15 / 115
序章篇
6 悲劇的-1-
しおりを挟む※またアレクシア視点に戻ります。
朝食の後、再び寝室へ呼ばれた。
何か用があるのなら、どうせ二人きりだしその場で言ってくれてもいいのにと思った。エリオンの真意が分からず、私は頭の中で首を傾げる。
エリオンは開け放たれていた窓を締めると、カーテンもぴっちり閉じた。明るい日の光が差し込んでいた寝室が一気に薄暗いものになる。彼がこれから何をするつもりなのか、察しの悪い私でも察してしまった。
今日、エリオンは休みだ。朝からそういうことをしようと思えば出来る。今日は業者も来ない日だ。
胸の奥がどくんと跳ねるが、嫌な気持ちではない。それでも。ベッドに薔薇の花びらを散らせとまでは言わないが、もう少しロマンチックな雰囲気で誘ってほしいと思った。しかし、相手は何かと不器用なところのあるエリオンである。こちらの恐怖心を煽るような誘い方しか、彼はできないのかもしれない。心の中で苦笑いした。
──今の私は、今までの私じゃないわ。
男女のことを何も知らなかった私は、この数ヶ月間、程々に経験を積んでいるというヘレナから、閨の事を色々教わっていた。もう受け身でばかりいる私ではない。
ぎゅっと拳をにぎり、怖気付きそうになる心を奮い立たせる。ここで怯んだらまたレス状態が続いてしまう。そんなのは嫌だ。
私は振り返ったエリオンに力強くこう言い放った。
「アレク……」
「エリオン様、ズボンを脱がせてもいいでしょうか!」
私の言葉に、エリオンは凍りついたようにピシリと固まる。そして、絨毯を引き摺るように一歩二歩後ずさると、声を震わせた。
「ず、ズボン……? なぜ?」
「エリオン様の陽根を舐めるためです」
エリオンは「ひっ」と小さく悲鳴を漏らした。その翡翠の瞳は、信じられないと言わんばかりに見開かれている。
──やっぱり。
エリオンの反応を見て確信した。枢機院で働きはじめた彼は精神疲労のせいで不能気味になっていたのだろう。
爺専のヘレナは独り者の枢機官数名と付き合った事があるらしいが、その誰もが雄を直接刺激しないと勃ちあがらない状態であったらしい。
枢機院はこの国の中枢だ。選りすぐりのエリートが集まる苛烈な競争社会。派閥争いが絶えずあり、皆が皆、精神的に疲れていた。
ヘレナは言った。エリオンは精神疲労が原因で、性的に不能気味だから私と交われないのだろうと。
ヘレナ曰く、軽度の勃起障害ぐらいなら、こちらが口や手で刺激してやればなんとかなるものらしい。私はヘレナに聞いた男を悦ばせるコツをメモし、こっそり毎日読んでいたのだ。
「……あら?」
固まっているエリオンの目の前に膝をつくと、すでに彼の股間には布地をくっと押し上げるものがあった。エリオンは今、タイトなズボンを履いているからか、肉棒の形がくっきり浮き出ている。ズボンの上から、股間に触れるとそこはじんわり温かかった。
頭上から、動揺しきったエリオンの声が降ってくる。
「そ、そんなところ……! さっ、触ってはダメだ……!」
「え? どうしてですか? これから交合をするのでしょう?」
「えっ、それはその」
「わざわざ寝室に呼んで、カーテンも閉めて。私と閨のことをするためですよね?」
少々あけすけすぎるが、ここで周りくどい言い方をするのもまどろっこしい。私の問いに、エリオンは喉を鳴らすと、顔をこれでもかと赤らめて頷いた。
「では、失礼しますね」
私はエリオンのベルトに手をかけた。私には少し歳の離れた弟がいて、小さな頃は着替えを手伝ったこともある。実は人の脱ぎ着を手伝うのは慣れていた。あっさりベルトを外し、ズボンの留め具に手をかける。すでにエリオンの雄はがちがちに勃ちあがっていて非常に窮屈そうだった。早くここから出してあげなくては。頭上からエリオンの浅い息遣いが聞こえてくる。
なんとかボタンを外し、ズボンをずり下げる頃には、エリオンの下着は先走りの液で濡れていた。
──……不能じゃないのかしら?
むしろこの状況は健康すぎるぐらいだろう。
エリオンは脱がされるだけで、これだけ興奮できているのだから。
「アレクシア……。俺のことが気持ち悪いんじゃ無いのか?」
切羽詰まったようなエリオンの言葉。私は数回瞬きした。
「どうしてですか? 私はあなたのこと、好きですけど?」
好きでなきゃ、さすがに復縁は出来ない。それにこの三ヶ月の間に私から閨の誘いをしたこともある。気持ち悪いと思っていたら、そもそも一緒に暮せない。
「す、すき……?」
「はい! 大好きです!」
またエリオンはぴしりと固まった。その隙に下着を脱がせる。ぶるんと勢いよく出てきた彼の雄は天を仰ぎ、亀の頭のような先が張り出している。約一年半ぶりに目にした肉棒。彼に襲われた事自体はあまり良い思い出ではないが、コレには随分気持ちよくして貰った。
──どうしよう……。
ヘレナからは、柔らかい雄をなんとか奮い勃たせる方法は教わったが、すでに目の前にあるものは臨戦態勢だ。でもまあ、勃ちあがっていても触れば気持ちよく感じて貰えるかもしれない。そう思い、手を伸ばそうとしたら。
逆にエリオンから手首を掴まれてしまった。
「エリオン様?」
「君に触らせている余裕がない」
「えっ、え」
腕を引っ張られると、そのままベッドに押し倒された。視界がぐるりと回る。腰や背に手を回されると、ドレスを固定していた紐をしゅるんと解かれる。襲うように着ていたものを乱暴に剥がされ、私は慌てた。
「ドレスが皺になります!」
「また買ってやる」
性急な手つきで剥き出しになった乳房を握りこまれ、もう片方の手で顎を上向かされた。抵抗する間もなく、唇を重ねられ、口内に滑る舌をねじ込まれた。
こんなに切羽詰まるまで我慢するのなら、私が誘った時に普通に抱いていればいいのに、エリオンはどうしてもラブラブな雰囲気で楽しい交接が出来ない人らしい。そして襲われている私も、この状況を少し悦んでしまっている。
──割れ鍋に綴蓋ね……。
また心の中で苦笑いしながら、エリオンの舌に自分の舌を絡めた。
朝食の後、再び寝室へ呼ばれた。
何か用があるのなら、どうせ二人きりだしその場で言ってくれてもいいのにと思った。エリオンの真意が分からず、私は頭の中で首を傾げる。
エリオンは開け放たれていた窓を締めると、カーテンもぴっちり閉じた。明るい日の光が差し込んでいた寝室が一気に薄暗いものになる。彼がこれから何をするつもりなのか、察しの悪い私でも察してしまった。
今日、エリオンは休みだ。朝からそういうことをしようと思えば出来る。今日は業者も来ない日だ。
胸の奥がどくんと跳ねるが、嫌な気持ちではない。それでも。ベッドに薔薇の花びらを散らせとまでは言わないが、もう少しロマンチックな雰囲気で誘ってほしいと思った。しかし、相手は何かと不器用なところのあるエリオンである。こちらの恐怖心を煽るような誘い方しか、彼はできないのかもしれない。心の中で苦笑いした。
──今の私は、今までの私じゃないわ。
男女のことを何も知らなかった私は、この数ヶ月間、程々に経験を積んでいるというヘレナから、閨の事を色々教わっていた。もう受け身でばかりいる私ではない。
ぎゅっと拳をにぎり、怖気付きそうになる心を奮い立たせる。ここで怯んだらまたレス状態が続いてしまう。そんなのは嫌だ。
私は振り返ったエリオンに力強くこう言い放った。
「アレク……」
「エリオン様、ズボンを脱がせてもいいでしょうか!」
私の言葉に、エリオンは凍りついたようにピシリと固まる。そして、絨毯を引き摺るように一歩二歩後ずさると、声を震わせた。
「ず、ズボン……? なぜ?」
「エリオン様の陽根を舐めるためです」
エリオンは「ひっ」と小さく悲鳴を漏らした。その翡翠の瞳は、信じられないと言わんばかりに見開かれている。
──やっぱり。
エリオンの反応を見て確信した。枢機院で働きはじめた彼は精神疲労のせいで不能気味になっていたのだろう。
爺専のヘレナは独り者の枢機官数名と付き合った事があるらしいが、その誰もが雄を直接刺激しないと勃ちあがらない状態であったらしい。
枢機院はこの国の中枢だ。選りすぐりのエリートが集まる苛烈な競争社会。派閥争いが絶えずあり、皆が皆、精神的に疲れていた。
ヘレナは言った。エリオンは精神疲労が原因で、性的に不能気味だから私と交われないのだろうと。
ヘレナ曰く、軽度の勃起障害ぐらいなら、こちらが口や手で刺激してやればなんとかなるものらしい。私はヘレナに聞いた男を悦ばせるコツをメモし、こっそり毎日読んでいたのだ。
「……あら?」
固まっているエリオンの目の前に膝をつくと、すでに彼の股間には布地をくっと押し上げるものがあった。エリオンは今、タイトなズボンを履いているからか、肉棒の形がくっきり浮き出ている。ズボンの上から、股間に触れるとそこはじんわり温かかった。
頭上から、動揺しきったエリオンの声が降ってくる。
「そ、そんなところ……! さっ、触ってはダメだ……!」
「え? どうしてですか? これから交合をするのでしょう?」
「えっ、それはその」
「わざわざ寝室に呼んで、カーテンも閉めて。私と閨のことをするためですよね?」
少々あけすけすぎるが、ここで周りくどい言い方をするのもまどろっこしい。私の問いに、エリオンは喉を鳴らすと、顔をこれでもかと赤らめて頷いた。
「では、失礼しますね」
私はエリオンのベルトに手をかけた。私には少し歳の離れた弟がいて、小さな頃は着替えを手伝ったこともある。実は人の脱ぎ着を手伝うのは慣れていた。あっさりベルトを外し、ズボンの留め具に手をかける。すでにエリオンの雄はがちがちに勃ちあがっていて非常に窮屈そうだった。早くここから出してあげなくては。頭上からエリオンの浅い息遣いが聞こえてくる。
なんとかボタンを外し、ズボンをずり下げる頃には、エリオンの下着は先走りの液で濡れていた。
──……不能じゃないのかしら?
むしろこの状況は健康すぎるぐらいだろう。
エリオンは脱がされるだけで、これだけ興奮できているのだから。
「アレクシア……。俺のことが気持ち悪いんじゃ無いのか?」
切羽詰まったようなエリオンの言葉。私は数回瞬きした。
「どうしてですか? 私はあなたのこと、好きですけど?」
好きでなきゃ、さすがに復縁は出来ない。それにこの三ヶ月の間に私から閨の誘いをしたこともある。気持ち悪いと思っていたら、そもそも一緒に暮せない。
「す、すき……?」
「はい! 大好きです!」
またエリオンはぴしりと固まった。その隙に下着を脱がせる。ぶるんと勢いよく出てきた彼の雄は天を仰ぎ、亀の頭のような先が張り出している。約一年半ぶりに目にした肉棒。彼に襲われた事自体はあまり良い思い出ではないが、コレには随分気持ちよくして貰った。
──どうしよう……。
ヘレナからは、柔らかい雄をなんとか奮い勃たせる方法は教わったが、すでに目の前にあるものは臨戦態勢だ。でもまあ、勃ちあがっていても触れば気持ちよく感じて貰えるかもしれない。そう思い、手を伸ばそうとしたら。
逆にエリオンから手首を掴まれてしまった。
「エリオン様?」
「君に触らせている余裕がない」
「えっ、え」
腕を引っ張られると、そのままベッドに押し倒された。視界がぐるりと回る。腰や背に手を回されると、ドレスを固定していた紐をしゅるんと解かれる。襲うように着ていたものを乱暴に剥がされ、私は慌てた。
「ドレスが皺になります!」
「また買ってやる」
性急な手つきで剥き出しになった乳房を握りこまれ、もう片方の手で顎を上向かされた。抵抗する間もなく、唇を重ねられ、口内に滑る舌をねじ込まれた。
こんなに切羽詰まるまで我慢するのなら、私が誘った時に普通に抱いていればいいのに、エリオンはどうしてもラブラブな雰囲気で楽しい交接が出来ない人らしい。そして襲われている私も、この状況を少し悦んでしまっている。
──割れ鍋に綴蓋ね……。
また心の中で苦笑いしながら、エリオンの舌に自分の舌を絡めた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
いい子ちゃんなんて嫌いだわ
F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが
聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。
おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。
どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。
それが優しさだと思ったの?
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ウィリアム・アーガイルの憂心 ~脇役貴族は生き残りたい~
エノキスルメ
ファンタジー
国王が崩御した!
大国の崩壊が始まった!
王族たちは次の王位を巡って争い始め、王家に隙ありと見た各地の大貴族たちは独立に乗り出す。
彼ら歴史の主役たちが各々の思惑を抱えて蠢く一方で――脇役である中小の貴族たちも、時代に翻弄されざるを得ない。
アーガイル伯爵家も、そんな翻弄される貴族家のひとつ。
家格は中の上程度。日和見を許されるほどには弱くないが、情勢の主導権を握れるほどには強くない。ある意味では最も危うくて損な立場。
「死にたくないよぉ~。穏やかに幸せに暮らしたいだけなのにぃ~」
ちょっと臆病で悲観的な若き当主ウィリアム・アーガイルは、嘆き、狼狽え、たまに半泣きになりながら、それでも生き残るためにがんばる。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載させていただいてます。
崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり
イミヅカ
ファンタジー
ここは、剣と魔法の異世界グリム。
……その大陸の真ん中らへんにある、荒野広がるだけの平和なスラガン地方。
近辺の大都市に新しい冒険者ギルド本部が出来たことで、辺境の町バッファロー冒険者ギルド支部は無名のままどんどん寂れていった。
そんな所に見習い冒険者のナガレという青年が足を踏み入れる。
無名なナガレと崖っぷちのギルド。おまけに巨悪の陰謀がスラガン地方を襲う。ナガレと仲間たちを待ち受けている物とは……?
チートスキルも最強ヒロインも女神の加護も何もナシ⁉︎ ハーレムなんて夢のまた夢、無双もできない弱小冒険者たちの成長ストーリー!
努力と友情で、逆境跳ね除け成り上がれ!
(この小説では数字が漢字表記になっています。縦読みで読んでいただけると幸いです!)
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる