18 / 101
7 胡乱-3-
しおりを挟む
「クジラ様の恩恵ってのは最後は必ず処分できるんですわ。処分ってのは捨てる、って意味じゃありませんぜ。
どんな物でも、探せば欲しがっている人はいるってことなんで。値段がつかないような物はあまり出入りしない依頼主にタダで渡すんだ。
そうすりゃ相手はタダでもらった負い目から、いずれ美味しい依頼をよこしてくれるって寸法さ」
「なるほど。しかし欲しがっている人を探すといっても、どうやって見当をつけるんだ?」
「そりゃあここ、ここの使い方ですわな」
ダージは自分の頭を指差した。
「調達屋ってのもいろいろだ。オレみたいに金属や宝石専門の奴もいれば、植物の種に強い奴もいる。得意分野はそれぞれなんで。
で、そいつらと情報交換してるんですわ。あの町のあいつはこれを欲しがってるぞ、ってな具合さ。だから顔は広けりゃ広いほどいい。
中にはそういう情報を専門に扱ってる調達屋もいるんですぜ? まあ値は張りますがね……」
うまくできているな、とカイロウは感心した。
「ってなワケで拾うことはあっても、捨てに行くってことは考えらんねえ。捨てるくらいならそもそも拾わない。それが鉄則だ。
割れたガラス瓶だって溶かしゃ原料になるってんで引き取り手があるくらいなんだ。ましてやその銅板ならオレのところか――」
需要のあるところに持って行くハズだ、と彼は言った。
「だから不思議なんでさあ。それがなんでクジラ様から降ってきたのか。ダンナなら何か分かると思いましてね」
「うむ……」
カイロウは金属板を並べて見比べてみた。
しばらく眺めているとあることに気付き、
「もうひとつ。これは同じ場所にあったのかい?」
刻まれた記号をメモ用紙に書き写しながら問う。
「全部さっき言った聖地で拾ったものですわ。範囲は数十メートルってところですかね。どれも浅いところにあったから確かなことは言えませんが、
一度に降ってきたものと考えていいでしょうな」
「他にもありそうか?」
「行ってみないことにはどうにも。タードナイトのついでに拾ってきたものなんで」
それ以上のことは分からないと、ダージも首をかしげるばかりだった。
「うん……」
「あの、ダンナ。それってのは、やっぱりダンナが作ったものなんで?」
彼は曖昧に頷いた。
「多分そうだ。どれも記号と番号が2列ずつ刻まれているだろう? 上の文字は私が彫ったものだ」
「サインみたいなもんですかい? じゃあ下の列にある長ったらしいのは?」
「私じゃないが、だいたいは分かる」
彼の中ではある程度考えがまとまってきているが確信は持てない。
これを明らかにするには協力者が必要だ。
「もらってもいいか? 代金ならちゃんと――」
銀貨を取り出した彼をダージは制した。
「それがダンナの作った部品なら、二重に金を受け取ることになっちまいます」
小さな銅板が数枚では、タードナイト1個にも及ばない。
この程度で大口の固定客との結びつきが強まるなら安いものだ。
どんな物でも、探せば欲しがっている人はいるってことなんで。値段がつかないような物はあまり出入りしない依頼主にタダで渡すんだ。
そうすりゃ相手はタダでもらった負い目から、いずれ美味しい依頼をよこしてくれるって寸法さ」
「なるほど。しかし欲しがっている人を探すといっても、どうやって見当をつけるんだ?」
「そりゃあここ、ここの使い方ですわな」
ダージは自分の頭を指差した。
「調達屋ってのもいろいろだ。オレみたいに金属や宝石専門の奴もいれば、植物の種に強い奴もいる。得意分野はそれぞれなんで。
で、そいつらと情報交換してるんですわ。あの町のあいつはこれを欲しがってるぞ、ってな具合さ。だから顔は広けりゃ広いほどいい。
中にはそういう情報を専門に扱ってる調達屋もいるんですぜ? まあ値は張りますがね……」
うまくできているな、とカイロウは感心した。
「ってなワケで拾うことはあっても、捨てに行くってことは考えらんねえ。捨てるくらいならそもそも拾わない。それが鉄則だ。
割れたガラス瓶だって溶かしゃ原料になるってんで引き取り手があるくらいなんだ。ましてやその銅板ならオレのところか――」
需要のあるところに持って行くハズだ、と彼は言った。
「だから不思議なんでさあ。それがなんでクジラ様から降ってきたのか。ダンナなら何か分かると思いましてね」
「うむ……」
カイロウは金属板を並べて見比べてみた。
しばらく眺めているとあることに気付き、
「もうひとつ。これは同じ場所にあったのかい?」
刻まれた記号をメモ用紙に書き写しながら問う。
「全部さっき言った聖地で拾ったものですわ。範囲は数十メートルってところですかね。どれも浅いところにあったから確かなことは言えませんが、
一度に降ってきたものと考えていいでしょうな」
「他にもありそうか?」
「行ってみないことにはどうにも。タードナイトのついでに拾ってきたものなんで」
それ以上のことは分からないと、ダージも首をかしげるばかりだった。
「うん……」
「あの、ダンナ。それってのは、やっぱりダンナが作ったものなんで?」
彼は曖昧に頷いた。
「多分そうだ。どれも記号と番号が2列ずつ刻まれているだろう? 上の文字は私が彫ったものだ」
「サインみたいなもんですかい? じゃあ下の列にある長ったらしいのは?」
「私じゃないが、だいたいは分かる」
彼の中ではある程度考えがまとまってきているが確信は持てない。
これを明らかにするには協力者が必要だ。
「もらってもいいか? 代金ならちゃんと――」
銀貨を取り出した彼をダージは制した。
「それがダンナの作った部品なら、二重に金を受け取ることになっちまいます」
小さな銅板が数枚では、タードナイト1個にも及ばない。
この程度で大口の固定客との結びつきが強まるなら安いものだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
1+nの幸福論~蒸気の彼方より愛を込めて
うたかね あずま
ファンタジー
「旧世界」と呼ばれる高度な文明が栄えた時代が滅びた後、世界には魔法が当たり前に存在していた。
そんな中で魔力をまったく持たずに生まれてきたニナは、わずかな劣等感に苛まれながらも、自分の存在意義を探して前向きに生きようと模索していた。夢を叶える目前まで来ていたニナだったが、ある時、両親の死後失踪した兄の子だというリュカと出会う。家族を失ってどうしようもない孤独を感じていたニナは、突然現れたたった一人の肉親を切り捨てることができず、恩師の反対を押し切ってリュカを自らの子として育てることを決心する。
しかし、孤独な中でもそれなりに順風満帆だったニナの人生の歯車は、そこから少しずつ大きな運命の流れによって狂い始めていった。
どん底の状態で彷徨ったブランモワ伯領で、伯爵令嬢であるエレーヌに助けられたニナとリュカ。伯爵邸でしばらく穏やかに過ごしていたある日、ニナは異国の青年キアンと出会う。
圧倒的な魔力量に恵まれた彼はその才能を生かし、権威ある立場についていたが、国事犯というレッテルを貼られて祖国を追われてしまっていた。
人との関わりに苦悩を抱えるキアンにリュカの姿をつい重ねてしまい、ニナは何かとキアンのことを気にかけるようになる。そしてキアンの方も、ニナが自分のことを理解し受け入れてくれることに安らぎを覚え、信頼するようになる。
人の機微を正しく読み取り、相手の心情を察する能力を持つ魔力なしのニナと、第一魔術兵大隊隊長として偉大な功績を残すほどの実力を持つ空気の読めないキアン。そんな正反対の二人が、仲間や家族と共にさまざまな困難を乗り越え、少しずつ絆を深めていくスチームパンキッシュな冒険譚とかいろいろ説明してるけど大まかなとこ以外の流れは驚くほど未定。
元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌
紫南
ファンタジー
十二才の少年コウヤは、前世では病弱な少年だった。
それは、その更に前の生で邪神として倒されたからだ。
今世、その世界に再転生した彼は、元家族である神々に可愛がられ高い能力を持って人として生活している。
コウヤの現職は冒険者ギルドの職員。
日々仕事を押し付けられ、それらをこなしていくが……?
◆◆◆
「だって武器がペーパーナイフってなに!? あれは普通切れないよ!? 何切るものかわかってるよね!?」
「紙でしょ? ペーパーって言うし」
「そうだね。正解!」
◆◆◆
神としての力は健在。
ちょっと天然でお人好し。
自重知らずの少年が今日も元気にお仕事中!
◆気まぐれ投稿になります。
お暇潰しにどうぞ♪

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
2025年1月6日 お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております!
ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!
八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった
根上真気
ファンタジー
高校生活初日。神社の息子の八十神は異世界に転移してしまい危機的状況に陥るが、神使の白兎と凄腕美人魔術師に救われ、あれよあれよという間にリュケイオン魔法学園へ入学することに。期待に胸を膨らますも、彼を待ち受ける「特異クラス」は厄介な問題児だらけだった...!?日本の神様の力を魔法として行使する主人公、八十神。彼はその異質な能力で様々な苦難を乗り越えながら、新たに出会う仲間とともに成長していく。学園×魔法の青春バトルファンタジーここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる