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序章篇
4 兆候-2-
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「たまにはこんな日があってもいいよなあ」
草むらに寝転がったソーマはわざとらしくあくびをして言った。
「そうだね、ここ数日、ずっと働きっぱなしだったし」
性格のちがいか教育の差か、すぐ横でシェイドはできるだけ体を小さくするようにして座っている。
たいていの町民は今も石集めに奔走しているが、先日シェイドが大量の埋蔵石を発見したため、二人の仕事には大きな余裕ができた。
彼はありかをプラトウに周知し、町全体で分け合おうと考えていたが、内密にしたがるソーマがそれを止めた。
善良な人間ばかりではないから、汚い大人たちに横取りされるおそれがあるというのが理由だ。
「暇ができたのは嬉しいけど……」
青色とも灰色ともつかない空を眺めながら、シェイドは呟く。
真上は空だが、四方を山に囲まれているため、少し視線を動かすだけで開放感は閉塞感に変わる。
「こんなに時間が余ったことなんてなかったから、何をしたらいいか分からないよ」
「何もしなくていいんだよ。休めるうちに休んどけ」
「それはそうだけど……なんだか勿体ない気がしてさ」
資産家に生まれていればまたちがった人生だったであろうが、幼い頃から納税のために採掘に明け暮れていたシェイドは、自由な時間の使い方を知らない。
これはソーマも同じだが、彼の場合はいくらか達観しているから不要な焦りは感じなかった。
「なら勉強でもするか? 俺がいろいろ教えてやるぜ」
乗り気でない口調でソーマは言う。
どうせ何かを学んだところで活かすことは一生ないと分かっているから、彼は生きるのに必要なこと以外には熱心にはならない。
「どうせ僕はバカですよー」
シェイドは嫉妬した。
同じ年に生まれて家も近所だというのに、どこで差が付いたのかが彼には分からない。
教育に格差があったハズはない。
しかしなぜかソーマは彼のずっと先を歩いているようだった。
生き方も考え方もそうだが、知識ひとつとっても、ソーマは国情や世界についてもよく知っている。
勉強嫌いを公言し、乱暴な言葉遣いからそうは思わせなかったが、たしかな教養があった。
「別にバカになんかしてねえよ」
ソーマが真顔でそう言うから、シェイドは期待を込めた目で彼を見たが、
「――俺のほうが頭が良いだけさ」
すぐに後悔した。
「相変わらず面白いよな。退屈しなくてすむぜ」
陽気に笑うソーマを見て、彼は一瞬だけ幼馴染をやめようかと思った。
「そう怒るなって。事実なんだからよ」
「怒ってないよ!」
「分かった分かった。よし、時間が勿体ないってんなら商店街にでも行ってみるか。何かよさそうなのがあったら奢ってやるぞ」
「ふん、そんなので僕を釣ろうなんて……」
と、シェイドは口を尖らせながらも、
「……ミンおばさんのこがしバターパイ、買ってくれるなら考えてもいいけど」
しっかりと注文をつけるあたり、彼の影響をしっかり受けているようである。
「ああ、いいぜ」
跳ねるようにして立ち上がったソーマは大きく伸びをした。
ここから商店街までは歩いて20分ほどの距離である。
途中の道は財政の事情で整備がされていないが、朽ちた道標がいくつか立っているため迷うことはない。
「街に出るのも久しぶりだね」
足取りは軽い。
外に出るのは石集めか買い出しがほとんどだから、こうして自由な時間を過ごすのは実は貴重なことだった。
向かう先は所詮は田舎の中央にできた街だ。
その規模も品揃えも華やかさも都市には遠く及ばないが、それでも少年たちの胸をときめかせる魅力があることにちがいはなかった。
なだらかな起伏を越えた先に広がる盆地。
プラトウのほぼ中央にあり、ひととおりの物が手に入るとあって往来は絶えない。
換言すればここ以外は何かしらの不便を抱えているということであり、自然と人々の足はこの街に向きがちになる。
「毎回思うけど、この恰好がなあ……」
ソーマは砂をかぶったケープをはたいた。
この辺りにいるのは事業を営んでいるか、少々裕福な者ばかりだから、見た目だけでなく立ち居振る舞いもいちいち気取っている。
これ見よがしに装飾品を着けている女などは、明らかに二人を見下すように一瞥した。
「僕は気にしないことにしたよ。ほら、あの人」
飲食店から出てきた金持ちそうな女をシェイドが指差した。
「あの上着、あれ……母さんが作ったやつだよ。僕たちを田舎者だと思ってバカにしてるかもしれないけど結局、その田舎者が作った服を着てるなんておかしいだろう?」
彼は得意げに言った。
「お前も言うじゃねえか。なんなら教えてやったらいいんじゃないか?」
ソーマが意地悪な笑みを浮かべた。
「いいよ、そんなことしなくても。それより早くミンおばさんのところに行こうよ」
二人は街の中央にある噴水を目指して歩いた。
街は噴水を起点に7本の大通りが放射状に広がっており、それぞれの通りは不規則な間隔で路地で繋がっている。
見下ろせばちょうど蜘蛛の巣のような構造だ。
シェイドの言うミンおばさんとは、通りから少し脇道に入ったところにある小さなパン屋のことだ。
「おばさん、こんにちは!」
ドアを開けながらシェイドが大声で挨拶した。
個人商店だけあって店内は狭い。
陳列棚には味気のないパンが数個と、特製ジャムの瓶が置かれているだけだった。
「あら、久しぶりじゃないの」
元気な声を聞きつけ、奥から老婆が出てくる。
休憩中だったようで、手には飲みかけのお茶とパンを持っている。
「あんたたちねえ、たまには顔見せなさいよ。おばさんを飢え死にさせる気かい?」
ミンは大仰に笑って言った。
「飢え死にしそうになったら、ここのパンを食えばいいじゃねえか。っていうか、ほとんど並んでねえよな。もしかしてもう食っちまったのか?」
シェイドの後ろからひょいと顔を出してソーマが言う。
「生意気言うようになったじゃないか、ソーマ。ちょっと前までびーびー泣いてた子とは思えないねえ。あれはいつだったかねえ、あんたが迷子になって店の前で――」
「あーあー、分かった! 分かったから! 言わなくていいから! いい加減、忘れろよな」
ソーマは咄嗟にシェイドの耳をふさいだ。
「ははは、墓場まで持って行くつもりはないからね? あんたが“よい子”になったら考えてやってもいいよ?」
背中も曲がり、長時間の歩行には杖が必要なほどの老身でありながら、ミンは玩具を見つけた子どものようにはしゃいだ。
ひとりその意味が分からないシェイドは目を白黒させている。
「えっと……ソーマ? おばさんと何かあったの?」
「お前は知らなくていいんだよ!」
ソーマは彼の頭を軽く小突いた。
「それよりおばさん、こがしバターパイはあるか?」
「ああ、今ちょうど焼いてるところだよ。もうすぐできるから待ってな」
言いながらミンは食事の続きを始めた。
お世辞にも上品とはいえない作法でパンを齧りお茶で流し込む。
「ところで聞いたよ」
何か企んだような顔でミンが声を落とした。
「あんたたち、役人にけんか売ったんだって? いくら儲かったんだい?」
「ええっ? おばさんも知ってるの?」
予想していなかった話を振られ、シェイドは思わず息を呑んだ。
「人づてにね。徴税官に食ってかかった子らがいたって。特徴を聞いてあんたたちだってすぐに分かったよ」
大したものだ、と彼女は手を叩いた。
(そんなに広まってるのか……)
ソーマは舌打ちした。
武勇伝や好評として噂話の種になるのはいいが、下手を打てば役人に目をつけられかねない。
「そんなことをするのはソーマだと思ってたけど、よくよく話を聞いてみれば飛び出していったのはシェイドらしいじゃないか」
「ま、まあ……」
褒められている、と取ったシェイドは頬を赤くした。
「言っておくけどね、無事だったのはたまたまさ。あんたたちが子どもだから、さすがのお役人も不憫だと思ったんだろうね」
ミンは言外に、二度とそんな危険なことはするなと警告を忍ばせたが、それを正しく読み取ったのはソーマだけだった。
「命は大切にするもんさ。それが一番だ。あたしもそれで娘を亡くしたようなもんだからさ」
そう言ってミンは店の奥に消えた。
だが去り際の言葉に余韻を感じさせる前に、彼女はかごにいっぱいのパイを詰めて戻ってきた。
「ほら、焼きたてだよ」
湯気が立ち上るパイは薄茶色の焼き目がしっかりついており、焦がしたバターの香りが鼻腔をくすぐる。
シェイドは物欲しそうにソーマを見た。
「分かってるっての。おばさん、2つくれ」
「はいよ」
「あ、それとは別に10個ください。持ち帰り用で」
「お、おいっ! なに勝手に追加してんだよ」
ソーマが慌てた。
「僕は1個とは言ってないよ?」
「お、お前なあ……図々しいにもほどがあるぞ」
「ほらほら、何があったっていうんだい?」
「おばさん、聞いてよ。ソーマが奢ってくれるからって来たのに、約束を破ろうとしてるんだよ。ひどいでしょ?」
シェイドはわざとらしいくらいに、ソーマに苛められている演技をした。
「ちょっと、ひどいじゃないか、ソーマ。ああ、かわいそうに……」
「普通1個だろ? しれっと持ち帰り用まで頼んでんじゃねえよ!」
「あーあ、せっかく母さんを喜ばせようと思ったのになあ……」
シェイドがここぞとばかりに畳み掛ける。
「いいじゃないか、それくらい。気前よく出してやんなよ」
「払うのは俺だぞ!」
「ああ、そうかい。じゃあシェイドに良い事を教えてやろうかね。あれは朝早くの――」
「分かったから! 払うから!」
ミンの口を塞ぐようにソーマが割り込んだ。
「くそ! 客を脅すなんて、とんでもねえばあさんだぜ!」
パイを箱に詰め終えたミンに、彼は泣く泣く代金を支払った。
「10個以上のお買い上げだから1個おまけしておいたよ。仲良くお食べ」
すっかり拗ねてしまったソーマは、パイを齧りながら店の外に出てしまった。
「あはは、ソーマ怒っちゃった。おばさん、また来るね!」
「ああ、気をつけて帰りなさいよ」
「うん、分かってる。あ、もうひとつ箱もらってもいい? ソーマと分けるんだ」
「はいよ。あんた、今度から苛められたら、“おばさんに言いつけるぞ”って言ってやんな。そうしたら一発で黙るからね」
「ソーマは僕を苛めたりしないよ?」
折り畳まれた箱を受け取り、シェイドは真顔で言った。
「分かってるさ。あんたたちは“良い子”だからね」
「…………?」
不意に見せた彼女の憂いのある表情に、彼は一瞬だけ惑った。
「ほら、行っておいで」
「う、うん……それじゃ」
心に引っ掛かるものを感じながら、シェイドは店を後にした。
「ごめん、待たせちゃって」
「ふん、土産が重かったからじゃないのか?」
「そんなに怒らないでよ。ほら、半分こしようよ」
箱を組み立てたシェイドはパイを移し替えた。
おまけの端数はこっそりソーマの側に足しておく。
「い、いい心がけじゃねえか……」
いつもどおりの彼の優しさにソーマは顔を赤らめたが、よく考えれば自分が損をしていることに気づき、慌てて感謝の言葉を呑み込む。
この後、特に予定のない二人は適当に街を回ることにした。
「これ、新作が出たのか」
ソーマが不意に足を止め、ショーウインドウを覗き込んだ。
中には二人乗りの車の模型が雑然と並べられている。
AGS駆動のそれらは地上数十センチの高さを滑るように移動するため、タイヤの類はない。
「この手前の青っぽいやつ、マリスタビークルの最新作なんだ」
「聞いたことあるよ。なんか崖から落ちても衝撃がどうとかって」
「ああ、そうなんだよ! 前に突起があるだろ? ここに使われてるのが――」
彼は食い入るように模型を見ながら熱弁した。
最近の主流は流線型のフレームだとか、静音式のAGS駆動がどうだとか、内容のほとんどはシェイドには理解できなかった。
「ソーマは車が好きだね」
シェイドは微笑した。
いつもは保護者ぶる彼も大好きなものを前にすると、文字どおり子どものように心躍らせる。
頼りない幼馴染の手前、必要以上に演じてきたしっかり者の仮面は、この時だけはどこかに消え去っていた。
「まあ、とうてい買えるもんじゃねえけどな。見るだけならタダだからよ」
つい熱くなってしまった自分に気づき、ソーマは咳払いをした。
それだけ夢中になれるものがあるのはいいことだ、とシェイドが言うと彼は“調子に乗るな”と頭を小突いた。
「憧れるよなあ……」
今の生活では一生を何度繰り返しても買えるものではない。
それだけのお金があるならいざという時に蓄えておくのが庶民というものだ。
そうして届かない魅力に没入していたソーマの耳に、耳障りな声が届いた。
何事かと振り返ると街のあちこちに人だかりができている。
「何かあったみたい」
「多分あれだ。ほら」
通りの向かい側にあるコンピュータショップをソーマが指差す。
そこはデジタル機器の販売店で、店の前には広告代わりに壁一面のモニターが設置されていた。
この時間、合わせられていたチャンネルでは世界の音楽を紹介する番組を放送していたハズだが、アラート音とともに内容が切り替わっていた。
『ドルセオン地区で蜂起した住民30余名は、エルディラント軍の迅速な対応によりただちに拘束、全員が処刑されました。なお首謀者とみられるヘッヂ・カーマインは取り調べに対し、政府を批判する供述を繰り返したため第47番罪咎が適用されました』
映っていたのは細身の報道官の姿だった。
『今回の件に伴い、同地区への移動および同地区からの移動は人員、物資にかかわらず解除命令が下るまで禁止されます。また政府当局は本件について、第三者からの資金提供の事実を確認しており、関与者の特定を急いでいます』
手元の資料を淡々と読み上げる報道官に感情は感じられない。
ただ冷徹に、抑揚も緩急も一切つけることなく機械のように事実を述べるのみだった。
『エルディラント政府およびエルディラント軍は、いかなる理由によるものであろうとも我が国に敵対する者をけっして許しません。叛逆的な行為には罰を与えます。協力者も例外ではありません。またこれを庇護、隠匿する者も同罪です』
これは出来事をただ伝えるだけのたんなる放送ではなかった。
本来の番組を遮ってまで流した理由は、政府に逆らった者の末路を知らしめ、一切の抵抗が無駄に終わることを教え込むことにあった。
報道官は国からの強烈なメッセージを伝える時だけは、はっきりと威圧的で挑戦的な顔を民に向けた。
その後、同様の騒動が数件起こったが全て鎮圧されたと報じると、放送は再び本来の番組に切り替わった。
ソーマは窺うようにシェイドを一瞥した。
思ったとおりの顔をしていた。
この純朴な少年には刺激が強すぎたようだ。
政府に盾突く者は容赦なく処刑される。
この国に生きていれば誰もが分かっていることだ。
(これが世の中なんだよ、シェイド。お前も受け容れろって……)
幼すぎる幼馴染みに、ソーマは気の利いた言葉をかけてやることができなかった。
草むらに寝転がったソーマはわざとらしくあくびをして言った。
「そうだね、ここ数日、ずっと働きっぱなしだったし」
性格のちがいか教育の差か、すぐ横でシェイドはできるだけ体を小さくするようにして座っている。
たいていの町民は今も石集めに奔走しているが、先日シェイドが大量の埋蔵石を発見したため、二人の仕事には大きな余裕ができた。
彼はありかをプラトウに周知し、町全体で分け合おうと考えていたが、内密にしたがるソーマがそれを止めた。
善良な人間ばかりではないから、汚い大人たちに横取りされるおそれがあるというのが理由だ。
「暇ができたのは嬉しいけど……」
青色とも灰色ともつかない空を眺めながら、シェイドは呟く。
真上は空だが、四方を山に囲まれているため、少し視線を動かすだけで開放感は閉塞感に変わる。
「こんなに時間が余ったことなんてなかったから、何をしたらいいか分からないよ」
「何もしなくていいんだよ。休めるうちに休んどけ」
「それはそうだけど……なんだか勿体ない気がしてさ」
資産家に生まれていればまたちがった人生だったであろうが、幼い頃から納税のために採掘に明け暮れていたシェイドは、自由な時間の使い方を知らない。
これはソーマも同じだが、彼の場合はいくらか達観しているから不要な焦りは感じなかった。
「なら勉強でもするか? 俺がいろいろ教えてやるぜ」
乗り気でない口調でソーマは言う。
どうせ何かを学んだところで活かすことは一生ないと分かっているから、彼は生きるのに必要なこと以外には熱心にはならない。
「どうせ僕はバカですよー」
シェイドは嫉妬した。
同じ年に生まれて家も近所だというのに、どこで差が付いたのかが彼には分からない。
教育に格差があったハズはない。
しかしなぜかソーマは彼のずっと先を歩いているようだった。
生き方も考え方もそうだが、知識ひとつとっても、ソーマは国情や世界についてもよく知っている。
勉強嫌いを公言し、乱暴な言葉遣いからそうは思わせなかったが、たしかな教養があった。
「別にバカになんかしてねえよ」
ソーマが真顔でそう言うから、シェイドは期待を込めた目で彼を見たが、
「――俺のほうが頭が良いだけさ」
すぐに後悔した。
「相変わらず面白いよな。退屈しなくてすむぜ」
陽気に笑うソーマを見て、彼は一瞬だけ幼馴染をやめようかと思った。
「そう怒るなって。事実なんだからよ」
「怒ってないよ!」
「分かった分かった。よし、時間が勿体ないってんなら商店街にでも行ってみるか。何かよさそうなのがあったら奢ってやるぞ」
「ふん、そんなので僕を釣ろうなんて……」
と、シェイドは口を尖らせながらも、
「……ミンおばさんのこがしバターパイ、買ってくれるなら考えてもいいけど」
しっかりと注文をつけるあたり、彼の影響をしっかり受けているようである。
「ああ、いいぜ」
跳ねるようにして立ち上がったソーマは大きく伸びをした。
ここから商店街までは歩いて20分ほどの距離である。
途中の道は財政の事情で整備がされていないが、朽ちた道標がいくつか立っているため迷うことはない。
「街に出るのも久しぶりだね」
足取りは軽い。
外に出るのは石集めか買い出しがほとんどだから、こうして自由な時間を過ごすのは実は貴重なことだった。
向かう先は所詮は田舎の中央にできた街だ。
その規模も品揃えも華やかさも都市には遠く及ばないが、それでも少年たちの胸をときめかせる魅力があることにちがいはなかった。
なだらかな起伏を越えた先に広がる盆地。
プラトウのほぼ中央にあり、ひととおりの物が手に入るとあって往来は絶えない。
換言すればここ以外は何かしらの不便を抱えているということであり、自然と人々の足はこの街に向きがちになる。
「毎回思うけど、この恰好がなあ……」
ソーマは砂をかぶったケープをはたいた。
この辺りにいるのは事業を営んでいるか、少々裕福な者ばかりだから、見た目だけでなく立ち居振る舞いもいちいち気取っている。
これ見よがしに装飾品を着けている女などは、明らかに二人を見下すように一瞥した。
「僕は気にしないことにしたよ。ほら、あの人」
飲食店から出てきた金持ちそうな女をシェイドが指差した。
「あの上着、あれ……母さんが作ったやつだよ。僕たちを田舎者だと思ってバカにしてるかもしれないけど結局、その田舎者が作った服を着てるなんておかしいだろう?」
彼は得意げに言った。
「お前も言うじゃねえか。なんなら教えてやったらいいんじゃないか?」
ソーマが意地悪な笑みを浮かべた。
「いいよ、そんなことしなくても。それより早くミンおばさんのところに行こうよ」
二人は街の中央にある噴水を目指して歩いた。
街は噴水を起点に7本の大通りが放射状に広がっており、それぞれの通りは不規則な間隔で路地で繋がっている。
見下ろせばちょうど蜘蛛の巣のような構造だ。
シェイドの言うミンおばさんとは、通りから少し脇道に入ったところにある小さなパン屋のことだ。
「おばさん、こんにちは!」
ドアを開けながらシェイドが大声で挨拶した。
個人商店だけあって店内は狭い。
陳列棚には味気のないパンが数個と、特製ジャムの瓶が置かれているだけだった。
「あら、久しぶりじゃないの」
元気な声を聞きつけ、奥から老婆が出てくる。
休憩中だったようで、手には飲みかけのお茶とパンを持っている。
「あんたたちねえ、たまには顔見せなさいよ。おばさんを飢え死にさせる気かい?」
ミンは大仰に笑って言った。
「飢え死にしそうになったら、ここのパンを食えばいいじゃねえか。っていうか、ほとんど並んでねえよな。もしかしてもう食っちまったのか?」
シェイドの後ろからひょいと顔を出してソーマが言う。
「生意気言うようになったじゃないか、ソーマ。ちょっと前までびーびー泣いてた子とは思えないねえ。あれはいつだったかねえ、あんたが迷子になって店の前で――」
「あーあー、分かった! 分かったから! 言わなくていいから! いい加減、忘れろよな」
ソーマは咄嗟にシェイドの耳をふさいだ。
「ははは、墓場まで持って行くつもりはないからね? あんたが“よい子”になったら考えてやってもいいよ?」
背中も曲がり、長時間の歩行には杖が必要なほどの老身でありながら、ミンは玩具を見つけた子どものようにはしゃいだ。
ひとりその意味が分からないシェイドは目を白黒させている。
「えっと……ソーマ? おばさんと何かあったの?」
「お前は知らなくていいんだよ!」
ソーマは彼の頭を軽く小突いた。
「それよりおばさん、こがしバターパイはあるか?」
「ああ、今ちょうど焼いてるところだよ。もうすぐできるから待ってな」
言いながらミンは食事の続きを始めた。
お世辞にも上品とはいえない作法でパンを齧りお茶で流し込む。
「ところで聞いたよ」
何か企んだような顔でミンが声を落とした。
「あんたたち、役人にけんか売ったんだって? いくら儲かったんだい?」
「ええっ? おばさんも知ってるの?」
予想していなかった話を振られ、シェイドは思わず息を呑んだ。
「人づてにね。徴税官に食ってかかった子らがいたって。特徴を聞いてあんたたちだってすぐに分かったよ」
大したものだ、と彼女は手を叩いた。
(そんなに広まってるのか……)
ソーマは舌打ちした。
武勇伝や好評として噂話の種になるのはいいが、下手を打てば役人に目をつけられかねない。
「そんなことをするのはソーマだと思ってたけど、よくよく話を聞いてみれば飛び出していったのはシェイドらしいじゃないか」
「ま、まあ……」
褒められている、と取ったシェイドは頬を赤くした。
「言っておくけどね、無事だったのはたまたまさ。あんたたちが子どもだから、さすがのお役人も不憫だと思ったんだろうね」
ミンは言外に、二度とそんな危険なことはするなと警告を忍ばせたが、それを正しく読み取ったのはソーマだけだった。
「命は大切にするもんさ。それが一番だ。あたしもそれで娘を亡くしたようなもんだからさ」
そう言ってミンは店の奥に消えた。
だが去り際の言葉に余韻を感じさせる前に、彼女はかごにいっぱいのパイを詰めて戻ってきた。
「ほら、焼きたてだよ」
湯気が立ち上るパイは薄茶色の焼き目がしっかりついており、焦がしたバターの香りが鼻腔をくすぐる。
シェイドは物欲しそうにソーマを見た。
「分かってるっての。おばさん、2つくれ」
「はいよ」
「あ、それとは別に10個ください。持ち帰り用で」
「お、おいっ! なに勝手に追加してんだよ」
ソーマが慌てた。
「僕は1個とは言ってないよ?」
「お、お前なあ……図々しいにもほどがあるぞ」
「ほらほら、何があったっていうんだい?」
「おばさん、聞いてよ。ソーマが奢ってくれるからって来たのに、約束を破ろうとしてるんだよ。ひどいでしょ?」
シェイドはわざとらしいくらいに、ソーマに苛められている演技をした。
「ちょっと、ひどいじゃないか、ソーマ。ああ、かわいそうに……」
「普通1個だろ? しれっと持ち帰り用まで頼んでんじゃねえよ!」
「あーあ、せっかく母さんを喜ばせようと思ったのになあ……」
シェイドがここぞとばかりに畳み掛ける。
「いいじゃないか、それくらい。気前よく出してやんなよ」
「払うのは俺だぞ!」
「ああ、そうかい。じゃあシェイドに良い事を教えてやろうかね。あれは朝早くの――」
「分かったから! 払うから!」
ミンの口を塞ぐようにソーマが割り込んだ。
「くそ! 客を脅すなんて、とんでもねえばあさんだぜ!」
パイを箱に詰め終えたミンに、彼は泣く泣く代金を支払った。
「10個以上のお買い上げだから1個おまけしておいたよ。仲良くお食べ」
すっかり拗ねてしまったソーマは、パイを齧りながら店の外に出てしまった。
「あはは、ソーマ怒っちゃった。おばさん、また来るね!」
「ああ、気をつけて帰りなさいよ」
「うん、分かってる。あ、もうひとつ箱もらってもいい? ソーマと分けるんだ」
「はいよ。あんた、今度から苛められたら、“おばさんに言いつけるぞ”って言ってやんな。そうしたら一発で黙るからね」
「ソーマは僕を苛めたりしないよ?」
折り畳まれた箱を受け取り、シェイドは真顔で言った。
「分かってるさ。あんたたちは“良い子”だからね」
「…………?」
不意に見せた彼女の憂いのある表情に、彼は一瞬だけ惑った。
「ほら、行っておいで」
「う、うん……それじゃ」
心に引っ掛かるものを感じながら、シェイドは店を後にした。
「ごめん、待たせちゃって」
「ふん、土産が重かったからじゃないのか?」
「そんなに怒らないでよ。ほら、半分こしようよ」
箱を組み立てたシェイドはパイを移し替えた。
おまけの端数はこっそりソーマの側に足しておく。
「い、いい心がけじゃねえか……」
いつもどおりの彼の優しさにソーマは顔を赤らめたが、よく考えれば自分が損をしていることに気づき、慌てて感謝の言葉を呑み込む。
この後、特に予定のない二人は適当に街を回ることにした。
「これ、新作が出たのか」
ソーマが不意に足を止め、ショーウインドウを覗き込んだ。
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「この手前の青っぽいやつ、マリスタビークルの最新作なんだ」
「聞いたことあるよ。なんか崖から落ちても衝撃がどうとかって」
「ああ、そうなんだよ! 前に突起があるだろ? ここに使われてるのが――」
彼は食い入るように模型を見ながら熱弁した。
最近の主流は流線型のフレームだとか、静音式のAGS駆動がどうだとか、内容のほとんどはシェイドには理解できなかった。
「ソーマは車が好きだね」
シェイドは微笑した。
いつもは保護者ぶる彼も大好きなものを前にすると、文字どおり子どものように心躍らせる。
頼りない幼馴染の手前、必要以上に演じてきたしっかり者の仮面は、この時だけはどこかに消え去っていた。
「まあ、とうてい買えるもんじゃねえけどな。見るだけならタダだからよ」
つい熱くなってしまった自分に気づき、ソーマは咳払いをした。
それだけ夢中になれるものがあるのはいいことだ、とシェイドが言うと彼は“調子に乗るな”と頭を小突いた。
「憧れるよなあ……」
今の生活では一生を何度繰り返しても買えるものではない。
それだけのお金があるならいざという時に蓄えておくのが庶民というものだ。
そうして届かない魅力に没入していたソーマの耳に、耳障りな声が届いた。
何事かと振り返ると街のあちこちに人だかりができている。
「何かあったみたい」
「多分あれだ。ほら」
通りの向かい側にあるコンピュータショップをソーマが指差す。
そこはデジタル機器の販売店で、店の前には広告代わりに壁一面のモニターが設置されていた。
この時間、合わせられていたチャンネルでは世界の音楽を紹介する番組を放送していたハズだが、アラート音とともに内容が切り替わっていた。
『ドルセオン地区で蜂起した住民30余名は、エルディラント軍の迅速な対応によりただちに拘束、全員が処刑されました。なお首謀者とみられるヘッヂ・カーマインは取り調べに対し、政府を批判する供述を繰り返したため第47番罪咎が適用されました』
映っていたのは細身の報道官の姿だった。
『今回の件に伴い、同地区への移動および同地区からの移動は人員、物資にかかわらず解除命令が下るまで禁止されます。また政府当局は本件について、第三者からの資金提供の事実を確認しており、関与者の特定を急いでいます』
手元の資料を淡々と読み上げる報道官に感情は感じられない。
ただ冷徹に、抑揚も緩急も一切つけることなく機械のように事実を述べるのみだった。
『エルディラント政府およびエルディラント軍は、いかなる理由によるものであろうとも我が国に敵対する者をけっして許しません。叛逆的な行為には罰を与えます。協力者も例外ではありません。またこれを庇護、隠匿する者も同罪です』
これは出来事をただ伝えるだけのたんなる放送ではなかった。
本来の番組を遮ってまで流した理由は、政府に逆らった者の末路を知らしめ、一切の抵抗が無駄に終わることを教え込むことにあった。
報道官は国からの強烈なメッセージを伝える時だけは、はっきりと威圧的で挑戦的な顔を民に向けた。
その後、同様の騒動が数件起こったが全て鎮圧されたと報じると、放送は再び本来の番組に切り替わった。
ソーマは窺うようにシェイドを一瞥した。
思ったとおりの顔をしていた。
この純朴な少年には刺激が強すぎたようだ。
政府に盾突く者は容赦なく処刑される。
この国に生きていれば誰もが分かっていることだ。
(これが世の中なんだよ、シェイド。お前も受け容れろって……)
幼すぎる幼馴染みに、ソーマは気の利いた言葉をかけてやることができなかった。
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