるなら、そんな額など取るに足らない、金の額など気にも止めない生活を―――」
「1回だ」
なおも様々な誘惑の言葉で俺をモノにしようとする礼子に対して、俺は短い言葉で遮った。
「―――は?」
先程までの高尚な態度とは打って変わって、随分と間抜けな顔で礼子が聞き返す。
「1000万で1回だけ、今からあんたとセックスしてやってもいいぜ」
「なっ―――」
誰も予想だにしない、まさに恐れ知らずな俺の言葉に会場が一瞬にして凍りついた。
そして一瞬の間の後、激情の野次が次々に飛び交った。
「奴隷の分際で緑川様になんて無礼な!」
「奴隷は立場を弁えなさい!」
「謝れ奴隷!」
「土下座しろ奴隷!」
なるほど。こいつらさっきまでSランクの俺に羨望の眼差しを向けていたというのに……やはり奴隷は奴隷といったところか。
根本的な男性蔑視の思想が、いかに根深いかよく分かる。だがそんなものは関係ない。いや―――むしろ俺がどんどん踏み潰していってやる。
「なら別に1000万じゃなくても良いですけど……今ここでSランクの俺と1回セックスする権利のオークションでも開催しますか?
この世に初めて現れた、たった一人のSランクとセックス出来る訳ですから、1000万なんて安いもんだと思いますけどねぇ……」
「なっ―――」
ふざけるな、のぼせ上がるのも大概にしろ、奴隷風情が、そういった感情が会場中の女達の顔から見て取れる。
だが―――誰も反論出来ない。
女達は絶対に反論出来ないのだ。
なぜなら、先程夏美達が犯されていた様子を思い出し、今から自分がそのセックスを味わえることを想像し、一人残らず顔を真っ赤に染めて股をグショグショに濡らしているのだから。
セックスが一番の娯楽である女達にとっては今、游助とセックスすることこそが、最も憧れる行為なのだ。
日本中の女達が観ているこの場でそのオークションを開催などしようものなら、たった一回のセックスに幾らの値が付くのか、一体どこの誰に想像出来ようか。
「―――クスッ。流石はわたくしが見込んだだけあって……貴方、想像以上に素晴らしい雄ですこと……いいですわ」
しばらく沈黙していた礼子が突如不敵な笑みを浮かべ、手で合図したかと思うと、後ろからなにやら秘書らしき女が重厚なジュラルミンケースを運んできた。
「この中に今日の手持ち金である5000万が入っておりますわ。
この5000万円で……貴方と今ここで1回のセックスをする権利を買いますわ」
礼子の衝撃的な言葉と共にケースの蓋が開かれる。
そこには紛れもなく大量の札束が、ギッシリと詰められたいた―――
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