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第一章【レイシア編】
パーティ
しおりを挟む「それじゃあ行ってくるよ!」
「はーい! 帰ったらすぐに呼んでね?」
シンは行ってきますのキスでリザの言葉に答える。
ソフィーヤはギルドの準備の為先に家を出ており、シンもソフィーヤの後を追うように颯爽と冒険者ギルドへと向かった。
「お早うございますレイシアさん!」
「やあシン。おはよう昨日はよく眠れた?」
シンレイシアと顔を会わせるなり元気に挨拶を交わす。
「え、えっと……昨日はワクワクしてあまり寝れませんでした」
(本当は夜遅くまでリザやソフィーとセックスしていたからだけど……)
今日への期待に興奮してしまったのは事実だから仕方ないと、シンは自分の心の中で必死に言い訳の弁を述べた。
「それでレイシアさん、今日はどのクエストを受けるんですか?」
シンは自分がレイシアと並ぶBランクになった事を誇りに感じながら、初のパーティメンバーにそのお目当てをたずねた。
「ああ、実はもう決めてあるんだ」
レイシアは掲示板の依頼をビリっと剥がしながら答えた。
「あれ? でもそれってAランクのクエストじゃ……」
レイシアがAと書かれた張り紙を取った事にシンが疑問を浮かべる。
「ああそうだよ。私も君に感化されてね、少し無理をしちゃったんだ」
「ま、まさかレイシアさん……」
レイシアの言葉にシンが感付いて恐る恐るたずねる。
「ああ。私は昨日Aランクに昇格したよ」
シンの記憶にあるレイシアのそれよりもずっと早いスピードで、レイシアがAランクに登り詰めた事にシンは驚愕したーー
シン達はクエストの受付を終え、レイシアと共にクエスト地へと向かっていた。
初めてレイシアとパーティを組めた事に、シンは舞い上がる気持ちを抑えながら街を歩いていた。
「それでーー僕達は何処に向かっているんでしょうか」
幾らレイシアとの楽しいクエストとは言っても、まさかAランクのクエストだとは思わず、流石のシンも多少の緊張を感じていた。
「今日のクエストはとある貴族の旅の護衛任務だよ。
今からその貴族の屋敷に向かうんだ」
「ご、護衛任務……」
流石はAランククエスト。今までの魔物の討伐とは異なり、貴族の護衛という重大な責任を伴う依頼に、シンはプレッシャーを感じて思わず体を硬直させる。
「そんなに緊張しなくても大丈夫さ。護衛任務は基本Aランクの募集になるけど、その内容は旅の道中に現れる魔物を狩るだけだから、滅多な事が無い限り問題なくクリア出来るよ」
顔を強張らせるシンに対してレイシアがそれ程難しいクエストではない事を伝えて安心させる。
「ただ、戦闘は問題ないんだけど……」
レイシアの奥歯に物の挟まったような態度に、シンは首を傾げる。
「あっ着いたよ。ここのお屋敷だ」
シンが何か問い掛けようとしたところでレイシアに到着を告げられ遮られてしまう。
(まぁ、実際に仕事をして確認すれば良いか)
シンはレイシアに任せる事に決めると、見るからに裕福そうな豪邸へと足を踏み入れたーー
「ーーなんだ!? こんなたった二人の子供が余の護衛を!?
余を愚弄するか貴様ら!」
(レイシアさんが妙に含んだ言い方だったのはこの事か……)
まるで絵に描いたようにデブで偉そうな貴族の態度に、シンは『はぁ』と溜め息をついた。
「初めましてモルダー卿。冒険者ギルドより正式にご依頼を承りました、Aランク冒険者のレイシアと申します。彼は任務に同行する者で、シンという名のBランク冒険者です」
「しかもこの小僧はBランクだとぉ!? そんなので余の護衛が務まる筈がないっ!
おい! 今すぐ替えの護衛を連れてこい!」
丁寧に挨拶をするレイシアに対し、モルダーという名の男は横暴な態度でそれを無視し、使用人に護衛を替えるよう命じた。
「彼はまだBランクですが、私よりも非凡な才能を持ち合わせておりますので、任務に支障はございません。
それにシンは優秀な降魔術師ですので、頭数は幾らでも揃えられます。
二人分の依頼料で多くの兵を雇えると考えれば、普通に護衛の数を揃えるよりも随分お得な買い物だと思いますよ」
レイシアはその場で依頼主の不安を取り除く言葉を述べ、更には大それた売り文句で自分達を雇うメリットを示した。
「む、むむ……確かにそれは悪くない……
だっだがもし余の身に何かあれば、お前達にはそれ相応の償いを受けさせるからなっ! 覚悟しておけよ!」
「勿論ですモルダー郷」
レイシアはモルダーの脅しにも動じる事無く、淡々と了承する。
その顔からは、失敗の可能性など万にひとつもあり得ないという自信が汲み取れた。
「レイシアと言ったか? 特にお前は何か不敬を働こうものなら余が直々に制裁を与えてやるぞ……ヒヒヒッ」
「ーーッ!」
レイシアを卑猥な目で見るモルダーに対し、シンの頭が熱くなる。
レイシアはそんなシンの手にそっと触れて制止し、毅然とした態度でモルダーに向かう。
「その時はどうぞ、煮るなり焼くなり好きにして頂いて結構です」
「フッ! 大した自信だな! ぜいぜい余の機嫌を損ねないよう気を付けるんだな!」
レイシアの威勢の良い言葉にモルダーは不細工な顔を更にニヤつかせているが、何とか二人が護衛を務める事を了承したようだ。
(大丈夫だシン。絶対にそのような事にはならないさ。私を信じてくれ)
思わず怒りが漏れるシンに対してレイシアはヒソヒソと声を掛けてなだめる。
「パパー? 出発はまだー? 私もう待ちくたびれましたわ」
すると奥から背の低い少女が現れた。
見た目はリリム達と同じくらいで、長い縦巻きロールと赤色を主体とした派手なドレス、そしてその口調から高飛車な雰囲気が滲み出ている。
「おおメレーヌ、待たせてすまない。おいお前ら! さっさと出発の準備をしろ!」
どうやらモルダーの娘らしい。
モルダーは不満を垂れる娘をなだめると、使用人達に罵声を浴びせた。
「パパ~、ひょっとしてこの二人が護衛の冒険者ですの? 随分弱そうですわね」
若い二人が護衛を務める事にメレーヌも舐め切った態度を取っている。
「すまないなメレーヌ。最近はこんな若造でもAランクになれるほどギルドの質が落ちているようだ。
もし可愛いメレーヌを困らせるような事があれば、奴等を好きにしていいからな」
「それはこの前壊れた奴隷の男みたいにして良いってこと? パパ」
モルダーとその娘は、既に失敗した時の処遇しか頭にないようだ。
「勿論だともメレーヌ。この前の奴隷はすぐに壊れてしまったが、今度は冒険者だからそれなりに頑丈だろう。
その男を好きなだけいたぶって遊んでいいからね。でも女の方はパパが楽しませて貰うよ」
「分かったわパパ。そこの男、精一杯私の機嫌を取りなさい! 良い?」
「……はい」
まるで嫌悪感しか湧いてこない程に薄汚れた貴族の親子に対し、シンは怒りを堪えながら短く返事をした。
何はともあれシンは貴族御一行と共に、夢に見たレイシアとの共闘クエストへ出発する事となったーー
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